知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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エスケープ・フロム・カメヤマ

 

フェイトちゃんのイヌが香水の匂いが気になるそうなので、

勿体ないと思いながらも、アリサちゃんに退室してもらった後の事、

 

こうやってフェイトちゃんと一緒に居られるチャンスは滅多にないから、

色々話がしたくって色々と話題を振りかけてみたけれど……

 

どうにもフェイトちゃん、今日はちょっと元気がないみたいで、

どんな話題にも、空返事をかえすだけの、ずっと浮かない顔のままだった。

 

……なんだか、フェイトちゃんの連れてるデカい犬が、

事あるごとに、不機嫌そうな顔でこちらをにらんできた気がしたけど……

 

そんなわけねーよな、頭いいみたいだけど所詮犬だし、

ただ、目つきがいま一つ気に入らなかったので、こちらからもにらみ返していると……

 

 

「……ジュエルシードありがとう、今日はもう帰るね。」

 

 

フェイトちゃんはそう言って、席を立って帰り支度を始めた。

 

 

「えっ、もうそんな時間?」

 

時計を確認してみると、元々夜遅くだったとは言え、

彼女が来てから、結構な時間がたっていた。

 

 

あーあ、結局今日もあんま話せなかったな……

……いや、女の子のエスコートは最後までしないと。

 

 

「あ……そう?

 じゃあせめて門のとこまで送ってくぜ」

 

 

女の子には優しいとこを見せなくっちゃ、

そう言って、俺は見送る為に続けて席を立った。

 

 

この時も、フェイトちゃんのイヌが睨みつけてきた気がするけど……

どうでもいいや、無視だ無視。

 

 

そのままフェイトちゃんと一緒に廊下を歩いて行ったが、

結局、話すこともなく校舎を出るところまでたどり着いた。

 

もう帰っちゃうのかぁとフェイトちゃんとの別れを惜しんで居ると……

 

 

「しゅ、襲撃だぁーっ!!」

 

 

「門を守れーッ!!」

 

 

突然、兵隊達の慌てる声が聞こえてきやがった。

一体何が起こったんだ!?

 

 

「お前ら! いったい何があった!?」

 

 

正門に向かう兵隊達を捕まえて、何があったのかを聞いてみると……

 

 

「あ、コクエン様!?

 敵襲です!! レジスタンスが襲撃してきました!!」

 

まさかの報告を聞いて、俺は無性に腹が立った。

せっかく人がいい気分に浸っていたのに、雰囲気の読めない奴らだぜ……

 

おまけに、たかがレジスタンス相手にこの大騒ぎとは……!

 

「てめぇら、残党相手にこんな大騒ぎしやがって!

 たるんでんじゃねーのか!?」

 

俺達に敵対する奴等の集まり・レジスタンス。

 

名前の聞こえはいいが、ハッキリ言ってしまえば烏合の衆。

配下に加わるのを拒んだ奴らが集まっただけなので、

結局、なにも出来ないと思ったから放っておいたってのに……

 

こいつら、そんな雑魚相手にこんな大騒ぎしやがって……!

 

 

「それが、レジスタンスにおかしな奴がいまして……

 そいつ一人に、最前線の兵隊は総崩れに……」

 

 

「なんだと!? 聞いてねぇぞ!

 レジスタンスに、そんな腕の奴がいるなんて!!」

 

一人でそこまでやるとは、そのおかしなヤツは、かなりの腕前のようだ。

 

だが、下級戦士とはいえ、たった一人にやられるとは信じられねぇ……

 

 

「……まさか!」

 

 

すると、俺達の話に思い当たる節があったのか、

フェイトちゃんが珍しく感情をあらわにするようにそう叫んだ。

 

 

「フェイトちゃん、どうしたの?

 何か心当たりでも……?」

 

 

「ジュエルシードを集めるときに、いつもかち合う子達がいるの

 あの子達の誰か来ているなら、もしかして……」

 

フェイトちゃんは、真剣な顔で、そしてただ事ではなさそうにそう言った。

 

……これまで、フェイトちゃんの戦う所を1度だけ見た事がある。

 

流石にパワーは俺ほどじゃないけれど、

目にも止まらぬ素早い動きは驚異的で、並の相手なら動きをとらえることも出きない。

 

ウチの幹部連中じゃ相手にならないだろう力の持ち主だ。

 

 

そのフェイトちゃんが、これまで見た事のない真剣な顔をしてる。

そいつは、よっぽどの相手って事か……?

 

そういや、友枝町に送った連中がやられたのも

ライオンを連れた3人組だって言ってやがったが、まさか……

 

 

「なんだよコクエン、ずいぶん騒がしいじゃねーか。」

 

 

そんな考え事をしていると、いきなり後ろから、能天気そうな声が聞こえてきた。

 

 

「ゲン……!」

 

 

「おせーよ、こんな大騒ぎしてるのに、ノロノロしやがって……

 何のための用心棒かわかってんのか!?」

 

 

まったく、こいつときたら命令は聞かない、襲撃にも加わらない、

暇さえあれば飴を舐めながらマギロッドをいじり続けてばっかり……

 

デクノボウってのは、まさにこいつの事だ。

 

 

「なにおぅ!? 年下のくせに生意気だぞ!!」 

 

 

「うるせぇッ! 年上だからって威張んな!!」

 

 

前から、こいつの事は気に入らなかったんだ、

この場で決着つけてやろうか……!? とか思って、にらみ合うが……

 

 

「ゲン、コクエン、ケンカしてる場合じゃないよ、

 あの子達が来てるのなら、表の子達じゃ相手にならない……」

 

 

いつの間にか、大きな鎌を手に持っていたフェイトちゃんに止められてしまった。

 

……確かに、今はケンカしてる場合じゃない。

ゲンの方が先に呼ばれたのは、ちょっと気になったけど……

 

 

フェイトちゃんや、奥にいる子達に被害が及ばないように、

とっととレジスタンスを名乗ってる連中を叩き潰すのが先だ。

 

 

「行くぞゲン! レジスタンスの連中をさっさと叩き潰すぞ!」

 

 

「うるさい! 命令すんな!

 お前、生意気なんだよ、コクエン!!」

 

 

相も変わらず偉そうな口を利くゲンに、一瞬やっぱこいつシメようかと思ったけど、

またケンカしたんじゃ、フェイトちゃんに申し訳なさすぎる。

 

 

フェイトちゃんの為に、言いたいことを『ぐっ……』と堪えて門の所まで行くと……

 

そこには、お互いににらみ合うウチの兵隊とレジスタンス、

そして、折れたり凍り付いて使い物にならなくなったマギロッドと……

 

 

見た事もない、精彩なデザインな衣装を着て、

空を飛びながら、まるで花火のような光と氷の弾をばらまき……

 

 

「お……? 新しい奴らが出て来たな!

 お前たちがここのボスか!? 

 3人もいるって事は、うるさい幽霊かなんかなんだな!?」

 

 

……俺達を見るなり、訳の分かんねぇ事をしゃべりまくる、

奇妙なバカっぽい、青い幼稚園児みたいなヤツが暴れていた。

 

 

なんだありゃ……あんな馬鹿丸出しの雰囲気じゃ、

せっかくの服のイメージが台無しじゃねーか……

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

「うっ……!?」

 

 

 

さくらさんが杖でカードをつき、出てきた小さな妖精のような何かが

見張りの上まで飛んでいき、杖を一振りして光る粉を振りかけると……

 

 

―――バタリ

 

 

見張りは、そのまま倒れてしまい、

グースカと寝息を立てて、気持ちよさそうに眠ってしまった。

 

 

「……やっぱり反則よね、さくらさんの魔法

 こんなのが52枚も使えるんじゃ、やりたい放題じゃない。」

 

 

コクエンみたいなやつが、こんなカードを使おうもんなら

どんなことになるか、想像する事すら悍ましい……。

 

 

ホント、カードの使い手がさくらさんみたいな優しい人で良かったわ……

 

 

「まだまだ、こんなん序の口や、

 ……さ、はよ中にいる子達を助け出すで。」

 

 

「……カギ、あったよ!」

 

 

ユーノが倒れた見張りの体を探り、懐からカギを取り出した。

 

着替える暇はないので、未だにメイド服を着てるけれど、

あのモヒカン、意識があったらどんな顔をしていたのやら……

 

 

―――ガチャリ

 

 

「みなさん、ご無事ですか?

 助けに参りましたわ」

 

 

「え……知世ちゃん!? さくらちゃんも!」

 

ドアを開けた知世ちゃんの姿に真っ先に反応したのは、友枝小の制服を着たメガネの少女だった。

……恐らくあれが奈緒子さんなのだろう。

彼女は、こんな時間に現れた二人を見て驚いているみたいだった。

 

……まぁ、特にさくらさんの格好はどう見てもコスプレだもんね、

私も、なのはの魔法少女姿見た時は驚いたし。

 

 

「よかった……奈緒子ちゃん無事だったんだ。」

 

 

突然現れた助けに、部屋の中に居た子達がどよめいたけど、

奈緒子さんだけは、驚きを収めた後

すぐにさくらさんと知世さんの元へと駆け寄っていった。

 

 

私達も……えーっと……

あ、いた! あんな隅っこの方に寄っちゃって……

危うく見逃すとこだったじゃない!!

 

 

「すずか!」

「すずかちゃん!!」

 

 

「アリサちゃん、なのはちゃん!?

 二人ともどうして……

 それに、なのはちゃんその格好は……!?」

 

 

すずかも無事だったみたいで、私達の姿を見るとすぐに駆け寄ってきた。

ただ、なにかあった時にためにバリアジャケットを装着していたなのはの姿を見て、

流石に戸惑ったみたいだけど……

 

 

「あの、これは……

 どうしよう、アリサちゃん?」

 

 

「今さら隠しても意味ないでしょ、

 正直に言ったら? 魔法少女になりましたって。」

 

 

「あ、アリサちゃん!?」

 

 

なのはは、私に助けてもらいたいみたいだったけど、

その隠し事のせいで、こちらも長いこと悩んだ上、事件に巻き込まれてしまったのだ。

 

 

もう許したなんて思わない事ね。

ちゃんと、仕返しはさせてもらうんだから!

 

 

「ねぇねぇさくらちゃん、魔法少女だって!!

 なんか、ホンモノみたいだよ、すごーい!!」

 

 

「うん……そうだね、奈緒子ちゃん」

 

 

そして、奈緒子さんの方は、そんななのはをみて何故かはしゃいでいた。

あの子は、魔法少女とかが好きなのだろうか……?

 

……て言うか、今話しかけてる相手も、魔法少女なのだけれど……

あの格好みて、気づかないのはある意味スゴい……?

 

 

「……みんな、早くここから逃げよう、

 外でコクエン達を引き付けてるみんなも、いつまで持つかわからないから……」

 

 

そんな彼女に半分呆れていると、表で見張っていたユーノが脱出を急かしてきた。

真面目な顔をしているけれど、衣装は相変わらずメイド服のままなので、

アイツの本当の性別を知っていると、かえって滑稽に見えてしまう。

 

 

「あれ? さっきのアリサちゃん……

 ん? あなたも、確かアリサちゃんだったよね?」

 

奈緒子さんはユーノを見て、困惑しながら私と交互に見つめはじめた。

アイツめ……ここでも私の名前を語ったのか……

 

 

すずかも、その辺が気になっているようで、恐る恐るこちらを見ているけど……

 

 

「……ユーノ! アンタいつまでその服着てんのよ!!

 バリアジャケットがあるんだから、いつ脱いでも大丈夫なんでしょ!?」

 

 

全く、紛らわしいったらありゃしない……

けど、ユーノは私の言葉に半分涙目になって反論してきて……

 

 

「脱げないんだよ! 構造が複雑すぎて……

 って言うか、アリサ! 今それを言ったら……」

 

「ユーノって……え?」

 

私が名前を呼んだことで、すずかも、おぼろげながら

このメイド服少女の正体に気付き始めたみたいだった。

ユーノは、その反応を見て慌てたけれど……

 

 

いいじゃない、なのはが魔法少女やってるのバレたんだから、

マスコットのアンタも巻き添えになったって……

 

 

「あんたら、いつまで漫才やっとんねん。

 ウチらを助けに来てくれたんのは、ちゃんと礼いわせてもらうけど、

 そろそろ、外まで案内してくれへん?」

 

 

そんなこちらの内輪もめにうんざりしたのか、

さらわれた子のうちの一人が、関西弁で催促をしてきた。

 

 

……この子も、なんというか競泳水着に、サンバイザーとうさ耳をつけた、

何を考えているのかわからない恰好をしていた。

 

 

一瞬、コクエンの趣味なのかと思ったけれど、他の子を見る限り

変わった衣装を着せられている子は捕まってたこの中には居ないし……

 

 

振舞い方が、あまりにも自然すぎる……

まさかとは思うけど、それひょっとして普段着……?

 

 

「これは大変失礼いたしました、

 それではさくらちゃん、お願いいたしますわ。」

 

「うん……奈緒子ちゃん、ちょっと離れてて!」

 

「さくらちゃん……?」

 

 

結局答えを聞く暇はなく、知世さんがさくらさんに

ここから脱出する方法を出してもらうようにお願いすると……

 

 

さくらさんは、一人壁の前に立ち、

先ほどとは別のカードを取り出して、カードの名前を叫んで杖で突く。

 

 

「『(スルー)』!!」

 

そしてカードが光を放ち、さくらさんの目の前の壁が歪んだように見えたと思ったら

さくらさんはそのまま壁の方に向かって歩き続け……

 

壁にぶつかりそうになった瞬間、周囲のみんなが危ないと声をかけたのを気にせず……

さくらさんは、そのまま前に進むと、壁の中へと吸い込まれるように消えていき……

 

 

「……これで、この壁を通れるようになったよ!

 みんな、早くここから逃げよう!!」

 

 

次の瞬間、壁から、ひょっこりと顔を出してきた。

 

 

その不思議すぎる光景に、あちこちから驚きの声が上がっている。

……やっぱり、反則過ぎるでしょ、そのカード

 

 

でもまぁ、こうして少々反則気味な脱出ルートが出来たので、

私達は捕まっていた女の子を連れ、この奇妙な城からの脱出を始めたのだった。

 

 

壁の方に向かっていくのに躊躇している子や、目の前の驚きの光景に、興味津々な子……

更には、走りながらもなんとかメイド服を脱ごうと、悪戦苦闘している奴もいたけれど……

 

 

ここでぐずぐずしているわけにはいかない、まだ脱出は始まったばかりなのだから。

 

 

なにしろ、この学校……結構な高さの山の上にあるから

上がってくる時も、かなり大変だったし……

 

 

おまけに、奴らが私達の想定より、はるかにヤバい奴らだと分かったのは、それからまもなくの事だった。

 

 




チルノが来ている衣装は、出発前に知世が用意していた衣装のウチの一着です
もう一着は、この後で使いますが、誰が使うのかはお楽しみ

……てか、候補は上がってるけど誰にするかは決まってなかったりして

しかし、CLAMP衣装を文章でどう再現したものやら

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