「各自、周囲を警戒して。目的を達成したとはいえ他のアラガミが襲ってくるかもしれないわ。」
本日も神機使いの仕事であるアラガミとの戦いに勤しむライ達、第1部隊。今日はライ、サクヤ、ソーマ、コウタの全員第1部隊所属の面子でヴァジュラの討伐を行なった。場所は『贖罪の街』
サクヤの指示で周囲を警戒するライ達。だがアラガミの姿はなく、警戒を解く。
「どうやらいないようね。ふぅ…みんなお疲れ様。」
「あー疲れた。」
「大丈夫か?」
座り込むコウタに手を差し伸べるライ。
「ありがとう。でもそれはお前が1番掛けられる言葉だと思うぞ。」
「そうか?」
「コウタの言うとおりよ。ヴァジュラの引き付け役にソーマの援護、さらに臨機応変に動き回っての撹乱。私達の中では1番体力を使ってるわ。」
コウタの言葉にサクヤが同意する。
今回の任務でのライの役割はアラガミを引き付けての撹乱。
その隙にコウタとサクヤが狙撃で援護しソーマの一撃で倒す。
とはいえ第1世代の遠距離型神機はオラクルが切れると射撃ができない欠点があり、その間にはライが射撃の援護にまわる。
遠近切り替え可能の新型神機を扱うからこそその運用性を発揮するもその分使用者の負担が大きくなるのは自明だった。
「あまり無茶はダメよ。戦術的にはよくてもそれで貴方が危険に晒されるのは誰も望んでないわ。」
「なら、足手まといにならないように強くなるしかないだろ。」
心配するサクヤの言葉に黙っていたソーマが口を挟む。
「結局生き残るのは強い奴だ。ゴットイーターもアラガミもな。其奴に負担を掛けてると思うのならそれはお前らが弱いからだ。」
「俺は少なくともコイツをお前達よりも信用している。」
言うだけ言って歩き出すソーマ。
「珍しいわね。ソーマが誰かを褒めるなんて。」
ソーマの言い分を叱咤と知っているサクヤは意外そうに呟く。
「でも一言多くないですか?まるで俺たちを蔑ろにしてるようで腹たつ。」
「いつものことよ。でも壁を作っても作戦には従順だから。」
「なるほどツンデレか。」
「聞こえてるぞ。」
「なんやかんやで仲良いですねこの部隊。」
ライ達がそんな会話をしてる頃…
「アリサ。後方の警戒を頼む。」
「了解。」
リンドウとアリサの2人も贖罪の街に降り立っていた。
しかし今日のアリサは体調が悪いのか顔が青ざめていた。
「元気がないが大丈夫か?」
「いえ…大丈夫です。」
「そうか。ならいいんだが。」
不調に見えるが本人が大丈夫と言うならとリンドウは贖罪の街の廃墟群へと向かう。
……この選択が最悪だとは知らずに…
「え?」
「リンドウさん?どうしてここに?」
「お前ら」
廃教会近くで鉢合わせる第1部隊の面々。本来同地区に緊急を除いて神機使いのチームが複数来ることはない。
アラガミは広範囲に存在するため一箇所に1チーム以上の神機使いが存在しても効率が悪いからだ。
「どういうこと?なんで同じ地区に……」
「詮索は後にしよう。俺とアリサは中の捜索。お前達は外で見張りを頼む。」
サクヤの疑問を遮り、リンドウは指示を出す。
その指示通りライ、サクヤ、ソーマ、コウタは廃教会の出入り口を守るように見張りをし、リンドウとアリサは中へと入っていく。
それからすぐだった。
アリサの悲鳴と同時に…
瓦礫が崩れる音がしたのは…
同時刻…
とある男の口角が吊り上がった。それを見た者は誰もいない。
崩落の音が聞こえ、ライとサクヤが廃教会内に入ってくる。
そこには膝から崩れ落ちるアリサの姿があったがリンドウの姿はなかった。
「貴女!!何を…!!」
「パパ…ママ…違うの…私…」
サクヤの叱責が聞こえてないのか。焦点の合ってない視線でうわ言のような言葉を繰り返すアリサ。
同時にソーマとコウタもヴァジュラの変異種のアラガミに囲まれていた。
「サクヤ!!お前達はアリサを連れてアナグラに戻れ!!」
『サクヤ、お前がが指揮を取れ!!ソーマは退路を開け!!これは命令だ。」
「嫌よ!!私も残って戦うわ!!」
「ダメだ!!アリサを連れてアナグラに戻れ!!いいな?全員必ず生きて帰れ!!これは命令だ!!」
「サクヤさん!!このままじゃ共倒れだ!!行こう!!」
「嫌よ!!リンドウ…リンドウ!!!」
いつもの冷静さを失ったサクヤの腕をコウタが無理矢理引っ張って連れて行く。
「アリサ。行くよ。」
「パパ…ママ…違うの…」
「……ごめん。」
うわ言を言うアリサに手刀を喰らわせアリサの意識を刈り取るライ。そのままアリサを背負い逃走する。
その後、無事にアナグラのヘリに救助され事なきを得た第1部隊。
しかしアリサは医務室に収容され、サクヤは茫然自失と精神面の衝撃が大きかった。
しかし特効薬となるであろうリンドウはこの日アナグラに戻ることはなかった。それどころか腕輪の反応も消失した。
即ち、リンドウの行方不明。
それは極東支部随一の実力者であり極東支部の神機使いの精神的支柱を失ったことと同義だった。
そして…
この事件が後に大きな事件に繋がる布石となる。