知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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ここから6章開始、流れ的にはエリアボス戦なんですが……
果たして、今回はどういう展開になっていく事やら


第6章:仮面舞踏会(マスカレイド)
ビリー・ザ・ウィンド


 

 

「……ふぅ、やっと外に出れたわ。」

 

 

「うっ、まぶしい……あれ、ここって……?」

 

 

鉄心さんの案内で洞窟の外に出ると、そこはさきほど丘の上から街を見回した時、町の奥に見えた坑道と思われる大きな穴のあった場所でした。

 

暗い所から明るい所に出たので、ちょっと目がくらんでしまいます。

 

 

「……さて、ここまで来ればもう案内はええじゃろ、

 ワシは帰って作品作りをするから、あの先への案内は町の子達に頼んでくれ、それじゃあの。」

 

「あ! ちょっと!?」

 

 

鉄心さんは、サングラスを着けていたからかまぶしさに目をやられる事なく、そのまま自分の出番はここまでとばかりに、私達に背を向け、掌を軽く左右に振りながら、アリサちゃんの制止もどこ吹く風で、どこかへと去っていってしまいました。

 

 

「……ったくもー、なんていうお気楽爺さん……」

 

 

「あの人も、黄昏の魔法使いの関係者なのかな……?」

 

 

私達がこちら側の世界、クラスターで出会った初めての大人なので、どうしてあの人がこちら側にいるかは興味深い所ではありますし……

 

それに、鉄心さんの名前、以前どこかで聞いた覚えがあるのですが……

 

 

「鉄心さんの事も気になりますけど、今はそれよりもさくらちゃんを迎えに行かなければ……!」

 

 

「……そうですね、町の子ならわかるって言ってましたから、ひとまずマリさんに聞いてみましょう。」

 

 

優先すべきは、流されて行ったさくらちゃんを迎えに行く事……

その事で意見を一致させた私達は、みんなでうなずき合った後、再びマリちゃん達と会う為に彼女の居たプールの方へと向かったのでした。

 

 

 

―――

 

 

「そう、あの水路の先に……」

 

 

プールサイドに戻って来た私達は、さくらちゃんときらさんの戦いで空いた穴を見つめる子達に、危険だから穴に近づかないよう指導していたマリちゃん達と再会し、穴の中で何があったのかを話しました。

 

それを聞いた彼女は、後の事を彼女の仲間達に任せ、私達を町の集会場として使っている保安官のオフィスを模した建物へと案内し、難しそうな顔でそう言ったのです。

 

 

「……あの先って、そんなにヤバい所なの?」

 

 

「ヤバいって事は無いんだけど……ちょっと厄介な所なのよ。

 ……もっとも、あなた達はあの人が流されて行かなくても、足を踏み入れてったとは思うけど……」

 

 

「どういう事です?」

 

彼女はさらに深刻そうな顔をすると、意味ありげにそう言い、疑問に思ったユーノ君がその先を尋ねると……

 

 

「あなた達、ジュエルシードを探してるっていってたでしょ。

 ……あのエリアを支配するロッドマイスターも、ジュエルシードを集め始めてるのよ。」

 

「!」

 

 

きらさんの襲撃で、うやむやになっていたジュエルシードの話題、マリちゃんは、その続きを語ってくれました。

 

 

「赤金シュリ……それが、あの一帯を支配してるロッドマイスターよ。

 コクエン達ほど、むやみな勢力拡大はしていないから、数はあいつらほど多くはないけど、その分腕利きをそろえていて、数と質の違いはあるけれど、コクエンとまともに張り合えるほどの戦力をそろえているわ。」

 

 

「コクエン達と……!」

 

 

友枝町を襲って来た子達や、亀山小学校で戦った子達……

全部合わせると、山茶花町のレジスタンスの子達とは比較にならない位の人数でした。

 

彼らと比較して、人数は少ないけれど質が高いと言う事は、かなりの腕前のロッドマイスターが揃っていることが予想されます。

 

 

「……元々、私達にジュエルシードの事を教えてくれたのはシュリ達でね、あなた達には悪いけど、コクエン派よりはマシだと思ってたから、私達が見つけたのはシュリ達に渡しちゃったの……ゴメンね。」

 

「いえ、元々バラまいてしまった僕が、どうこう言える立場じゃありませんから……」

 

 

申し訳なさそうに謝ったマリちゃんに対し、ユーノ君は更に申し訳なさそうな顔で、彼女にそう伝えました。

 

 

さくらちゃんだけではなく、ジュエルシードまで……

シュリさんの所を尋ねる理由が、また一つ増えてしまいました。

 

 

「……ところで、マリさんはそのシュリって人と面識があるんですよね?

 だったら、何とか口利きをしてもらえませんか?」

 

 

「うん、今回の事は私達の為にやってくれた事が原因だから、出来るだけの事はしてあげたいけど……

 でも、シュリの事なんか苦手なのよね……」

 

 

なのはちゃんの頼みに、マリちゃんは微妙に嫌そうな顔をしてしまいました。

一応、彼女にとっては味方ではあるのでしょうが、完全に信頼できる相手と言う訳ではなさそうです。

 

 

「そう言えば、あのお爺さん……いったい何者なの?

 こっちにいるのは、みんな子供だけだと思ってたのに……」

 

すると、アリサちゃんはふと思い出したのか、謎のお爺さん・岡田鉄心さんについてマリちゃんに尋ねると、マリちゃんはちょっと意外そうな顔をして……。

 

「鉄心さんのこと? あの人はここに町を作る前から、ここで陶芸用の土を取ってるらしくって……

 どうやって、こっち側に来ているのかは、私達も知らないけど……

 ……町を作る時にも、色々アドバイスしてくれたし、変わり者だとは思うけど悪い人じゃないわ。」

 

 

鉄心さんに対して、そう答えてくださいました。

私が思ってる以上に、信用していらっしゃる様子です。

 

 

「……魔法を使う奴等が集まってる世界に居る爺さん……

 実は、本物の魔法使いとか言うパターンじゃないわよね?」

 

 

「まさかぁ……鉄心さん魔力持ってないし、魔法使ってるとこも見た事ないし……

 まぁ、そう言う噂話をしてる子は、たまにいるけどね……」

 

 

普段はみすぼらしい格好をしている、本物の魔法使い……

王道パターンではありますけど、どうも鉄心さんはそれとは違うように思います。

 

 

もっとも、私達の知っている大人の魔法使いは、幻想郷の方達を除けば、観月先生、李君のお母様達と、執事の偉さんくらい……

 

あ、もう亡くなられていますが、香港で出会った水使いの方もですわね。

 

 

結局、謎のままだった鉄心さんの話題をして、気がまぎれたのか、マリちゃんはすっきりとした表情で大きくうなづくと……。

 

「……いいわ、シュリへの仲介役は任せておいて、ちょっと性格が面倒だけど、迷い込んだ子を探しに行くのを渋るような性格じゃないし……」

 

 

そう言って、協力を口にしてくれた瞬間……。

 

 

―――ギィ……

 

 

 

「残念だが、そう言う訳にはいかなさそうだぜ」

 

 

「え……?」

 

 

「風間!! 帰って来てたの!?」

 

 

入り口のスイングドアが開いて入ってきたのは、カウボーイハットをかぶり、赤いスカーフを首に巻き、腰に交差させた二つのガンベルトをつけた、誰が見てもカウボーイと言いたくなる格好をした男の子でした。

 

 

「こっちの方でも、大変な事が起こったみたいだからな、大急ぎで戻って来た。

 ……初めまして、俺の名は風間美利(かざま よしのり)……風のビリーと呼んでくれ。」

 

「……いや、流石に色々と狙いすぎでしょ。

 それにビリーって……美・利でビリー……

 そこまでかっこつけて、恥ずかしかったりしないの……?」

 

 

自己紹介と同時に、帽子の先を弾きながら決めポーズをとった風間君に対し、アリサちゃんは呆れた顔で冷めた反応をしましたが、彼は特に気にしてない様子です。

 

 

「……風間って、入り口の井出が言ってた?」

 

 

「ええ、西部劇かぶれで、ちょっと格好つけすぎだけど、彼がこの町で一番のロッドマイスター……スタイルは言うまでもなく二丁拳銃で、連射と命中精度は他に並ぶものはないわ。

 ……それより風間、そう言う訳にはいかなさそうってどういう事?」

 

 

彼の苗字は、この町で一番だけあってこれまで何度か耳にしており、それにユーノ君が気づいた所で、マリちゃんはさっぱりとした感じで彼の紹介をしてから、そのまま風間君のさっきのセリフの意味に対して尋ねると……。

 

 

「大まかな話は、安行と剛から聞いた……

 話題の中心の女子二人なら、巨大なスライムともども俺も確認してきた所だ。」

 

 

「えっ!?」

 

 

なんと、風間君は流されて行ったさくらちゃん達の事を実際に目にしてきたと言うのです。

 

 

「コクエンが失脚してから、シュリ達がおかしな動きをし始めてたからな。

 バレないよう、こっそりと奴等の様子を確認していたら、いきなり例の水路から、巨大なスライムが飛び出してな……

 その直後、羽を生やした天使と、彼女に抱きかかえられた猫娘が、それを追うように飛んで来た所を見て来たのさ。」

 

 

「天使って……だからねぇ……」

 

 

どうやら、風間君はなかなか分かっている方のようですわね……と、そうではなくて……!

 

 

「それで、さくらちゃん達は無事なのですか!?」

 

 

アリサちゃんは、彼の発言に対してなにかを言いたそうな顔をしていらっしゃいますが……

風間君は特に気にした様子もなく、私が前のめり気味にさくらちゃんの安否に対して尋ねると、軽くため息をついてから……。

 

「怪我をしてない……って意味じゃ無事だな。

 さっきも言った通り、羽を生やして飛んで来たから、そのままスライムめがけてふわりと地面におりてったぜ。」

 

「そうですか……ほっ。」

 

その後の様子を教えてくださいました。

 

 

さくらちゃんなら大丈夫……だとは思っていましたが、実際に無事だという話を聞けたので、私はほっと胸をなでおろして安堵しました……が。

 

「ちょっと、その言い方だとそれで全部って訳じゃなさそうだけど……

 何か他に問題でもあるわけ?」

 

 

アリサちゃんがそう尋ねると、美利君は首を左右に振りながら肩をすくめ……。

 

 

「……スライムが、よりにもよってシュリのすぐ近くに落ちて、

 それで上がった水しぶきのせいで、シュリの奴がびしょ濡れになったんだ……」

 

アリサちゃんの尋ねたところの、問題について答えてくれました。

 

「びしょ濡れって……!? 

 あのプライドの高いシュリをそんな目に合わせたら……」

 

それを聞くとマリちゃんは慌てた表情で身を乗り出しましたが、話はまだ続くようで、風間君は帽子に手をかけて、視線を隠す様に深くかぶると……

 

 

「そして、二人がのこのことスライムの所に駆け寄っていったせいで、すぐさま怒り心頭になったシュリの取り巻き連中にかこまれて……

 ……そのまま、連れてかれちまったんだ。」

 

 

マリちゃんはそれを聞くと、空を仰いで手を目の上にかぶせてしまいました。

風間君は打つ手なしという具合に、帽子をさらに深くかぶったて首を左右に振っています。

 

 

この二人の態度から、私達にもこの先の展開が非常に厄介になるという事だけは、はっきりと理解出来ました……

 

 

 

 




ちょっと難産だったかなぁ……導入書いて、滑りがよくなればいいけど


なお、風間美利も小野寺マリも、スーパービーダマンのキャラですが、
この二人、原作でもアニメでも面識はなかったはずだったりします


使い勝手的にちょうどいいんだもの、こういう使い方もアリですよね


新型SRCの方も開発再開して、知世の野望SRPG版も展開を変えて作り始めました
まだ更新していませんが……キャラ絵がヘタクソなのは勘弁してください

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