知世の野望 ~The Magic of Happiness~ 作:(略して)将軍
SSというよか、ゲーム的かなとか悩んでたりしましたが
もう吹っ切れたつもりで、その歩行性でやっていく事にしました
「あーーーっ!? こら! なんちゅーとこにバナナの皮置くねん!」
「うふふ、こういうアイテムだからこそ的確に使わなきゃ。」
くそーっ、またあとちょっとの所で1位を取られてもうた……
あんだけ見事なバナナの皮使いするやなんて、このねーちゃん絶対初心者とちゃうやろ!
なにが、初めてだからお手柔らかに……や!
猫かぶるんもええ加減にしとき!!
……しかしまぁ、こうやってこの姿で思う存分ゲームが出来るちゅうんはなかなか快適やな。
さくら、最近は特にゲームで対戦してくれへんから、ここんところは見知らぬだれかとのオンラインプレイか、スッピーとのチャットプレイばっかりやったけど、こうして横の相手と対戦する方がおもろいわ。
あの目つきの悪いクソガキどもの起こした事件が解決してから数日後。
ワイらは事件の大まかな内容を、改めてこのネーちゃん【八雲紫】に報告したんや。
マギロッドに黄昏の魔法使い、コクエン一派、地底に現れたボロボロの機械人形や、地面の底で光るモノ……
ワイの話を、ネーちゃんは表情を変えずに、うなづきながら聞き続け……
そして、一通り話し終わった後に微笑みながらこういいよった。
「ちゃんとやってくれているみたいね。
……それじゃあ、今回の事件解決のご褒美に、ちょっとしたものをプレゼントしてあげるわ」
そう言われて、ワイらはまたあの不気味な目玉の浮かぶ空間を通り抜けさせらると、その先にはこの古風な一軒家があった。
なんでも、ここはワイらが山茶花町に行く時に通った、クラスターと呼ばれとる空間の友枝町の外れにあった、出入り口のすぐそばやっちゅうことで……
幻想鏡で作った出入口全部を、ここへとつなげられる上、必要なものがあれば改めて用意するから、今後ここは自由に使ってもいいとの事やった。
「これならば、秘密基地にピッタリですわね……
紫さん、どうもありがとうございます」
なんか怪しい気もするけど、とりあえず知世は大喜びしてたから、まぁええか。
電気代やネット代とかは、全部ねーちゃん持ちっちゅう話やし、出入口全部と繋がってるっちゅうんは、ワイにとってもありがたい話や。
「……しっかし、ねーちゃんどう言うつもりなんや?」
「何の話かしら?」
「とぼけるんやない、事件が終わった後に、いきなりワイ等の前に現れたり、こないな一軒家をくれたり……
幻想の加速を止めるっちゅうんやったら、こないな事は悪手なんとちゃうか?」
事件後、このネーちゃんは、記憶が消せへんかった連中や、協力してくれたロッドマイスター、あの喫茶店のおっちゃんに、スキマの力込みでハッキリ見られてしもうとる。
あんまし数は多くないし、秘密をべらべらしゃべる相手やないけど、幻想を認識されるちゅうんは、そっち側の存在にとってあんまええ事やないはずや……
……てっきり、ワイは連中のマギロッドも回収するかと思っとったけど、いつの間にか知世が集めとった破片を受け取った以外には、さほど興味は示しとらんかったし、ここを貰うてから訪ねてくるようになった山茶花町の連中に対しても何かしている様子もない。
……おまけに、この一軒家は幻想郷の方にも繋がっとるらしく、あの生意気バカ妖精やその取り巻き、それに骨董店の半妖にーちゃんをはじめ、その他に向こう側の見た事ない連中までやってきとる。
昨日は、取材とか言ってブン屋っぽいネーちゃんがインタビューに来よったし……
あのネーちゃん、天狗って言うとった割に、鼻は普通やったけど。
「そのあたりに関しては、特に問題視はしてないのよ、
過去に比べて幻想への流動が大きくなっているのは確かだけど、この程度は想定内だから。」
「……ねーちゃん、率直に聞くけど、話に聞く『黄昏の魔法使い』について知っとるんやないか?
そもそも、そいつがネーちゃんの言う黒幕とはちゃうんか?」
前の事件を起こしたのはコクエンの奴やけれど、そもそもの原因を作ったんは黄昏の魔法使いで間違いないはずや。
それに、コクエンが拠点にしてたあの小学校……
コクエンの魔力が共鳴した時に見えた光景を考えれば、あないな場所を拠点にしてたちゅうんは、単なる偶然とは思えん。
もしかしたら、事件を起こしたんも、その黄昏の魔法使いになにか吹き込まれた可能性も……。
「報告してもらった事は感謝してるし、現時点でその可能性は高いと思うけれど……
見た事もあった事もない相手に関して、私から言える事はないわ。
写真なり、録音なりがあるというなら、話は別だけれど。」
「……まぁ、ワイ等も奴に関しては人からあったっちゅう話を聞いただけやからなぁ。」
あれから、ここに尋ねてきた山茶花町の連中に、黄昏の魔法使いについて話を聞いてみたけれど、みんなそいつに逢ったのは1度きりっちゅう話で、記録に残るような何かは持っておらんかった。
一人、スマホを胸ポケットに仕込んで盗み撮りをしたやつが居ったらしいんやけど……
結局、それにはなんも映っておらず、音声も録音されてなかったそうや。
いったい、何者なんや? 黄昏の魔法使いちゅうんは?
協会の関係者とは到底思えんし……
「とにかく、前よりはだいぶ安定してきた感じはあるけれど、まだ不自然に大きい幻想の加速は続いている状況よ。
前回同様、その原因となっている奴等の拠点を潰していけば、いずれ奴らはあなた達の前に姿を現すはず……」
「……予想はしとったけどまだおるんかい、コクエンと同じような事をやっとるヤツ。」
魔法の力を使うて、あちこちの小学校を支配下に置いて女の子を侍らせようなんて、ホンマトンデモないヤツやったわ。
……ある意味で、小学生らしいと言えばらしいけど、この辺りさくら達は妙に大人な感じあるさかい。
ま、さくらは子供っぽい所も多いけどな。
「……ところで、一つ聞きたい事があるんだけど、あの氷の妖精が来てた服って、知世が作ったものなのよね?」
「? ああ、ネーちゃんに言われた通り、取引する為に用意したそうやけど、それがどうかしたんか?」
なんでも、ワイが悪ガキどもを見張ってた時、万が一の時に備えて力を借りる為にわざわざ用意したそうで、アイツもえらくあの服を気に入っておったわ。
「ねぇ、もしよければなんだけど、あなた達もう少し私の力を……「な、なんだお前たち!?」」
紫ねーちゃんが、何か意味ありげにワイに何かを訪ねて来たけど、ちょうどそのタイミングで誰かが挙げた大声にかき消されてしもうた。
……あの声は山茶花町の奴らの声みたいやけど、表の方で何かあったんか!?
!? この魔力の気配の群れは……!
「あ! ちょっと!!」
ワイは引き留めようと手を伸ばす紫ネーちゃんには気もかけず、声のした玄関の方へと駆け抜けていった。
―――
「あ、あなた達は……!」
家の中で知世ちゃん達と話している途中、表の方から山茶花町の子達の叫び声が聞こえて来たので、私達がそちらの方を見てみると……
そこでは、遊びに来ていた山茶花町の子達と、なぜか全員ニット帽を被っている、コクエン君達と一緒にいた子達がお互い左右に分かれてにらみ合っていました。
「お前たち、まさかこの前の仕返しに……」
「うるさい! お前たちに要はない!!」
どちらも、今にもケンカを始めそうな雰囲気で、縁側に座っていたさくらちゃんは、なのはちゃんの事を守る様にぎゅっと抱きしめており、なのはちゃんは最初の声で目が覚めてしまったのか、衣装はそのままだったけど、大きくなったレイジングハートを握りしめていて、いつでも対応できるように構えていました。
ユーノ君も、相手の事を警戒しつつ、すぐ飛び出していけそうな体勢を取って、奥の方から駆けつけてきたケロちゃんは、そのまま庭へと飛び出して姿勢を低くしてうなり……
「あいつら……また、なんかやらかすつもりなの……!?」
アリサちゃんは、あの子達を見て不機嫌そうな顔をしながら吐き捨てるようにそう言っていたけれど……
「待ってください、なんだか様子がおかしいです。
……あの子達、マギロッドを展開してませんわ」
「え……?」
知世ちゃんの指摘で、私達はあの子達が手ぶらだという事に気が付いた。
多分、ポケットの中とかに入っているとは思うけれど、私達を襲うつもりならあの時みたいにマギロッドを手に持ってるはずだよね……?
じゃあ、別の理由があるのかなと思っていると、
彼等はみんな揃って私達の方を向いて、そのまま勢いよく地面に正座したかと思うと……
「「「「「「「「この間は、ホントすいませんでした――――ッ!!」」」」」」」」
そのまま地面に手をついて、深々と頭を下げたのでした。
「……はァ!?」
「え……ちょっと、なんのつもりよ!?」
この意外過ぎる行動に、みんな揃って困惑してしまい、山茶花町の子達も、先ほどまでのこわばった表情から一転して訳が分からなさそうな顔をしちゃったけど……
「みなさん、顔を上げてくださいませ、
……どういう事か、説明していただけますか?」
知世ちゃんだけは、あんまり慌てた様子もなく、頭を下げた子達の前に駆け寄り、行動の理由について尋ねました。
「はい、あれからの事なんですけれど……」
みんなの代表っぽい子の話によれば……
コクエン君が負けて、山茶花町から姿を消してから、彼等の立場は凄く悪くなってしまったのだとか。
「まぁ、これまで好き放題してたから、そのあたりは自業自得だって分かってるんですけど……
ただ、それから色々考え事をするうちに、心の奥底がなんだか痛むような感じがして……」
詳しく話を聞いてみると、その原因は私達を連れ去った事への後ろめたさからか、いたたまれない状態が続いたので、その事を謝ろうとした見たいだけれど、大半の子達は事件の記憶が消えてしまったので、それも出来なくなってしまったとか。
「……それで、事件を覚えてるすずかや奈緒子さんに謝って許してもらおうっての?
……ムシが良すぎるわよ! これまで好き勝手しておいて!!」
「アリサちゃん……!」
アリサちゃんは、許さないと言わんばかりに怒っているけれど、すずかちゃんは怒るアリサちゃんを諫めている。
「すずか! アンタはこいつらをそんな簡単に許せるの!?
程度や理由はどうであれ、こいつらのやったのは誘拐なのよ!!」
それを聞いて、地面に正座をしているみんなは、更に申し訳なさそうに俯いてしまったけれど……
「でも……私が連れていかれたそもそもの原因は……
アリサちゃんが、なのはちゃんが最近友枝町の子と付き合ってる証拠を掴もうって、強引に誘ったからじゃあ……?」
すずかちゃんのその言葉に、アリサちゃんは一瞬『うっ……』っと漏らすと、非常にマズそうな表情で大粒の汗を流しながら、狼狽しはじめました。
「……アリサちゃん、どういう事?
私の事が心配で追ってきたとは聞いたけれど、お付き合いとか、証拠とか言う話は初耳なの……」
それをしっかり聞いていたなのはちゃんは、アリサちゃんの事をジトっとした目で見つめてており……
表情こそ穏やかだけど、怒っているのはすぐにわかりました。
「い、いや! それだけ心配だったって事よ!!
近いとはいえ、学区が離れた学校の子が相手だっていうんだもの!
ほら、騙されてないかとか気になって……」
突然の事に、アリサちゃんはさらにしどろもどろになって弁解しようとしたけれど……
「友枝町でも有名なスポーツ万能の、かわいい金髪の子で、
去年の眠れる森の美女の王子様役が、すっごく人気だったって……
話を聞いてる時のアリサちゃん、すごく悪そうな顔をしてたよ。」
「すずかッ!!」
すずかちゃんが、追い打ちをかけるように話の続きをいうと、アリサちゃんは、余計な事を言うなと言わんばかりに、すずかちゃんを叱ったけれど……
それを聞いたなのはちゃんの視線は更に鋭くなっています。
「金髪って、ボクの事?
でも、その他の特徴って……」
「眠れる森の美女の王子役って、私の事かな……?
去年の劇でやったんだけど……」
さくらちゃんとユーノ君は、身に覚えがあったりなかったりする内容に困惑していたけれど、これってつまり……
「どうやら、二人の特徴が混ざってしまったようですわね、噂とはそういうものですから。」
うん、どう聞いてもそうだよね、知世ちゃんの結論に私はそのまま静かにうなづく。
「……それで、奈緒子ちゃん、すずかちゃん、いかがなさいますか?」
そしてすぐ後に、知世ちゃんは私達に対してそう尋ねてきました。
質問の意図はもちろん、この子達を許すかどうかって話だとおもうけど……
「私は……大丈夫です、ちょっと驚いたけど、ヒドイ事はされなかったし……」
すずかちゃんは、今はもう事件の事を気にしていないようで、
怒っているアリサちゃんをよそに、彼らの事を許したみたい。
もっとも、今アリサちゃんはなのはちゃんに対して、焦りながら弁解をしているけれど……
そして、私も……
「……二度とこんな悪さをしないって誓えるのなら、私も許してあげる、
みんなのおかげで、不思議体験ができたから……ね。」
「あ、ありがとうございます! 二度と悪さは致しません!!
……この頭に誓って!!」
私達の言葉を聞いた彼らが、そう言って私達に改めて頭を下げた後、フードを取ると……
「……わっ!? そ、その頭……」
前に逢った時、モヒカン、剃りこみ、パーマと、小学生らしくなかったちょっと怖い雰囲気だった髪型が、みんなお坊さんみたいな丸刈りへと変わっていました。
「そ……剃っちゃったの? 頭……?」
「すいません、今の俺達にできる詫び、この程度しか思い浮かばなかったので……」
まさかの行為に、私を含めたみんなは驚きの表情を隠せません。
山茶花町の子達も、ここまでするとは思ってなかったらしく、不満そうな表情をしてる子はほとんどいなくて……
「わかりましたわ、奈緒子ちゃんとすずかちゃんがこう言っているのですから、これ以上責めるのはやめにいたしましょう。
皆さんも、この話はこれまでという事で……よろしいですわね?」
いぶかしげな顔をしてる子はまだ何人かいたけれど、知世ちゃんに対して抗議する子は一人も出ません。
「ではみなさん、これからはなかよくお願いいたしますわ。」
そして、知世ちゃんが笑顔を浮かべながらそう言うと、どちらの子達も少し顔を赤くしながらうなづいたのでした。
「まぁ、知世がそう言うならええねんけど……
みんな、ホンマ人がええなぁ。」
ケロちゃんは、ちょっとあきれた顔でそう言ったけれど、この後、知世ちゃんがちょっと悪そうな顔をしながら、私に耳打ちした台詞を聞いたらどう思ったのだろう……?
「これで、さくらちゃん撮影の大道具係をゲットですわ……」
そんな知世ちゃんの、ちょっとあくどく聞こえるこのセリフに対して、私はメガネを人差し指で直しながら、こう返しました。
「悪役や、戦闘員役もよろしくね……」
―――クシュン!!
すると、その言葉が原因なのか、背中の方からさくらちゃんの時季外れのくしゃみが聞こえてきたのでした。
「と、ところで一つ聞きたいんだけど、キミたちはコクエンの元でジュエルシードをどれだけ集めたんだ!?」
一方で、ユーノ君はこちらの世界へきた理由のジュエルシードについて彼らに尋ねています。
「ジュエルシード……? あの宝石のことか? 確か、全部で5つだったよな?」
「あ、ああ……
あの宝石が化け物に変わったりとかして、色々大変だったけど……」
確か、全部で21個だって聞いたから、これまで見つけた分を合わせると、まだ半分近くが見つかっていないことになるはず……
「せやけど、コクエンの事件が起こる前から、ジュエルシードは見つからんようになってしもうとるはずやで?」
「……多分、俺達以外のロッドマイスターが拾ってるんだと思う。
山茶花町以外にも、クラスターを利用してるマイスターはたくさんいて、手に入れたジュエルシードの中には、そいつらから巻き上げたのもあるはずだから……」
ケロちゃんの言葉に対し、後ろの方に座っていた子が申し訳なさそうにそう漏らしました。
巻き上げるって言うのは、やっぱりよくない事だけれど、そのまま持っていたら事件が起こっていたかもしれないし……
本来の価値を知ってたり、本物の宝石を知ってたりする子は居なかったと思うけど、拾ったものをおまわりさんに届けなかったから、その辺はまぁおあいこ……になるのかな?
「……そうなると、なんとかしてジュエルシードを拾ったロッドマイスターを探す事は出来ないでしょうか?」
彼らの意見を聞いた知世ちゃんがそう言うと、山茶花町の子達と座っている子達は、それぞれ顔を見合わせ、ボソボソと小さな声て何かを相談し始めました。
「なにか、思い当たる事があるの?」
気になったので、みんなに尋ねると……
「確実って訳じゃないけど、こっち側で情報を集めるんだったら、あそこに行くのがいいんじゃないかなって思って……
もしかしたら、ジュエルシードもそこにあるかもしれないし。」
詳しい内容はまだわからなかったけど、先頭の子がそう言うと後ろにいた子達は示し合わせた様に、一斉にうなづきました。
久しぶりに出た気がする、知世大暴走的な雰囲気……
劇場版2作目の冒頭と、クリアカードのリバースの回で見せた
ブラック知世がついに表に侵蝕してきました
おまけに、賛同するブラック眼鏡も加わって
果たして、この後どうなる事やら……
あと、話を中断されてしまった紫さんの事も忘れないでください
自分の真意を話さないせいか、肝心のお願いを聞いてもらえない状態