知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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奇妙な異変とスペルカードルール

 

 

面倒な事になった……。

 

 

私が、外から来た子達に幻想郷について説明をしていると、

いつの間にか面倒くさそうな妖精がやって来ていて、

この電波塔を我が物にしようと宣言していたのだ。

 

 

妖精は私達を敵視しているようで、今もなお上空で鼻息を荒げているけれど、

今は、妖精にかまって説明を中断したくはなかったので……

 

 

「……今は私が話してる最中よ、順番はきちんと守りなさいな」

 

 

少し力を込めながらそう言って制止すると、

ありがたいことに妖精は大人しくいう事を聞いてくれた。

 

 

……少し、この子達がおびえた様子を見せた気がするのは気のせいよね、きっと……

 

 

そうして、妖精を大人しくさせてから改めて、

私は、彼女達に幻想郷で起こっている異変についての説明を始めた。

 

 

「……今、幻想郷では様々な色に光る巨大な塔が現れた、奇妙な事件の噂でもちきりなの

 

 幻想郷の住人達は、この事件を異変と判断して、

 各々が、事件解決のための行動を開始しているわ」

 

 

「異変……ですか?」

 

結構、幼い割には理知的そうな顔つきをした子が揃っているが

私の言う異変については、予想通り外の人間には分からないようで、

全員、その意味がつかめていないような表情を見せていた。

 

 

まぁ、普通の外来人なら

こちらほど、頻繁には異変と呼ばれる事象と遭遇しないでしょうし。

 

 

……あくまで、普通の状況ならばだけれど

 

 

「……先ほども言ったとおり、この幻想郷は一部の例外を除いて、

 古今東西を問わず、忘れられ幻想となった様々な存在が流れ着く世界なの。

 そこに転がってる唐笠お化け、向こうで実物は見たことなくても、

 名前くらいは聞いたことあるでしょう?」

 

 

「……そうなんですか?」

 

 

あからさまに日本人とは思えない金髪の男の子には、

流石にわからなかったみたいで、他の子に尋ねているけれど

 

 

「まぁ、アニメや漫画などで、よく題材にされますから

 そういった題材を好む人は多いですし

 ただ、中身が女の子というのは聞いたことありませんけど」

 

 

間を入れず、黒髪の女の子がその疑問に答えてくれた。

 

 

中身に関しては……まぁ、そこはそれってやつね、

こちらにも、いろいろと事情というものがあるから。

 

 

「……そして、流れ着いてきた幻想の内、特に力のある者は、

 時に己の存在と力を誇示したり、また時には気まぐれで奇妙な事件を起こす。

 その力ある者の起こす事件を、幻想郷では異変と呼んでいるわ。」

 

 

「その異変が起こると、どんな事が起こるんですか……?」

 

気になる所があったのか、髪を両側で束ねている子が異変について尋ねてきた。

 

そうね……異変を起こす者は、どれもプライドが高いから

他者のマネ、二番煎じをすることは無いけれど……

 

 

「ここ最近の物だと、郷が赤い霧で覆われたり、冬が何時まで経っても終わらなかったり、

 夜が明けず、満月が何時までも同じ位置にとどまっていたり……そんな異変が起こったわ

 ……ね、立派な異変でしょう?」

 

 

「確かに、そんな事が起こったらニュースになるような事件ですね」

 

 

異変の具体例を説明すると、ふんわりとした子が私の説明を肯定してくれた。

 

だけど、髪を両側で束ねている子は、思う所があるらしく

考える風な様子をして……

 

「でも、私達の近くでも最近そんな感じの不思議な現象が起こったっていう

 ニュースを見た覚えがありますよ、

 2年くらい前から、偶に起こる感じで……」

 

こんなとんでもない事を言い出したのだ。

 

え……ウソ?

 

偽りを言っているようには見えないけど

 

外では、そんなに前から異変が起こるようになったのかしら?

 

 

「そうかな……? 私、聞いたことないけど……」

 

 

「なのはちゃん、それってどのような事件ですの?」

 

 

私が驚いていると、ふんわりとした子と黒髪の子が

その事件について、言い出した子に尋ねると……。

 

 

「確か……どこかの小学校が運動会の日に、花びらで人が埋まったとか

 ペンギンみたいな大きな滑り台がひっくり返ってたとか

 春なのに子供がすっぽり埋まるような大雪になってたのに

 翌日には、その雪が全部消えちゃったとか……」

 

帰ってきた答えの内容は、こちらで異変と言うにはかなり規模が小さかったけど

確かに外側で起こるとは思えない現象の数々だった。

 

 

 

なるほど、こちらほど規模は大きくないけど、確かにそれは異変ねぇ……ん?

 

 

「そこ、なにか思い当たる節でもあるのかしら?」

 

「え?」

 

 

気が付くと、ショートカットの子と、翼の生えた獣が、

明後日の方向を向きながら、すごい汗を流している。

 

……どうやら、この子達は、その異変の関係者だったみたいね。

 

 

「……ゴメン、それクロウカードの仕業」

 

「えっ!?」

 

 

やっぱり……

 

そのまま彼女は、申し訳なさそうにその外で起こった異変について説明をしてくれた。

 

 

「実際は、カード以外が起こしとる事件もあるんやけど、

 そういや、解決した事件の内容までは話しとらんかったな。」

 

 

ふぅん、カード……

内容から察すると、その子が異変を解決したみたいね

 

 

「よろしければ、今度お二人にもさくらちゃんの活躍を、撮影したビデオをお見せいたしますわ

 ところで紫さん、その異変ですが 起こった後は、いったいどうなるんですの?」

 

 

あら、ちょっと話がずれてしまったわね

それじゃあ、気を取り直して……

 

 

「これまでの異変はあそこの山にある博麗神社の巫女や、

 そのやり方をまねる者たちが、異変を起こす犯人達を懲らしめる事で、

 一応の解決を見せて来たわ」

 

 

「まぁ、さくらちゃんやなのはちゃんみたいな方が

 こちらにもいらっしゃるのですね」

 

 

「同じ……なのかなぁ?」

 

 

……むしろ、私にとっては外で同じような事をやっているのが驚きなんだけど

 

 

まぁ、そちら側の異変とこちら側の異変では、

異変自体の持つ意味は、大きく異なるでしょうから

全く同じと言う訳ではないのでしょうね。

 

 

だけど、どちらも解決されなければならないという点はおなじ、

こちら側においてはなお、異変を起こしている側にとっても……

 

 

「……でも、今回はこれまでの異変とは違う……

 あからさまな異変なのに、幻想郷の中に、

 異変を起こしている原因が見つからないのよ。」

 

 

……そう、巫女をはじめ、これまで幾人も、

あちらこちらで異変解決の為に行動しているけれど、

今回の事件は、未だ解決の糸口すら見つかっていない

 

 

「隠れてらっしゃる……わけではないですよね?」

 

 

「……ええ、先ほども言った通りこちら側で起こす異変は力の誇示の意味もあるし、

 幻想郷の中で、私が探して正体も居場所の検討もつかないと言う事は、

 絶対にありえないわ……」

 

 

もし、異変の原因が幻想郷にあるならばの話だけれど

 

 

「じゃあ、もしかして……」

 

 

 

 

異変に対する説明を聞いて、原因に心当たりがあるのか

ふんわりした子が、何か言おうとした瞬間……。

 

 

「おい! あたいを無視するなー!!」

 

 

周囲に響き渡ったヒステリックな声で会話が中断されてしまった

……もう、これからが肝心な所なのに。

 

 

「いい加減、しびれを切らしたみたいやな。

 短期そうなヤツやから、むしろよくここまで待ってくれたなぁって気もするけど……」

 

 

翼の生えた巨大な獣は、妙な訛りを口にすると、声の主をぽけっとした目で見つめていた。

 

 

「あの子も、妖怪なんですか?」

 

 

「いえ、あれは幻想郷中でよく見かける自然から発生する幻想。

 ……俗にいう、妖精という存在ね

 イタズラ好きだけど、幻想郷の幻想の中では一番弱い存在よ」

 

 

「うーん……妖精さんって、この世界でも

 イタズラ好きの所はかわらないのかなぁ……?」

 

 

ふわっとした子が、まるでどこかで

他の妖精に出会った事があるかのような口ぶりで漏らしたけれど……

 

まぁ、今回は関係なさそうだし

とりあえず、置いておくことにしましょう。

 

 

「あの子……

 もしかして、氷の妖精ですか?」

 

 

流石に、それは見ればわかるみたいね

 

 

「ええ、あれに関しては見てのとおりよ。

 ただ、あれは妖精の中でも特に強い力を持っているから、

 普通の人間ならば、逃げた方が賢明……」

 

 

そこまで言って、私はとあることを思いついた。

 

 

先ほど、この子たちの見立てをした際に、

各々が、強い力を秘めているのを確認できた。

 

この子達なら、もしかしたら……

 

……アレをああして、これをそうすれば……

ちょっと強引だけど、これならなんとか行けそうね

 

 

「……紫さん、どうかしました?」

 

 

黒髪の子が、話を中断したのを不審に思ったのか、そう言って声をかけてくれた。

ちょうど考えがまとまった所なので、私は早速……

 

 

「……ねぇ、提案があるのだけれど……

 あなた達、アレの相手をお願いできないかしら?」

 

 

彼女達に対して、こんな提案をしたのだ。

 

 

「ほえっ!?」 「えっ」 「ええっ!?」 「なんやて!?」

 

 

うん、いきなりこんな事言われたら普通は驚くわよね。

 

ただ一人、黒髪の子は何故か笑顔で目を輝かせてるけれど・……

 

 

「別に、さほど危険はないし、勝敗は気にしないわ。

 とりあえず、命名決闘法(スペルカードルール)を理解する為に、

 まずは一番基本的な方法で、あの妖精の相手をしてほしいの。」

 

 

「スペルカードルール……ですか?」

 

 

まぁ、まずはそこから説明しなきゃならないわよね。

 

 

「では……コホン」

 

 

そう言って、ワザとらしいセキを一つして、

彼女にスペルカードルールに関する説明を始めた。

 

 

スペルカードルールは、幻想郷での揉め事を解決する為の決闘法の一種。

霊力、魔力、妖力……己の持つ様々な超常の力を用いて、

異変を起こしている側は、出題者(ボス)となり、

スペルカードを宣誓し、それに応じた弾幕を展開、

異変を解決する側は、挑戦者(自機)となって、出題者のスペルカードを攻略する。

 

 

勝敗は、出題者側は、挑戦者の戦意を削り切れば勝ち。

 

 

対して、挑戦者側は、出題者側の展開する弾幕に対して、

出題者に一定の攻撃を加える、または一定時間耐えきる。

 

 

このどちらかを達成すれば、スペルカードを1枚攻略した事になり、

最初に宣言した枚数のスペルカードを攻略すれば、挑戦者側の勝ち。

 

 

負けた方は、余力があっても素直に負けを認め、異変からは手を引くのが基本的なルールだ。

 

 

「うーん、なんだかわかるようなわからないような……」

 

 

「なんだか、挑戦者側が圧倒的に不利じゃないですか、このルール?」

 

 

まぁ、異変を起こす側は基本的に目立ちたがり屋ですものねぇ……

 

 

「その代わり、出題者側は絶対回避不可能な弾幕を張ってはダメ。

 弾幕も、美しく展開しなければいけないし、意味のない攻撃もしてはいけない。

 挑戦者側は、規定回数まではスペルカードを使用して、

 現在展開されている弾幕を、除去する事も出来るの。

 

 どれだけ実力の差があっても、きちんと攻略の定石を踏んでいけば、

 必ず挑戦者側に勝ち目がある、それがスペルカードルールよ」

 

 

幸い、どの勢力からもこれまで、

この決闘法に関して、物言いがついたことは無い。

 

今はもう、幻想郷になくてはならないシステムだ。

 

 

「……でも、そのルールって弾幕っていうのが使えなきゃダメなんですよね?

 いきなり言われても、そんなのすぐには使えないし……」

 

 

「私のも、弾幕というよりは光線って感じですし……」

 

 

……確かに、いきなり外からきて、理解できるものでないことは確かね。

 

 

だけど、理解は出来なくても……使う事は可能よ。

 

 

「大丈夫よ、光線も弾幕に混ぜて使う事はできるし、

 ……試しにそこの獣、適当に力を使ってみて」

 

そう言って、金色の獣の方を指さすと、

周囲の子達も、視線を翼の生えた獣の方を向け、

獣は器用に前足の真ん中の指で、自分の事を指さした

 

 

「ワイ? まぁ、別にええねんけど……

 ワイかて、そんな弾幕ちゅう力はしらんで、

 普段は、こうやって火を噴くくらいや……見とれよ」

 

 

そういって、獣が四肢を伸ばして構えて口を開き、

そこに力を集中させ、火を噴きはじめると……

 

 

「ほえーーーーっ!?」「ええっ!?」

 

 

「はんはほひゃーーーーーっ!?」

 

次の瞬間、翼の生えた獣の口から、炎の代わりに色とりどりの弾幕が飛び出したのだった。

 

 

ええ、とっても愉快な光景でしたわ。

 

 

 

 




うーむ、こんな出来で大丈夫かなぁ
基本的に独自解釈の幻想郷・およびスペルカードルール解説になってしまった

なお、ケルベロスが弾幕を吐き出したのは幻想郷の環境自体が
弾幕を作り出すのに適していると解釈したからになります

割と幻想入りとかしてすぐに弾幕・スペルカード使ってるヤツが多い気もするし

しっかり集中すれば、幻想郷でも炎が吹ける感じです

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