艦隊これくしょん―コンコルディアの落日― 作:GF-FleGirAnS
またしても爆発音。数を数えるのは初めから諦めている。だがそんなにも、ようやくちらほらと味方のそれと思える爆音が聞こえてきていた。
「くらえぇぇえええぃ!」
初めて艤装を背負った日からずっと何度も何度も散々繰り返してきた姿勢で照準、そして引き金を引く。Верныйから借りた12.7cm砲が火を噴き、こちらに走ってきた秋月型の砲台はそれを避けるように飛び上がる。本当にすばしっこい。
「飛んだ!?」
しかし飛び上がってしまえば動きは途端に単純になる。自律駆動式兵装は駆動するからこそ厄介なのだ。地面からひとたび離れてしまえば重力に従って落下するほかない。すかさずВерныйが弾丸を叩き込む。空中で一撃食らった相手はそのままガシャンと地面に落下。
「……思ったよりすばしっこいわね。流石海軍さんは予算が潤沢だこと」
「司令官、資本だけじゃ技術を捕まえることは出来ないよ」
相変わらずよく分からない会話をしている二人を尻目に、深雪は連装砲の装填作業を急ぐ。皆逃げられたのだろうか、ここには倉庫と今倒したばかりの砲台以外には誰もいない。
「防備隊は下がったのか、それとも瓦解したのか……いずれにせよどこかの部隊と合流したいところね。工廠の方へ向かうわよ、流石に工廠や司令部くらいは意地でも守るでしょうし」
そう呟きながら歩き始めるのは菊澤とかいう憲兵中佐。とりあえず中佐と言うんだから大宙中佐と同じくらい偉いのはよく分かるのだけど、深雪にはどうも引っかかるところがあった。
「な、なぁ中佐」
「ん? なにかな」
「中佐はさ……どうして戦ってるの? ここは鎮守府なのに」
「ん? それはなぜ陸軍が
「司令官はむしろ私に守られる側だと思うけどね」
すかさず訂正を入れるВерный。実際、菊澤は銃すら取り出していない。
「まあそれは置いておいてだ。憲兵さんというのは前線で命を張る部隊が心置きなく戦えるように頑張る支援兵科だ。後方の基地で皆殺しにされちゃあ深海棲艦と戦えないだろう?」
「……答えになってない」
深雪が不満げに言ったのを受けて、菊澤はさも楽しそうに顔を歪めた。その横顔を微笑んでいると表現していいのかは微妙なところだ。
「ま、確かにグレーゾーンには違いないかもね……でも考えて欲しいものだよ深雪。陸軍も海軍も目的は同じ、この国に仇なす存在を討ち滅ぼし国家の安寧を確保すること、即ち国防だ。今目の前で起きている現象が国防のためになるとは私は憲兵として判断しないし、司令部だって私に職務の範囲内で動けと言っている」
私はそれをしているに過ぎないよ。菊澤はそう言いながら歩みを進める。角に差し掛かったところでВерныйが手鏡を取り出し安全確認。それから銃機関銃をぐるんと大回りに振り回して飛び出す。発砲音が立て続けに鳴り響く。
「あ、こら!」
先を越されたと深雪も後に続くが、角を曲がった頃にはもう遅い、既に自律駆動式砲台は倒された後だ。
「ヴェル、もうちょっとみゆきんにも活躍させてあげなさいよ」
菊澤がそう言うと、Верныйは振り返って肩をすくめた。
「活躍? 彼女は司令官を守っているじゃないか、立派な活躍だよ」
「む、なんか納得いかない」
「深雪が司令官を守って、司令官が私を守ってくれる。これで完璧だ」
「……で、誰を守る必要もないあんたは好き放題やる訳ね」
菊澤の言葉には応えずВерныйは前を向く。目の前に広がるのは工廠区画……いや、区画だったと言うべきか。
「酷い……」
「これは酷いね。現代アートにしては不格好が過ぎる」
なにが爆発したのかは分からないが、とりあえず屋根が吹き飛んだのは間違いないのだろう。各種建材の塗装にはもれなく焦げ目がつき、梁などはひしゃげている。
「仕方がない。司令部へ向かうわよ」
そう菊澤が言ったその時、何かの音が聞こえた。鋼鉄を叩く音だ。一定間隔で、連続している。何かが動いてる。
「……!」
慌てて連装砲を構える深雪。それを手で遮ったのは菊澤だ。
「待ちなさい。兵器が意味もなく音を立てるわけないでしょ……生存者だ。ヴェル、安全確保」
その言葉で駆け出すВерный。誰か残っているのなら救助せねばならないが、作業中に背後から撃たれたんじゃ目も当てられない。
「憲兵隊の菊澤中佐だ。誰か残っている者はいるか?」
一瞬静寂。それからすぐに男の声が聞こえる。
「菊澤、お前か!?」
工廠の伏宮だ。聞き慣れたその声を聞いて、菊澤が高らかに嗤った。
「すっごーい! 伏宮君は本当に工場が好きなフレンズなのね♪」
「じゃかあぁしい! 誰が好きでこんな廃墟に残るか馬鹿、こちとら巻き込まれた側だっ!」
即座に聞こえてくる抗議の声。とにかく元気には違いなさそうだ。
「声だけは聞こえるけど、どこにいるのよ伏宮君」
「事務所が
「……あー、あれね。ものの見事に残骸が十字架だ」
「縁起でもねぇこと言うな」
「まー待ってなさい。今助けてあげるわよ」
生存者の居場所が分かってしまえば話は早い。深雪と菊澤は協力して残骸を除けていく。途中からはВерныйも作業に加わり、大して時間はかからない。かつて扉だった板を除けると、そこから伏宮少佐と明石が現れた。
「二人とも五体満足か。大変結構」
「まったく、人がいない間に何勝手に仕事を増やしやがった菊澤」
「助けてあげたのに、酷い言われようね。別に私が増やしたわけじゃないのよ伏宮君。屋外では連装砲ちゃんが大ハッスル。まぁ増やしたという意味では、あながち間違いではないか」
埃を叩いて身を起こした伏宮に、菊澤は手を差し出す。打ち身打撲程度で済んでいれば良かったのだが、不幸な事に金属片やら鉄骨やらで切り傷まみれになっている。
「暗くて見えませんでしたけど、閉じ込められてる間治療もできたでしょう! 何で早く言ってくれなかったんですか!?」
「情けない声出すんじゃねぇ……痛みがあるだけで、行動に支障はない」
怪我を黙っていた伏宮に明石が抗議のあげるが、当の伏宮は聞く耳も持たない風に菊澤の手を取る。
「とりあえず菊澤、何が起こってるか教えてくれ」
「司令部施設は健在。秋月型の艤装が暴走して、対処にあたった歩兵や航空機に被害が出てる。それくらいかな」
「目下の目標は、艤装を稼働させたプログラムを対処するか。あるいは物理的に破壊するかの二択か」
それをどうにかしなきゃいけないからアンタが必要なのさ、と言わんばかりの菊澤の表情。対して、流し目で現実逃避したげな伏宮。
厄介事はこれ以上は勘弁だ。しかし、状況はそんな願いを許しはしなかった。菊澤の端末が鳴り響く。
「ヴェル、みゆきん。うちの部下から救援要請だ。消防施設前で武力衝突、手数が足りないからここは放って置いて急行しなさい」
「
「任せとけぃ!」
勝手知ったる基地内を駆け抜ける駆逐艦娘が二名。残された菊澤たちは、さてどうしようかと頭を抱えるのだった。
「どうすれば良いんですかね……このままじゃ警備隊もジリ貧ですよ」
明石が溜息をつく。 携帯端末の軍港マップに敷かれた赤いエリア。空襲時には消火活動の目安に使われる
「不味いですよ……中佐。自律駆動砲台が格納されていたC区画を中心に、消化班を含め退避命令。及びB、D区画にも延焼中です。無線機能喪失の状況で
「とにかく状況把握が先だ」
伏宮が第一種軍装の内ポケットから取り出したキーカード。引っ手繰った明石が携帯端末に滑らせる。本来ならば海戦時に使用する戦術システムを無理やり起動すると、主たる艦隊指揮官や艦娘の所在がマップに追加される。もちろん、Верныйと深雪が駆け抜けている様子もモニタリングできる。
「
「もうクラッキングの犯人止めるのと、連装砲ちゃんを止めるのどっちかにしません? 現状戦力外の艦娘って私ぐらいですし、手が圧倒的に足りませんっ」
権限を持ちえない工廠長と艤装を下ろして陸に上がった艦娘。状況が違えれば切るべきカード。しかし、今は只の
「さっきも言ったが、思いつくような対処法は2つ。1つ、テロの首謀者から連装砲のコントロールを奪い返す。おそらく司令部施設にウイルスか何かを流し込まれて、深海棲艦と人間の区別もつかないような状態だろう。金銭的にも、実験艦隊として推奨はしたい。2つ、武力で物理的に連装砲を破壊する。海軍でない第三者お前なら、どっちを採用する?」
「決まってるじゃない。仮に訊き出すことが可能性として浮上するのは、時間的制約がない場合。今回の様に邁進しながら施設を壊されちゃ、こっちには立つ瀬がない。ならば、方法は問わず早急に解決を図るべきだ」
人質を抱えられた場合には交渉の余地ありと見るが、未だに声明などはなし。正直お手上げだと、菊澤は唸る。
「そもそも、早急に対処せよとの命令が優先されるのは、テロリストによる佐世保鎮守府掌握を阻止するためだ。短期的にとはいえ、国防力の低下は国民に対して無視できない脅威になりうる」
「そういう事だ。でなきゃ、首謀者の生け捕りなんか関係になく、兵糧攻めで干上がるのを待てばいいだけだ。自律駆動式砲台だって、人間の整備や補給なしでは連続稼働は48時間も持たない」
つまり、動かなくなるまで待てと言いたい所だ。それが不可能なら、命令系統を奪取するか、破壊するしかなくなる。
「真正面からぶち抜くには手数がいる。可能ならば艦娘用の装備があった方がいいが、格納庫周辺が思いっきり囲まれている状況だと増援は見込めない。迫撃砲などを引っ張ってくれば人海戦術でなんとかなる。その猶予すら上から急かされる状況となれば、今の戦力で何とかするしかないわね」
「いや、いくつか手は残ってる。先日郊外の第七倉庫に、ある戦艦艦娘の艤装を搬入した。中口径主砲で制圧できなくとも、それを使えば一騎当千の戦力になりうるだろう」
「素体の艦娘がいないのにどうやって運用するのよ?」
「考えても見ろ。じゃあ何故、艦娘がいない連装砲が暴走していると思う?」
言われてみれば当然だ。目下大暴れしている秋月型の連装砲たちはそもそも配備前で、AIの立ち上げすら棚上げだった状態の艤装だ。言い換えれば、組み上がっていないパソコンにコンピュータウイルスを流し込むようなものだ。人間の病気と違って、それでは効果は生まれない。
連装砲を起動し、そしてこの殺戮命令を下す存在が必要なのだ。いきなり暴れ出したわけではない。
「Верныйに秋月型の艤装が使わせる計画が持ち上がった時点で、可笑しいと思わないか? 本来運用を想定しない規格外の装備を運用できる目途は立ってるんだよ」
「……少佐、まさかとは思いますけど!」
「落ち着け明石、俺は別に艦娘が犯人だとは言ってない。ただ艦娘
厳密には連装砲をコントロールするメインシステムだがな。そう言う伏宮。連装砲だけでは動かない。ならばどうすれば良いか。最初からコントロールする側の艦娘が奪われた、という方が正しくないだろうか。
「じゃあ一体誰が……」
「だいたい目星はつく。艤装のコントロールが技術的に可能であるのが、実験艦隊には周知の事実になっている。だがそれはまだ新しい技術だ」
「つまり首謀者は身内であり、艦娘の艤装の技術革新に関して理解が深い奴ということかしら?」
「情報が少なくて、仮定にすらならんがな。だが同じ手を使って、Верныйに大口径主砲を使わせる。空母艦娘だって41cm砲を運用できたんだ。ノウハウは既にある」
例えば連装砲のシステムに組み込まれているのは、空母艦娘による艦載機のコントロール技術がベースとなっている。その操縦に明るい艦娘であれば、楽に運用できるとも言えよう。
「つまり、艦娘の誰かが人質に捕られているのは可能性が高い。まぁ、明石の言うとおり艦娘自体がテロの首謀者である可能性は否定できないが」
「とりあえず、その子を奪還出来れば自体は収束するってことね。あーもー嫌になる。
「お前は憲兵隊だろう? 中佐殿」
菊澤のぼやきに伏宮が律儀に返す。それを半ば鼻で笑うように返す菊澤。
「今更陸海派閥の話をしても仕方ない。ヴェル、そっちは?」
無線の
《Bの32グリットで深雪と一緒に
B地区32グリットと言われ、地図と照合。被害報告と照らし合わせながら経路を算出する。
「ま、耐えて頂戴。今は時間が惜しい」
《わかってる》
「次目標はB地区28番グリット、流れ弾に気をつけなさいよ、隣の29番の地下は揮発油タンクだ。中身は目一杯に詰まってるはずだから急激な大爆発はないはずだけど、穴あきチーズにされるとコトだよ」
《了解。なんでそんな海沿いにタンクを置くかな海軍は》
「君の古巣でしょ。海さんに聞いて頂戴」
半ば茶化すようにそう言えば、Верныйはどこか寂しそうに返す。
《ただの愚痴だよ》
「知ってる」
《ならいいよ。
「どうした」
Верныйが緊急と言うぐらいだ。菊澤はかなりの事態を想定する。そして案の定『かなりの事態』が報告されてきた。
《人が現在進行形で襲われてる。緊急戦闘開始、離脱させる》
「ヴェル、最後に一つ。そこを制圧したら第七倉庫に急行しろ。伏宮君がとびっきりのプレゼントを用意してくれるそうだ」
《お酒なら嬉しいんだけどね。
「それで? 伏宮少佐。私は結局なにすればいいんですか?」
「現状なら、司令部施設棟で待機……と言いたい所だが、仕事が一件増えた。横須賀からのスクランブルコードで、無事なE地区保管庫の艦載機を遠隔操作するらしい。おやっさんもよく無茶やるよ。だからこそ、佐世保基地と同化してるお前の艤装が必要になってくる。リソースを全部空母艦娘に貸してやれ」
ポケットにねじ込んでいた伏宮の携帯端末は、何とか無事だったらしい。コールに出た伏宮が驚嘆したような笑い声を上げたのが、先程の事だった。
「各泊地が大規模作戦中なのに、横須賀に待機してる空母って……あぁ、コンバート改装中の戦艦がいましたっけ。それにわざわざ横須賀の特実隊司令のサイン入りって……この短時間でよく仕上げましたね。少佐」
「書類を誤魔化すのだけは得意な准将様だから、問題はないさ。あの人ならな。とはいっても、問題が解決したかという訳ではない。高射装置が健在な現状での航空攻撃は効果が薄い。だからこそ、陸上部隊による飽和攻撃との連携で釘付けにする必要がある。フルオートで20分間、弾数換算で350発だ。艦娘の補助なしでは、砲身の交換すらままならん連装砲だ。腔発させるのが、一番手っ取り早い。怖るるに足らんな、人工知能さえなけりゃだが」
「その人工知能がクラッキングされてるから、大問題なんじゃないですか?」
「俺もそう思う。まさか、脳味噌が白紙の人工知能の殻を全部乗っ取られるとは想定外だった」
AIを組み込む演算領域へ、艦娘の思想のコピーレントが挿入されている状態といった方が正しいだろうか。どの道、暴走していることに変わりはないが。
「だよねぇ。お陰様で、私たちは擦り傷切り傷と全身打ち身状態だ」
「日頃の行いが悪いんじゃないのか?」
「ナレッジワーカーは口だけは達者ね。二階から同期が飛び堕ちてくるシーンを再現する?」
「どこぞの天空の城じゃあるまい。俺なら無言で叩き落とすが?」
「……減らず口をまだまだ叩きあいたいけど、ここまでね。次波がくるよ。明石ちゃんはそのお荷物を抱えてでも良いから、そろそろ行くよ。とっとと、基地の通信設備を奪い返しに行こうじゃないか」
「人を勝手に荷物扱いして、俺の部下に命令するなよっ! 憲兵中佐殿よ」
「事実でしょ? 一般的な小銃やらの扱いしか、日常訓練に課されない、事務佐官様にはお似合いよ。女の子にお姫様抱っこされるんだから役得でしょ!?」
「嬉しそうにしてんじゃねぇ! 菊澤。男にとっちゃトラウマものだぞ!?」
何処に行けば良いと問う菊澤には、一言施設棟とだけ伏宮が告げる。結局明石とは二人三脚状態で妥協したらしい。
「でも、不正アクセスの検知は確認できなかったんでしょう。どうして施設棟を目指すんですか?」
「瓦礫の中でも、ちゃんと調べられることは調べていたさ。まぁ検知出来なかったのが功を奏するしてるだけだ。わざとノーガードな領域のファイルに正規の履歴が残ってた。よほど犯人は焦ってたらしい。鳴っている警報だけ切り続けて、こっちの追及に対して功性防壁を張るのを優先した」
「つまり、正規と不正アクセスのタイミングがほぼ同時刻だったってことですか?」
「可能性の話だがな。だが、奴が侵入する為に接続した場所は特定できた」
伏宮が菊澤の端末へ転送したポイントには、港内各所の電子端末の接続履歴が。そして、最初の警告が鳴ったマルロクヒトフタ。その時間に該当文書へアクセスを試みた接続元が、一覧で表示されている。
「全部で18か所……って、正気ですか!? まさか全部虱潰しにローラーな訳ないですよねっ!?」
「そのまさかだから施設棟に走ってんだろ! 喜べ明石、その内に候補の13か所も存在してるんだからなっ」
「結局、総当たりじゃないですかぁ」
無差別攻撃後の市街地な様相。ただただ燃える軍港を横目に、三人はエントランスへ滑り込む。窓ガラスの破片が散乱する廊下を軍靴で殴りつけ、該当する部屋と言う部屋を調べ尽くすが見つからない。1フロアが終了した時点で、伏宮が奥歯を噛み潰すのと明石が溜息をつくのがほぼ同時だった。
「ねぇ、伏宮少佐。菊澤中佐。なんで、こうも人っ子一人いないんですかね? これじゃ私たち火事場泥棒みたいですよ」
「現在進行形で基地燃えてんのに火事場も糞もねぇだろ。すれちがった消化班には感謝だな。だいたい、自律駆動式砲台の征伐で戦闘用員は全部持ってかれて……」
「そういう意味じゃないんです。この施設棟に非戦闘員ですらいないんですよ? 本来であれば、行方不明者に備えて捜索隊ですら派遣されるはずですけど」
「マップを見てみたが、火災で要避難区域だぞここ。そもそも
報告通りなら、本来燃えているはずの施設棟。しかし、伏宮たちが回った限り煙すらでていない。仮に人払いのための口実であるならば、納得がいく。クラッカーは施設棟から目を逸らせたいのならば、目的はなんだ。誤報による消火班の到着も考えれば、一時間稼げれば良い頃だろう。
表では自律駆動式砲台が、裏では誤報による避難誘導が。戦闘区域と延焼区域を繋げていくと、ある一点が無警戒であることに気付く。ここ佐世保基地において電子機器の専門施設ともいえ、情報処理の中枢である。
「佐世保中央司令部施設……。自律駆動式砲台のクラッキングからはじまって、コントロールセンターに目が行くのは当然だ。それにこの施設棟からは、地下に直通連絡通路があったよな!?」
「急ぎましょう少佐! 目的はなんであれ、佐世保基地のデータバンクまで侵入を許したら不味いです!」
慌ただしくし始めた伏宮たちを、菊澤が手で制する。何事かと問うた伏宮に対して、手元の端末をちらつかせる。
「どうやら、事態に進展があったようだ。犯行声明だよ」
多くの一般人が使う動画サイトに、生中継で放映されているらしい。そこには、この場の三人も見知った顔が映されていた。