知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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今回から三章入ります
こっから、なのはのストーリーから大きくそれる予定です
……二章でも、大概でしたけどね


第3章:強襲、友枝町
身体の真ん中が虚ろになって


 

 

不思議な世界、幻想郷を訪れてから数日後の事……

 

 

ユーノ君から頼まれたジュエルシードの探索に加え、

幻想を加速させている黒幕の探索を

紫さんにお願いされた私達でしたが……

 

 

あれから現在に至るまで特に変わった事は起こらず、

それどころか、ジュエルシードも見つからなくなってしまいました。

 

 

さくらちゃんはなのはちゃん達と力を合わせて、

周囲をパトロールしつつ、必死に探索をしていましたが、

それでも、手掛かりになりそうな物すら見つけられません。

 

 

「まさか、残りのジュエルシードは全部彼女が……?」

 

 

ジュエルシードを見つけられない不安から、

ユーノ君は不安げな顔でそんな言葉を口にしましたが……

 

 

「……いや、それは流石に無いと思うで、

 残りもまだ結構な数やさかい、

 アイツだけで、しかもワイらに気付かれず回収しきるんは無理や

 

 ……それに、全部集めるつもりやったら

 いずれなのはの持ってるジュエルシードも狙うてくるはずやからな。」

 

 

ケロちゃんは、その意見を否定したうえで、

いずれは、なのはちゃんの持っているジュエルシードを

狙ってくるだろうとの予見を立てていました。

 

 

いずれ、あの子とも決着をつける時は来るのでしょうが……

 

 

それにしても、なぜ急にジュエルシードは見つからなくなってしまったのでしょうか?

 

偶然、現在活動しているジュエルシードが無いのか……

それとも、これも幻想の加速の影響なのか……

 

 

とにかく、今はどんな事件が起こっても、

慌てず対処できるように備えておくべきです。

 

 

「あの……だったら、ちょっとお願いがあるんですけど」

 

 

すると、なのはちゃんも何かを考えていたようで、

すぐさま、さくらちゃんにとあるお願いをしてきたのでした。

 

 

「え……!? だ、大丈夫なの……?」

 

 

そのお願いに、さくらちゃんは心配そうな顔をされていましたが、

ケロちゃんは、なのはちゃんの意見に頷き、

ユーノ君も、一緒にお願いしたいと賛成したので……

 

 

今、さくらちゃんとケロちゃんは月峰神社で、

さくらカードを使い、なのはちゃんとユーノ君を特訓しています。

 

 

ここは、友枝町でも特に魔力の集まりやすい場所なので

ケロちゃん曰く、魔法の特訓にはもってこいだそうで……

 

 

そして、私はと言うと……

ケロちゃんの背中に乗って空中から、

さくらちゃんがお二人を鍛えている所を撮影中です。

 

 

「あれっ!? ここ前も通ったのに!?」

 

 

二人を交互に撮影していると、

下から、なのはちゃんの慌てた声が聞こえてきます。

 

 

 

「なのは! その先は行き止まりだよ!

 少し戻ったところを右に曲がって!!」

 

 

すると、少し離れた所からその声に応えるように

ユーノ君がなのはちゃんに道案内をする声も聞こえてきました。

 

 

……今回、さくらちゃんが2人に出したお題は、

『迷』(メイズ)のカードの攻略です。

 

 

どんな手を使っても、迷路を抜け出せたら成功と言われたので、

なのはちゃんは、いきなり迷路の壁を

得意技のディバインバスターで貫こうとしたのですが……

 

 

……でも、『迷』の壁って普通に壊そうとするだけでは、

すぐに元通りになってしまうんですよね。

 

 

さきほどなのはちゃんは、急いで開けた穴を突破しようとして、

危うく壁にぶつかりそうになっていました。

 

 

おまけに空を飛ぼうとしても、壁が伸びて邪魔をされてしまうので、

二人とも、地道に足を使って出口に向かおうとしています。

 

 

観月先生が、月の鈴を使った時は再生しませんでしたから、

ケロちゃん曰く、今のさくらちゃんならば、

壁を普通に壊せるとの事ですが……

 

 

「……いいのかなぁ、『迷』のカード、

 あの時は観月先生が攻略したのに……」

 

 

カードさんは、自分の力を攻略した相手を主と認めるので、

あの時は、観月先生がカードを手にしたのですよね。

その後、すぐにさくらちゃんに渡してくださいましたけど……

 

 

「かまへんって、自分の力でカードに変えたんやさかい。

 ……それにしても、『迷』には流石のあの2人でも手こずる様やな……

 ま、だからこそ特訓になるんやけど。」

 

 

迷路の中は、普通の空間と感覚が違うせいか、

二人とも攻略には、まだまだ時間がかかりそうです。

 

 

「……でもケロちゃん、なのはちゃんの魔法の威力は凄そうなのに、

 なんで『迷』の壁が壊せないのかな……?」

 

 

そう言えば、観月先生が壁を壊した時には、

手にした月の鈴をコツンとぶつけるだけで

壁が粉々になっていました。

 

 

なのはちゃんの得意技、ディバインバスターはピンク色の強そうな光線を放つ技で

実際、威力の方もかなりありそうなのですが……

 

 

何度やっても、壊れたかと思った直後に再生されてしまったため、

最後にはキツネにつままれたような顔になってしまって……

 

 

「なのはの魔法、威力はいいトコ行っとるんやけど、

 魔力そのものの扱いが、素っ気無いんがなぁ……」

 

 

さくらちゃんの質問に、頭をかきながら

ケロちゃんは少し悩んだ感じの表情を浮かべていました。

 

 

2人の魔力に、何か思う所があるのでしょうか?

 

 

「……素っ気ない?」

 

 

「昔からある古い魔術は、手順を踏んできちんと約束事を守ったら

 ある程度までは、誰でも使えるちゅう話は覚えとるか?」

 

 

「えーっと、たしかクロウカードについて説明してもらった時に聞いたような……」

 

 

私は、さくらちゃんが使うカードをずっと見て来たので、

その辺の事情はよく分かりませんが……

 

 

おそらくクロウさんや李君のご家族、そして李君の執事の偉さんのような、

魔法を使う事の出来る一族の方は、そうやって魔法を使い始めていくのでしょう。

 

 

そう言えばユーノ君は、この世界に魔法があると思ってなかったそうなので、

ユーノ君が使う魔法は、またそう言ったものとは別なのでしょうか?

 

 

「あの二人の使うとる術式は汎用性……

 つまり、誰にでも使えるちゅう部分を強調した魔法で、

 ごっつ制御しやすいけど、反面使い道はかなり限定されてまうんや。

 

 なのは達の使うとる魔法は、強力やけど不思議っぽい感じはないやろ?」

 

 

「まぁ……言われてみれば。」

 

 

確かに、カードの起こす効果は色々と不思議な物がありましたし、

それと比べてしまうと、少し味気ない感じはするかもしれません。

 

 

「あの術式やと、『迷』の壁を壊しきるだけの効果は出せん。

 

 ……なのはの魔法、同じ系統の術者相手やったら有利に戦えるやろうけど、

 そうでない相手……特に搦め手使って来るようなヤツには、

 苦労させられるかもしれへんなぁ……」

 

 

搦め手……カードさんの中だと、『小』(リトル)『眠』(スリープ)でしょうか?

現在攻略している『迷』にも、大分苦戦していらっしゃいますし……

 

 

「……なら、その術式をなんとかすれば大丈夫なんじゃないの?」

 

 

「それは言うほど簡単な話やあらへん。

 さくらがクロウカードが使えんようになって、さくらカードに変えた時みたいに、

 人それぞれ、きちんと適合する術式は異なるんや。」

 

 

何気なしにさくらちゃんが提案した術式を変える方法は、

ケロちゃんからはバッサリと否定されてしまいました。

 

 

「迂闊に合わん術式を使うたら、それこそ大変な事になるし、

 そもそもあの2人はなんちゅーか……ん?」

 

 

続けて出てきたケロちゃんの言葉には

二人に何か思う所があったようにも聞こえましたが……

 

 

話の途中で、ケロちゃんは何かに気付いたようで言葉をそこで止めてしまい

それに釣られて、私達がケロちゃんの視線を追うと……

 

 

その先では、ユーノ君が足をふらつかせているのが見えました。

 

 

「! さくらちゃん! 『迷』のカードの解除を!

 ユーノ君の様子がおかしいですわ!!」

 

「え……!? いけない!!」

 

 

続いてさくらちゃんも事態に気付いたため、

すぐさま杖を使って、『迷』をカードに戻し、周囲の光景が元通りになると……

 

 

地面に手を突く形で倒れ込んだユーノ君の元に、

まずなのはちゃん、続いて私たち全員が駆け付けました。

 

 

「ユーノ君、どうしたの!? 顔色、なんだかよくないよ!!」

 

 

「大丈夫……

 すいません、せっかく特訓してもらってたのに……」

 

 

苦しげな顔をしながらも、心配をかけないよう

なんとか平気そうに見せようとするユーノ君。

 

だけど、明らかにその表情は苦しさを隠しれていませんでした。

 

 

「なにか、ご病気なのですか……?」

 

 

「まさか、この間のケガが……」

 

 

倒れた原因はいったい何なのか……

 

 

なにか、悪い病気でしたら、今のユーノ君の立場では

お医者様にかかることは難しいはずです……

 

「いや……本当に大丈夫だから……」

 

 

「大丈夫なわけあるかい!

 どこや!? どこが痛いんや!?」

 

 

それでもなお平静を装うユーノ君に

ケロちゃんが怒鳴りつけた次の瞬間……

 

 

 

―――グウゥゥゥゥ……

 

 

 

「ん……?」

 

 

「今の音は……」

 

 

「ひょっとして……」

 

 

周囲には、大きなお腹の音が響き渡り……

 

 

「……おいユーノ、お前まさか……」

 

 

ケロちゃんのあきれたような声を聞くと……

 

 

ユーノ君は申し訳なさそうに頬を掻きながら、顔を真っ赤にしていたのでした。

 

 

 

 

 

「……そら、ぶっ倒れて当たり前や。

 フェレット並の飯の量しか喰っとらんやなんて……」

 

 

呆れた顔でユーノ君にお説教をしているケロちゃん。

 

 

「す、すいません……

 あの姿で活動する分には、あれで足りるんですけど……」

 

 

どうやら、倒れた原因は極度の空腹だったようで……

 

 

ユーノ君は、近くのお店で買って来たパンとコーヒー牛乳を

申し訳なさそうに口にしていました。

 

 

「ちゃんと言ってくれてたら、

 ご飯もっと持って行ってあげたのに……」

 

 

「本当にゴメン……でも、結局フェレットのままじゃ

 結局、そんなに多くは食べられないから……」

 

 

確かに、フェレットの姿ならば十分だったかもしれませんが、

ここしばらくは人間の姿で活動してる事が多かったですし、

身体の大きさを考えると……こうなって当たり前ですわね。

 

 

「よく食べるんは魔術師の基本やで、

 美味いもん食って、栄養にして身体を作るのと同じ様に

 周囲から力を集めて、自分の力にせな、強い力は使えん。

 

 生活も魔術の一環やで、このアホゥ。」

 

 

「うう……」

 

 

食べる事に拘るケロちゃんならではのセリフに、

ユーノ君は反論できないみたいです。

 

 

……でも、困った問題ですわね。

 

なのはちゃんの家にいる時はずっとフェレットで居なければならないので、

またいずれ、再びこういう問題が起こってしまいますし、

かと言って、なのはちゃんのご家族に正体を明かす訳にも……

 

 

「今、なのはの家族に正体をバラしたら、多分ただじゃすまされないと思います

 巻き込んじゃったこともそうだけど……その……その他にも、色々と……

 

 

なんだか、今最後の方が大分小声でしたが……

まぁ、なのはちゃんは気にしていらっしゃらないようですし、

ここを追求するのは、野暮と言うものでしょう。

 

 

「……小僧が居ったら、メシくらい喰わせてもらえたかもしれんけどなぁ。」

 

 

「小狼君……確かに、料理は好きだって言ってたし、

 男の子同士だし、発掘とか、遺跡とかの話が好きだったから、

 ユーノ君とも、気が合いそうだよね。」

 

 

そう言えば、李君はさくらちゃんのお父様が友枝小学校で講師をやった時、

遺跡の話題で、普段とは違って興味津々な態度でさらに詳しい話を伺っていましたわね。

 

遺跡発掘をしていたユーノ君とは、きっと気が合ったことでしょう。

 

 

「……この事は、後で紫さんに相談してみましょうか?

 答えを返してくれるかはわかりませんが……」

 

 

「食事の事で相談って……なんだか、本当に申し訳ないです。」

 

 

「そんな事無いよ、一杯食べるのは健康な証拠……!?」

 

 

そして、ユーノ君の食糧事情をなんとかしようとを相談していると……

 

 

突然、周囲からそれまで聞こえていた物音や声が消え、

重苦しい雰囲気が周囲に広がりました。

 

 

……さくらちゃん達にはもちろんのこと

魔力の無い私にもわかるくらい、何かがが変わったと思えるような感覚で……

 

 

「ケロちゃん、これって……!」

 

 

「ああ、誰かがこの近くに結界を張ったんや!

 なんか、ちょっと妙な感じの結界やけど……」

 

 

本来、結界は力のないものを中に寄せ付けないためのものだそうですが、

これまではケロちゃんの力を借りて、

私も、あの子が作った結界の中に入る事が出来ていました。

 

 

ただ、今回はケロちゃん曰く、ちょっと妙な感じだそうで……

 

 

「妙な感じって……あの子の結界じゃないの?」

 

 

「いや、アイツのとは結界の性質がちゃう。

 もしかして、コレがあのネーちゃんの言ってた黒幕に関係しとるんか……?」

 

 

未だ目にしたことのない幻想を加速させているという黒幕……

 

 

この結界は、その何者かが作ったものではないかと思い、

突如変わった周囲の様子に、私達が警戒していると……

 

 

「きゃーーーーーーっ!!」

 

 

突如、絹を裂くような女の子の悲鳴が聞こえてきました。

 

それも一つだけではなく、友枝町のあちこちからたくさん……

 

 

 


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