やはり俺の青春ラブコメは間違っていたのだろう   作:未果南

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そうして物語は結末に向かう。

小町と一色と朝食を済ませた後、うちの両親が起きてくるまでと3人でダラダラしていた。

 

とはいえ、一色からしてみれば初めて訪れる家でダラけきる訳にもいかないようで俺と小町しかいないリビングなのに借りてきた猫の様に大人しくしていた。

そろそろ両親が起きてくるかな程度の時間になった辺りで、珍しいことに来客を告げるチャイムが鳴った。

 

「小町、いってら」

 

「えー、私強制?少しは人と話した方がいいよ?」

 

「ばっかお前普段会社で話してるからいいんだよ」

 

「ダウトです先輩。ほとんどしないし、してもめちゃくちゃ事務的な会話だけじゃないですか」

 

「全く成長してないようで私は悲しいよ…」

 

「会社なんて仕事する場なんだから必要最低限のコミュニケーションで充分なんだよ」

 

などと兄弟の押し付け合い(小町陣営は援軍あり)をしていたものの、流石にあんまり待たせるのも失礼なので重い腰を上げる。

 

流石に2人がかりで来られたら勝ち目ないしな。

しっかし平日の昼前から誰だよ非常識な…

 

なんてことを考えながら玄関の扉を開くとそこに、天使がいた。

いや、正確にいうなら天使だけではなく変な妖怪と夜のドンキにいそうな女がついていた。

 

「おはよう八幡」

 

「え?お、おはよう?」

 

「久しぶりだねー、大学1年の時に会ったきりだから…、もう4年以上経つんだねー。」

 

「お、おう。もうそんなに経つのか。」

 

「少し逞しくなった?」

 

「どうだろう、特に何かしてるわけじゃないから気のせいじゃないか?」

 

4年ぶりに会ったとは思えない程に自然に会話が弾む。

俺のペースにナチュラルに合わせてくれるこの感じが懐かしい。

 

「…じゃなくて。なんでうちに?」

 

「昨日同窓会があったのに八幡来てなかったからだよ」

 

「まぁ、アタシも行ってないけどね」

 

「我に至ってはそもそもクラス違うしな」

 

メンツがぼっちーズのそれじゃん…。

いや1人天使いるわ。

ぼっちーズwith天使だわ。

 

「でも葉山くんが八幡っぽい人を見たって言ってたからさ、もしかして帰ってきてるんじゃないかなと思って来てみたんだ」

 

「アタシは付き添い」

 

「同じく付き添い2である。」

 

付き添い2人はともかくとして、連絡も寄越さずにこんな時間から家に来るなんて戸塚らしくない気がするんだが…。

 

そんな思いが顔に出ていたのか戸塚が悪戯っぽく微笑んだ。

 

「事前に連絡したら八幡逃げちゃうかもしれないからね。どう?ビックリした?」

 

「ビックリしたっていうか現在進行形でビックリしてるけども。いや、しかしそれにしても何で俺なんかに…」

 

「何言ってるのさ。理由なんて久しぶりに友達に会いたいからに決まってるじゃない」

 

 

 

友達。

 

 

 

なるほど友達か。

なんとはなしに感動してから、ふと思ったのだがその理論で行くと後ろの付き添い2人も友達カウントでいいのだろうか。

 

 

「む?我は前世から絆を結んだ盟友だと高校時代に告げていたはずだが…?まぁ、そんな厨二的設定は捨ておいて、お主は数少ない友人だぞ」

 

 

「材木座…、お前。」

 

「はぽん。感動して言葉も出ぬか?」

 

「喋り方は変わってないけど厨二って認められる様にはなったんだな…!」

 

「はふぅん…、キまったと思ったらこれである…。」

 

 

茶化したとはいえ実際そこはかなり驚愕ポイントだ。話し方変わってなかったから今も痛い奴なのかと思ってた。

 

いや、その話し方は充分に痛いけども。

 

そして2人からも友人宣言を受けて、後ろに立つもう1人にも自然と視線が向かう。

 

 

「なに?」

 

「いや、お前はどうなんだろうと…」

 

「寧ろこの流れで友人以外のなんだってのさ…。ア、アタシは高校の時から友人だと思ってたし…。」

 

「マジか。」

 

「それこそ生徒会選挙の時とか友人でもなきゃ手伝わないって言うか」

 

 

 

この歳になって急に3人もの友達ができた訳だが。

いや、当時も友達でいいのかな…とか思わなかった訳では無い(材木座除く)

 

だが、結局俺なんか…といういつものパターンで自分から離れていたわけだが。

 

特に大学の時なんかアイツらとイロイロあって世界で1番ダメなやつだくらいまで自分の評価落ちてたし…。

 

いや、今でもあの時の俺はクソ野郎だとは思っているが。

 

「お兄ちゃんどなただったのー?」

 

そんな風に玄関先でうだうだ話していたら小町が様子を見に来た。

 

「あっ、小町ちゃん久しぶりー」

 

「あ、戸塚さんお久しぶりです。それと、中二さんと、お、お姉さん…」

 

「ん?ああ、小町おはよう」

 

「えっ」

 

何その気さくな感じ。

ていうかなんで名前呼び?

小町もお姉さん呼び?

なんで?どういうこと?

お兄ちゃん聞いてないよ?

 

「おい、どういうことだ川崎。うちの妹とどういう関係だ」

 

「は?どういう関係って、小町?」

 

俺が聞きただすと不思議な顔をして小町の方を見る川崎。

俺もつられて小町を見ると…、

 

「…!…!」

 

ブンブンと全力で首を横に振る可愛い妹が。

 

「はぁ…。ダメらしいから小町に聞きな」

 

「絶対教えない」

 

「ええ…」

 

どういうことだ一体

俺が知らない間にいつ小町は川崎と仲良くなったんだ?

 

「なぁ、小町」

 

「皆さん!こんな所で立ち話もなんですし、うちに上がっていって下さい!さぁどうぞどうぞ!」

 

小町に問ただそうと声をかけようとするも、小町はそれを誤魔化すように大袈裟に3人を家に招き入れる。

 

ちっ。

 

まぁいい、後で問い詰めよう。

実際玄関先にずっと立たせておくのも申し訳ないしな。

 

「「お邪魔します」」

 

律儀に3人揃って挨拶入れてうちにあがるのを不思議な気分で見ていた。

 

いつぶりだろうかうちに俺の知り合いがあがるのは。ましてや友達となると…。

 

などと感慨に耽りながら玄関を閉めていると、3人が進んだリビングから間抜けな声がしてきた。

「あれ?」

 

「えっ?」

 

…そういえばつい昨日俺の知り合いが来てましたね

 

★★★

 

「ということで一色。こちら戸塚、川崎、材木座。あー、なんだ俺のゆ、友人だ。」

 

「お、お兄ちゃんが友人って…!」

 

「うるせーぞ小町」

 

ぷっと小馬鹿にするように笑ってくる我が妹にツッコミを入れる。

 

「えーと、戸塚さんはテニス部の部長さんでしたよね?生徒会とかで少し覚えがあります。あとのお二人はほぼ初対面でしたかね?」

 

「けふん…」

 

ナチュラルに忘れられていることに材木座がショックを受けているがどうでもいいな材木座だし。

 

「あー、そんでもって戸塚川崎材木座、コイツは一色。俺の後輩だな。」

 

「生徒会長さんだねー、お久しぶりです」

 

「なんとなく覚えてる…ような。」

 

「我、話したこともあるんだが…」

 

にこやかに挨拶する戸塚と記憶を辿るように目を細める川崎、そして傷ついてる材木座。

 

「というか、後輩?八幡お主高校の後輩を呼び出して何をしていたのだ。」

 

「いや、職場の後輩。」

 

「え、同じ職場なの?」

 

「そうなんですよ、私もビックリしちゃって…。」

 

「そんな偶然もあるもんなんだね」

 

などとワイワイガヤガヤと雑談をしていると、小町がふと思い立ったかのように3人に質問を投げかける。

 

「ところで皆さん今日はどうして?」

 

「昨日のクラス同窓会、八幡も川崎さんも来てなかったからさ。僕が会いたいなーって思って。折角だし材木座くんも呼ぼうと思って。」

 

「あー、なるほどなるほど。」

 

「逆に生徒会長殿はどうして八幡宅に?会社の後輩だからと言え、別に八幡宅に来る理由も…、はっ、まさかとは思うが八幡などと交際して!」

 

「えっ…。」

 

「おい材木座」

 

デリケートな所をつつくんじゃねぇ…!

やめろよお前、どう答えられても俺が困る質問をするな…!

 

まぁ、とはいえ答えはNOだろうがな…。

と、ちょっと落ち込み気味に一色の方を見ると。

 

「えっと、交際とかは…その。まだ」

 

 

 

ちょっと待て。

 

なんでそんな顔真っ赤なんだよ、やめろよそういう反応。

まだってなんだこれから可能性があるのか。

 

変な期待を持たせないでくれ。

どうすんだよこの微妙な雰囲気、材木座お前今すぐ腹を切れ、その勢いで有耶無耶にしろ。

 

「…」

 

もうこの際誰でもいいからこの空気を壊してくれ。

 

無限にも感じる重苦しい空気に押しつぶされそうになっていると、

 

「おはよう…。って人増えてないか?」

 

救いの神か…!

リビングに救いの神ことうちの親父が入ってきて、人の量に驚いている。

 

ありがとう親父。

俺今だけ親父のこと尊敬するよ。

 

「あ、初めまして、八幡の友人で戸塚と言います。」

 

「同じく川崎と言います。」

 

「むっ、ぬぬぅ…。材木座と言います」

 

三者三様に親父に挨拶を済ませる。

材木座だけはこちらを恨めしげに見てきたが、なんだお前。

恨めしいのはこっちだボケ。

 

「えっ、八幡に友人…?」

 

「おいなんだ親父その疑いの目は。」

 

「ゴメンな…八幡。別に桜雇わなくても父さん達心配してないから…。いやマジで欠片も。」

 

「ぶん殴るぞ」

 

やっぱりうちの親父はクソ親父だったよ。

 

「あっ、えっと今回はお世話になりました私はこれで。お邪魔しました」

 

そう言って一色は制止する暇もなく出ていった。

 

「えーっと。」

 

俺が所在なさげに見回していると背中を引っぱたかれた。

 

「いってぇ!何すんだ親父」

 

「何すんだじゃねぇよ、追っかけろよお前。さすがに今のは追っかけるべきだろ」

 

「わーってるよ…。」

 

クソ親父の癖して正論吐きやがって…。

 

悪態を吐きながら立ち上がると四方から声が飛んできた。

 

「頑張れ八幡。」

 

「はやく行きな」

 

「えーっと、すまぬ八幡」

 

「見つけないと家入れないからね。」

 

そんな優しくも厳しい…。

っていうか半分ほど厳しいのと1つ謝罪だったけども。

 

声援を受け取りリビングを後にした。

 

「アイツはっや。」

 

玄関を抜けると既に一色の姿はなかった。

 

アイツの家は駅違いだったはず…!

とりあえず駅の方に走りだす。

 

追いかけながら頭の中で様々な思考が頭を巡る。

さっきのアイツはどういうことだったのか、追いついて何て声かけるんだとか。

 

実際さっきの反応を気にしたらダメだろ。絶対そういうのじゃない。

 

ホントにそうだろうか。

 

試しにあいつの行動全部見返してみろよ、絶対そんなことないから。

自問自答しながら、一色と再開してからのことを思い出していく。

 

歓迎会の時、2人で飲み直したのは?

新しく入った会社で知り合いが俺だけなのと他の男性社員が嫌だったから。また、奉仕部の結末を知るため。

 

他だと酔うまで飲まないらしいのに、俺相手だと泥酔する理由は?

高校の時から知ってるからってだけ。

 

次の日泊まったのは?

金なかっただけ。

うちに落ちてるかもって探しに来てその流れ。

 

何かにつけて飲みに誘ってくるのは?

知り合いが近くにいないから少しなりとも仲のいい俺を誘ってるだけ。

 

色々と手助けしてくれるのは?

アイツが良い奴ってだけ、図に乗るな。

 

思い上がるな、思い出せ…。

 

…クソったれ。なんで思いだすアイツの顔軒並み笑顔なんだよ。

 

もっと泣けよ、怒れよ…。

 

何考えてんだ俺。

最低のクズ男だぞ俺は。

大学の時のことを忘れたのか。

 

「ああ、クソっ!」

 

ちくしょうめ。

どんなに思い出しても思い出しても。

むしろ思い出せば出すほど。

 

アイツが俺の事を好きなわけないって証拠を探してるはずなのに。

俺から出てるこれは好意だ。

 

今までひたすらに誤魔化してきたけども。

なんだかんだと言い訳し続けてきたけども。

 

アイツがどうとか関係ない。

 

 

俺がアイツを好きなんだ。

 

 

ああクソ。認める気はなかったのに。

畜生。

 

駅につき、立ち止まり携帯を取り出す。

 

もう少し運動した方がいいかもしれない、息が乱れまくっている。

周りが何事だと言わんばかりにこっちを見ているのがわかる。

 

奇異の目を向けられる。普段なら冷静ではいられないが今はそんなことはどうでもいい。

 

最近じゃ1番電話をかけてる相手に電話を送る。

 

何コールしても出ない。

 

「ちっ」

 

軽く舌打ちして電話を切り、メッセージを送る。

 

『話がある。どうせこのままいても休み明けに会社で会うんだ先に話しておこう。昨日の駅の前で待ってる』

 

簡潔にメールを送った。

 

さぁ、この話にケリをつけよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、すいません。
遅くてすいません。

言い訳をさせてください。
私生活でバタバタしてたんです。
執筆時間が取れなかったんです。
決して忘れてたわけではございません。

今回の話も別に無理に終わらせにかかっているわけではございません。実際まだ続きます。

これからはコンスタントに投稿出来るように、締切を設定しようと思います。来週、27日には投稿します。

ただ締切を設定することにより、内容が短くなる可能性は高いです。
ですが、たとえ500文字だろうと新しい話を27日に投稿します。
ということで、もしまだこんな駄文を読んで下さっている方がいらっしゃるのであればお読み頂けると幸いです。

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