知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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魔法少女のお約束?

「不覚ですわぁーーーーッ!!」

 

 

先週末、さくらちゃんとケロちゃんが、海鳴市へお出かけになった時の事

 

 

その日、私は残念な事に用事があったので

さくらちゃん達に同行する事が出来なかったのですが……

 

 

次の月曜日、さくらちゃんが妙に浮かない顔をしていましたので

海鳴市で何があったのかと思い尋ねてると

学校では話せないそうで、放課後にさくらちゃんの家で話を伺う事になりました

 

 

その間もさくらちゃんは、誰かを心配している様に見える一方

なにか困った様子で、薄く苦笑いを浮かべておりましたが……

 

 

話を聞いてみれば、なんとさくらちゃん達は海鳴市で

これまで見た事もない魔法少女の方達が争っている現場に出くわし

さくらちゃんは、いじめられているように見えた

白い衣装の子の方に助太刀して、黒い衣装の少女と戦ったとのことでした

 

 

幸い、さくらちゃんは怪我一つなく、相手の黒衣装の子は逃げていったそうですが……

 

 

……まさか、外せない用事があった日に、

さくらちゃんが新しい事件に巻き込まれていて……

あまつさえ、新しい魔法少女と出会って、戦って、勝って……!

 

 

そして、そんな絶好の撮影機会を逃してしまったなんて……

 

 

もう、お約束の如く両頬に手を当てて

お腹の底から声が出る位に、絶叫してしまいました……

 

 

「ほえぇ……」

 

 

「……さすがコーラス部、声の響き方がちゃうわ……」

 

 

思わず力を込めすぎてしまったのか、さくらちゃんとケロちゃんは、

両耳を押さえていましたが、私は気にせずに、その先の言葉を続けました。

 

 

 

「エリオル君の事件からはや2ヶ月……魔法少女もののお約束でしたら

 そろそろ新しい仲間や、新たな敵が出てくる時期だと分かっていましたのに……

 完全に油断していました……大道寺知世、一生の不覚ですわ」

 

 

 

そういって、涙をぬぐうかのように片目に手を当て、よよよと崩れ落ちると……

……さくらちゃんの部屋の中なのに、まるで木枯らしが吹き、

スポットライトが当たっているような雰囲気が当たりを包みました。

 

 

 

「知世ちゃん、そんなテレビアニメじゃないんだから……」

 

 

「……さくら、それとんでもない問題発言とちゃうか?」

 

 

さくらちゃんが、困った顔をして危険な発言をした後に

ケロちゃんが、更に困った顔でメタなツッコミをなさいました……

 

 

でも、86年には、もっと危ないOPテーマがありましたし

やはり深く突っ込むと危ないので、この場は気にせず話を進める事にしましょう。

 

 

そうと決まれば、気を取り直して……

 

 

「……ですが、他所の町とは言え、こうして事件が起こったからには

 カードキャプターさくらちゃんの出番、再びですわね

 今回はチームを組んで戦う、魔法少女のお約束な、新しい仲間の子も出てきたわけですし」

 

 

そう、目的はさくらちゃんに新しい事件に挑んで解決していただき、

そのさくらちゃんの活躍の姿を、カメラに収める事!

 

 

これまでの事件では居なかった、仲間の魔法少女もいらっしゃることですし

落ち込んでいる場合ではありませんわ!

 

 

「うーん、そんな事言われても……

 結局、何の事件が起ってるのか、詳しくは知らないし

 新しい仲間って言っても あの子の事だって、少しだけ会っただけだから……

 

 女の子はフェレットさんから、なのはって呼ばれてて

 フェレットさんの方は、ユーノくんって呼ばれてたけど」

 

 

「まぁ……確かに名前だけでは厳しいですわね」

 

 

それにしても、フェレットさんですか……

魔法少女の使い魔としては珍しい気もしますわね

 

 

犬猫よりは希少ですけど、不思議な生き物よりは現実的で……

 

 

「……しっかし、今更やけど

 さくら、フェレットが喋ってた事に関して、完全にスルーしておったよな?」

 

 

「うん……後で考えたら、あれっ? しゃべってた? ……て思ったんだけど

 あの時は、必死だったから……」

 

 

「まぁ、さくらちゃんはケロちゃんが傍にいますし

 ほかにも、エリオル君のスピネルさんがいらっしゃいますから」

 

 

普段の姿は、どちらもぬいぐるみや、子ネコのような姿ですけど

変身すると、翼の生えたライオンと、蝶の羽の生えた黒豹さんですから

……この光景に見慣れてると、フェレットがしゃべっても、変に思わないかもしれませんね

 

 

「……まぁ、あのイタチ小僧ホンマは……まぁええか、色々と訳ありみたいやし

 しっかし、アイツらが集めとった青い宝石……確か、ジュエルシードちゅうとったな」

 

 

「あのネコさんがあんなに大きくなったのも、あの宝石のせいなんだよね」

 

 

「ごっつい魔力を持っとったし、まず間違いないやろなぁ」

 

 

「あの家、知世ちゃんの家くらい大きな家だったけど

 なんで、あの宝石はあんなところに落っこちてたんだろ?」

 

 

海鳴市で、私の家と同じくらい大きな家……ですか

大きなネコといい、何か引っかかるものがありますが

関係はなさそうなので、ひとまず置いておくことにいたしましょう

 

 

「さぁな、何があったか知ってるのはあの宝石だけや

 ……せやけど、あのツインテ娘、確か封印する時にシリアル14ちゅうとったから

 最低でもあと13個は、あの宝石があるっちゅうことになるな」

 

 

「……と言う事は、その子達の目的は色んな場所にばら撒かれた

 そのジュエルシードと言う宝石を集める事でしょうか?」

 

 

「クロウカードを集めてた頃の私達みたいに? まさかぁ……」

 

 

さくらちゃんは、そうおっしゃってますが

ばらまかれた何かを集めるのも、魔法少女の話としてはよくある展開ですわ

 

 

……懐かしいですわ、友枝町中にばら撒かれたクロウカードを回収する

さくらちゃんのご町内を守る活躍の日々……

今度は、二つの町を守る活躍にスケールアップですわね

 

 

「しっかし、そんな似た様な話、こうも続けてあるもんなんかなぁ」

 

 

「そこはまぁ……天使な花嫁さんとか、絶滅危惧動物の力を得たウェイトレスさんとか

 一度ヒットすると、テンプレートを基にした作品はたくさん出てきますから」

 

 

「……知世、そのチョイス、なんか意図ないか?

 一番肝心なのを出しとらん気がするんやけど……」

 

 

そこは、触れてはならない都合と言うやつですわ

 

 

「……そして、そのジュエルシードを、

 その子と、もう一人の子が、回収し合っているのですね

 友枝小学校に来た頃の李君みたいに」

 

 

「……なんか、ますますクロウカード集めの時みたい……

 小狼君と違って、あっちは女の子だけど」

 

 

「あの娘がさくらで、金髪の方が小僧……

 何の因果か、配役までおんなじやな

 

 ……ん? ちゅうことは、ワイはあのイタチ小僧か?」

 

 

まぁ、普段のケロちゃんはマスコット枠ですから

……あんまり、納得いかないような顔なされてますけども

 

 

「……しっかし、こうも状況が似ているっちゅうことは

 まさか、次は『創』(クリエイト)のカードの時と

 同じような事件が起こるんやないやろうな?」

 

 

「町に大きな怪獣が出てきたりとか?

 またまたぁ……」

 

 

そう言って、軽くケロちゃんの発現を流したさくらちゃん

表情からは、もしかしたら……という考えが読み取れてしまいましたが

そうなったら、さくらちゃんも再び巨大化してもらわなければいけませんね

 

 

「……そういや、さくらとは違うて知世ポジションは居らんかったな?」

 

 

「まぁ、普通にこういう展開だと、友達にも魔法の事は秘密にするのがお約束ですから

 魔法がばれたら、大抵大変な目にあってしまいますし」

 

 

変身するヒーロー・ヒロインは、大半が正体を隠して戦うのもお約束ですから……

 

 

……もっとも、さくらちゃんに関しては、それなりに事情を知る方が多いですし

魔法の事を知られても、これまでは大したことはありませんでしたけど……

 

 

「……あの子、大丈夫だよね?」

 

 

「その辺は、直接会ってみないと何とも……

 ……どうします? 今度の休みに海鳴市でその子の事、探してみますか?」

 

 

……実は、私には先ほどの家について心当たりがあったので

そこで話を聞けば、何かわかるのでは……と言う考えがありました

 

 

「お、それええなぁ! 知っとるか知世

 あそこには翠屋っちゅう喫茶店があって、そこのケーキが……」

 

 

「ケロちゃん、どうせ目的はケーキなんでしょ

 この間、買いに行く時間が無かったからって

 帰ってきてからそればっかりなんだよ」

 

 

「ほほほ、ケロちゃんらしいですわね」

 

 

翠屋さんですか、あそこのケーキ、お母様が

月に1度くらいで買ってきて下さいますわね

なんでも、店主さんとは古い付き合いなのだとか……

 

 

そうやって、和やかに話していると

下の方から、玄関のドアが開く音が聞こえてきて……

 

 

「ただいまー」 

 

 

「あ……お兄ちゃんだ

 そういえば、今日はバイトないんだっけ」

 

 

さくらちゃんのお兄さま、いつも色んな所でバイトしていらっしゃいますものね

そして、親友の月城さんとは、バイトのあるなしに関わらずいつも一緒に……

 

と思っていましたが、、今回はいつもとちょっと勝手が違っていたようで……

 

 

「さくらー、お客さんだぞー!!」

 

 

どうやら、今回はさくらちゃんのお客様と一緒にいらっしゃった様子でした

 

 

「ほえ? お客さん……? いったい誰だろ……?

 知世ちゃん、ケロちゃん、ちょっと待っててね」

 

 

しかし、お客様については、さくらちゃんも知らなかったご様子で……

いったい、どなたなのでしょうか?

 

 

あの様子では、月城さんでは無さそうですし

 

 

「……ひょっとして」

 

 

その時、私の脳裏にふと

ある考えがよぎりました。

 

 

「知世、なんぞ心当たりでもあるんか?」

 

 

「……ケロちゃん、噂をすれば影……

 と言うことわざをご存じですか?」

 

 

「当然や、噂話をすると、その本人が現れるっちゅう……

 まて知世、そりゃいくらなんでもまさかが過ぎるんと……」

 

 

私も、自分で言っておいて流石にそれは都合が良すぎると思います……

けど、こういう時のさくらちゃんって……

 

 

「ほえぇぇっ!? あなたは……!?」

 

 

「……やっぱり」

 

 

下から聞こえてきたさくらちゃんの声

どうやら、そのまさかが当たったみたいですわ

 

これもまた、お約束の一つですわね

 

 

「……ワイ、なんかクロウが生き取った頃の事思い出したわ

 思い出してみたら、あの頃もそんなん多かったなぁ……はぁ」

 

 

ケロちゃんは、その声を聞くと

背中を丸めて大きくため息をつかれてしまいました

 

 

……残念ですけど、また翠屋のケーキはお預けですわね

 

 

 

 




再開は戦闘中では無く日常で……なんでここに居るのかはまた次回

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