目を覚ますと広がるのは見慣れた景色だった。
「ここは…」
「アナグラですよ。……まぁいつものアナグラとは違いますが…」
「……レン」
「まさかあんな行動をとるとは驚きましたよ。……でもこんなことが起こるなんて…」
起き上がると隣にはレンが呆れたような表情をしてライを見ていた。
「ここは貴方が
「……記憶の世界」
「ええ。でも感応現象にはこんな力があるとは…本当に未知の力ですね。感応能力とは。」
「前にサカキ博士から感応能力が高いとは言われたことがあるけどその意見には同感だよ。」
「……貴方は本当何者なのでしょうか?」
「高い感応能力を持つゴットイーターじゃ納得できない?」
「……納得できないですがそれしかないですよね。」
「さて、雑談はこれまでだ。リンドウさんの記憶の中らしいけどこれからどうすればいい?」
話は終わりとばかりにライはレンに問う。この世界に関してはレンの方が詳しいとライが判断したからだろう。
「とりあえずリンドウを探しましょう。」
「リンドウさんがいるの?」
「います。ここはリンドウの記憶の中ですが
レンに言われるままにアナグラ内にいると思われるリンドウを探すライ。
「それにしても“生きることから逃げるな”…ですか。」
ふとレンはリンドウに向かって叫んだ言葉を呟く。するとライは硬直した。
「貴方があんなこと言うとは正直意外でした。」
「思い出させないでくれ。我ながらなんであんなことを叫んだのか…」
「後悔してるんですか?」
「……してる。」
「いい言葉だと思いますけどね。」
「死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。隙があったらぶち殺せ。」
「リンドウの教えですね。」
「その教えを凝縮したのが“生きることから逃げるな”だったんだよ。」
「我ながら自然に叫んでたことだけど落ち着いて考えるとそうなるんだよね。」
「本当になんて烏滸がましいことを言ったんだか…」
「烏滸がましい…ですか?」
「僕にとってはね。僕は曖昧な覚悟でゴットイーターを務めているから。」
ライには他のゴットイーターのように何かのためにという覚悟は持ち合わせていない。
コウタなら家族のため、前のアリサなら親の仇討ちといった絶対に生き残るという
だがライにはそんな大層な覚悟は持ち合わせていない。
アラガミとの闘いも何もせずに殺されるよりは今できることをすべてやってそれでダメなら死んでも仕方ないと割り切っている。
人はどうあっても死ぬ。ならば後悔しないようにしているといえばいいのだろうか。
「…生きることから逃げるな…生きることに執着がない僕には烏滸がましい言葉だよ。」
そう言ってライは弱弱しく笑った。