知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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超絶無敵のカードキャプター

一生懸命がんばれば、なんでも出来ると思ってた。

 

 

この力があれば、大切なものを守れるって信じてた。

 

 

……だけど、それはただの思い上がりだったのかもしれない。

 

 

突然現れた、あの黒い衣装の女の子に……

 

 

私は、どうする事も出来なかった。

 

 

「なのは、気を付けて! 彼女、かなり戦闘慣れしてる……!」

 

 

防戦一方の私に、肩に乗ってるユーノ君は、

焦りを見せながら、気を付けるように私に助言をしてくれた。

……だけど、私はどうやってそれに応えればいいのだろう……?

 

 

「歳は、私と同じくらいなのに……!」

 

ジュエルシードの気配を追ってやってきた森の中で、

周囲の雰囲気が変わったと思った次の瞬間、突然現れたあの子……

 

 

ユーノ君は、あの子の事を同じ世界からやって来た『魔導師』かもしれないと言っており、

彼女も私達と同じように、ジュエルシードを集めているみたい。

 

 

私は、あの子の放ってきた魔法弾を防いでから、争わないで済むように

話し合おうとしたけれど、彼女は私の問いかけに、無意味だと言って取り合ってくれなかった。

 

 

ならば、力で彼女を止めようとしたのだけど、

魔法の腕は、彼女の方が上で、私には彼女を止めることが出来ない……。

 

 

そして、何度もぶつかり合うたびに押され、だんだん身体に力が入らなくなり、

ついに、あと1撃防げるかどうか……

そんな状況まで追いつめられてしまったのだ。

 

 

(……せめて、僕の魔力がもう少し回復していれば……!)

 

 

気が付くと、肩の上でユーノ君が悔しそうな顔をしていた……

……もっと私に力があれば、こんな思いはさせないで済むのに……!

 

 

「これで……終わり……」

 

 

「!?」

 

 

 

彼女は、漏らす様に抑揚の無い声でそう言うと

私達の方に武器の先端を向け、その先から強い力を放つ光球を私達へ放ってきた。

 

 

なんとか防御しようとしたけど、すでに足に力が入らなくなっており

そのまま、しゃがみ込むように倒れこんでしまった……

 

このままじゃ、やられる……!

 

 

「なのは!!」

 

 

「ユーノ君! 逃げて!!」

 

 

もう間に合わないのは判っていたけれど、ユーノ君を、私の失敗に巻き込みたくなかった。

 

 

とっさに、ユーノ君への言葉が口から飛び出るのと同時に、私は目をつむってしまい……

 

 

……直後、轟音と共に周囲は光に包まれた。

 

 

だけど、何故かその瞬間に私達が感じたのは、

目をつぶってもわかるほどの激しい光と、肌で感じる程度の爆風だけ……

プロテクションは破られたはずなのに、砲撃のダメージは届いてこない。

 

……いや、それだけじゃ無かった。

何故だかわからないけど、先ほどまでは無かった雰囲気

『優しい感覚』……そうとしか言いようがない感覚に、包まれていいるようだった

 

「あれ……?」

 

 

不思議に思って、恐る恐る目を開けた瞬間、私の目に映ったのは……

 

 

私をかばうように立ちはだかった、杖を構えた女の子の背中と

彼女の正面に展開された、翼の意匠が凝らされた大きな盾……

 

 

「え……?」

 

 

想像にもしなかった光景に、私は一瞬思考を止めてしまった。

ユーノ君にとっても予想外だったようで、目がいつも以上に目が真ん丸になってる。

 

 

「ふぅ、間に合うてよかった……お前ら、ケガないか?」

 

 

それを見てぼんやりとしていた私達が我に返ったのは、

どこからか聞こえて来た、奇妙に訛った声を聞いてからだ。

 

 

声の主は、目の前の女の子じゃない。

後ろから聞こえて来たし、何より今のは男の人の声……

 

 

誰なのだろうかと、声の主を確認するために振り向くと、

そこには、翼の生えたライオン……みたいな動物が

心配そうな顔で、こちらを見つめておいたので、一瞬だけビクッと驚いてしまう。

 

 

……いや、ライオンに翼は無いし、鬣が無いのにどこから聞いても男の人の声だし、

おまけに、イントネーションはなんだか関西弁だけど、ちょっと怪しい感じ……

いや、そもそも普通ライオンはしゃべらない……はずだよね?

 

 

先ほどから、思っても居ない事が連続で起きた為か、

私の頭の中は、これ以上になくぐるぐるしてしまったけれど……

 

 

……とりあえず、助けてもらったのは事実なので、

まずは、このライオンに対してお礼をいうことにした。

 

 

「「え……!? あ、はい、どうもありがとうございます」」

 

 

どうも、ユーノ君も同じ事を考えていたみたいで、

お互い、寸分たがわない言葉が、ほとんど同時に口から飛び出した。

 

 

「ええってええって、困った時はお互い様や」

 

それを聞いて気をよくしたのか、翼の生えたライオンが、器用手のひら……

もとい前足を上下に揺らしながら、大らかな態度をとっているこの光景……

 

 

……未だに目の前に見えている物が信じられない。

 

 

(あ、やっぱりさっきの攻撃で、どうにかなっちゃって、今はきっと夢を見てるんだ。)

 

 

やや思考逃避する形でそう考え、

これが夢だと確信する為に、自分のほっぺを思いっきりつねると……

 

 

「「!? イタタ……」」

 

 

ジンジンとした痛みが伝わり、思わず頬を抑えてしまった。

夢じゃない……? これ、現実……?

 

同じタイミングで、同じように痛がるユーノ君の声が聞こえてきたので、

そちらに目を向けると、そこでは少し涙目になったユーノ君がほほを押さえていた……

 

どうやら、ユーノ君はひげを引っ張って、夢か現かを確かめようとしたみたい。

 

 

「なんや、おもしろいやっちゃのぉ……

 芸人の魔法少女なんか? それとも魔法少女の芸人なんか?」

 

 

「げ……芸人!?」

 

 

「いや、別にウケを取ろうとしてたわけじゃ……」

 

 

今のやり取りがそんなにおかしかったのか……

私達は、愉快そうな顔を下ライオンから、いきなり芸人扱いされてしまったので、

その微妙に失礼な発言に、思わず反論せずにはいられなかった。

 

 

……このライオン、いったい何者なんだろう……?

 

 

「ケロちゃん! なにやってるのよ!?」

 

 

その答えが出る前に、今度は逆の方向から怒ったような声が聞こえてきた。

声の主は、もちろん盾を展開している先ほどの女の子。

 

 

「ケロちゃん……?」

 

 

私は、思わずライオンの方に向いて、恐らくこのライオンの名前らしい言葉をつぶやいた。

でも、どうみてもこのライオンは、そんなカエルみたいな呼び方が似合う見た目じゃあ……

 

 

……いけない、それよりも、この子にお礼を言わないと!

 

 

「あ……すいません、どうもありがとうございます。」

 

 

「よかった、無事だったんだね……

 ごめんね、ケロちゃんがびっくりさせちゃって。」

 

 

私がお礼を言った後、彼女はそう言って申し訳なさそうにしていた。

 

 

改めて見てみると、バリアジャケットとは到底思えない、どう見ても普段着としか思えない恰好で

その顔には、黒い衣装の子の抑揚の無さとは対照的に、

安堵の表情をいっぱいに浮かべて、私達に優しく語りかけてくれた。

 

 

見ているだけで、思わず惹かれてしまいそうな優しい笑顔。

それを見ていると、私の中になぜか懐かしい感覚が溢れてきて……

 

 

(あれ……? この人、なんか懐かしい……?)

 

 

「あなた達は一体……?」

 

 

この感覚が何なのかわからず、戸惑っている最中に、

状況の把握できていないユーノ君が、彼女に問いかけたけど、

どうも、今の状況ではすぐに答えてもらえなさそう……

 

 

「さくら、どうやらアッチはまだやる気みたいやで。」

 

 

上を見上げているライオンにつられて、空の方をみると、

そこでは、あの子が戦闘態勢と思われる構えをとったまま、

僅かに悔しさを見せる感じで、こっちを睨んでいる。

 

 

「……さっきの魔法とあの杖、どうやらちょっと厄介な奴みたいやな、

 なにが目的かは知らんけど、あちらさん引く気は無いみたいや。」

 

 

私の力不足なのか、あの子が凄いのか……

恐らく、どちらでもあるんだろうけれど、

私は、あの子には全然かなわなかった。

 

 

その現実に、心の中で悔しさを感じていると……

 

 

「……ケロちゃん、この子達の事、お願いできる?」

 

 

目の前の女の子は、真剣な表情でそう言い

盾を消して、そのまま一歩前に踏み出していた……

……顔を見ると、ほんのちょっとだけ怒っているようだ。

 

 

「おい!? ……大丈夫なんか?

 ちゃんとカードを使えば、なんてことはない相手やろうけど……」

 

 

ケロちゃんと呼ばれたライオンは、心配そうに彼女にそう言った

カード……今、彼女が手に持っているそれの事だろうか?

 

 

「……うん、わかってる。

 でも、なんでだろ……あの子の事を見てたら、

 ここで何とかしないとって思えてきたの……」

 

 

そう言って、彼女が再び空の方に視線を向けると、

なにかを決意したかのような表情をし、

杖を持つ手に、力と強い魔力をを込めているのを感じる事が出来た。

 

 

それを見て、ライオンはこの人の意思を尊重したようで……

 

 

「……わかった、さそこまで言うんやったら任せるわ。

 せやけど油断するんやないで!」

 

 

「うん!」

 

そう言って、彼女は元気よく答えると

彼女は新たに、ポケットから手に持っているものとは別の

不思議な絵柄の描かれたカードを取り出し、杖で突いた。

 

 

……すると、金色の光と共に、彼女の背に光り輝く翼が生え、

その翼をはばたかせ、彼女は空に居るあの子の許へとんでいった

 

 

それも、不安な感じなどみじんも見せず、なんとかしてくれると思わせるように力強く……

 

 

「あの翼……やっぱり、あの子も魔法少女!」

 

 

「でも、あんな魔法、今まで見た事ない……

 僕の知らない魔法を使うのか……?」

 

 

あの子に続いて、また新しい魔法少女に出会うなんて……

そして、あの子の使う魔法はユーノ君も知らない魔法みたい。

 

 

そんな事を思いながら、彼女の飛んで行った先を見つめていると……

 

 

「あんさんら、僅かながらも魔法が使えるっちゅうことは、

 噂に聞く魔法少女っちゅうやつかいな?

 いやぁ、さくら以外にも居るとは思わんかったわ。」

 

 

ケロちゃんと呼ばれたライオンが、気軽に横から話しかけてきた。

かなりフレンドリーな感じで、それほど怖い感じはしなかったから、

私はおじけづきもせず、気が付くとそのまま思っていた疑問をライオンに訪ねていた……

 

 

「さくら……あの人の名前?」

 

 

「貴方達はいったい……?」

 

 

驚きの連続で、今までやろうと思ってできなかった質問をユーノ君がすると、

ライオンは、わずかに考えるそぶりを見せ、すぐに顔を上げて問いに答えてくれた

 

 

「ワイの名はケルベロス、ずっと昔にクロウ=リードっちゅう魔術師に造られた

 金の瞳を持つ最強の守護獣や。」

 

 

「クロウ=リード……?」

 

 

ケルベロスと言う名前は聞いた事がある、ギリシャ神話に出てくる地獄の番犬で、

よくゲームとかのモンスターの名前に使われる名前。

そっちの方では、黒とか赤とかの色のイメージが強いけれど……

 

 

それにしても、ケルベロス……ケロベロス……ケロちゃん……?

この変換、ちょっと強引過ぎやしないかな……

やっぱり、どう見ても見た目に全然似合わないし。

 

 

それに、クロウ・リードと言う名前も聞いた覚えがある様な……

確か、有名な占いカードの原型を作った人の名前……

 

 

 

「魔術師と守護獣……? 魔導師と使い魔とは違うのか……?」

 

 

一方、ユーノ君はケロちゃんの言った単語に関して、

思う所があるのか、何かを考え込んでしまっていた。

……私には、その言葉にそれほどの違いがあるようには思えないけど……

 

 

そうして、新たな疑問が出来てしまった私達を余所に、

ケルベロスさんは、改めてあの人の方を向くと、そのままノリノリで説明を続けてくれた。

 

 

「そして、あれがワイの今の主……

 かつてクロウ=リードの造りだした魔法のカード、クロウカードの継承者!

 超絶無敵の魔法少女! カードキャプターさくらや!!」

 

 

「「カードキャプター……?」」

 

 

またもや、新たな疑問を生み出す聞きなれない単語に、

私とユーノ君は復唱するように、その言葉を口にしていた……

 

 

カードは、先ほど持っていたアレの事だろうけれど、

カードキャプターが意味するものは、私には思いもつかない……

 

 

……そうして、私達は視線をケルベロスさんにつられる形で、

空で戦いを繰り広げているさくらさんと、あの子の方へ向けていたのだった……

 

 

 




舞台はなのは対フェイトの初戦ですが、演出の展開上、戦闘の展開が原作と違ってしまっております

そして、ユーノもポジションがなのはの肩に居るので、この場面で原作通りの攻撃喰らったら
えらい事になっちゃって居たり……

この位の改変は、まぁ毎回あるもんだと思っていただければ

なお、こちらの世界ではタロットカードの制作者はクロウ・リードとさせてもらっております
元々、クロウリードがアレイスター=クロウリーが元ネタですし


一般レベルにはオカルト分野のややマニアックな有名人な感じと思っていただければ

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