ライは暗闇の中で目を覚ました。
夜の黒よりも真っ暗闇で何も見えない。だが何故か心地良さを感じたライ。同時にこの暗闇が夢といった現実ではない世界とライは察した。
「懐かしいな…確かこの後にアナグラで目覚めたんだっけ?」
ぼんやりとした頭だがかつて此処にきた記憶を思い出す。それはライが“人”として覚醒した時だった。
ならばじきに目覚めるだろうとライは慌てることもなく何も見えない暗闇に身を委ねる。
……いつまでそのままで身を任せていただろうか。
ライの周りに“色の付いた光を放つ球体”が複数現れた。
「これは…」
現れた色付いた球の1つに触れる。その瞬間、ライの脳裏に映像がフラッシュバックした。
それは“生身で戦い続ける自身”の姿。アラガミではなく人間を殺し続けるライ自身の姿。
それはライが一度棄て、否定し、逃げ出し、忌み嫌い、そして“受け入れた”ライがライたらしめる
”何か“を守るため、戦い続け敵を殺しその身を血に染めて自身の心と精神をも
「……ああ。」
自身が何者だったか取り戻したライ。そして別の球体に触れる。
再びフラッシュバックする。
次の映像は”テロリスト“として戦う自身の姿。
KMFに乗り込み、戦い、”国の解放“を目指す。
次の球体に触れる。
次は”軍人“として戦う自身の姿。
テロリストの時と同様、KMFに乗り込みテロリストと戦い治安の維持を目指す。
次の球体は”学生“として平穏に暮らした自身の姿。
脳裏に映像が浮かぶ度に自身が満たされていく感覚に陥るライ。
それは
そして最後の球体を触れる。
観衆と囚人に囲まれた状況で“仮面の英雄”と剣で斬り結ぶライの姿。
一瞬の隙をつき、銃で仮面を撃ち抜く。
仮面は割れ、姿を現すかつて同胞から“裏切りの騎士”と侮蔑された“茶髪の少年”
「先の戦でくたばったと思ったがその名の通り不死鳥の如く蘇ったか。」
「運良く拾った命を再び死地に晒すとは死にたがりも大概だな。望み通り今度は2度と蘇らぬようその身をバラバラに斬り刻み殺してやろう。」
茶髪の少年を侮辱し宣告するライ。銃を放り捨て言葉通り剣で少年を屠らんと動き出す。
そこからは一方的だった。
少年は切り傷が増えていく。ライと少年では圧倒的にライの方が剣の扱いが手慣れていた。
そしてライが少年を追い詰めた次の瞬間…
一発の銃声が聞こえた。
「……カハッ…」
銃声の後、ライはよろめく。彼の胸辺りは真紅に染まる。
先程の銃声による銃弾はライの胸部を捉えていたのだ。
この大きな隙を当然ながら少年は見逃さない。
少年の剣はライの
「……お見事。」
少年にもたれかかるようにライは倒れ、小さく称賛した。
掠れる声でライは少年に語りかける。
「……撃ったのは?」
「ナナリーだ。運良く君の銃が近くに落ちてきたみたいだ。」
「…そっか。拘束されているからルルーシュじゃないとは思ってたけど意外だったな。」
「ライ…何故このようなことを…」
「……許せなかった。」
「……え?」
「……許せなかったんだ。平穏に暮らす未来を生き続ける自分自身が。未来を全て他人に押し付けて楽になろうとしている君達が。」
「……“
「……これが君たちの
「ライ…」
「……世界は残酷な程に純粋だ。今此処で
「その残酷な世界を導くのが
ライから語られるのは罵詈雑言。そして
「……最期に
「……生きろ。良いこともある悪いこともあるだろう。楽しいことも苦しいこともあるだろう。それでも生きて生きて生き抜いて…生き苦しみ続けろ。そしてやりきってから死ね。」
「……その
「……またね。
ライの遺言を聴いた少年は心臓を貫いている剣を引き抜いた。当然支えを失ったライはその場に崩れ落ちる。
衣服が真紅に染まる。ライの命の刻限が終わるのはそう時間は掛からなかった。
最期にライの耳に響いたのは…
……観衆の歓喜の喝采だった。
そして薄れゆく意識の中、最期にライの眼が映したのは……
広大に広がる真っ青な大空だった。
「っ……」
「……あの状況でも生き永らえたのか…いや、強引にでも生かされたか。」
死ななければならないと事を起こしたのになんだかんだで生きている自身にライは自嘲する。自身の改造された肉体の賜物なのかそれとも…
……意地でも生かそうとした
「ジェレミア卿は…羨ましいな。役目を果たして逝きましたか。」
椅子に座ったままその生涯を閉じたジェレミアに優しく問いかけるライ。
「いつから此処で僕を待っていたのかは分からない。だけど僕が必ず此処を訪れると信じていた。いや、僕が此処に辿り着くように仕向けられたか。」
ライがジェレミアと出会うのは数十年前から仕組まれていたのだろうとライは考える。恐らく希望的観測だっただろうが
それはある意味ではライへの一つの信頼とも言えるのかもしれない。
「お!!いたいた。」
「リンドウさん。サクヤさん。」
「通信が繋がらなかったけどどこにいたの?」
「すこし電波が悪い所にいたのですみません。」
「そう。まぁ無事で良かったわ。」
地下から戻りリンドウとサクヤと合流したライ。
「ここの土、盛っているけど何かあった?」
「はい。遺体がそのままだったので供養として。」
「……そう。」
「形が残っているがアラガミの攻撃で結構ボロボロになっているな。それでも人類の避難所としての役割を果たしてたんだろ。」
「そうね。広いし噴水もあるしとても優雅な学校だったみたいね。」
「そうですね。とても良い場所でしたよ。……眩しいくらいに。」
「……え?」
「……さて、そろそろ迎えが来る時間だ。俺たちも帰ろうぜ。
ライの返事にサクヤが反応するより先にリンドウは遮るようにそう言った。
こうして初のトウキョウ探索は終わり、ライとリンドウ、サクヤの3人はアナグラへと帰投したのだった。