封印
とある遺跡の前に2人の男女。そしてその奥の祭壇の前に1人の男が横たわっていた。
「本当にいいのか。此奴はまだ生きている。それなのにこのまま眠らせるのか。」
「構わない。それに今の世界に此奴の居場所はない。もし生きていることが分かれば此奴は殺される。ならば眠らせておいた方がいい。」
遺跡の前に立つ黄緑の髪の少女の問いに黒髪の少年は応える。
「確かにな。だがそれなら潔く死なせるべきだと思うが。」
「それはできない。俺も彼奴らも此奴が死ぬことを望んでいない。お前もだろ?」
「まぁな。だが此奴は必ず再び目覚めるぞ。封印とは時が経つにつれその効力が弱くなる。…数百年の時を越え、この時代に目覚めたように…」
「そうならないに越したことはないがその時が来たなら此奴はその時代の救世主になるだろう。形はどうあれ此奴は俺を…俺たちを救ってくれたのだから。」
そう言い黒髪の少年は横たわる銀髪の少年の頬を撫でる。その眼は優しげだった。
「皮肉なものだ。此奴は自らの死を望んでいるというのに世界がそれを許さない。」
「世界が?」
「そうだ。世界に意思があるのならそれは生者の願いであり祈りに他ならない。例え9割の人間が此奴の死を望んでも残る1割の人間が此奴の生を望むのなら世界は此奴を死なせはしない。」
「此奴の生を望む私達からすればそれは祈りであり願いだが此奴からすればそれは質の悪い呪いでしかない。」
「そうだな。俺たちを生かすために自らの命を差し出した此奴を俺たちは延命させた。それがこの世界に害をもたらすこともわかっている。」
「それでも此奴が…此奴だけが死ぬことを許すことはできなかった。誰にでも幸福を掴む権利はある。だから…此奴にも…"ライ"にも幸せになってほしい。」
「傲慢だな。それは我儘だ。お前の此奴を生きながらえさせようとする奴等の我儘だ。此奴は…ライは自ら生き長らえることを望んでいなかったのだから。」
「わかっている。だがこれは俺たちからライへの
「それが傲慢なんだがな。だが私も同じだ。此奴は十分に苦しんだ。苦しんだ分だけ此奴には幸せになる権利がある。」
「C.C.•••」
次は黄緑の髪の少女が銀髪の少年の頬を撫でた。
「時間だ。ルルーシュ。始めよう。」
『ああ。」
黒髪の少年が返事を返した直後祭壇の下に描かれた"サークル"が光り輝く。」
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが願う。祭壇に眠りし者の封印を。そして時が来た時の復活を。」
輝くサークル内で黒髪の少年は告げる。彼の瞳に"真紅の鳥の紋様"を浮き彫りにさせて…
サークルからの光が収縮していき祭壇に眠る少年の胸に光の球体となり入り込んだ。
「上出来だ。これでライは封印の眠りについた。あとは私が奴をCの世界に連れて行けばライが眠りについた状況に戻る。だが良かったのか?」
「何がだ?」
「お前が願ったギアスは恐らくライ本人の封印だけでなくライの記憶まで封印したことになる。最悪、目覚めた時には記憶を失った状態かもしれん。」
「構わない。俺たちがライと出会うことは二度とない。なら俺たちのことを忘れて目覚めた世界で新たな仲間を作り絆を育んでいってほしい。」
「それにこれは以前に俺たちがされたことだ。仕返しさせてもらっても文句は言えまい。」
「そうか。まぁ此奴のことだ。どうにかして思い出すだろうよ。それに渡すべきものは既に渡してあるのだろう?」
「まぁな。役に立つかは分からんがきっとライの助けになる。」
「では行くとしよう。最後の別れは済んだな。」
「ああ。」
黄緑の髪の少女が祭壇の奥にある"扉"に触れる。
直後、扉に描かれた"鳥"の紋様のようなものが紅く輝きを放ち、大きな音を立てて開いた。
「じゃあ行ってくる。本当にそこで別れていいのか?」
「ああ。この先に行くと未練が生まれてしまう。」
「強情だな。」
黄緑の髪の少女は黒髪の少年にそう吐き捨て、銀髪の少年を抱きあげ扉の先へと進む。
「サヨナラ…ライ。」
その後ろ姿を黒髪の少年は涙を流しながら、小さな声で別れの言葉を口にした。
この日、
1人の咎人が封印の眠りについた。
封印とはいずれ解かれるもの。
封印が解かれ、咎人が目覚めた時、
彼の眼には何が映るだろう。
美しき天国の世界か…
荒廃した地獄の世界か…
その答えは…
咎人の封印が解かれた時にしか分からない。