暗い僕と至高の彼女   作:ネコ缶

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偽者

奈々は僕を裏切った。

僕は、また昔のような昼に起きて、

何をすべきか分からずまた寝る

という、十年前の生活に戻ってしまった。

 

散歩にでも行くか。夕方、僕は閃いた。

いつも、家に引きこもってたので、

どうしても外に行きたかった。

いつも家の中の不変な景色に

うんざりだった。

 

僕は、人目を避けるように家を出た。

27歳なのに白髪で、歯は酒、タバコ

のせいで黒ずみ、

腰は、いつも下を向いていたので、

曲がってしまった。

 

こんな姿、他人にみらたくないな。

夕方の平日だったので、僕は、

帰宅途中だと思われる小中学生、

高校生たちを眼にした。

元気な人たちだ。

下校途中の、数十分の間でさえ、

友人?、たちと話すのをやめない。

どうせ、その友人にはいつか裏切られ、

別のもっと、愉しい友人、の方に行ってしまうのだ。

裏切られないように、互いにくだらない話を、

懸命に話すのだ。

 

僕は、違った。学生時代も大抵は、

独りだった。僕は、裏切られたくなかったんだ。

だから、常に、独りだった。

 

独りに成りたかったのに、

成りたくてなったのに、

何故か寂しいのだ。

偽りの、友情、愛情でも良いから、

欲しかった。

 

僕は、児童擁護施設の近くを通っていた。

ここは、親がいない子が生活するための

施設。

見てみると、多くの子が、広い施設内の遊具

で、仲良く遊んでいるようであった。

逆境に耐え、それでも、

前向きに生きている姿が輝かしかった。

僕は、児童擁護施設から少し離れた

大型トラックも『ビュンビュン』走っていて、

狭い歩道も横に携わっている、

大きな道路を歩いていた。

僕は、とある少女を見つけた。

少女は、僕も通った近くの県立中学の

制服を着ていた。

少女は、何故か道路を行ったり来たり

している。

時折、しゃがんで俯き、悲しそうであった。

 

家出でも、したのだろうか。

 

しばらくすると、少女は、

何か決心を決めたように、

立ち上がり、

いつ大型車が来るか分からない道路

をゆっくりと横断し始めた。

僕は、すぐ気づいた。

この子は、自殺するんだ。

 

僕は、精一杯走り、

歩いている少女を抱きしめ、

向こうにある歩道に転がり込んだ。

 

危なかった。大型車と僕たちの距離は、

二メートルなかったのではなかったのではないのか?

 

少しズレたら二人とも、、

死んでいた。

 

僕は、擦り傷だらけだったが、

彼女は怪我をしていないようであった。

僕は、彼女が落ち着いたのを見計らい、

話をしてみることにした。

話せない、、、、、

正確には、何を話したら良いのか分からない。

命を粗末にするな、、、そう言うべきか。

いや、僕は、口が裂けてもも言うことが出来ない。

同類だからだ。

 

それじゃあ、敢えて助けずに 、

見殺しにすれば良かったのではないのか。

 

彼女は、『自分の意志』で自殺しようとした。

何故か。それは、生きているより、死んだ方が、

『幸せ』だから、である。

つまり、僕は、彼女が幸せになるのを邪魔した、

『悪魔』なのである。

 

「け、怪我は、なかったかい、、、」

 

小さな声を、絞り出す。これしか言えない。

 

彼女は悲しそうに、下を向いたままだ。

 

「あの、えーと、御免」

僕は、謝った。声にならないほど、小さな声で。

 

自殺したい人には自殺させてあげるのが、一番の幸福

だったのではないか、、、、。

なんで、助けてしまっのだろう。

 

『ごめんなさい』

「えっ?」

彼女がだした、第一声であった。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、

ごめんなさい、ごめんなさい、

ごめんなさい、、、」

 

彼女は、僕に抱きつき、

必死で泣きながら謝った。

僕は、一瞬、困惑したが、

こんな可愛い子が、僕なんかの事を、

頼って必死に抱きついている。

 

こんな事状況では、

僕も抱き合うしかできなかった。

 

 

 

 

しばらくすると、彼女は

泣きやんだ。

「あのう、、。その、お怪我はしていませんか」

少し怯えているようだった。

「大丈夫、」

「よかった〜〜」

彼女は、安堵の息をついた。

 

「奈々のせいでお兄さんも死んだら、

どうしようかと思って」

 

僕は、一瞬、心臓が止まった心地がした。

 

『奈々』いや、そんなまさか、、、

 

この、『奈々』が十五年前のあの

『奈々』のはずが無い。

この『奈々』は、人違い、

『偽物の奈々』だ!

 

僕は、すぐ冷静さを取り戻す。

 

「こんな白髪の僕の事を『お兄さん』

て呼んでくれるのは、奈々ちゃん

くらいだな〜。ご両親は心配しないの?

こんな真っ暗になったら、悪い人に、

襲われちゃうかもしれないよ」

 

僕は、何も考え無いで会話をしてしまった。

相手は、可愛いらしい少女だが、

中身は、悩み苦しんだ『自殺志願者』

なのだ。

それを忘れていた。

 

「パパとママは、死んじゃったの。

一年前ね、おうちで火事があって、

私は助かったんだけどね、両親は、、、」

 

奈々はまた俯く。

 

「ごめん」

 

「お兄さんは、悪く無いよ。

でも、私も本当は、

両親と一緒に焼け死にたかった。

両親は怖かったけど、

死んだ後、天国では、

優しくしてくれると、

思ったから」

 

僕は、しばらく何も言えなかった。

言葉を必死で探したが、何も出てこなかった。

 

「奈々ちゃんは、今は、おじいちゃんの家

で暮らしているのかな?」

僕は、話題を避けるしかなかった。

 

「おじいちゃんは、奈々が幼稚園の頃、

死んじゃって。親戚の人も、

家計が苦しくて、、、

擁護施設で生きるしかなかった。

でも、擁護施設でも、誰も、奈々と遊んでくれないの。

最初、入った時、身体の大部分に火傷を負っていたから

みんな、ミイラ、て言って、

奈々の事イジメたんだけどね。

それでも、まだ幸せだった。」

 

「どうして.....」

 

「だって、しばらくしたら、

奈々の事、みんな無視するの。

最初は嬉しかった。

誰も奈々を傷つけないから。

だけど、、だけど、

誰も、誰も、誰も!、、

 

奈々を見てくれない。

 

奈々何も悪いことしてない!

 

なのにどうして!

奈々を必要としてくれないの!」

 

僕はただ聴いていた。

歯を噛み締めながら聴いていた。

 

「今日、高級時計専門店をやっている

『親戚だったおばさん』に

会いに行ったの。

 

奈々嬉しかった。

 

会いに行ったらもしかしたら、

引き取って一緒に暮らしてくれる、

て思ったから。

でも違った。

 

『おばさん、久しぶり。』

て言ったら、

『あなた、誰?。

ああ、ここら辺の汚らしい子は、

みんな児童擁護施設の子か。

ダメじゃ無い!

児童擁護施設から勝手に抜け出したら!

さあ、帰った、帰った!

私は、貧乏人なんか相手にしてる暇

ないのよ!』て、

怒られちゃった。

本当は、忘れているわけないんだ。

昔、あんなに遊んだのに。

 

奈々の事、『可愛い』て、

何回も言ってくれたのに!

全部嘘だったんだね。

 

奈々なんて、引き取っても何にも得に

ならない『不良品』だからね。

奈々は

『ごめんなさい。もう二度と来ません』

て言って帰ったの。

 

誰からも、必要とされない。

もう、偽りの友情も愛情ですら、

手に入らない。

 

だから、死のうと思ったの。

 

ごめんね、

お兄さんにまで死ぬかもしれない

ような思いをさせて。

 

でも、お兄さんに迷惑だってわかってる

けど、お願いがあるの。」

 

 

「奈々と暮らしてくれないかな」

 

奈々は、僕の方を向いて涙目なりながら、

お願いする。

「迷惑だってわかってるけど、

一緒に暮らしたいの。

命がけで奈々を救ってくれた、

あなたと暮らしたいの 」

 

「解った」

 

 

 

 

僕は、奈々の里親になった。

里親になるのは、僕が思っていた程、

超、厳密かつ膨大な法的処理

が必要なのではなく、

意外と簡単であった。

 

もしかしたら、孤児がどうなろうと

どうでも良いのかもしれない。

 

ただし、さすがに、

法的手続きは一ヶ月必要でその間

に、二人で生活できるだけの収入が期待できる

仕事を持つという条件付きだったが。

 

 

僕は、幸いに、大学で多少学んだ工学の知識が、

生きて、自動車会社の開発部に就職できた。

とは言っても、

毎日残業して

五歳下の人に毎日説教され、

ほぼ、上司に、お茶を出したり、

報告書を書いたり、しているだけだが。

 

でも、半年前よりはましな生活になった。

 

これから、奈々との新しい生活が始まる。

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