知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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きら戦のイメージが浮かばなくてちと難産気味になってしまった
前半別シーン入れた事で、なんとか誤魔化してみる事に……


激突・わがままプロフェッサー

 

 

建築作業の合間の、穏やかな一服の時間、私はジュースを一口飲んでから……

 

 

 

「……そう言えばさ、すずかちゃんはなのはちゃんが魔法を使ってるって知った時、どんな事思った?」

 

 

私はすずかちゃんに対して、何気なくそんな事を尋ねてみた。

 

 

「どうって……どういう意味ですか……?」

 

 

「あ、ごめんごめん、別に深い意味は無いよ、ただアリサちゃんは、なのはちゃんがその辺の事情を黙ってた事、結構不満だったみたいだけれど、すずかちゃんはそんな事ないみたいだから、その辺がちょっと気になっちゃって……」

 

 

コクエン君の所で、みんなが助けに来てくれた時は、すずかちゃんもさすがに驚いてはいたけれど、彼女は事情を知った後も、特に揉め事もなくこうして私達と一緒に活動してくれている。

 

アリサちゃんと比べると、すずかちゃんは大人しいから、それほどおかしくはないと思うんだけど……でも、横から見てるとなんだか少しぎこちない感じがするんだよね。

 

 

「それは……確かに、最初は驚きましたけど、なのはちゃんの様子がおかしかった理由がわかってほっとした方が強かったから……

 ……あの頃のアリサちゃん、そのせいでずっとイライラしてましたし。」

 

 

アリサちゃん、ものすごく気が強そうだもんね、知り合いだと苺鈴ちゃんが一番近いかも。

 

 

そう言えば、苺鈴ちゃんが居た頃は、李君を除けばさくらちゃんと知世ちゃんはよく一緒だったよね。

 

 

強気な苺鈴ちゃんとアリサちゃん……

お嬢様な知世ちゃんとすずかちゃん……

そして、魔法少女のさくらちゃんとなのはちゃん。

 

 

それぞれを比較すると結構違うけど、組み合わせてみるとよく似てる気がするかも。

 

 

「そう言う奈緒子さんは……?

 オカルトとか好きそうだから、ずっと黙ってた事を結構気にしてるんじゃ……」

 

 

「うーん、確かにちょっと悔しいと思ったけど、それ以上に、さくらちゃんが魔法少女って言うのに驚いたかな?

 さくらちゃん、オバケとか苦手だし、どちらかって言うと、身体動かしてる方が得意なタイプだから。」

 

 

きもだめしで、とっても怖がるさくらちゃんを思い出すと、これまでに起こった不思議な事件を解決したようには思えなかったし……

 

 

「そこは、なのはちゃんとは反対ですね。

 なのはちゃん、逆に運動とか苦手な方ですし、算数が得意で、体育が苦手って自分でも言ってましたから。」

 

 

「あ、それもさくらちゃんと反対だ。

 今は少し好きになってるって言ってたけど、なのはちゃんと同じころのさくらちゃん、算数苦手って言ってたから。」

 

 

うーん、どっちも魔法少女なのに、同じようでなんか反対なのも、なんかすごいかも……

全部見た訳じゃないけれど、使う魔法も全然違う感じだったし。

 

 

……けど、あの二人を見てると、なんかそれだけじゃない気がするんだよね、なんというか言葉で言い表せないけど、もっと肝心なところが違ってる感じが……

 

 

「みんな、今頃何してるんだろう……?」

 

そう思っていると、すずかちゃんは上を見上げてそうつぶやいた。

 

 

……うーん、おかしいと言えばやっぱりすずかちゃんもなんだよね。

 

なのはちゃんの事情を聞いてからの反応、秘密を聞いてほっとしたっていうんじゃなくて、もっとすずかちゃん自身に関係がありそうな感じだったし……

 

 

友達の秘密を知って、ほっとする理由……

何があったらそう言う反応をするのか考えると、頭の中にある仮説が浮かんできた。

 

 

「あのさ……こういう事を聞くの、失礼だとは思うんだけど……

 ひょっとしてすずかちゃん、なのはちゃんとアリサちゃんに、なにか隠しごとしてたりする?

 それも、実はすずかちゃんも魔法少女でしたって言うのと、似た様なレベルの。」

 

 

最後の部分だけは、自分でもちょっとありえないかなって思うけど、それ以外は十分あり得そうと思う私の答えに対して……

 

 

すずかちゃんは、一瞬跳ね上がらんばかりにビクッと全身を震わせると……

 

 

「ふえっ!?」

 

 

……そう言って、大げさなポーズをとりながら、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になってしまった。

 

 

この驚き方……ひょっとして全部あたってる?

魔法少女とかの下りは、流石に冗談のつもりだったんだけど……

 

 

「……なーんて、そんな訳ないよね!

 もしかしたら、ライバルは親友でしたって言うパターンかとも思ったけど、なのはちゃんのライバル魔法少女は、あの時一緒にいたし!!」

 

 

「そ、そうですよ……

 なんですか、秘密って……」

 

すずかちゃんは私の仮説を笑い飛ばそうとしたけれど、その笑顔はあまりにも不自然過ぎたので、作り笑いであることは一目瞭然でした。

 

……正直、秘密に興味はあるけど、これって踏み込んだらダメなやつだよね?

どこか、不安そうにも見えるし……

 

 

こうなったら、もっとありえ無さそうな話で、安心させてあげなきゃ!

 

 

「例えば……黒マントと仮面を被ったお供を連れて怪物退治をしてるとか、実は家族そろって魔界からやってきて魔界の王子様を探してるとか、謎の古代遺物・オーパーツを探してあっちこっちの遺跡を巡ってるとか……」

 

 

そうして、自分でもちょっと無茶苦茶だったかもと思うくらいに、本で読んだ現実にはありえ無さそうな話を、いくつも並べてみたところ……

 

 

すずかちゃんは、笑顔にもかかわらず全身にものすごい汗を浮かべたまま、カチコチに固まってしまいました。

 

 

「イヤデスナオコサン、ソンナワケナイジャナイデスカ……」

 

 

なんとか、口元のあたりを動かして声を出してるけど、笑顔でぶるぶる震えてるから、喋り方がカタコトなっている……

 

 

……もしかして私が言った話、どれかが大当たりしてた?

だとしたら、ぜひとも聞いてみたい所だけれど……

 

 

「……だよねぇ! ごめんね、私不思議体験とか大好きだから、こんな普通はありえない話しちゃって、そうなら面白いかなぁと思って、つい……」

 

「アハハハハ……ソウダッタラステキダトオモイマスヨ」

 

 

……まぁ、秘密にするって事はそれなりの理由があるって事だものね。

興味はあるけど、すずかちゃんは絶対それを知られたくないみたいだし、今は他に面白そうなことがたくさんあるから、これ以上この話をするのはやめておこう。

 

 

そして、コップに残っていたジュースを全部飲み干した。

 

 

「奈緒子さん、ちょっと……」

 

 

すると、建築作業をしている子の一人が私の所へやってきた。

どうも、なにかが起こったみたいな感じだけれど……

 

 

「ん? なにかあったの?」

 

 

「来客です、背中に羽が生えてるから、この間のブンヤと同じ、妖怪の世界から来たみたいなんですけど……

 用事を聞いてみたら、ここのえらい人に会いたいそうなんで……どうします?」

 

 

妖怪の世界……どうやら、さくらちゃん達が言ってた幻想郷の人みたいだね。

 

 

私は行った事はないけど、そこから来たという人にはここで何度かあった事がある。

ただ、妖怪って言う割に、森近さんを除いてみんなかわいい女の子だったから、ちょっと期待と違った感じではあったけど……

 

 

「えらい人って……私、そんな事ないと思うけどな、さくらちゃん達や、みんなと違って魔法が使える訳じゃないし……」

 

 

「いや、最年長ですし、監督ですし、優しくてかわいい……いや、なんでもないです!!

 ……とにかく、せっかく来たから今残ってる人でいいって言ってるんですけど、俺達じゃちょっと話づらい感じなんですよ……

 あっちも美少女で、これまた美人のメイドが付き人やってるから……

 ……あ、メイドさんの方は見た目は完全に人間っぽいです。」

 

 

羽の生えた美少女……一体、どんな子なんだろう?

メイド付きって事はお嬢様だと思うけど、知世ちゃんや、すずかちゃんみたいな感じなのかな?

 

 

「……うん、わかった、私が会うよ。

 すずかちゃんも、一緒に来てくれるかな?」

 

 

「あ……はい、わかりました。」

 

 

先ほどまでおかしな表情になってしまっていたすずかちゃんは、だいぶ落ち着いたみたいで、表情もしゃべり方もいつもの感じに戻っていた。

 

「それじゃあ、どうぞこちらに……」

 

 

そう言って、案内してもらった先では……

 

みんなが作っていた、屋外用のテーブルとイスの所に座っている、コウモリの様な羽の生えた銀髪の少女と……

 

その傍らで、彼女の為に日傘をさしている、スッキリとしゃれたミニスカートのメイドさんの二人が優雅に過ごしているのが見えた。

 

 

すずかちゃんは、何故か彼女達を見ると、どこか驚きつつも怯えているような表情をしてしまったけれど……どうしたんだろう?

 

 

「ふぅん……ガラの悪いのばかりと思ってたけど、そうじゃない子もちゃんといるのね。

 力の持ち主ってわけじゃなさそうだけど。」

 

 

私達の方に視線を向けてきた銀髪の子はそう言うと、私達を観察するように視線を向けてきた。

彼女の顔は、こちら側からだと影になっているのに、眼は不自然なくらいに鮮やかに紅く見える……

 

コウモリの羽……血の様に紅い瞳……そして、メイドさんの指している日傘……

それらをみて、彼女の正体についてある答えが浮かんで来たので、少しの怯えと大きな興奮から、思わずそれを口にしてしまうと……

 

「……もしかして、吸血鬼?」

 

 

「へぇ、いきなり見抜くなんて……

 なかなか鋭いわね……気に入ったわ。」

 

 

彼女は気分をよくしたように、ニヤリと怪しく笑ったのでした。

 

 

―――

 

 

 

 

……突如乱入してきた、きらという子が取り出した巨大なスライム。

 

 

二本の太い腕を伸ばしてきたり、逆ピラミッド型、ドーナツ型と自由自在に変形したり、動きは遅いけど、破壊力も防御力もすごく高くて、あの子を止めようとした、私達の仲間はすぐに倒されてしまった。

 

 

「さて、次はお前だッ!」

 

 

彼女はそう言って、私へとスライムの腕を振りおろしてきたけれど……

 

 

 

「……許さないよ、自分勝手なわがままで、みんなの事を傷つけて!

 私が叱ってあげる!」

 

 

 

目の前には、ジュエルシードの事を聞きに訪ねて来た子のお姉さんの方、木之本桜さんがマギロッドらしい杖で、スライムの腕を受け止めてくれていた。

 

 

「な……バカな!?

 私のスライムの拳を受け止めた……!?」

 

 

 

焦ったきらは、すかさずもう一方の腕を使ってさくらさんを捕まえようとしたけれど、さくらさんは私を抱きかかえてから、腕が当たる前にすごいジャンプをして、私をみんなの所まで運んでくれた。

 

 

「マリちゃん! 大丈夫!?」

 

 

「うん……さくらさんのおかげで

 どうもありがとうございます……」

 

 

さくらさんはそのまま私を下ろしてくれたので、お礼を言うとさくらさんはちょっと気恥ずかしそうにしている。

 

「さくらさん!」

 

すると、すぐさまなのはちゃんとユーノ君が駆けつけてきており、

なのはちゃんの手には、いつの間に展開したのか、彼女の体格の割にかなりの大きさのマギロッドが握られていた。

 

見た感じ、彼女に加勢するつもりみたいだけれど、さくらさんは優しく微笑むと……

 

 

「大丈夫、あの子は私が何とかするから、なのはちゃん達はみんなが怪我をしない様に守ってあげて。」

 

 

「あっ、さくらさん……」

 

 

そう言って、きらの方へと跳んでいき、なのはちゃんは心配そうな顔でその背中を眺めていた。

 

……正直なところ、私も彼女達に対する第一印象は、どこか抜けているお姉さんと、しっかりものの妹?だったから、彼女の心配する気もわかる感じだけれど……

 

 

「ほぅ、私に一人で挑むつもりか? その度胸だけは褒めてやる!

 だが、それは思い上がりという事を教えてやろう!!」

 

 

きらはさくらさんにそう言うと、狙いを定めて再び攻撃を始めた。

私には、受けきれるかどうかわからない位の強烈な攻撃の連発だったけれど……

 

 

さくらさんは、素早く早いジャンプを繰り返しながら、きらの攻撃を、ギリギリのところできれいに避けていった。

 

 

「おのれ! ちょこまかと……」

 

 

きらはそう言って、さらに攻撃を続けていくけれど、やっぱりさくらさんを捕まえる事は出来ない。

腕の動きそのものは、それほど遅いわけでもないのに……

 

 

そして、何度か空振りしたスライムの拳がプールの底に叩きつけられ、大きな隙が出来た瞬間……

 

 

「……今だ、『(フリーズ)』!!」

 

 

さくらさんが、身につけていたポーチから取り出したカードらしきものを突くと、そこから氷の魚の様なものが現れ、プールを一瞬で氷漬けにしてしまった……

 

 

「な……聖霊!? いや、違う……

 だが、これだけの力を出し、しかも御しきっている……!?」

 

 

「ここまでだよ、暴れるのはやめて、みんなにあやまりなさい!!」

 

 

さくらさんは杖を彼女の方に向けながらそう言った。

 

きらはすごく悔しそうな表情をしているけど、スライムの腕も、片方が氷の中に閉じ込められてしまったので、もう動けずにこれで勝負あったかと思ったけれど……

 

 

「くッ……舐めるなっ!! この程度でぇっ!!」

 

 

きらは、ものすごい気迫を込めた怒鳴り声をあげたかとおもうと、スライムもそれに答える様に腕を膨らませて……

 

 

―――バキバキバキッ!!

 

 

「うそっ!?」

 

 

ものすごい音とともに、アレだけガッチリと固められていた氷を砕き閉じ込められていた腕の拘束を解いてしまった……

 

 

そして、そのまま突進し、驚き止まっていたさくらさんを両手で捕まえてしまう。

 

 

「あっ!?」

 

 

 

「まさか、私をここまで追い詰めるとはな……

 そのせめてもの褒美だ! 貴様はこのままぶん投げる!!」

 

 

 

きらはそう言って、さくらさんを捕まえたままスライムと共に高く飛びあがっていく。

 

 

「アイツ……まさか、あのままさくらさんを叩きつけるつもりかッ!?」

 

 

「ええっ!?」

 

 

 

金髪の子、ユーノ君はきらがやろうとしている事を見抜いたみたいだけれど、私達には、ここからきらを止める事は出来そうにない。

 

 

巻き添えを受けない様に遠ざかっていた上に、受け止めて衝撃を軽減させようにも、あの質量が相手では受け止めきれそうにないし、下は凍ったプールだから踏ん張りを利かせることも出来なさそう。

 

 

それでも、何もしないよりは……そう思って、私も、そしてなのはちゃんとユーノ君も落下点へ駆け出すが、間に合う訳もなく、スライムはさくらちゃんを抱えたまま落下……

 

 

「『(ジャンプ)』ッ!!」

 

 

 

「……な、なにッ!?」

 

 

―――した訳ではなかった。

 

 

 

地面に叩きつけられようとした瞬間、さくらさんは地面に両手をついていたのだ。

 

 

普通ならば、その程度で防げるわけがないほどの重量差だけれど、そんな常識を覆して、さくらさんは地面に叩きつけられるのを防いだだけでなく、そのまま彼女を掴んでいるスライムごと、先ほどよりも高く飛び跳ねていった。

 

 

「まさか……『(ジャンプ)』のカードを腕に……」

 

 

よほど強い力で飛んでいったので、反動でスライムが大きく揺れてしまい、その結果腕のホールドが緩むと、さくらさんはそこからするりと抜け出す。

 

 

「ば、バカな!? ありえん……!?」

 

流石に予想外の結果だったらしく、きらは呆然としているようだ。

 

さくらさんは、そのままスライムに埋まっているきらの上半身近くまでいくと、そのままその近くのスライムを掴み……

 

 

「舌噛むよ! しっかり口結んで」

 

 

「なっ!?」

 

 

そのまま二人が乗ったままのスライムはプールへと落下して……

 

―――ドッボーンッ!!

 

 

そこから、大きな水しぶきが上がった。

 

 

プールには、さっきまで氷が張ってたはずなのに……

これも、彼女の魔法の力なのだろうか……?

 

 

「さくらさん!!」

 

 

なのはちゃんは大量に打ち上げられた水しぶきをものともせずに、心配そうな顔でプールに駆け寄っていく。

 

 

あのスライムがクッションになったとは思うけど、アレだけの水しぶきが上がるほどの衝撃を受けて、あの二人は大丈夫なのだろうか……?

 

 

私も、心配になってなのはちゃんの後ろから駆け寄っていく。

水しぶきのせいで、すぐにはよく見えなかったけれど、徐々に収まり、プールがよく見えるようになると……

 

 

「……え?」

 

 

 

私も、なのはちゃんも目の前の光景に、思わず凍り付いてしまった。

 

 

さくらちゃんときらを乗せたスライムが落ちた場所には、先ほどの衝撃で空いたと思われる、大きな穴が開いていたのだから……

 

 

 

 




次で5章は締めかな
我ながら、色々とカオスな事になって来てるなぁ……
6章でも、更にカオスになっていきそうだ


……あと、別ページで裏・知世の野望の公開を始めました
R-18作品なので、興味のある方はそちらの検索ページからどうぞ

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