幻想白徒録   作:カンゲン

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何だか急に閲覧数とかお気に入り登録数とか増えていてびっくりです。
シロみたいな白髪幼女って人気なんだなぁ……。


第二十七話 白髪不老の二人

 

 輝夜と永琳の二人と別れて旅を再開した俺とシロは、道中お互いのことを話しながら進んでいた。とは言えシロはすでに俺のことはほとんど知っていたようなので、いろいろ質問するのは俺のほうが多かった。

 

 シロは白孔雀の付喪神だが、白孔雀そのものと言い換えても問題ないそうだ。

 少し気になっていたのは、俺がまた刀に力を溜めてしまうと彼女が表に出れなくなるのではないかということなのだが、彼女によると一度表に出てしまえばその心配はないそうだ。これまで通りに刀を使えるということに安心した。

 ちなみに俺が白孔雀に溜めた力はシロも使うことができる。これに関してはむしろシロのほうが、会って間もない自分に大量の力を預けて大丈夫かと心配していたな。まぁ問題ないと言っておいたが。

 

 もう一つ気になっていたことがある。それは俺の持つもう一本の刀、黒竜のことだ。白孔雀が自我を持ったように、黒竜にも同様のことが起こっているのかと思ったが、こちらは纏わせていた力を消しても何も感じなかった。

 シロ曰く、黒竜も十分古い刀ではあるのだが、この形になるまでの経緯が少し特殊だったため、自我を持つとしてもまだしばらくかかるらしい。

 確かにこの刀はもとはごく普通の短刀だったが、長年使ったせいでボロボロになったのを神子が修復・改造したものだからな。シロの説明にも納得できる。

 

 

 

 そんなことを話しながら適当に旅をして数年。俺たちはとある町に到着していた。

 

「ふむ。今まで見てきた町と比べると少し小さめだな」

「まぁ今まで見てきた町が大きかったですもんね」

 

 町に入って少し周りを見て、とりあえず感じたことを言ってみる。いつもなら独り言になってしまうのだが、今は返してくれる連れがいるのが少し嬉しかったりする。

 

「町中に目立つ奇妙な気配はないな」

「ではいつも通り、妖怪についての情報収集ですか?」

「そーだな。でも観光しながらでいいだろう。行こうか」

 

 妖怪の話を聞けそうな場所を探すわけだが、急ぎの仕事でもないのだから適当に町をぶらつきながらでいいだろう。俺はそこまで仕事熱心というわけではないのだ。

 

 

 

「はー。今はこんなのがあるんだな」

 

 甘味処にでも入ろうと探し歩いていた俺たちだが、道の横に置いてあった大きめの板を見て足を止めた。建物に立てかけてあるその板にはたくさんの紙が貼りつけられており、見てみるとその一枚一枚には妖怪の絵や説明が書かれてあった。

 

「手配書みたいなもんかな?」

「人じゃなくて妖怪バージョンのですか、なるほど」

「……見た感じ、手前にあるほうが新しく張り付けられたものっぽいな」

 

 この数の紙を貼るには少し板が小さかったからだろう、いくつかの紙は重なって張り付けられていた。というかここは結構妖怪による被害があるんだな。

 

「ふーむ…………お?」

「ん?」

 

 ちなみにどれが一番新しい紙かと指でなぞりながらざっと見ていると、ちょうどその紙と思われる場所を指さしたところで誰かの指と触れ合った。

 同時に聞こえてきた少し呆けたような声のするほうを見てみると、同じくこちらを見ていた少女と目が合った。

 

「ああ、これは失礼」

「いや、私のほうこそ」

 

 とりあえず軽く謝ると少女のほうも同じ調子で答えてくれた。普通なら特に気にすることもなく張り紙のほうを見直すのだが、その少女の容姿に俺は少し驚いていた。

 長く真っ白な髪に、血のような真紅の瞳。シロ以外でこんな容姿の人を見るのは初めてだ。

 

「……何? 言っておくけど私は白髪の仙人じゃないよ」

「え? ああ、知ってるけど……」

「そう……。今まで白髪ってだけでそう聞かれることが多かったから…………って、え? 知ってた?」

 

 無意識にジロジロと見てしまっていたらしく、少女が少し不機嫌そうな顔で話してきた。だがその内容は突拍子もないことのように聞こえたので、思わず素直に答えてしまった。

 最初は俺の答えを流していた少女だったが、途中で気になったのかきょとんとした顔をして聞いてきた。

 

「あー……まぁ、知ってたな」

 

 それ俺だからな。というか白髪ってだけでそう聞かれるのか。網代笠を被るようになってかなり経ったから、特徴とか忘れられてきたのかな? それにしたって性別くらいは知っておいてほしかった。

 ……気付かれないように網代笠を被り始めたのに、いざ忘れられると妙に感じてしまう。

 うん。何だろうな、これ。

 

「悪いな。結構珍しい髪と目だなって思って」

「結構って……。こんな髪と目の色した人なんて他にいるわけないでしょ」

「いやいるよ、ここに」

 

 俺はそう言って隣にいたシロを少女の目の前まで持ってきた。俺は網代笠を被っているがシロは特に何も被っていないため、自分とよく似た容姿をしているシロを見た少女は目を丸くして驚いていた。

 

「わ、ほんとだ……。私と同じ人、初めて見た……」

「えへへ。どうも、初めまして」

「あ、はい。初めまして」

 

 きちんと頭を下げて挨拶をするシロにつられてか、少女も同じように頭を下げて挨拶をしている。少しきつめの目つきのせいで第一印象は微妙だったが、本質は素直な子のようだ。やはり見た目は当てにならんな。

 

「初めまして。俺はハクという。白いって書いてハクだ」

「私はシロといいます。えーと……一応、白いって書いてシロですね」

「え? ってことは二人とも漢字で書くと名前は同じなの? 珍しいね」

「本名というか、正式名称は白孔雀です」

「厳ついな!?」

 

 シロの名前を聞いた少女が大声を出して驚いている。確かにこんな小さい女の子の名前が白孔雀と聞けば、そういう反応をしてしまうのは当然だ。女の子らしくないどころか人間らしくない名前だからな。

 しばし固まっていた少女だが、はっとして一つ咳払いをすると自己紹介をしてくれた。

 

「あーっと……私は藤原妹紅(ふじわらのもこう)だ」

「よろしく。ところで、妹紅は退治人なのか?」

「……どうしてそう思った?」

「どうしても何も、ここの張り紙を真剣に見ているようだったから」

 

 少女―――藤原妹紅に少し気になっていたことを尋ねると、質問を質問で返された。だがその質問に対する答えは実に単純なものだ。もちろん、単に興味があったから見ていただけという可能性も大いにあるが。

 俺が答えると妹紅は、それもそうかと言って肩をすくめた。

 

「いいや、私は妖怪退治を仕事にしているわけじゃないよ。気まぐれに退治してるだけさ。そういうあんたは退治人なの?」

「一応。とは言え、退治する妖怪は選ぶけど」

「ふーん。あんまり強そうに見えないもんね」

 

 同じ質問を返してきた妹紅に、先程の彼女と同じように肩をすくめながら答えると、妹紅は俺を上から下まで見たあとに納得といった感じで頷いた。

 恐らくだが、妹紅は俺の『退治する妖怪を選ぶ』という言葉を『強い妖怪は避け、弱い妖怪だけを相手にしている』という意味で受け取ったんだな。実際は『いい妖怪は避け、悪い妖怪だけを相手にしている』わけだが。

 

「まぁ純粋な力量ではシロのほうが強いしな」

「え、この子のほうが強いの? 冗談でしょ?」

「……」

 

 疑い百パーセントといった感じに苦笑している妹紅に、俺もシロも返事はせず目を逸らす。

 彼女は完全に冗談だと思っているようだがマジである。シロは俺が今まで白孔雀に溜めた力を使うことができる上、彼女自身の力もかなり強力だ。力比べなんてしたら一秒も持たない自信がある。

 

「……さて、さっき見ようとした張り紙は、と」

「えーと……これですね」

「……何で冗談って明言しないの?」

 

 眉をひそめている妹紅は一先ず置いておいて、先程見ようとしていた張り紙に視線を戻す。妹紅は少し不満げだったが、深く追及はせず俺たちと同じように一番手前に張られている紙を眺めた。

 えーと、どれどれ。

 

「二日前にこの町で暴れた妖怪のことらしいな。えー……、深夜にこの町を襲撃。幸い騒ぎに気付いた退治人が追い払ったため怪我人は出なかったが、複数の建物が破壊された。その妖怪は町の外へ逃走。特徴は……」

「少女の姿をしていて、腰まで届く青みがかった銀髪に赤い瞳。普段は隠していたようだが、このときは頭に二本の角があった……と」

「結構詳しく書かれているな。思ったより探すのは簡単そうだ」

「……んー?」

 

 説明を読んだ妹紅は楽勝楽勝と言っているが、この説明文少し違和感があるな。

 

「シロはどう思う?」

「何だかおかしいですね、この説明」

「え、どこが?」

 

 横で俺と同じように首を傾げているシロに聞いてみると、彼女もこの説明文に違和感を感じているようだ。特に何も感じていないらしい妹紅は別の意味で首を傾げており、その様子を見たシロが解説をしている。

 

「これ、容姿について詳しく書かれ過ぎです。深夜の出来事だというのに妖怪の髪や瞳の色まで書かれてます。それに二本の角も普段は隠してあるとどうしてわかるのか……」

「あ、言われてみれば……」

「二日前の夜っていうと満月でしたね。でもいくら月明かりがあるからといっても断定はできないはず。これは少し調べてみないとわかりませんね」

「はー……なるほど、すごいな」

 

 シロの説明を聞いた妹紅は心底感心したように何度も頷いている。シロは見かけによらず鋭いからな。

 さて、この妖怪のことだがシロの言う通り、少し調べてみないとわからない。そしてわからないものが気になってしまうのは当然、というわけで。

 

「よし、じゃあ調べに行くか。まずは聞き込みとかだな」

「はい、了解です」

「妹紅はどうする? ついてくるか?」

「……へ?」

 

 ここで会ったのも何かの縁だと思い、口元に手を当てて考え事をしている妹紅を誘ってみると素っ頓狂な声を出された。そんなにおかしなことを言ったつもりはないんだが。

 

「……ついていって大丈夫なの?」

「? もちろん。何の問題もないけど?」

「そう……? じゃあ少し気になるし、ついていくよ」

「おう、よろしく」

 

 少し悩んでいるようだった妹紅だが、ついてくることにしたようだ。自分がいると仕事の邪魔になるとでも思っていたのだろうか。だとすると本当に優しい少女だな。

 

「よーし、行くぞシロ! 俺についてこーい! レッツゴー!」

「はーい、ハク様ー!」

 

 気合を入れるため、掛け声を上げつつ拳を空に突き上げる。意外にノリのいいシロも同様に拳を上げているのだが、こいつは何してもかわいいな。

 

 さて、まずは…………そうだな、甘味処にでも行ってみるか。情報収集するのが目的なら人が集まるような場所のほうがいいだろう。

 別に団子が食べたいわけじゃないぞ。あくまで目的は情報収集だ。まぁ店に入って話を聞くだけというのは悪いから少しは団子を注文すると思うけど。

 

 誰にするというわけでもない言い訳を心の中で並べながら、まだ見ぬ団子…………ではなく情報を求めて歩き出すのだった。

 

「……『ハク様』って…………一体どういう関係なんだろう……」

 

 そんな俺たちの後ろを妹紅がついてくる。何か独り言を言っているようだが、考え事をするのが好きなのだろうか。まぁしっかりついてきているようだし、はぐれたりはしないだろう。

 

 

 

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 個人的な理由から強い妖怪を探しては退治する日々を送っていた私―――藤原妹紅は、とある町で妖怪退治依頼の張り紙を見ていたところ、二人の人間と出会った。

 

 一人は十以下と思われる少女で、穏やかで優しそうな雰囲気を持っていた。だが何より私を驚かせたのは、その少女が自分と同じ白髪赤目だったということだ。

 そしてもう一人は網代笠に刀を二つ帯刀している青年だ。その如何にも怪しい出で立ちのせいで第一印象は微妙だったが、話してみると予想以上に普通の人だった。やはり見た目は当てにならない。

 

 さて、私は今、そんな二人に誘われて張り紙に書いてあった妖怪について調べるため、甘味処に立ち寄っている。といっても私は二人についていっているだけであり、その二人も注文した団子を食べているだけなので、調べているのかというと違うのだが。

 

「ほら、妹紅も食え。そこにあるのはお前の分だぞ」

「あ、うん。ありがと」

「ハク様、この団子美味しいです!」

「おー、そりゃよかった。ちゃんと噛んで食べろよ」

 

 本来なら情報収集しなくていいのかと聞くところなのだが、二人とも幸せそうに団子を食べている上、差し出された団子を食べてしまった私では強く言うことはできない。

 ……あ、美味しい。

 

「……よし、もう十分堪能したな。俺たちはここに妖怪の話を聞きに来たんだ。団子を食べに来たわけじゃないぞ」

 

 いや、合計十本食べたあとに言われても……。

 

「はっ! 忘れてました!」

 

 案の定である。

 

 ハクは話を聞いてくると言って店の主人のほうへ歩いて行った。残された私とシロは団子を食べながら待っているのだが、あまり親しくない人と同じ席にいるというのは少し気まずい。だが彼女のほうはそんなことはないようで相変わらずニコニコとしている。

 ふと先程思った二人の関係性について聞いてみようと思い、隣で両手で湯呑みを持ってお茶を飲んでいるシロに質問することにした。

 

「シロ、少し質問いい?」

「はい、何ですか?」

「あの……ハクとはどういう関係なの?」

「ハク様との関係ですか? うーん…………持ち主と持ち物?」

「え゛。し、シロって奴隷とかなの?」

「いえ? 少し言い方が悪かったですね。ハク様はご主人みたいなものです」

 

 それは奴隷扱いされているということではないのだろうか。いや、今まで見てきた二人は奴隷とその主人のような関係性には見えなかった。見えなかったけれども……少し警戒したほうがいいかもしれない。

 私がそう考えていると話を聞き終わったらしいハクがこちらに戻ってきた。

 

「二人とも、少し面白い話が聞けたから移動する…………どうした?」

「え? いや、別に」

 

 無意識に警戒している感じが出てしまっていたのか、私を見たハクが怪訝な表情で聞いてきた。咄嗟に取り繕いはしたが、ハクは微妙な表情のままだ。とは言え網代笠のせいでほとんど顔は見えないのだが。

 

「シロ、何かあったのか?」

「いえ、少しお話していただけですよ?」

「そう? なんか妹紅の中の俺に対する好感度が下がっているような気がするんだが……まぁいいか。代金は払っておいたから移動しよう」

 

 何気にピンポイントなことを呟きながらハクが外に出る。そこまで顔に出ているのだろうかと思いながら私も外に出て、彼についていった。

 

 

 

「ハク様、面白い話ってどんなことを聞けたんですか?」

「あの張り紙に書いてあった妖怪の話だ。どうやら三年ほど前からこの町に住んでいたらしい。町の人たちはそいつが妖怪だとは知らなかったようだがな」

 

 前を歩くシロとハクの話を聞きながらしばらく歩いていると、とんでもない情報が耳に入ってきた。そのあり得ない内容に思わずその場で固まってしまう。

 

「あーなるほど。だから髪色とか目の色とか、普段は角を隠しているだとか知っていたんですね」

「そうなんだが、あの張り紙に書いてあった内容は普段の姿と襲撃のあった夜の姿が混ぜられてるってことだからなぁ……」

「角を出した本来の姿は、髪や目の色が普段の姿と違う可能性がある、ということですね」

「そういうこと。シロは頭がいいな、よしよし」

「えへへ~」

「ちょ、ちょっと!」

 

 何でもなかったかのように普通に話している二人を呼び止める。私の大声を聞いた二人は立ち止まって振り向いたのだが、その顔はどうしたんだとでも言いたげなきょとんとした表情だった。

 

「妖怪が人間の町に住んでたって、そんなことあるの?」

 

 妖怪とは恐れの象徴、恐怖そのもの。そんな妖怪が人間の町に住むなんて普通はあり得ない事態のはず。だというのにこの二人はそのことに一切触れないで話を続けている。

 そのことをハクに聞くと、一瞬眉をひそめたがすぐに納得したような表情になった。

 

「あ、そうかなるほど。でも町に人外がいるなんて珍しい話じゃないぞ。な、白孔雀?」

「はい、ハク様」

「そ、そうなの?」

 

 二人が顔を見合わせながらうんうんと頷いてる。退治人を名乗るハクがそう言うということは、今までも同じようなことが結構あったのだろうか。というか何故シロのことをわざわざ白孔雀と呼んだのだろう。

 

「町中には妖怪もいれば神もいるし、仙人とかもいたな。最近は宇宙人とか刀の付喪神と会ったりした」

「いやぁ、まさか……」

「案外妹紅の近くにもそういうのがいるかもしれないぞ。気付かなかったってだけでな」

 

 不思議なことじゃないと言うように説明するハクを見て、軽くあしらおうと思っていた私の口が塞がってしまう。ここまできっぱりと言われると、あり得ないと思っていたことでも真実であるかのように聞こえてしまう。全部を信じたわけではないが、全部を嘘とは思えなくなってしまった。

 ……まぁ確かに、私も普通の人間とは違うしね。

 

「おっと、いつの間にか着いてたんだな。ここが目的地だ」

「ここって……修理中の建物がたくさんありますね」

 

 二人の言葉に少し俯いていた顔を上げると、シロの言う通り、壊れた建物がたくさんある場所に着いていた。たくさんの人が集まり、建物の修理をしている真っ最中のようだ。

 ここは恐らく、張り紙に書いてあった妖怪が暴れた場所だろう。ハクはここが目的地と言っていたが、何故こんな場所に来たのだろうか。

 

「お察しの通り、ここは例の妖怪が暴れまわった場所だ。そして暴れまわったということは大量の妖力を使っていたはず」

「それって重要なの?」

「重要だぞ。その妖力を見つけられれば、あとはその持ち主を探すだけだからな。簡単に言うと匂いを追って犯人を見つける、みたいな感じだ」

「なるほど……って、妖力を見つける!?」

「ああ、まぁ見とけって」

 

 熟練の退治人の中には妖力を感じ取ることができる人がいるとは聞いたことがある。だが実際にそんな能力を持った人間に会ったこともなければ噂もほとんど聞かなかったため、作り話だと思っていたのだが……。まさか彼がそこまで力の強い退治人だったとは。

 私も少しは妖力を扱うことができるが、その域に達するのはまだまだ先のことだと感じている。

 

「てことで、シロ頼む」

「はーい」

「…………自分でやるんじゃないの……?」

 

 ドヤ顔で説明していたあんたじゃなくて、こんな小さい子にやらせるのか。もしかしたらハクは妖力を追うということができないのかもしれない。というか何故シロができるのだ……。

 ハクに頼まれ、目を閉じて集中し始めたシロだったが、少しすると目を開けて不思議そうな表情をした。

 

「どうした、シロ?」

「うーん、どうしてか違う種類の妖力を二つ感じるんですが……。ハク様、例の妖怪は二人いるんですか?」

「いや、そんな話は聞いていない。多分一人だけだろう」

「……ですが、やっぱり二つ感じます。ここには二人妖怪がいたと思うのですが……」

「シロがそう感じるなら、それで間違いないだろう。妖力がどっちの方向に濃く残っているかはわかるか?」

「はい、二つとも同じ方向で、真っすぐこの方向に向かってますね」

「よーし、よくできたな、シロ」

 

 シロが町の外に見える山のほうを指さしながらハクに説明する。それを聞いたハクはうむうむと頷きながらシロの頭をなでているのだが……何故そんなに誇らしげなのだろう。ハクは何もしてないでしょ。

 

「じゃ早速行こう。距離もそんなに遠くないし」

「……それはいいけどそんなにお気楽でいいの? 妖怪のいる場所に行くんだよ?」

「うーん。楽観視しているわけじゃないけど、今回は大丈夫な気がするからな」

「気がするって……そんな曖昧な」

「大丈夫ですよ。ハク様の勘は当たるんです」

「……はぁ」

 

 今から行く場所には町へ人を襲いに来るような危険な妖怪がいるというのに、緊張感も何もない二人に呆れてため息を吐く。

 ハクのほうは知識はあるようだが戦闘はできそうにない。シロは知識や力はあってもまだ子供だ。こんなに危なっかしいコンビもないだろう。よく今まで生き残ってこれたものだ。

 

 シロの指さした山に向かって歩いてゆく二人を見て再びため息を吐く。

 今回の妖怪は被害の規模からみてかなり強力だということがわかる。私でも戦えば殺されてしまうかもしれない。本当なら引き返すのが正解なんだろう。

 

 それでも私は二人のあとをついていくことにした。妖怪を退治しているのは決して正義のためではないのだが、知り合った人間が死ぬのは気分が悪い。

 そう思い、空を見上げて三度目のため息を吐いたあと、二人を追って歩き出すのだった。

 

 

 

 それに私は、たとえ殺されても、死なないのだから。

 

 

 




妹紅の言葉遣い難しい……。
絶対安定してないわコレw

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