知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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野望の夜は明けて

 

 

 

深淵とも思われる暗闇の底で……

 

 

 

―――例のロストロギア……

 

 

―――97管理外世界……

 

 

 

いつか聞いた覚えのある言葉が、頭の中でおぼろげに響いていた……

 

 

 

―――管理局……

 

 

―――……から、うごけな……

 

 

……そうだ、僕はこれを切っ掛けに、僕はジュエルシードを回収することを決意し、

この世界に来て……回収の途中で倒れ……

 

 

そして、なのはと出会ったんだ。

 

 

ジュエルシードがばら撒かれた事……

なのはを巻き込んでしまった事……

どれも、僕がアレを発掘してしまった事が原因だと思っていた……

 

 

……だけど、同じくジュエルシードを探している魔導師・フェイト。

 

僕がこの世界に来る前に、こちら側の小学生にバラまかれていたデバイスによく似た魔法の杖・マギロッド、そしてそれを自在に操る、見た事がないタイプの魔導師・ロッドマイスター

 

これらを目にして、僕の心の中に大きな疑問が生まれ始めていた。

 

 

ジュエルシード含め、これだけの代物がこの世界に集まっているのは、ただの偶然なのだろうか……?

 

 

―――そんなはずは無い。

 

 

……疑問への肯定か、責任への否定か、どこからかそんな声が聞こえてくる……。

 

 

この声は、僕が心のどこかで思っていた言葉なのだろうか……?

 

 

 

―――事件は……?

 

 

 

―――解決……さらわれた子達も……

 

 

 

……再び、誰かの声が聞こえてきた、先ほど聞こえた声とは別人の声だ。

 

 

後から聞こえてきた声には、聞き覚えがある……

 

 

この声は……確か……

 

 

 

 

「あ……?」

 

 

声の主が誰だったかを思い出そうとした瞬間、暗闇の中に光が差し込んできて……

 

 

そうして、目の前にあった闇が晴れた直後、僕の目に映ったのは見知らぬ天井だった。

 

 

「ここは……?」

 

 

ベッドに眠っていたことに気付いた僕は、すぐさま上体を起こして周囲を見回した。

 

 

僕が居たのは、飾り気のない部屋……

 

意識を失う前に起こったことから推測して、コクエンとの戦闘の後で倒れた僕を、誰かがここまで運んでくれたのだろう。

 

 

……最後の一撃を放った直後、魔力を使いすぎた為か、気を失ってしまったようだけれど……

 

一人でジュエルシードを回収していた時に倒れた時と違って、今回は、魔力を使い果たしてもフェレットにならなかったようだ。

 

 

自分の身体に起こっている何らかの変化に戸惑いつつも、僕はコクエンに一撃を打ち込んだ掌を眺めて、あの時の事を回想する……。

 

 

あの時に行使した、恐らくコクエンも使っていたあの力からは確かに魔力を感じたが、僕が使ってきた魔法とは全く異質のモノだった……。

 

 

使った事がないのに、なぜかとてもなじむあの熱い感覚……心の奥底から湧き出してくる高揚感……

 

今でも、明確に思い出すことが出来る。

 

 

……そして、冷静になった今、はっきりとわかる事がある。

 

あの力は、これまでの魔法技術と異なる為、これまで僕が使ってきた魔法で使えた非殺傷設定を、一切受け付けない……

使い方次第で、意図せず相手を傷つけ、害する事もありうる危険な力だと……

 

 

そんなものを、あの時の僕は躊躇なくコクエンに打ち込んだ……

 

 

あの一撃を放った時に感じた感覚と言い、今の状態といい、僕の身体は、いったいどうなってしまったのだろう……?

なにか、この世界に来た事で変化が起こっているのか……?

 

 

―――コンコン

 

 

 

自分の使った力に対して不安になっていると、突然ドアをノックする音が聞こえてきた。

 

 

 

「あ……はい」

 

 

反射的にノックに対して返事をすると、ドアノブを回す音が聞こえて、ドアが開き……

 

 

 

「おはよう、ようやく起きたみたいね、身体の調子はどうかしら?」

 

 

 

「て、店長さん!?」

 

 

 

低い声を響かせて、ウサオちゃん喫茶の店長さんが顔を出してきた。

 

相変わらずの体格に似合わない格好に面食らって、危うくベッドから落ちそうになってしまったけど、シーツとマットレスを掴んで、なんとか踏みとどまる……

 

 

……店長さんが居るって事は、この部屋はひょっとして……

 

 

 

「ああ、見慣れない部屋で驚いちゃったのね、

 ここはウサオちゃん喫茶の2階……私のプライベートルームよ」

 

 

「あ……やっぱり……」

 

 

 

まぁ、そうだよね……

この人の趣味にしては、内装がさっぱりすぎる気もするけれど、プライベートのことなので、考えないことにおく。

 

 

 

「昨日は大変だったみたいね……

 あなたは特に、ボロボロになってたし、みんな心配してたわよ。」

 

 

「みんな……?

 ! なのは達は!?」

 

 

朧げな意識の中で、なのは達の声がした気がするけれど、

あの後、なのは達がどうなったかを確認する前に意識を失ってしまったから、事件の顛末がどうなったのか、わからないままだ。

 

あの後どうなったのか心配になったので、店長さんに尋ねたところ……

 

 

「大丈夫よ、あなたのお友達も、さらわれた子達も、みーんな無事にお家に帰っていったから、

 ……時間が時間だったから、あなたはウチで一晩預かる事になったわけ。」

 

 

店長さんは、心配ないとばかりに胸を叩いて、

僕が倒れた後に何が起こったのかを教えてくれた。

 

 

コクエンとの勝負に決着がついた後、なのは達は、倒れて気を失っている僕を見つけ、そのまま意識のない僕を連れて外に脱出すると、すぐさま結界が破れて、亀山小学校は、元の廃校に戻ったのだという。

 

 

「その後も大変でね……幸い、周囲の店の皆は気づかなかったみたいだけれど……」

 

 

みんなはさらわれた子達共々、全員ウサオちゃん喫茶に戻ってきたのだけど、その時には日付が変わっていた上に、気を失っていた僕は、フェレットに戻る事ができなかったので、僕は店長さんに預けられ、他の皆は一足先に帰っていったんだとか。

 

 

「なのはちゃんだったっけ……?

 あの子、最後まであなたの事を心配してたわ。」

 

 

「そうですか……」

 

 

また、なのはに心配をかけてしまった……

事件は無事に解決したけれど、心のどこかにはやるせなさが残っているように感じる。

 

 

「……さ、これ以上心配させないためにも、早い所帰ってあげなくちゃね、

 けどその前に、汚れを落とすためのシャワーと朝ごはん……にはちょっと遅いけど、食事の用意しておいたから、帰る前に食べていきなさいな。」

 

 

「あ……どうもありがとうございます」

 

 

 

みんなを安心させるため、早いところ帰らなければならないが、アレだけ力を使った後に長い事眠っていたせいか、またしても、かなりの空腹感を感じていたので、店長さんのご厚意に甘えて、用意してもらった食事をいただく事にした。

 

 

そうやって、僕は店長さんからバスルームを借りてシャワーを浴び、洗濯してもらった服に着替えてから、お店の方へ降りると……

 

 

「あら、ようやくお目覚めなのね、

 こっちは、もう一杯目を食べ終わる所よ。」

 

 

そこでは、僕は空になったどんぶり2つを前にお茶をすすっている、大量のフリルが付いた特徴ある服装の女性……

 

 

「ゆ、紫さん!?」

 

 

幻想郷で出会った妖怪の賢者、八雲紫さんが笑顔でこちらに手を振っていた……

 

 

「はぁい、昨日はお疲れだったみたいね、

 店長さん、カツカレーうどん定食の追加おねがーい。」

 

 

「はぁ~い♪ ご注文承りましたぁ~♪」

 

 

挨拶してくれた後、彼女は内容がなんとも判断しづらいメニューのお代わりを注文する。

 

 

カツカレーうどん定食……カツカレー・うどん定食なのか、カツ・カレーうどん定食なのか……って、そんな事考えてる場合じゃない!!

 

 

「な、なんであなたがここに……?」

 

 

あの事件以降、それなりに出会っている気はするけれど、関係者がいない所に、こんなあっさりと姿を見せて……

本当、なんでこんな所でお茶をすすってるの!?

 

 

「なんでとはご挨拶ね……

 あなたの仲間や、さらわれていった子達を、誰が送り返してあげたと思ってるの?」

 

 

「え……?」

 

 

そう言われて、僕は事件について思考を巡らせてみた。

 

 

そういえば、店長さんはなのはやさらわれた子達を送り返したと言っていたけれど……

 

幻想鏡は、使う為には行先を知っている必要があるから、なのは達はともかく、さらわれた子達を送り返す事は出来ないはず……

 

 

……という事は、彼女達を送り返してくれたのは……

 

 

「まぁ、たまには役に立たないとね、

 ……そうそう、さらわれてった子達の記憶は、さくらが魔法で消してくれたから、秘密が漏れたり、今回の事件が大きくなったりはしないはずよ」

 

 

「あの……いいんですか? ここでそんな話をして……

 店長さんは、マギロッドの事情を知ってるからともかく、あっちのお客さんは……」

 

 

そう言って、僕は窓際の一番奥の席の方を向く。

 

 

そこには、僕達以外の店内唯一の客と思われる人……

店内だというのに、麦わら帽子をかぶったままで、丸いサングラスをかけ、ベージュの肌着・股引きを着用して、お腹周りに腹巻をまいている……

 

食い入るように新聞記事に目を通している、どう見てもカタギとは思えない格好のおじさんが座っていた。

 

 

結構距離があるから、簡単には聞こえないとは思うけど……

 

 

「構わないわよ、こちら側じゃ今時こんな話に耳を傾ける人間なんていないでしょう?」

 

 

それは、そうかもしれないけれど……

 

……こうして、ここで話している僕と紫さんが異世界人と妖怪だと知ったら、あのお客さん、どんな反応示すんだろう?

 

 

「はぁい、カツカレーうどん定食おまちどぅ♪

 こっちはユーノ君の分よ、どうぞ召し上がれ。」

 

 

そしてそのタイミングで、店長さんがスマイルで両手にそれぞれのお盆を乗せながら、紫さんの注文と一緒に僕の分の食事を運んできてくれた。

 

 

持ってきてくれた内容は、カツカレーが乗ったうどんと山盛りのご飯とみそ汁……

あのメニューの正しい切り方は、カツカレーうどん・定食だったのか……

 

 

「いいわね、こういうメニューは嫌いじゃないわ、

 さぁ、早くいただいちゃいましょう。」

 

 

昨日のパフェと違って、こっちの材料は至極まっとうなようだし、

紫さんがお代わりしている所を見ると、味も十分行けるのだろう。

 

「それじゃ、いただきます。」

 

 

そう言って、僕は先にカツカレーうどんの方から手を付けた、

……これだけ大ボリュームの料理、けっこう久しぶりかもしれない。

 

 

それにしても、紫さんはお代わりを注文してるのにどんぶりが僕の物よりも一回り大きいのに、嬉々とした顔でうどんをどんどんすすりこんでいっている……。

 

 

一体、彼女のどこにあれだけの量が入っていくのだろう……?

 

 

そんな小さな疑問が浮かべながら食事を勧め半分くらい食べ終わった後、僕はふとある事が気になったので、店長さんに尋ねてみた。

 

 

「あの……店長さん?

 そう言えば、コクエンって元々どういう奴だったんですか?」

 

 

「あら……気になる事でもあったのかしら?」

 

 

最後の戦いで、コクエンが見せたあの表情……

あの時、僕はあいつから強い怒りと同時に、やるせないような悲しみを見たような気がした……

 

何故、あそこまで力を求めるようになったのか……?

 

 

「……あの子が根城にしてた亀山小学校、実は廃校になったのはつい最近でね、

 この町、ガラが悪いのが多いのは見ての通りだけど、亀山小学校とその隣の道場でも、たびたび問題が起こってたのよ……」

 

 

話によれば、ここ山茶花町は空手の道場で有名だったそうで、特に亀山小学校の生徒は道場と学校が隣同士だと言う事もあり、生徒はほぼ強制的に入門させられた上、道場内では力を背景にした

大小様々な揉め事が、常に起こっていたそうだけど……

 

伝統と言うか、通例と言うか、半ばそれが当たり前と言う雰囲気になっていたため、周囲の大人は、我知らぬとばかりに対策をしてこなかったのだという。

 

 

「……それが、先々月に証拠付きの怪文書がばらまかれて、その内容が学校・道場関係者のスキャンダラスな内容で大騒ぎになっちゃってね……

 元々、立地的にも問題があったし、亀山小学校と道場は閉鎖することになっちゃったの。

 誰の仕業かは、表向きにはわかってない事になってるけど……」

 

 

「マギロッドを手に入れたコクエンが……?」

 

 

僕の問いに、店長さんは静かにうなずいてくれた。

 

 

少しばかり荒いけど、結界に建築と、色んな魔法を使いこなしてたくらいだ、

魔法を使えない人間に対してならば、それくらいの事は朝飯前だったろう……

 

 

「あの子も、当時は生傷絶えなかったからね……店の裏で、悔しさに耐えてるのも、何度も見た事あるわ。

 ……あの子の手下の中にも、同じ思いした子がいるから、まんざら、暴力だけでしたがえていたわけじゃないのよ。」

 

 

「そうですか……

 ……ところで、あの後コクエンはどうなったんですか?」

 

僕の放った一撃を受けて、コクエンは一瞬笑ったような顔をしながら崩れ落ちた。

その後で、フェイトが抱え上げて去っていったところまでは覚えているけど……

 

 

「……少なくとも、今のところは見つかってないみたい、

 仲の良かった子達何人かも含めて、見つかってないってきいたから。」

 

 

彼女は、アイツを連れて一体何をするつもりなのか……?

性格はともかく、実力は本物だから、今後、彼女の協力者として出てくるのなら、今後の戦いは困難になっていきそうだ……。

 

 

「……はてさて、今度は何が起こる事やら……

 ……ごちそうさまでした」

 

気が付くと、紫さんはまたもや空になったどんぶりを置き、また食後のお茶をすすり始めていた。

 

 

僕も、わずかに残ったうどんとごはんを口の中に放り込み、よく噛んでから飲み下す……

 

 

「ふぅ……ごちそうさまでした。」

 

 

さて、お腹も一杯になった事だし、そろそろ僕も帰らないと……

 

 

「それじゃあ、僕はこの辺で失礼します。

 早く、みんなを安心させてあげないと……」

 

 

「ごくろうさま、また何かあったらいつでもいらっしゃい、

 相談くらい、乗ってあげるから。」

 

 

 

そして僕は、挨拶を返してくれた店長さんに頭を下げた後、店の外に出る為にドアノブに手をかけようとした……その時。

 

 

「え……」

 

 

足元に突然、階段を踏み外したかのような浮遊感を感じ、思わず下を見てみると、そこには見覚えのある不気味な目が浮かぶ空間が広がっていた……

 

 

こ、これはまさか……

 

 

「帰りは、私が送っていってあげるわ、出た時に変な落ち方しないように気を付けてね♪」

 

 

「ちょっと! 紫さん!?

 奥のお客さんどうするんですかぁ~~~~……ッ」

 

 

僕は紫さんのおせっかいに抗議の声を上げてながらもなすすべがないまま、大量に赤い目が浮かぶ不気味な空間を、垂直落下していったのだった……

 

 

 

 

「それじゃ、店長さん……私もこの辺で……

 お代、ここに置いておくわね、おつりは取っといて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 

「大変な事になってるようだな、店長さんよ。」

 

 

「まぁねぇ……それより、アンタも仕事なんだろうけど……もうちょっとは、放っておいてあげなさいよ?」

 

 

「子供のケンカに手を出す気はねぇよ、

 ……ただ、子供は大人がちゃんと見守っててやんなきゃな。」

 

 

「全くよ……

 それにしても、アレだけすごいのが、まだ残ってたなんてね。」

 

 

「ウチの買いなさられたのとは、格が違うわな……。」

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて4章・コクエン編エピローグとなります
遅筆と多忙期間があったせいで、だいぶかかってしまった……


なお、今回はユーノの覚醒・準備段階のお話でした
コクエンとは、性格的に対になる感じになっており
他人の為に尽くすユーノと、我欲を貫き通すコクエンのぶつかり合いは
割と最初から考えてはありました


そして、きな臭いお話も出てきましたが、果たしてこの後どうなる事やら……
なお、原作でのコクエンの称号は四天王……
果たして、残る四天王の正体と、次の相手はどいつだ……!?
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