知世の野望 ~The Magic of Happiness~ 作:(略して)将軍
しかし、この話もどっちの方向に飛んでいくことやら……
着地点は、きちんとなのはに合わせる予定なんですけどね
「へぇー、友枝町と海鳴市から……
あの辺にも、ロッドマイスターになった子がいたんだ」
井出君から情報通だとうかがった彼女、小野寺マリちゃんはプールからみんなを上がらせた後、プールサイドにあったテーブルまで案内してくれた後で、話を聞いてくれました。
「うーん……まぁ、そんなところ……なのかな?」
本当は、私もなのはちゃんも、マギロッドじゃない魔法を使うんだけど、その辺はあんまり大っぴらに説明できないから、ちょっと歯切れの悪い答えになっちゃったけど……。
「ところで、マリちゃん達もマギロッドを黄昏の魔法使いという方から……?」
「うん、みんな知らない路地裏に入り込んだと思ったら、そこで出会ったローブを被った女の人からもらったの。」
「マリちゃんは、風間達を除けば私達の中で、一番マギロッドを使うのが上手でね……
使うのが苦手な子や低学年の子達に、使い方を教えていくうちに、これだけの人数が集まったんだよ。」
マリちゃんの後ろから、さっきマリちゃんの事を教えてくれた子が、マリちゃんの肩に親しそうに手をかけながら、そう説明してくれました。
他の子達も、きっとマリちゃんの事を慕ってるんだろうなぁ……
「多分、あなた達もそんな関係なんでしょ?
さくらちゃんが、マギロッドの使い方を教えてるとか……」
「間違ってはない気もしますけど……
でも、そういう関係だとよかったかな……?」
マリちゃんの言葉に、なのはちゃんは何故か少し口ごもった風に答えました。
でも、なのはちゃんに教えてるのは、ユーノ君の役目だから……
「うーん、教えてるってのは違うかな……?
特訓には付き合ってるけど、なのはちゃんもユーノ君も、私よりもすごくしっかりしてるから
あんまり、私から教える様な事もないし……」
私の場合、やっぱりすごいのは私じゃなくてカードさん達だから、その辺りは大変なのに頑張ってる二人や、みんなから尊敬されてるマリちゃんの方がすごいと思う。
「それにしても、それなりに大規模な街に大きなプールを作るとか、魔法っていろんな事が出来るのね、なんか、どっかで見たような風景って気もするけど……」
「あー、やっぱりわかる?
その辺りは、魔法だけってわけでもなくてね……」
少し呆れた感じでアリサちゃんが言うと、マリちゃんは少し気まずそうな顔をしてしまいました。
「どういう事?」
不思議に思って、訪ねてみると……
「大人に黙って、こっそり魔法の練習とかやってる内に、いろいろやりたい事が出来てきちゃってね……その中の一つが、秘密基地を作る事だったの。
それで、どうやって作ろうかって話の中で、最近流行りのゲームみたいにできないかって話が出てきて……」
「は、流行りのゲーム……?」
「それって、ブロックを積み上げたり、素材を集めて、お家とかのいろんな建物を作ったりするあの……?」
「さくらさん、知ってるんですか?」
私は、そんなに遊んだことはないけれど……
(最近、ケロちゃん一日中そのゲームで遊んでるんだよ……
お菓子屋さんとか、お菓子の家とか、ケロちゃん風の石像とかたくさん建てたりして……)
(確かに、その辺はケロちゃんらしいですわね)
時々、チャットしながらエリオル君の所の黒猫さんと一緒にやってるみたいで、何度か『だったら、お前やってみぃや!!』って、怒ってた時もあったけど……
「それが、思いのほかうまく行っちゃって、気が付いたらこんな町が出来ちゃってたってわけ。
……今でも、建材を集めるために地面を掘ったりなんかしてね。」
「あー、そう言えば町のはずれに、鉱山の入り口っぽいのがあったけど……」
「あのゲーム、今ものすごく流行ってるからね……
みんな、同じ考えに行きついたらしくって、どこもみんな同じ方法で自分達の街を作ってるのよ。」
そう言えば、コクエン君の居たお城を見た時も、初めて見る感じはしなかったけど、確かにあの建物は、なんとなくあのゲームで作った建物によく似てたかな……
「まぁ、そういった相手が友好的とは限らないけどね……
唐突だけど、あなた達コクエンって名前を聞いた事がある?」
「ほえっ!?」
ちょうど、あの時の建物の事を思い出したタイミングでコクエン君の名前を出されたので、私は思わず驚いて声を上げてしまいました……
みんなは声を上げはしなかったけど、やっぱり驚いてたみたい。
「その様子だと、やっぱり名前くらいは知ってるみたいね……
山茶花町近辺を支配下に置いていたロッドマイスターで、アイツも部下を使って大きなお城を建ててたそうなんだけど……
こいつが……なんというか、自分の欲望に忠実なやつでね、
何度か、この町にちょっかいをかけてきたことがあったんだけど、
……少し前に、ソイツの部下があっちこっちでかわいい女の子をさらいに来たのよ。」
「……その様子だと、マリちゃん達の所にも?」
コクエン君の話題を出した頃からイライラしはじめマリちゃんに、恐る恐る尋ねてみると……
「……まさか、クラスターの外であんな真似をするなんて思ってなくて、こっちの事情を知らない子が何人か連れてかれちゃったのよ……
まぁ、なにがあったのかわからないけど、さらわれた子はその日の内に家に戻ってたんだけどね。」
「そ、そうなんだ……」
やはり、コクエン君たちはマリちゃんの友達も、あの時に連れて行ってしまってたみたい。
その辺の事情、私達はよーく知ってるけど、あんまり知られないほうがいいよね?
そう思ってみんなの方を見回してみると、なのはちゃんとユーノ君はお互い困惑した感じで顔を見合わせてて、アリサちゃんは不機嫌そうにジュースをすすり、知世ちゃんはいつも通り楽しそうに笑ってました。
「事件の翌日になにがあったのか、流石に気になったから、おとといに山茶花町まで行って調べてきたんだけど、話によればコクエン一派は誰かに壊滅させられたって話で、事件については何もわからなかったし、その誰かに関しても、あやふやな噂しか掴めなかったわ。」
「噂?」
その誰かって、私達の事だよね……?
山茶花町のロッドマイスターのみんなは黙っててくれるって約束してくれたから、別の子から聞いたんだと思うけど、いったいどんな噂になっちゃったんだろう……?
「なんでも、たった一人で奴らの拠点に乗り込んだそうなんだけど、ほとんどの攻撃はひらりとアクロバットみたいな動きでかわしたうえ、よけきれないのは頑丈な防御魔法で受け止めてかすり傷一つ追わず……
攻撃で、超強力な光線や嵐のような暴風を巻き起こしたもんだから、コクエンは吹っ飛んじゃった上に、残った配下も泣いて土下座して謝ったほどのロッドマイスターだとか……」
(一人って……な、なんかとんでもない話になっちゃってる!?)
これって、私となのはちゃんとユーノ君の情報がごちゃ混ぜになっちゃってるよね……?
アリサちゃん達が巻き込まれるきっかけになった噂もそうだけど、どうして噂ってこんな風になっちゃうんだろう……?
大まかな出来事とかは、間違ってない気もするんだけれど……
「……もしかして、なにか思いあたる事があったりする?」
「ほえ!? ど、どうして……?」
「話によれば、その子は女の子だって聞いたし、それに……」
……もしかして、私達の事気づかれてる!?
いや、まだそうと決まったわけじゃないよね……?
私は変な声を出さない様に落ち着いてから、改めてマリちゃんの話の続きを聞くと……
「メイド服のコスプレをした、アリサって名前とも聞いたのよ。
その衣装、コスプレっぽいし、そっちの子と同じ名前でしょ?
だから、関係者じゃないかなって思ったんだけど……」
「ちがいます、全くの別人です。
私、マギロッドとか言うの貰ってませんから」
名指しされたアリサちゃんは、マリちゃんに背中を向けつつ、首だけ彼女の方に向けて、笑顔ではっきりと答えました。
―――ギリギリ……
「ふぇ~……!」
……眉間にはシワが寄っていて、マリちゃんの方から見えない正面側では、両手でユーノ君のほっぺをつかみ、伸びきってしまいそうなくらいに力強く引っ張り上げていたけれど……
「そうなんだ……まぁ、ここで遊んでる子にもマギロッドを貰った子に連れてきてもらってる子は居るしね……
……そういう訳だから、ここと同じ様に作った町は、結構あっちこっちにあるわ。」
「ゲームの影響でかぁ……
まぁ、ある意味納得のいく使い方って気もするわね。」
そう聞くと、アリサちゃんは腕に力を込めたまま上を見上げました。
なにか考え事をしているみたいです。
……確かに、カードキャプターになる前とかは、漫画とか、ゲームとか、絵本とかの魔法とかが使えたらいいなぁって思うことは、何度かあったかな。
実際に使えるようになってからは、そうでもないけれど……
お城みたいに大きい家は疲れるし、不思議の国のアリスの時も大変だったし……
「……でも、それってつまり、あの不良連中も建物を作れるって事だから……」
「アリサちゃん、どうかしたの?」
考え事が終わったのか、アリサちゃんはユーノ君掴んだまま、漏らす様にそう言いました。
その言葉に、ユーノ君を心配しているなのはちゃんが反応すると……
「……なのはくらいなんじゃないの?
戦闘用の魔法しか使えない魔法使いって……」
―――グサッ
アリサちゃんがそう言った直後、なにかが刺さるような音聞こえたかと思うと、なのはちゃんはまるで凍り付いたような笑顔をしたまま胸に手を当てて、うずくまってしまいました……
―――
「……みんな、お疲れ様、お菓子の用意できたから、この辺で休憩にしよう。」
「了解しました、奈緒子お姉さま!!」
さくらちゃん達が、ジュエルシードの情報を集める為に、ロッドマイスターの集まる街へ向かっている間……
私達は、妖怪の紫さんからもらった一軒家周辺で、山茶花町から来た子達や、コクエン君といた子達が新しい建物を建てる作業の監督とお手伝いをしています。
私達があの事件で連れていかれたあのお城は、最近流行ってるゲームを真似して魔法を使って建てたそうなので、それを知った知世ちゃんと一緒に、アイデアを出し合いながら、こんな風に出来たらいいなとお願いしたら、みんな快く協力してくれました。
「ホントすごいねー、結構大きい建物お願いしたのに、もうここまでできちゃうなんて……」
「いえ、まだ外側だけですから、中の方も出来るだけ注文通りにしないといけませんし。」
みんなはそう言いながら、、やる気に満ちた笑顔を見せてくれてました。
早く完成したら、みんな驚いてくれるかな?
「それにしても、木材や石材はともかく、布とか、明かりとかの材料はどうやって用意してるの?」
今の段階でも、材料がすぐそこから手に入りそうな、木や石といった材料のほかに、飾りやのれんに使う布や、ガラスを使ったランプと言った、ちょっと手に入れるのが難しそうなものが、結構使われてるけど……
「ガラスとかは、砂とかを元に作ればできますし、他の小物も、マギロッドの力を利用して作れば、大抵のものは作れますけど……」
「鉄とか金属とかは、砂鉄集めたりすることもありますけど、基本は粗大ゴミに捨ててあるのを拾ってきて、それを分解して材料にしてます。
ゲームみたいに、鉱石とか掘れるわけじゃないですし……」
確かに、ゲームみたいに鉱石を炉で溶かして塊にするのって、魔法だけじゃどうしようもなさそうだもんね。
分解するのも、それはそれですごい技術だけど……
「他にも、適当な種を持ち込んで魔法を使えば、すぐ実がなるくらいに育てられるし……」
あー、確かに種のある果物とか食べると育てたくなるもんね。
……っていうか、そうやって育てる魔法とかもあるんだ。
「果物ばっかりじゃ、塩っけとか物足りなくなるから、資材の作成で余った金属とかを、買取やってるとこに持ち込んで、お菓子代にしたりとか……」
「……いいのかな、それって……?」
懐かしむようにしみじみと語る子の台詞を聞いて、すずかちゃんは心配そうにボソッとそう言いました。
確かに、大人に知られたらちょっと問題になるかもしれないけど……
「……すずかちゃん、それを言ったら昔ながらの孤独なヒーローや魔法少女だって、立場がなくなっちゃいそうだから、それはこの際考えないでおこうよ。」
世の中、少女漫画誌に連載しているお姐さんたちが、大人向けの雑誌で、未成年に堂々とお酒飲ませてる例とかも探せばあるだろうから、深く考えたら負けだよ、きっと……
「それにしても、初めて会ったときは攻撃用の魔法ばっかり使ってたのに、こんなことまで出来たんだね。」
「いやぁ、結局はゲームや、思いついたやつの真似ですから、あんまりえらそうなことは言えませんけど……」
そう言うと、みんなは顔を赤くしてあっちの方を向いてしまいました。
あんまり、ほめられるのに慣れてないのかな?
「……あの、奈緒子さん。
ちょっと気になった事があるんですけど……」
すると、今の話に何か気になる事があったのか、すずかちゃんは心配そうな顔な顔でそう尋ねてきました。
「どうしたの、すずかちゃん?」
「なのはちゃんも、みんなみたいに、こういうモノづくりをするための魔法とか使えるんでしょうか?
私、なのはちゃんの戦うところしか見てないから……」
そう言えば……さくらちゃんのカードは色んな事が出来るそうだし、ユーノ君も便利そうなのや、回復魔法を使ってるのは見たけれど、なのはちゃんは戦う為の魔法しか……
すずかちゃんの言葉を聞いて、そんな事を考えていると……
―――ヒュー……ドスッ!
どこか遠くで、なにかが高いところから落ちて、誰かに刺さるような音が聞こえてきたのでした。
ゲームを参考にしているというのは、まぁ小学生がこんな力を手に入れたら
まず参考にするのはその辺の発想からだろうなと言うイメージが元です
ケルベロスの知り合いの某店主も、某ゲーム参考にしてワープ空間つくっちゃったりしてましたし……
なお、ケルベロスの台詞はニューヤングチャンネルからネタを使わせていただきました
ちょうど出演してるのが、ケルベロスとスピネルの中の人なんですよね
……まぁ、変身前ではなく、変身後の方なのですが
そして、至近距離と超遠距離から言葉の暴力を受けたなのはの運命は……!?