─────その日、カダインは混乱に陥っていた。
「スターライトが……盗まれた!?」
「ああ……今朝だと、思う……」
「どうして!?一体誰に!?」
リンダは興奮した様子で凝視してきた。
「落ち着くんだリンダ……だけど悪いね、パレスから来てもらってる時に……」
「それはいいけど……大体、どうしてスターライトが盗まれたのよ?」
「分からない……唯一、マフーを破れるからか……」
「でも、ガーネフはもう倒したじゃない」
「うーん……何か他に…スターライトが必要な理由があったのかな……」
「逆にマフーを強めるため、とかかしら?」
半ばリンダは冗談気味で言っているようだが、なかなか恐ろしいことだ。
だが、それは無いだろう。
「……そのマフーを使うやつは倒れたって、君が言ったじゃないか」
「そうだけど……」
スターライトは、終戦後、カダインに引き取られる形となっていた。
理由としては主に、マフーを打ち破る効力の研究だが、トロンやボルガノンといった単純な高位魔法とは違い、オーラ同様、最高位光魔法として貴重な存在でもある。
そんなスターライトが盗まれるとは………
「とにかく早いところ見つけないと……」
机に寄りかかり、何も手がかりがない中を探していかないといけないことに、ため息をついた。
だが、そんな時、扉を叩く音がした。
リンダが応答し、扉を開けると、そこにはフードを被った人物が立っていた。
「誰っ!?」
リンダも反射的に魔道書を握りしめる。
「──────お探しのものは、これかな?」
しかし、そんなことはお構い無しにと、その人物は手に持っていた魔道書を自分たちに見せてきた。
「そ、それは……スターライト!?」
「どうしてあなたが持っているの!?」
「まさか、スターライトを盗んだのは君か?」
「いや……私じゃない。ただ……伝えに来たのだ。スターライトは無意味だと」
「無意味…?」
「……スターライトの光では弱すぎるのだ」
「何を……まさか、ガーネフが復活したとでも言うのか!?」
「…………。」
「そんな……嘘でしょ!?ガーネフは死んだんじゃないの!?」
「…………。」
「何か答えてくれ!!」
「……それはいずれ…分かることだ」
最後にそう言い残し、スターライトを置いて謎の人物は姿を消した。
リンダも愕然として床を見ていた。
「……ガーネフが復活したとしたら、また……この世界が……」
「……とにかく、さっきの人が言ってることがどうであれ、まずはマルス様に報告しよう」
「アリティアに行くの?」
「ああ、すぐ向かうよ」
「なら私も行くわ。道中、安全とは言い切れないし、一人より二人の方がいいでしょ?」
「…助かるよ。すぐに準備をしよう!」
急いで身支度を整え、アリティアに向かって二人、歩き出した。
エリス様もその話を聞いて心配していたが、アリティアにいる弟にと、手紙を預け、無事に帰ってくることを祈っていた。
しかし、スターライトを盗んだのが一体誰なのかも、返しに来たのが誰なのかも、分からないままだ。
何か嫌な予感がするのは、きっと……僕だけではないだろう。
✻ ✻ ✻
「──────昔々ある所に、一人の王様がいました。王様はとても怖くて、とても強かったです。しかし、王様はある時、死んでしまいました。王様があまりにも人々をいじめるので、見かねた王様の犬が、王様を殺してしまったのです」
「……またその話ですか?あなたもお好きですね」
「二度と…あんなことが起きないようにしなければならない。お前もそう思ってるんだろ?」
「……犬はその後、どうなったんですか?」
「……自らが王となり、人々を牽引した。だが……それも所詮は犬だ。続くはずもなく、すぐに王国は滅んだ」
「…………。」
「その時、初めて国民は気がついたんだよ。無能な正義感に溢れた奴より、愚王と呼ばれても人々を牽引することのできる奴の方が、有能だとな」
「そうですか……」
「行き場を失った人々は絶望に苦しんで死んだ。犬は人々に恨まれ続けた。当然だ、有能な王を殺した無能は、のうのうと生きているんだからな」
「…………。」
「時は戻らない。後悔しても意味は無いんだ。お前がするべきことは、過去を嘆くことじゃない。未来を阻止することだろ?」
「ええ……」
「……気を付けろよ。お前が敵対する相手は生半可な強さではない。想像以上に力を秘めている」
「ええ……」
「上手くやれよ、ルサリィ」
「はい……」
第3話:完