知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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ビルダーズ2プレイしてたら、なんぞテンションが切れた感じで投降に時間がかかりました
その割に短いけれど……やっぱ後で加筆修正必死かな?


大地の巨獣

 

 

亀山小学校の抜け穴から、一人、また一人と女の子が抜け出してくる。

 

 

「みんな! こっちだ!!」

 

 

俺達の役目は、彼女達を安全な所まで送り届ける事だ。

 

 

正門でコクエン達を引き付ける陽動作戦は、何とか大多数を引き付ける事には成功したが、

コクエンと、巨大な用心棒、そして金髪の少女の乱入によって壊滅状態になってしまった。

 

俺達の負けが決定的になったタイミングで、陽動に気付いたコクエンが慌てて引き返していったので、まだ何人かは戦える状態だけど、背後をつくだけの余裕は流石になく、

俺達は救出に動いた子達の無事を祈りながら、小学校東側の抜け穴付近に陣取った。

 

 

情報収集の為、潜入した金髪の子が送ってきた情報によれば、ここには中の連中が使用する秘密の抜け道があるそうで、先に抜け道を使って入っていった子達は、ここから入り込み、さらわれた子達と一緒に脱出する手はずになっている。

 

 

俺達が駆け付けた時には、抜け穴の外側には、不安そうに立ち止まっていた子達や抜け穴から這いだしてきた子達が居り、中から激しい振動がしたり、光が見えている所を見ると壁の向こうでは、激闘が繰り広げられているようだ。

 

 

陽動は不十分だったのかと思って悔やんだが、まずはこの子達を保護するのが先決だと思い、

決められた手筈通り、俺達男子は周囲を警戒しつつ、女子は事情を説明したうえでさらわれた子達を、ウサオちゃん喫茶へ誘導していく。

 

 

彼女達がユキエさんを見たら、ちょっと面食らうかもしれないけれど、見た目がアレって事を除けばいい人だし、他に頼れる人も居ないから仕方ないよね……?

 

 

「おーい、あたいはどうすればいいんだ?

 こうやってじっとしてるのはつまんないぞ……」

 

 

そんな俺達の行動を、知世さんが鏡から呼び出した妖精のチルノは、詰まらなさそうな目で眺め続けている。

 

 

「もうちょっとだけ待ってくれ!!

 中の子達が全員出てきたら、俺達も踏み込む!!」

 

 

先ほど、コクエン達の攻撃を受けて目を回していたのに、目を覚ましたと思ったら、暴れたりないとばかりに不満そうな表情をしている。

 

 

妖精って、こういうのだっけ……?

童話とか、ゲームとかで出てくるのは、もっとかわいらしいんだけどなぁ……

 

 

「チクショオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

すると突然、壁の向こう側からコクエンの叫び声が聞こえて来たのと同時に、地面からあちこちに光が上り、俺達は光を防ぐために目をつむり腕で覆った。

 

この光は何なのか……何か妙なものを感じるけど、まさかこれもコクエンの罠……!?

そんな事を考えながら、瞼の下から光が収まっていくのを感じ、再び目を開くと……

 

 

学校の壁と森が広がっていたはずの、周囲の景色は大きく変わっていた……

 

 

これまで、ゲームの中でしか見た事の無い、燃える様な赤い地面、

そして赤く輝く、溶岩の流れるような光景へと……

 

 

 

―――

 

 

 

 

「うっ……」

 

 

一体、何が起こったのだろう?

気が付いたら、僕は地面にうつぶせになって倒れていた。

 

 

「確か……さくらさんの風をコクエンが弾いて……

 それと同時に、地面から……」

 

 

僕が覚えていたのは、コクエンの絶叫と共に、地面から大量の光が噴き出した光景……

 

 

気絶したのは、あの光に巻き込まれたからだろうか?

意識がはっきりしてきたのと同時に、右手に熱さを感じていたので、そちらに目を向けると……

 

 

「……!?」

 

 

僕の右手は、赤く光るマグマの様な液体に漬かっていた、

それを見て、慌てて手を引っ込めたけれど、僕の右手はやけど一つ追っていない。

 

 

確かに熱く感じたけれど、この液体はいったい何なのだろうか……?

 

これがもしマグマだったら、ヤケドどころか右手は溶けてなくなって居るはずだし、

有毒ガスがそこら中に沸いているはずなので、こうして普通にしていられるわけがない。

 

 

「みんな……なのは達は無事なのか……!?」

 

 

周囲を見回してみると、目に映るのは赤く光る液体の他は、岩壁と、あちこちに浮かんでいる岩場だけ……

僕の他に、誰かが居る様子はなかった。

 

 

―――ズガンッ!!

 

 

周囲を見回していると、上の方から何かがぶつかるような音が聞こえてくる。

強い魔力の気配や、魔力光が確認できる所を見ると、みんなは上の方にいるようだ。

 

 

「……という事は、僕はここまで落ちてきたのか……?

 とにかく、早くみんなと合流しないと……!」

 

 

あれだけ魔法をを使った後なのに、不思議と魔力は残っていた……

これなら、すぐにみんなの所に戻れるはずだ。

 

そして、意識を集中させて飛ぼうとした次の瞬間……

 

 

「……おっと、待ちな!」

 

 

「!?」

 

 

突如聞こえてきた声に、僕は声のした方へと振り向いた。

声のした場所には、赤い液体しかなかったが……

 

 

―――バシャン

 

 

 

次の瞬間、そこから飛沫が上がり、その中から……

 

「このままいかせるわけにゃいかねえよ!!」

 

 

「こ……コクエン!?」

 

 

余裕たっぷりの顔で不敵に笑っているコクエンが現れた……!

 

 

先ほどまで手に持っていた砲身は無かったけれど、

その体には、見てわかるくらいに魔力も体力も充実している……

 

 

「ほとんど魔力を使い果たしていたはずなのに……! どうして……!?」

 

 

「さぁな……俺にも理由は分からねえよ、

 だが、この光る赤い水……こいつには、なにかがあるみたいだぜ。」

 

そう言って、コクエンは掌の中の赤い液体を見せつけてきた。

 

 

……そう言えば、僕の魔力が思ってた以上に回復していたけれど、

それは右腕がこの液体に使っていたからなのか……

 

この液体は、いったい……?

 

 

「まさか、俺達の足元にこんなもんがあったとはな……

 お前らに、兵隊も野望もつぶされちまったが、

 こいつを使えば、巻き返しが出来る……!」

 

 

「!? やめろっ! コクエン!!

 こんなことをしてなんになるんだ!!」

 

 

この液体を見回しながら、再度野望を口にしたコクエンを僕は制止した。

こんな危険なものを、悪用させたらとんでもない事になる……!

 

 

「ハンッ! 俺に命令するってのか!?

 ……だったら、俺を力づくで止めるんだな!!

 この力を得た俺に、実力でな!!」

 

 

そう言って、コクエンは戦う構えを取った。

 

この力への執着は、ただ事じゃない……

いったい、なにがあればこれほどまでに力に執着出来るんだ……?

 

 

「コクエン……どうしてそこまで……!?」

 

 

僕は、コクエンのその態度が気になって、その理由を尋ねる……

 

 

「決まってんだろ! 力があればなんだってできるからだ!!

 弱い奴はな、何されたって文句は言えねぇんだよ!!」

 

 

すると、コクエンは僕の問いに帰して、不機嫌そうにそう言い放ってきた。

 

その中でも、ある単語に特に力を込めて……

 

「弱い奴……?」

 

 

この単語に、僕は違和感を感じた……

力を求める奴のセリフにしては、似合わないものなのに、妙に実感がこもっている……

 

もしかして、コクエンの言う弱い奴というのは……

 

 

「笑っちまうぜ……

 道場では腕っぷしを鼻にかけて、いいようにしてきた連中が、

 ちょっとマギロットの力を使っただけで、今じゃ見る影も無くなっちまった……

 上級生も、師範も……そして、センコー達、えらそうな大人も!

 力があれば、これまでデカい顔してた奴等だって、言いなりにできるんだ!!」

 

 

「コクエン……」

 

 

喫茶店で誰かが言っていた……

コクエンは、元々ケンカの腕はそこそこ程度だったって……

 

 

ここまで来れば、流石に僕にも理解できる……

彼の言う弱い奴は、魔法を得る前の自分の事なのだろう。

それが魔法を得た事で力を得て……現在のコクエンになって……

 

 

「コクエン……」

 

 

イヤな奴だけど、その辺の事情を考えると、どこか悲しく思えてくる……

コクエンも、僕の視線と表情から何を考えているのか分かったようだが……

 

 

「なんだその顔は……? 俺の事を憐れんでるってか?

 てめぇに、人の事を憐れむ余裕があるのか?

 お前だって、弱いからたった一人で、この世界に来る羽目になったんだろ?

 ……異世界人よ!」

 

「なっ……!?」

 

 

そのコクエンの発言に、僕は思わず驚いた……!

 

異世界人だという事は、フェイトに聞いたのかもしれないけど、

なのは達にも話した事がない事情を、どうして知ってるんだ!?

 

 

「フェイトちゃん紹介してくれた時に、黄昏の魔法使いが教えてくれたんだよ、

 フェイトちゃん以外にも、ジュエルシードを集めに来たヤツが居るってのと……

 その辺の事情とかを、色々とな……」

 

 

「黄昏の魔法使い……!?」

 

 

ここまでの話から、フェイト同様、向こう側の出身だとは思っていたけど……

一体、どこまでこっちの事情を……!?

 

 

「……さて、無駄話はここまでだ、

 俺を止めたきゃ、力でねじ伏せてみるこったな!!」

 

 

「!?」

 

 

そう言うと、コクエンは格闘技のモノらしい構えをとった直後、手に魔力を纏い、ものすごいスピードで突進してきた!

 

 

ロッドマイスターは、マギロッド無しで魔法を使えないと聞いたけれど、コクエンは自分だけで力を使う事が出来るようだ……

 

先ほどの動きが鈍い砲撃タイプの戦法とは逆に、フェイトほどではないけれど、素早い動きで間合いを詰めてくる格闘による至近距離戦……!

 

目の前まで接近してきたコクエンは、魔力を込めた右腕を振りかぶると、それを僕にたたきつけようとしたので、それを防ぐために、僕も右手を前に出して魔法で防御しようと構える……

 

 

……だけど

 

「!?」

 

 

 

身体にも、そして右手にも魔力は充実しているはずなのに、

なぜか右手の前に攻撃を防ぐための障壁が出現しなかった……!

 

 

 

 

 




というわけで、4章のボス戦は、タイマンでユーノが担当することになりました

ただ、元々バインドなどの拘束系が効きにくい相性最悪な相手の上に
謎の不調で、どういう訳か防御魔法も碌に張れない状態に……

果たして、ここからどうやって逆転を果たすのか?

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