【未完】とある原石の闇影の支配者《ブラックマスター》   作:スキート

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今回は少し長いです。


第三章 紐解かれていく幻想御手事件

「ぐっ⁉︎」

 

背中から激痛が走る。服が破れる。

 

俺の脳内は何が起きたのか理解するのに数秒かかってしまう。

あの能力者の他に、もう一人能力者が、潜んでいた。そう考えるべきだった。

 

「くそっ⁉︎」

 

俺は即座に周りを見回すが、誰もいない。

 

多分だが、いなくなったというわけではない。

 

遠距離攻撃か、なんならかの能力か。

 

「……がっ………は…………」

 

もう一度、背中に激痛が走る。油断しているというわけではない。むしろ、集中力を張り巡らさせてる。

 

それなりの実力者とみるべきだろう。多く見積もって大能力者(レベル4)程度だろう。

 

「で、出てこい!」

 

俺は反射的に叫ぶ。

 

「ぐふっ」

 

口から血が垂れてくる。

 

「くそっ!」

 

俺はすぐさま建物から出る。

 

このままだと、怪我をするだけ無駄になる。

 

一番楽な方法は建物ごと破壊すること。だが、周りには、多少なりとも人はいるため、風紀委員(ジャッジメント)の立場としては、一般人は巻き込まない。

 

幻想御手(レベルアッパー)は手に入れることに成功したが、先ほど俺を攻撃してきた能力者を野放しにするのは危ないため、戦わなければならない。

 

本気を出すのはいいが、血反吐を吐く可能性が高い。ただでさえ、ついさっき魔術を使い血管が切れてばかりとなると、まだ完全には治っていないはずだ。

 

「いや、やるか…」

 

俺は覚悟を決める。持って2分、時間内に終わるのは楽勝だろう。

この力(・・・)なら。

 

俺は、全力で地面を蹴り、建物の屋上に登る。そして、屋上の床を蹴り破壊して、中に入る。

 

この三階建の建物のどこかに能力者はいるはずだ。

 

三階にいないことを確認し、二階に下がる。

 

先ほどとは違い、気配を感じる。さっきは、もう一人いて能力で何かをしていたのかもしれない。それよりも、俺は攻撃してきた能力者と思われる気配の元に向かい、一気に蹴り飛ばす。

 

「…ぐがっ‼︎⁉︎」

 

当たりだったようで、能力者は、建物の壁をぶち破り、路地裏に、出て、隣にあった建物にぶつかる。これほどの攻撃を受ければ、すぐに意識を戻すということはないだろう。

 

すると、柱の陰から新たな人影が見えてくる。

 

「……こ、降参です!」

 

「許すわけねぇだろ」

 

俺は、この、能力者と思われる奴も蹴り飛ばす。

 

そして、もう一人の能力者は、先程の能力者と同様に、吹っ飛んでいった。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

なんだかんだで支部についた俺は、どうにか包帯を巻いて治療をしていた。

 

現在、背中あわせで反対にいるのが白井黒子。彼女も幻想御手(レベルアッパー)使用者との戦闘で傷ついたらしい。

 

て、いうか、俺あの後ずっと幻想御手(レベルアッパー)使用者と四戦以上してきた。最近は幻想御手(レベルアッパー)使用者が着々増え始め、俺ら風紀委員(ジャッジメント)は、それを見逃すことはできないので、戦うという方法しか、取ることができないのだ。

 

「比企谷先輩も白井さんも日に日に生傷が増えていきますねー」

 

今、俺と白井に話しかけてきたのは初春飾利。白井の治療をやっている。

 

「仕方ないですわ。幻想御手(レベルアッパー)の使用者が増えてるんですもの」

 

「どれくらい広まっているのか、想像もつきませんねー」

 

「泣き言を言っても始まりませんわよ。とにかく!私たちが為すべきことは3つ」

 

幻想御手(レベルアッパー)拡散の阻止と、昏睡した使用者の回復」

 

「──そして、幻想御手(レベルアッパー)開発者の検挙。これを開発し、ネットに広めた何者かを必ず見つけ出して、必ず目論見を吐かせてやりますわ」

 

白井が堂々と宣言する。いやほんとにこの子、四ヶ月前まで小学生だったのか疑わしいレベルでちゃんとしていらっしゃる。

 

「さぁ、先に手当てしちゃいましょう!」

 

よく考えたら白井って、上は包帯しか巻いていないと思うと後ろ絶対にうけねぇじゃん。

 

「ほんとは御坂さんに巻いて欲しいんじゃないですか?」

 

「お姉様に私のこんな姿見せるわけにはいきませんわ」

 

「大丈夫ですよ。誰も見たくないですから」

 

………。一瞬だけ初春が怖いと思った俺がいる。てか、初春って結構いきなり辛辣になることが多々あるので、俺は何もしないようにしている。

 

「白井さんのより、比企谷先輩の方がいい身体(からだ)してますよー」

 

最初の初春の一言で、白井は初春に胸ぐらをつかもうとしたが、いきなり矛先がこちらに向いてくる。

 

「お、お兄様……、ぐへへへ」

 

「お、おい……ちょっ、初春止めろ」

 

「し、白井さん!包帯取れちゃいますよ!」

 

初春の制止は少し遅く、白井が俺に飛び込んでくると同時に、胸の部分を巻いてあったはだけて、上半身裸の中学生が飛び込んでくるというとんでもなくやばい絵面になってしまっていた。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

「さ、最低ですの!///」

 

「いや、お前が飛び込んできたんだろうが……」

 

俺の頰には、真っ赤な紅葉が咲いていた。超ヒリヒリして痛ぇ……。

 

「……で、私のか、身体(からだ)をさ、触った感想は…?///」

 

「……い、いわねぇぞ…」

 

これで、中学生相手に柔らかいとか言ったら、只のロリコンになっちゃうのは勘弁して欲しい。

 

………まぁ、感想言うとしたら、柔らかかったけれど」

 

「⁉︎///」

 

「ひ、比企谷先輩のせいで白井さんが……」

 

「あれ?声に出てた?」

 

「は、はい。思いっきり……」

 

「お、お兄様///ぶつぶつぶつぶつ」

 

「ひ!白井さんが壊れてます」

 

「いや、なんかごめん……」

 

すると、支部の扉の前から声が聞こえる。

 

「おっすー!私も何か手伝うことあ、っつ」

 

御坂の声を聞いて正気に戻った白井が、即座に空間転移(テレポート)の力を使い、初春を御坂の頭上に転移させる。まぁ、結果はいうまでもないだろう。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

「で、進んでるの?捜査の方」

 

「それが……」

 

御坂の言葉に初春はどもる。

そして、白井が口を開く。

 

「木山先生の話では、短期間に大量の電気的な情報を脳に入力するための、“学習装置(テスタメント)”という特殊な装置があるそうですの。でも、それは、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感全てに働きかけるもので……」

 

幻想御手(レベルアッパー)は只の音楽ソフト。聴覚作用だけね」

 

「植物状態になった被害者の部屋を捜索しても、あの曲のデータ以外何も見つからないんです」

 

初春がそういうと、給湯室から、お湯が沸いた音が響く。

 

そんなことより、俺は一つの疑問を抱く。

 

“木山先生”

 

本名、木山春生。それなりに有名な研究者で、俺とも面識がある女性。

 

彼女は脳についての研究をしているはずだ。それは知っている。

 

でも、何故風紀委員(ジャッジメント)に協力する目的はなんなのか。

 

昔、彼女から、救いたい存在がいると聞いていた。誰を救いたいのか、昔何があったのか、深くは聞くことはしなかった。

 

そりゃあ、興味本位で協力していると言われたら終わりなのかもしれない。だけど、犯人が彼女だとしたら?よくよく考えたら、幻想御手(レベルアッパー)ほどの開発をしたとなると、実力の高い研究者が開発したと思われる。

 

最初に頭に浮かぶのは、木原一族。だが、木原一族がここまで回りくどいやりかたをするとは思えない。

 

だとしたら────木山春生だとしたら────。

 

正直、もう幻想御手(レベルアッパー)事件には勘弁している。只でさえ、禁書目録(インデックス)の事があるので、忙しくはなりたくない。

 

ただ聞くだけでわかる。ただ、それだけのこと。

 

「……すまん。俺出てくる」

 

「お、お兄様?」

 

「へ?」

 

そして、俺は木山春生の元に向かった。

 

 

 

 

 

 




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