奈々は、変わってしまった。
奈々の拳は赤く血に染まり、
もはや、人間では無く、
『獣』としての雰囲気であった。
奈々は、殴り終えると、
ゆっくりと僕の方に歩み寄る。
奈々の眼は、夕焼けの明かりに
反射して、橙色に照り返る。
「ふふふふふふ」
奈々は、僕だけを見ながら不気味に
微笑む。
「あんまり、怪我してないみたいだね。
よかった。本当によかった」
奈々は、しばらく下を向いて、
黙り込んでしまった。
「奈々の事、嫌いになっちゃった?」
いきなりの言葉に衝撃を受ける。
奈々がこんな事をしたのは全て
僕を守るため。
そんな奈々を嫌いになれるはずなかった。
「あなたを傷つける人には『教育』しなきゃ、
て思ったの。
二度と傷つけられないように。
私がどうなろうと関係ない」
独り言のような声で奈々は呟く。
「さっ、帰ろうか。」
僕は、できる限り明るく振舞った。
そんなことしかできないから。
僕と奈々は、手を繋いで家に帰った。
僕は、家に着くまで『ある事』を考えていた。
僕は家に帰ると、奈々に『ある事』について
奈々に尋問した。
「どうして、僕のためにあんな事したの」
「あなたが大切だから」
「何で!二日しかいたことのない人
の何処が大事なんだよ!」
自分でも、驚く程の大声をたてる。
奈々は少し俯く。
「それでも、大事なものは大事なの」
「何で!僕は、勉強も運動も中途半端で、
人と話すことも下手で何にも取り柄のない、
無価値の人間なんだよ。
努力しても、才能がいつまでたってもクズの
ままだし、そんなんだからみんなから
失望されて、仲間にすらされないんだ。
そんな僕を、大切に思うなんて..............」
「うるさい!」
奈々は、僕の言葉を遮り、僕を睨む。
僕は、突然の豹変に、驚き、
奈々の前に腰を下ろしてしまった。
「あなたは無価値な人間じゃない。
私は、あなたのいいところなんて
いくらでも知っているの。
今は、なにもできないかもしれない。
でも、何年もしたら、
絶対自分の能力が開花するから。
泥まみれの石でも奈々が磨けば、
綺麗になるから。
私が、ピカピカにして見せるからさ、
自分が無価値だなんて、
そんな哀しいこと言わないで」
奈々は、涙を流しながらも、
僕を励まそうと笑顔で
僕に手を差し伸べてくれた。
僕は、奈々の手を掴み
立ち上がり、奈々を抱いた。
「わかったよ。もう二度と言わないよ。」
僕は、気づいたら泣いていた。
「約束だからね」
夜、僕は奈々に飛びっきり甘えながら
寝た。奈々に抱きつきながら寝ても
何も文句を言わなかった。