惟政を池田家に送り込んだ後、俺は晴元を御所に呼びつけた。といっても、彼がすぐに現れるわけでもなく、その間にどうやって晴元に池田信正の切腹を思い止まらせるか考える必要があった。
池田信正が晴元に目を付けられたのは、以前に氏綱と連絡を取り合っていたということが発覚したからであるらしいが、これも孝高が言うには、直接的な原因は俺が晴元を刺激するような発言をしたからだとのことだった。将軍という立場にある人間を公に非難するわけにもいかず、自らの権勢を強めるために信正の過去の罪を引っ張り出したというのが、孝高の見立てだ。
将軍の強権を利用して晴元の命令を握りつぶす。
今の俺なら、それができないこともない。
復活しつつある将軍家の力が相対的に弱まった管領家のそれと拮抗してきていることを、俺は感じていた。
理由はある。
第一に、――――これはすでに述べた通りだが、将軍家に追い風が吹いているということ。
木沢長政の討伐に成功して以降、それまで抱えていた最大の問題であった直轄領が少ないという点を解消できた。万全ではないものの、豪族程度の兵力動員能力しか持たなかった将軍家にとっては大きな収入であった。
第二に、晴元自身が零落しつつあるということ。
彼は管領という立場を手に入れたことで強権を手にしたが、細川晴元個人の人格については問題が多い。
今回の池田信正の切腹問題についてもそうだが、対立した父上と俺を近江国に追放するなど、武力を背景にした下克上紛いの行動で上からも下からも煙たがられている。
そして、最後に管領を務める細川京兆家自体が、将軍家と同じく地盤の弱い家柄であったということ。
晴元自身の領地から徴発できる兵力は限られていて、多くは同盟した豪族らに動員をかけることで賄っている。その問題が大きく出たのが、一向宗や法華宗を利用したことで発生した天文法華の乱であった。
自前で兵を用意できないのは、将軍家も管領家も同じであった。
これまでは、管領家のほうが将軍家よりも実際の力があったから、将軍家はただの御輿になってしまっていたが、将軍家が直接的な武力を持てば、管領家は将軍家に仕える立場にあるために発言力を弱めざるを得ない。
晴元が妙な行動に出たのは将軍の所為で、それは結局、信正が将軍家と細川家の対立に巻き込まれたことを意味していた。
となれば、助けたいと思うのが人情というもので、助けることができれば俺への信頼も上がってくれる……はずである。
戦国の世なので、すべての人情を信じていいかは不明瞭だが、こちらの誠意を見せておくことは不利益にはならないだろう――――そう信じたい。
「とはいえ、この時期に晴元といがみ合うのはよくないんだよなぁ……」
畠山家を討伐すると諸将に宣言した直後に内部分裂となれば、周囲に示しがつかない。晴元の戦力が幕府の中で大きな存在感を保持しているのは厳然たる事実なので、対畠山路線に影響されるのは困る。
晴元との関係を崩さないようにしつつ、信正の切腹を回避する。
上手い落とし所を探りたいところだが、そんなものがあるのか。
そもそも、晴元は畠山家討伐に於いて自分の力を誇示できなかったことに不満があったわけで、しかし討伐の指揮を晴元にさせれば、管領家の権勢に追い風が吹く。この戦は、あくまでも俺が武威を示す好機として利用しなければならず、晴元に力を与えるきっかけにしてはならない。
「なんとか、なるかなぁ……」
なんとかしなければならない。
多少、こちらが妥協してでも信正に生きてもらわなければ、摂津一国が敵に回りかねないというものである。諸将が抱いている印象は、まだ将軍と晴元の関係は深く、晴元の行動が将軍の意図と絡んでいると思われることもあるのだから、信正が切腹すれば、その切腹の裏に俺がいるという深読みをされかねない。
時間もない。
一番手っ取り早いのは、晴元にも利であると思わせることだろう。
そんなこんなで、気が付けば夕刻。
思いのほか遅れた晴元の参上に俺は若干苛立ちながら、されどそれを顔には出さないようにして茶室に案内した。
「変わった趣向ですな、殿下」
「そうかな。内々の話をするには都合がいいと思うが」
「内々の話、ですか」
いぶかしむ晴元の視線には、警戒心がありありと浮かんでいる。無理もない。ここは、俺の領域である。晴元の直臣たちもいるとはいえ、俺の一声で方が付く。まして、茶室には二人切りだ。人払いもしているし、ここで俺が剣を抜いても誰も晴元を助けには入れない。
非常に微妙な関係にある俺たちは、互いに利用しあっても決して相容れることはなく、状況によっては謀殺もありえるという危険なものでもあった。
「まずは一つ」
「ありがたく頂戴します」
俺が点てた茶を晴元に差し出す。
晴元は用心深く、慎重に茶を服した。
「それで、本日のご用向きは?」
「それなんだがな、管領殿」
さて、どう口火を切ったものか。真正面から信正の切腹を思い止まってくれというのも、反撃を受けて轟沈、あるいは頑なな態度を取られてアウトとなりかねない。一応、信正の有用性を押し出すつもりだが、晴元の機嫌を取りつつとなると、結局一手しか思いつかなかった。
「実は、俺の古い馴染みの藤長が祝言を挙げると聞いてな」
「一色の……確か式部少輔でしたかな」
「ああ。それでだ、悪友の婚儀は目出度いが、そうなると俺も先のことを考えねばならんと思ったのだ」
「先……?」
晴元は、目を細めて言う。
「つまりはワシの小女を妻にと?」
「俺はそれで構わないと思っている。そこで、事前に管領殿に打診してみたわけだ。まだ、表立って言える話題ではないし、どこに耳があるかも分からん。直接会って話をするのがよいと思ったのだ」
我が家と管領家との対立は、周知の事実である。
それが、婚礼を以て結び付くとなると極めて慎重にならざるを得ず、情報が出るだけでも世間に与える影響は大きなものになる。個人的な茶室でなければ、迂闊に口にできる話題ではなかった。
「内々にというのはそういうわけだ」
「ふむ、なるほど。では、当家からの申し出を受け入れてくださるということですかな?」
「俺にとっても意義のある話だと思っている。まあ、後はご息女次第ではあるが」
「なれば問題ありませぬ。アレには十二分に言って聞かせますのでな」
晴元は一笑いして、茶碗を置いた。
どうにも、昭元の意思を問うつもりはないらしい。今から言って聞かせると発言しているあたり、まだ本人には言っていないのかもしれない。
「本来は南河内の騒乱を治めてからと思っていたが、周りにせっつかれている。決めるだけ決めて戦に集中したかったが、管領殿の許しをもらえるのなら、後は外堀を固めるだけで話は進みそうか。恥ずかしながら、この手の話は初めてでどう進めていいか分からなくてな」
「ご心配には及びませぬ。我が小女の晴れ舞台なれば、この晴元が万全の支援をお約束いたします」
「そうか。それならば、安心できるな」
内心で、利用してしまった昭元に申し訳なく思う。
これ以外に上手い手が思いつかなかったのである。晴元にこちらを敵対するうま味がないと思わせるには、こちらが、彼にとって利になる存在でなければならない。そして、信正を切腹させることが利にならないと思わせねばならない。
ここからが、この茶会の本題である。
「祝言を挙げるにしても、騒がしい南河内国を鎮めねば祝い事はできない。準備が出来次第これを叩くという方針には変わりないが、先鋒をどうしようかと考えていた」
「殿下の南河内討伐の志はわしも同意するところですが、あの者たちが匿っている氏綱めはいかがされるおつもりでしょうか」
「討つに決まっている。今更出てこられても、こちらは困るだけ。そうだろう?」
「真にその通りかと」
したり顔で、晴元は頷いた。
彼にとっても、畠山家と細川氏綱の討伐は重要な意味を持つ。管領を彼の一族で占めるためにも、ライバルは蹴落とさなければならないのである。
「で、話は戻るが、先鋒なのだが……俺は摂津の者たちに任せようと思う。三好、池田、伊丹らは戦力として申し分ない」
池田の名が挙がったとき、それまで浮かれていた晴元の表情が引き攣ったのが見えた。
「三好は長慶のことでありましょうから戦力としては心配いりませんが、池田は不安ですな。あれは、先の乱でも氏綱と繋がった疑いのある男が当主ゆえ、寝返らぬとも限りませぬ」
「ああ、その話は聞いた。だが、管領殿が一度許しているのなら問題ないだろうと思ってな。木沢のときは、池田殿の活躍も耳にした。摂津の重鎮でもあるし、先鋒を任せるのは悪くないと思うぞ」
「ぬ、む。……それは、確かにその通りではありますが」
「一応、摂津の諸将は管領殿との繋がりも深い。彼らの協力を仰ぐとなると、あなたに一言断わっておいたほうがいいかと思ってな」
こちらはあくまでも晴元の判断を知らないという立場で語ることにする。切腹の問題を知っている場合と知らない場合では、晴元への印象が大きく変わるからである。
「しかし、もしも敵に寝返られたら如何なさるのですか?」
「そのために先鋒を任せるんじゃないか。古来、寝返ってきた者は先陣を切るものだろう。池田が不安というのなら、その働き振りで判断を下せばいいまでのことだと考えている。数さえ揃えれば、後ろから揉み潰すということもできるだろう」
「うむぅ……」
よほど、池田家が気に入らないのか、晴元は尚も唸って反論の余地を探ろうとしている。とはいえ、池田家の失態自体は、氏綱に味方しようとしたことだけであり、それも氏綱が上洛途上で長慶に撃退されているために未遂に終わっている。それ以前の池田家の行動を見ると、一向一揆に敗れた晴元を池田城に匿ったり、木沢長政討伐に参加したりしているので、親晴元であると言えるだろう。
晴元は一度信正を許したので、唯一の失態も帳消しになっているはずであった。
要するに、今の時点で俺を前にして切腹を命じたとはなかなか言い出せない状況に陥ったということだ。
それでも、首を縦に振らなければ、完全に晴元を無視して池田家を救うように手を回すしかない。それでは、すべてが水の泡になる。
「いずれにしても、早々に片付けなければならないのは、畠山家の問題だと思います。摂津衆の協力をどれだけ楽に受けられるかは、
俺は、そういって頭を下げた。
茶室に晴元を呼びたてたのは、もちろん婚儀の話を誰かに聞かれることのないようにするためであったが、この人に頭を下げる様子を見られないようにするためでもあった。
誰かに見られたら、将軍が管領に従属しているように受け取られてしまうかもしれないからだ。
「頭をお挙げくだされ、殿下。天下の将軍にそこまで頼まれては、わしも一肌脱がねばなりませぬな」
「ほう、では」
「摂津衆のことはわしがよくよく取り計らいましょう」
「摂津衆のこと『も』です、義父上。婚儀についてもお手数おかけするはずですから」
「そういえば、そのように申しましたか。では、殿下。畠山討伐及び我が小女のこと何卒よろしくお願いします」
俺が頭を下げたことで、自尊心が満たされたらしい。
晴元は実に気分のよさそうな表情を浮かべ、笑っていた。
□
晴元の協力を取り付けた俺はやっとの思いで自室に戻った。
やってしまったと思わなくもない。晴元の機嫌を取り、逃げ道を塞ぐためとはいえ昭元を出汁にするとは。いや、塞がったのは自分の逃げ場か。同年代が祝言を挙げる中で、将軍が孤高なのはよくないと周囲から言われていたが、なし崩し的に婚約してしまうとは何たる迂闊。
「で?」
とは、孝高の発言である。
「だから、昭元と祝言を挙げることになった」
「どうして、池田家を助けるのに昭元と祝言なんて言質与えちゃったの! ほんとにいきなり過ぎるわッ!」
孝高の激しいツッコミも分からなくもない。
彼女の言うとおり、池田家を救うことと祝言は傍から見ればまったく無関係に映るだろう。
「いや、お前なら意味が分かってると思ったが」
「ぐ、そ、そりゃあね。管領様を言い包めるのに都合がいいのは分かってる、けど……」
「信正に切腹させたらまずいってのは、お前も指摘しただろう。言質というが、むしろ晴元から言質を取ったことを評価してほしい」
「むぅぅ……それは、まあ……」
顔を顰めて孝高は項垂れる。
「池田に何かあれば
「うん」
三好長慶と三好政長。
どちらも、池田家と関わりのある勢力である。
長慶の父元長との付き合いがあり、木沢討伐に於いては池田信正は長慶の指揮の下にいたのである。その一方で、政長はというと実は信正の義理の父に当たる。信正の妻が政長の娘なのだ。となれば、長慶も政長も信正の命を重視しているはずであり、この信正の処遇を誤れば三好家の内部に深い亀裂を発生させることになる。特に長慶は父を晴元や政長に殺されている上に南河内国には晴元に反抗する勢力が育っている。下手に刺激すると、反抗勢力と結んで三好家がクーデターを起こしかねないというのが、孝高の懸念だったはずだ。
「ともあれだ。まずは畠山を潰すのに力を集めなければならない。孝高にはまだ負担をかけることになる」
「別にいいよ、それくらい大したことじゃないし」
「ところで、人材の件だが、多少の増員は不可能じゃないぞ。光秀と義政が離れてから回していくのが大変だっただろうし、お前の推挙で誰かいたら、紹介してくれ」
「いいの? だったら、何人か声かけるけど、後でダメって言わないでね」
「人数によるな」
「とりあえず一人。来てくれるかどうか分からないけどさ」
「孝高の推薦なら、よほどだろう。ダメとは言わないと思う」
「そう? だったら、ほんとに声かけるよ。この前言ったあの半兵衛ちゃんなんだけど、なんか追い出されちゃったって……」
「よし、雇う。今すぐに迎えを出せ!!」
「ちょ、殿下!? 何か今日、色々といきなりすぎるでしょ!?」
「織田と秀吉に先を越されるわけにいかんのだ。速攻で攻め落とすんだ孝高!」
「お、織田? 秀吉? 織田って、尾張の? まあ、確かにあそこなら声をかけないこともないと思う、秀吉って何?」
孝高は首を捻ったり唇に指を当てたりして悩むそぶりを見せるが、知ったことではない。そんなことに悩む時間があるのなら、今すぐにでも竹中半兵衛の潜む地を訪れ、仕官するよう説得するべきだ。いっそ俺が行って話してもいいとすら思う。
人誑しが実在するかは分からないが、織田家が斎藤家に牙を剥いているのは事実なわけで、斎藤家から下野した半兵衛は軍師としての実力に加えて斎藤家の情報を持っている。織田家としては何よりも欲しい人材のはずだ。
とにかく、半兵衛の能力は孝高が推薦するほどであり、光秀が抜けた穴を十分に埋めてくれるはずだ。
南河内国が落ち着いたら、光秀を呼び戻すつもりだが、それでも優秀な人材を集める必要はある。
俺は孝高に、ほかの仕事に優先して半兵衛のスカウトを命じたのであった。
孝高が半兵衛への書状を書くために下がった後、入れ替わるように入ってきたのは小次郎であった。
津田小次郎。
俺の剣術相手役であり、護衛として屋敷に出入りする剣士だ。
小次郎は、音もなく文机に向き合う俺の隣に座った。
「何か、あったか?」
「特に、何もねえです。あったのは、義ちゃんのほう……?」
「そうだな。直に本格的に戦が始まる。準備をしないとな。小次郎も気を引き締めておいてくれよ」
「ん。それはもちろん。……後、祝言も」
言われて俺は、小次郎の顔をまじまじと見つめる。
「聞いてたか」
「誰にも言わないですよ」
「本当に言わないでくれよ。無用の混乱が起きる」
「あい」
コクン、と小次郎は頷いた。
晴元との会話を聞いたのか、それとも孝高との会話を聞いたのか。それとも、巷に出回っている噂を聞いたのか。後者はこの機に話を出す必要はないので除外する。すると二つの会話のどちらかとなるが、可能性が高いのは孝高との会話を聞いていたというところだろう。
「でも、いきなりですね。義ちゃんが祝言なんて」
「いきなりだよ。いきなり言ったからな」
「まだ、口吸いもしたことないのに」
「う、うっさいわッ」
こいつめ、余計なことを。
否定できないのが悲しいところだ。おまけに護衛という役職柄俺の交友関係を把握している。断言できるのも、傍にいる時間が長いからだ。
「とりあえず、義ちゃん」
小次郎は言葉数が少なく意思疎通に難があるところがある。表情が希薄なこともあって、考えていることが分かり辛い。何が言いたいのか、尋ねようとしたときすぐ目の前に彼女の大きな瞳があった。
「んぅ!?」
小次郎が、唐突に唇を重ねてきたのだ。
思考が停止する。ただ、唇に柔らかいものが触れているという感触と、少女らしいいい香りがするだけで、その他の情報がまったくない。
小次郎の行動が突飛過ぎて、どう対応していいのか分からなかった。
小次郎がゆっくりと離れる。
そこで、俺は再起動した。
「お、お前、何をしたのか分かっているのか?」
「ん。これで、義ちゃんの初めてはあたしとゆーことになりました」
「お前な。この状況だと、そのまま押し倒されるのが普通だぞ」
割とガチで押し倒しそうになっている自分がいる。相手の意図は分からないものの、その根底にある気持ちはさすがに理解せざるを得ない。
「でも、義ちゃんはしないと思いますがね」
「……理由はあるのかよ」
「らしくない?」
首をかしげながら、言う。
「祝言の約束をした日に別の女の子と寝るのは、なんからしくない感じです」
小次郎の言うとおり。
これが、前日であれば俺はこの娘に手を出していただろうから、彼女の人物評は正しい。昭元を正妻に迎えると宣言した俺は、他の女子に手を出すわけにはいかなくなった。
「なんで、あたしに手を出すのは、祝言の次の日でお願いします」
「それはそれで問題だからな! 目茶苦茶拗れるだろうが!」
どこの世界に嫁を貰った次の日に別の女に手を出す阿呆がいるというのか。いや、いるかもしれないが道徳的に問題がありすぎる。
「じゃ、あたしはこれで」
言うだけ言って、小次郎はそそくさと部屋を辞す。
襖を開けて、出る直前、
「ちなみに義ちゃん」
「なんだ」
「あたしも初めてでした」
そう言い残して襖を閉じた。
小次郎が出ていった後で、俺は頭を乱暴に掻いた。
本当に小次郎は突飛な行動をする。
彼女も色々と考えているのだろうが、こちらはそれが読めないのでいつも不意を突かれる。だが、やっぱり、これは意外にもほどがある。
祝言に影響は与えないだろうが、その後には響きそうだなと、俺はため息をついた。
「おーい、殿下。今起きてる?」
そんなとき、襖の向こうから、孝高が声をかけてきた。
「起きてるぞ」
返事をすると、襖を開けて孝高が入ってきた。
「書状の準備ができたから明日にでも出すよ。大分時間がかかると思うから、次の戦には間に合わないかもだけど、必ず口説き落とすよ」
「ああ、頼むぞ」
「うん!」
半兵衛とよほど仲がいいのか、孝高は嬉しそうに報告してくれた。
「ところで、殿下。小次郎どうかしたの?」
「どうかとは?」
一瞬、心臓が止まるかと思った。
「さっきすれ違っただけだけどさ、珍しく顔真っ赤だったから。風邪? 何か知ってる?」
「あー、いや……どうだろな」
さすがに孝高にキスしたとかは言えないわけで、そのときの俺はとぼけるより他になかった。
あぁ^~社会人なりたくないんじゃ^~
義輝君との初ちゅーは、旧作の義政から小次郎に変更。
こっちの義政は小悪魔系じゃないので、引っ掻き回し役が別に必要。
しかし、最近の少年漫画には連載一ページ目でヤッちゃう主人公とヒロインがいるから義輝君の理性はさすが。コミックスにはそのときの様子までおまけで載っている始末。少年漫画始まったな!