剣と魔法のゆるーい学園生活・・・に、なるといいなぁ・・・   作:rikka

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6.(色物が)揃ったよ! 全員集合!

「やっぱり、あの子でしたか」

 

 ゲイリーは、薬草や薬品を使う事で矢に付加効果を持たせてひたすら撃ち込むという、遠距離からの嫌らしい戦いを得意とする生徒だ。

 ほんの数回、矢を打ち込む作業を繰り返すだけで、ゲイリーはあのワームを無事に捕獲した。

 大した手際だが、普段からもっとああいうところを見せればいいのにと、スーツの女性は心から思った。

 

(もうちょっと働きさえすれば、人気が出ると思うんだけどなぁ……あの子)

 

 手早く周りの武装した学生に指示を出し、ワームを拘束、運搬を指揮する姿を見て、女性はますますそう思っていた。実際、普段髪は伸ばしっぱなしのボサボサで身なりに無頓着だが、顔はまぁ普通なのだ。

 

「あ、あの! あの人の事知ってるんですか!?」

「え、えぇ? まぁ、一応」

 

 一方パルフェも、思いがけない姿を見つけて僅かに動揺する。

 知っている人から話を聞けるのならば、是非聞いておきたかった。

 あまりに真剣な表情に女性は首をかしげるが、んんっ、と軽く咳払いし、

 

「実は私、15エリア担当の役場(アドミニ)職員なんです。彼は、まぁ地味に15エリアの有名人というかなんというか……。名前はゲイリーさん。見ての通り、弓を得意とする学生です。実力的には中堅……と言った所ですかね。他にも色々と出来る人ですけど……」

「有名って、何かした人なんですか?」

 

 パルフェは、先日の事があるのでどうしても偏見じみた目で見てしまう。

 

「何かしたと言うか……何もしない人というか……」

「?」

「悪い人じゃないんです。機転も利くから能力はあるし、可能な限りは助けてくれますし、ただ……」

「ただ?」

 

 パルフェが聞き返すと、女性は少し口をモゴモゴさせ、

 

「……この街一番の怠け者なんです」

 

 思いがけない、たった一言の説明にパルフェは目を白黒させる。

 一方、それを口にした女性は、後悔するように宙で頬杖を付くように拳を頬に当て、

 

「えぇ、ですが、その……パルフェさんが出来るだけ安全な生活を送りたいのでしたら――」

 

 

 

 

 

「彼、オススメですよ?」

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

「さぁさぁ寄ってって! 滅多に手に入ることのないデザート・マンモスの干し肉! 通常の市場なら100ミールで6000ダリーはする代物が、今ならたったの2000ダリー! 味を付けているからそのままでよし! お湯で煮込めばスープになる! さらに疲労回復の効果もある! 過酷なクエストのお供にどうぞー!」

 

 普段から門外広場の中でもっとも活気のある場所として知られる露店スペースが、今日はことさら活気に満ちている。正確には、つい先ほどから。

 

「やりましたラヴィさん! もう売上30000ダリー行きましたよ!」

「驚嘆。商学を履修しているの?」

「いえ、新入生です。これは……村に来ていた行商人さんの真似をしまして……」

 

 もっと正確に言うなら、商学を希望するスタイルのいい赤毛の新入生と、美食の道を進むスレンダーな剣士という異色の女生徒コンビが生まれてからだ。

 

「おう、ラヴィニア! いい売り子を見つけたじゃねーか!」

 

 隣で露店を開いている学生がラヴィに声をかける。彼女がたまに開く露店が閑古鳥なのをよく知っている学生だ。

 

「肯定。非常に助かる」

 

 普段ラヴィは一人で露店を開いている。そのため、当然ながら店番に専念する必要があった。

 だが、手伝いが一人いるだけでかなり違う。

 今ラヴィは、売れ行きの少ない食材を少し使って試食品を作っていた。エリーの提案だ。

 普段のラヴィならば、日持ちして一番美味しいと思う物を作るだけだった。

 

「でも疑問。レーシー・ウッドが全然売れない。一番のオススメなのに」

「というか、ラヴィさんの商品は全体的に高すぎるんだと思います。普通の干し肉だと、4ケタもいきませんよ」

 

 普通の家で使われている干し肉など、せいぜい500~600ダリーと言った所だろう。

 なお、レーシー。ウッドの枝の相場は、一束6000~8000ダリー。普通の学生ならば、もっと大量に買える食糧か装備の方に費やす金額である。相場よりも多少安く値段を設定しているとはいえ、まったく売れる気配がない。

 少し安く買いたたかれるが、マーケットに売り付けないと持って帰るハメになるだろう。

 

「最初っからこういうお店って形ならともかく、商品も商人も毎日入れ替わる露店だと、こういった物を買うお金を最初っから持ってきてない人が多いかと」

「……じゃあ、私の持っている食材を大量に売る事は出来ない?」

「うーん、どうでしょう? そういう知識はないんですけど」

 

 エリーは、たまに村を訪れていた真面目な行商人と良くしていた、商売に関する話を思い出す。

 

「こういう露店では、やっぱり高い物は売れにくいんじゃあ……。それに、さっき聞いた話だと、この門外広場の露店には、クエストに関わる実用品がよく売れるらしいですし」

 

 そう聞いていたから、先ほどからエリーが強く宣伝しているのは、日持ちがして腹を満たせそうな肉類やキノコ類の燻製や魚の干物などの乾物系である。

 

「……じゃあ、最初っからそういう店だと分かってれば、良く売れる?」

 

 ラヴィは、別に稼ぎたいと思って露店を開いているのではない。自分が美味しいと思う物が、広まっていってほしいと思っているのだ。

 相場より少し低く売っているのはそのためでもある。

 

「た、多分? といっても、そういうお店を持つ手段を知らないんですけど」

 

 そう、この街に来たばかりのエリーは知らない。

 だが、ラヴィは知識として知っていた。

 

「……クラン・ショップ」

「なんです、それ?」

 

 クラン、そしてギルドや同好会(クラブ)もそうなのだが、一定の評価を受けるとそれぞれが自分の店を持てるようになる。当然、メンバーが好きな物を売れるようになるのと同時に、ダリーを払えば広告を出す事も出来るようになる。

 

「要するに、ある程度実力のあるクランなら、メンバーの好きに出来るお店」

「そんな事が出来るんですか!?」

「クランを設立して、店を手伝ってくれる人がいれば……どうにかなるかもしれない」

「ラヴィさんは、クランに所属していないんですか?」

「……今準備中。まだ、人が足りない」

 

 ラヴィがそう言うのを聞いて、エリーは、確か設立には2人必要だという、どこかで聞いた話を思い出す。

 

「あの、戦闘は出来ないと思うんですけど……大丈夫でしょうか?」

 

 エリーの問いかけに、ラヴィは鍋をかき回す手を止めずに、ゆっくり彼女の方を振り向く。

 

「……いいの?」

 

 エリーの言っている事はラヴィにとって、そしてこの場にいないゲイリーも恐らく望んでいた一言だ。

 

「いや、まぁ……ラヴィさんは面白い人だし、それにメンバーの好きに出来る店って事は、私も関わっていいんですよね?」

 

 エリーは、いたずらっぽく舌を出してウィンクして見せる。同性のラヴィから見ても、その小悪魔的な笑みは、非常に可愛らしいものだった。

 

「……団長は説得できる。というか、説得の必要もないと思う」

 

 なにせ、グレイ・マター1のぐーたら生徒だ。邪魔をするという労力をわざわざ買って出るとは思えない。

 

「エーちゃん」

 

 ほぼ初対面でも容赦なく名前を略すラヴィ。

 片手で鍋を混ぜながら、右手を差し出す。

 

「よろしく」

「はい! こちらこそお願いします! 先輩!」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 これまで、ラヴィは露店で4ケタを超える売り上げを出した事は無かった。

 それが、今回は75000ダリーもの売上を出した。

 ラヴィの無表情が一番のマイナスだったのだが、そこをエリーが補った形になった。

 この75000ダリーは、その成果である。

 

「とりあえず、団長になるゲー君と顔合わせしておく」

 

 手にした紙幣をちょうど半分になるように数え、エリーに渡したラヴィは、二人で門外広場の乗合馬車の停留所に来ていた。ここがゲイリーとの待ち合わせ場所だからである。二人で並んでベンチに座り、

 

「ゲー君……ゲイリー先輩ってどういう人なんですか?」

「……難解」

 

 割とゲイリーに近いラヴィだが、それでもゲイリーを説明しろと言われると難しい。

 基本怠けものだが、変に鋭い時がある。

 弓をそれなりに使い、剣も一応基礎は押さえている。

 薬草や毒に関する知識もそれなりにあり、戦闘の時には足止め、麻痺、毒といった嫌らしい補助を好む癖がある。

 そして、魔法も基礎だけは習得して、友達こそ少ないが変な人脈があったりする。

 

「……有能な気がしなくもない怠け者?」

 

 数秒考えて、ラヴィは自分なりの意見を口にする。

 これでも言葉を選んだ方だというあたり救いがない。

 

「散々な評価だな、おい」

 

 そして、それは本人の耳にも入っていた。

 ちょうど止まっていた馬車の影から、ゲイリーはひょいっと顔を出し

 

「正当な評価。ゲー君、お疲れ」

「おう、とりあえず今度こそ資金は溜まった。農学科の連中とも顔をつないでおいたし結果は上々だ」

 

 今回、ゲイリーが実験農場エリアの警備というクエストを引き受けたのは、普段なら何もないから楽できるから――という理由は9割なのだが、同時にクランのためでもあった。

 クランにくるクエストは多種多様。そして、そういう時に力を借りれそうな専門的な知識や技能をもつ生徒や集団とは、繋ぎがあればある程楽になる。なにせ、本人達が習得したり、勉強する必要がなくなるのだ。

 

「それより、いい知らせだラヴィ」

「奇遇。私もある」

 

 

 

 

 

「「クラン参加希望者を見つけた。(!)…………あれ?」」

 

 

 

 

 

 同時にまったく同じ言葉を口にし、そして同時に首をかしげる。

 そして、これまた同時に馬車の影から、一人の少女が顔を出した。

 

「……パルフェ!?」

「エリーちゃん!?」

 

 そしてこれまた、思いがけない顔がある事に二人の少女が驚いていた。

 傍から見て、通りかかる人達はこう思っているのだろう。

 

 

 

 

――なにやってんだ、あの騒がしい連中は? と

 

 

 

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