奈々は過去の自分について、夢を見てしまいます。
私は、三人家族の家に生まれた。
「奈々、いつまでぬいぐるみで遊んでるの!」
母の罵声が轟く。
「中学受験まであと二ヶ月ないのよ!」
「ごめんなさい.........」
今日は、学校や塾がない日曜なのに。
私は、両親の期待に応えるために、
勉強しなければならない。
そうしないと私なんて誰も相手にしてくれない。
学校でも、懸命に勉強した。
「奈々は頭悪いからいつも補習ばっかりだ。
いつも朝早く学校に来て遅くまで勉強してるの〜〜
頭悪いったら可哀想ww」
「きっと両親がバカなんじゃないwww」
教室にいた時よく遠くから女子たちのヒソヒソ声が
聴こえた。
私が彼女たちに目をやると、すぐにそっぽ向いてしまう。
お父さん、お母さん、ごめんなさい。
何も言えない奈々を許して。
お父さんもお母さんも、
奈々がいつも努力していれば、『見捨てないよね?』
お父さんとお母さんの為にこんなにも、勉強してるんだよ。
今は、『出来損ない』だけど、
だけど、絶対に中学受かって見せるから。
その為だけに友達と遊ぶのを我慢したり、
無視されても、耐えてきたんだよ。
違うだろ..............................
もう一人の奈々が耳元で示唆する。
「お前は、勉強する為に友達を創らなかったんじゃない
んだ。
誰もお前見たいな、つまらなく、何も才能もない、
努力しか出来ない単細胞生物、、、誰が好きになるの?」
黙れ!黙ってよ! 私は心の中で叫んだ。
中学受験当日............................
「奈々、筆記用具持った?」
母が私に確認した。
「持ちました」
「そう。いってきな」
「はい」
私は、試験場についた。
「それでは、試験、始め!」
私は、必死で答案を書く。
だが、試験終了10分前にそれは起こった。
「ゴボッ」
私は、とっさに口を抑える。
口から、血が、出ていた。
どうして、、、、、、、
考えてみれば、当たり前であった。
小学生の少女が毎日、不規則、不健康
で勉強漬けの生活してたら。
自分の命よりも、両親に少しでも気に入ってもらう方
がはるかに重要であった。
私は、口を塞ぎ、試験官に気づかれないようにした。
保健室に運ばれたら、
もうテストが受けられないから。
私は、自分の命よりも、『たった残り15分のテスト』
の方が、重要であった。
最期まで諦めるな、自分に言い聞かす。
落ちた先に、幸せなんかあるのか。
「試験、やめ!筆記用具を置いて下さい」
なんとか、終わった。
家に帰るまでには、血は止まっていた。
両親は試験の出来具合は私に散々聞いたのに、
褒めても、私の健康のことも聞いてくれなかった。
二週間後、合否が家に届いた。
結果は『不合格』
一点だけ、たった一点だけ足りなかった。
「はあ、、、、、」
父と母は明らかに不機嫌そのものだった。
私は自分の部屋に逃げるようにして
駆け込んだ。
「どうして、どうして、どうして、どうして............」
本当に辛い時は、涙なんて、思ったより出ないもの
なんだ。
から泣き、、、泣いているはずなのに、
涙が少ししか出ない。
私は、何時間も、布団にうずくまっていた。
「もう、12時か」
昨日までなら寝ていた時間。
少し、両親の様子でも、見てくるか。
私は、明かりの灯っていたリビングをそっとのぞいて
見た。両親の話し声が聞こえた。
「あんなに勉強してたのに
どうして、落ちるのかね〜〜」
母がため息をつく。
「仕方がないよ、奈々は才能が乏しかったんだ」
「それはない。奈々は私たちの子よ。第一、あんなに
勉強したら、『サル』だって受かるわ。
なんで受からないのよ、『不良品』!!」
え、私の身体は硬直した。
私って、お母さんから見れば、物だったの?
それも、粗悪品。
お父さんは、、違うよねえ、、、。
私は、父の今から発しようとする言葉に、息を飲んだ。
『それは、違う」って言って。
「そうだなー。奈々はもしかしたら、家では、
勉強している偽りの仮面をしながら、
学校では遊び呆けていたんじゃないか。」
バコン
母がテーブルを叩く。
ドアの隙間から見ていた私は、
一瞬だけ動揺した。
違う、私は、奈々は、家でも学校でも本気だった。
「そうよ、きっとそうよ。明日、あの子に問い詰めて
やる。私たちの顔に泥を塗ったあの子に。私たち
の期待を裏切りやがって!」
「落ち着けよ〜奈々が起きたらどうするんだ」
「うるさい、あいつなんか私の子じゃない。あいつなんか
養子にでも売っちゃえばいいのよ」
母は、私が見た何よりも怖かった。
両親と言った遊園地の、お化け屋敷よりも、
おっかない先生よりも。
もう、人ではなく狂い切った獣だった。
私は、とぼとぼと自分の部屋に戻る。
両親の使っていた、ライターとタバコを
持ちながら。
タバコの匂い。私の大好きだった、
いや、好かれようとしていた両親の匂いだった。
今まで好きだった匂い。
でも、今は、違う。
私は、気づかれないように、階段、両親の寝床、
こたつの中、私の部屋に、
火のついたタバコを忍ばせておく。
「ふふふ、これで奈々もパパもママも、
『天国』に行けるね。そしたら、
寂しくなんかないね。
ずーっと一緒だよ。」
「火がどうして、バケツだ!」
「キャー!ローン後何年残ってると
思ってるのよ!」
「そんなこと言ってる場合か!
ゴホ、ゴホ、ウッ」
「あなた、あなた、、、、!ゴホ」
ドサッ!
「あははははははははははははははははははは
はははははははははははははは
はははははははははははははは、
みんな、呼吸困難で死んじゃった。
私も今から行くからね。
『天国』では、可愛がってね」
ドサッ!!
翌朝
私は助かった。
目を開けると、病院の天井があった。
両親の姿はどこにもない。
私が殺したのだから。
どうやらこの事件は、『事故』
として処理されたようだった。
火傷を治療して、
二ヶ月後、
私は、少年少女養護施設に送られた。
私が両親を殺したという事実は私以外
誰も知らない。
でもそんなこと、どうでもよかった。
どうして、私をおいて『天国』
にいっちゃったの?
ずるいよ、
ずるいよ、
ああああああああああああ
あああああああああ
ああああああ!!
「ハア、ハア、ハア、、ここは?」
どうやら、夢を見ていたようだ。
何度も見た『本当の夢』。
「あれ、ヒカル、、、」
ヒカルは私の胸に、抱きつきながら
熟睡していた。
とっても気持ち良さそうだ。
人間ってこんなにも安らかな表情
になれるんだ。
見ていて、幸せな気分になった。
どんな夢見てるのだろう。
私に告白されている夢でも、
見ているのかな。
「ヒカルは他の人とは違って
私のこと、見捨てたりしないよね」
人は一番大切な人に
裏切られる事が最も辛いかもしれません