BLEACH 結界争闘篇   作:アルフレット

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またこれから週1回投稿になると思います
それでは今回も最後まで読んでいただけると幸いです。

アルフレット


第三十一話

目を覚ますとつい昨日見た天井が見えた

また浦原商店に戻ってきてしまったらしい

窓の外を見ると薄暗かった

 

「目ぇ、覚めたか?」

 

窓とは反対に視線を動かせばそこにはいつも以上に眉間にしわが寄った一護さんの顔があった

その向こうには夜一さんの姿もあった

 

「どうしたの?」

「どうしたの、じゃねぇよ‼」

 

一護さんはカンカンに怒っているみたいだ

力のことを話さなかったのを怒っているのだろうか

 

「とりあえず浦原さん呼んでくるから

 夜一さん、こいつのこと頼むわ」

「うむ」

 

そう言うと一護さんは部屋を出て行った

 

「夜一さんは行かないの?」

「行かん」

 

夜一さんも怒っているようだ

 

「怒ってる?」

「あぁ」

 

とりあえず謝っておく

きっと夜一さんを怒らせると怖い

 

「ごめんなさい」

 

何の反応も返してくれない

気まずくなって何となく身体を起こそうと腕に力を入れると激痛が走った

 

「っ‼」

「まだ起きるな

 寝ていろ」

 

腕を見ると包帯でおおわれていて血がにじんでいる

夜一さんが近付いてそっと私の腕をとった

 

「っ‼」

「痛かったか?すまん

 傷が開いてしまったようじゃの」

 

やさしく私の腕を下ろしてくれる

足音が聞こえ、部屋の前で止まった

 

「入りますよ~」

 

そう言うと浦原さんと一護さんが入って来た

一護さんは壁に寄りかかりながら、浦原さんは夜一さんの横に座り、顔を覗き込んできた

 

「気分はどうっスか?」

「よくはない」

 

でしょうねと浦原さんは笑う

浦原さんは怒っていないと安心したのもつかの間

険しい表情になった

 

「浦原さんも怒ってる?」

「怒ってますよ」

 

やはり怒っているようだ

どうやら私は皆を怒らしてしまうことをしたらしい

怒られないように話題を変えてみる

 

「私どれくらい寝てた?」

「半日と少しっスよ」

 

今は明け方らしい

 

「織姫さんたちは?」

「今は家で休んでるんじゃねぇか」

 

織姫さんたちは帰ったけど一護さんだけここに残ったということだろうか

怒られるのを回避するために違う話題を振ってみたがもう思いつかない

それに浦原さんたちはまだ怒っているようで顔が怖かった

 

「アタシたちがどうして怒っているかわかりますか」

「力について何も話さなかったから?」

 

自分の中で唯一心当たりがあることを言う

 

「それも少しはありますが違いますよ」

 

少しだけ正解らしいが、大部分は違うらしい

他に思い当たることもなく首をかしげる

そんな私の様子をみて周りから盛大なため息が聞こえたのは気のせいではないだろう

 

「本当にわからないんスか」

 

本当にわからないから首を縦に振る

 

「お前が勝手にいなくなったうえに」

「あんな無茶をしおって」

「心配をかけたからっスよ」

 

三人の少しずつ言われる

どうやら勝手にいなくなったことと無茶をしたこと、心配をかけたことがいけなかったらしい

三人が怒っている原因をようやく理解する

 

「えっと…ごめんなさい…」

「お前、自分がしたことわかってるのか⁉」

 

一護さんに問い詰められてつい首を横に振ってしまう

また周りからため息が聞こえてきた

 

「どうして皆が私が勝手にいなくなったことと無茶したこと、

 心配をかけたことで怒るの?」

「お前な…‼」

 

私のその言葉を聞くや否や一護さんは私の胸ぐらをつかんできた

そのときに身体に痛みが走り顔をゆがめるがそんなことお構いなしに一護さんはまくし立ててきた

 

「っ‼」

「当たり前だろ‼

 勝手にいなくなれば探すし、無茶をすれば心配するし、心配すれば怒るのは当然だろうが‼」

 

それが理解できない

赤の他人である私がどうなろうと一護さんたちには関係ないはずだ

そんな私の考えが伝わったのか一護さんは少し悲しそうな顔をして言った

 

「お前は俺たちの大切な仲間だろ⁉」

「私が一護さんたちの仲間?」

 

嬉しいのと同時にまずいことになった思う

 

「なら、やめる」

「は?」

 

今度ははっきりと言う

 

「一護さんたちの仲間、やめる」

「何言ってんだよ⁉」

 

一護さんが声を荒げる理由はきっとやさしいから

ならば…とるべき行動は一つ

一護さんの腕をはずし、痛む身体を起こし、全員から距離を置くために立つ

足に力が入らずにこけそうになるが何とか耐える

 

「もし、一護さんたちが私を放っておくことで罪悪感を感じると言うならばそれはなくす

 そうすれば苦しまない」

「お前‼何言ってんだよ⁉」

 

三人が効果範囲に入るように痛む身体に鞭を打ちながら移動する

三人に向けて血がにじむ腕を伸ばす術を使うために息を吸う

唱えようとしたそのとき、止水の声が聞こえた

 

———やめろ、天

 

「止めないで」

「天?」

 

一護さんが不思議そうな声を出すがそんなのは気にしてられない

 

———今それを使えばきっとお前は一生後悔することになる

 

「それでもかまわない」

 

———嘘をつくな

 

「どうせすぐに消える」

 

———あの断界はもう使えないだろう

 

「別の断界を使う」

 

———その準備にどれだけかかると思っている?

その間ずっと後悔することになるんだぞ

 

「その間、我慢すればいいだけの話」

 

———どうしてお前はいつも自分だけが苦しむ選択をする?

お前はもう十分頑張った

彼らに甘えてもいいのではないか?

 

「甘えてどうするの?甘えればいずれまた一人になる

 きっと一護さんたちだって私の前からいなくなる

 そうなるくらいなら始めからそうならないように離れればいい

 自分に関する記憶を消すなんて今までやってきたこと

 今さら苦しむことなんてない‼」

 

つい大声をしまい、三人が驚くのが見えたが気にしている余裕はない

 

———ついこないだも苦しんでいただろ? 断界に入るときも

私にはお前が苦しむのがわかっているから、お前にこれ以上苦しんでほしくないから言っているんだ

 

「これ以上苦しんでほしくない…?

 もう一緒…もう慣れた

 それに私は誰かが悲しむ姿は見たくない

 私がいなくなればそんなこともなくなる」

 

もう慣れたなんて噓だ

本当は少しも慣れていない

でもそれは、誰かが悲しむ顔を見るよりはずっとマシだ

 

「いい加減にしろよ‼

 さっきから誰と何の話してるかは知らねぇけど

 俺がいなくなるとか、記憶を消すことにもう慣れたとか…

 ふざけんな‼

 記憶を消すのに慣れたなんて見え見えのやせ我慢に気付かねぇほどお前のこと分からねぇわけじゃねぇ‼

 それに俺は言ったよな⁉死なねぇって‼

 もっと俺たちを頼れよ‼」

 

一護さんは私の目をしっかり見て悲しみの混じったような声で言う

 

「そう言ってたのに兄さんはいなくなった…」

「は?」

 

聞こえなかったのだろうか

 

「兄さんも言ってた

 『俺は死なない、お前を一人になんてさせない』って

 でも、いなくなった‼私をおいて…

 どうして一護さんもいなくならないって言える?

 私を一人にしないって言いきれる⁉」

「っ‼」

 

思わず声を荒げてしまった

皆の顔を見れば驚きに染まっていた

皆の顔から眼をそらし再び集中する

もうこれ以上この人たちと話すわけにいかない

 

———もう一度言う

天、やめろ

今、それを使えばお前に残るのは後悔だけだぞ

 

「だから何?後悔しか残らないのは今に始まったことじゃない」

 

———今のお前の体で使えばきっとお前はもう…

 

「それが何?もう消えるだけの怪物にそんなこと関係ない

 もう黙って止水

 集中したいから…」

 

包帯を巻かれ、血がにじむ腕に力を込める

高い霊圧持ちが三人、一気に記憶を消せばまたしばらく力を使えないだろう

そんなことはどうでもいい

この三人の記憶から自分が消せるなら

もう巻き込まなくて済むなら

 

「さようなら…私のことは忘れて」

「やめろ‼天‼」

 

力を込めるいつれて腕が悲鳴をあげる

それを無視してこめていく

すると突然止水の謝る声が聞こえたと思ったとき急に腕に込めた力がぬけていく

 

———天、すまない

 

「止水?何するの?」

 

———やはり、私にはお前にこのようなことさせたくない

 

「どうして?今まで何も言わなかったのに?」

 

———龍がいたからな

今のお前には心から本音をぶつけられる者はいなかった

だが、きっと黒崎一護はお前の思いを受け止めてくれるだろう

 

「何かあってからでは遅い…‼だから」

「今ここで俺たちの記憶から自分のことを消そうってか⁉

 ふざけんのも大概にしろよ‼」

 

一護さんはいつの間にか目の前にいて腕をつかみながら言った

 

「ふざけてなんかいない‼

 一護さんがいなくなったら、遊子ちゃんや夏梨ちゃんは⁉

 一心さんも悲しむに決まってる‼

 他の皆もいなくなれば誰かが悲しむ‼

 それなら悲しむ人が誰いない私がいなくなればいい‼

 それですべて解決する‼

 もっと早くこうしておけばよかった…そうすればきっと…」

 

自分の思いとは反して涙が溢れてくる

 

「天サン、それは違いますよ」

「え?」

 

今まで黙っていた浦原さんが口を開く

 

「あなたがいなくなればアタシはもちろん夜一サンや黒崎サンたちも悲しいっスよ」

「そうなるなら記憶を消せばいい

 そうすれば何も思わずにすむ」

「儂らだけじゃないぞ皐月や勇、龍も悲しむと思うぞ」

 

そんなのわかっている

でもその心配もない

きっと私は皆のもとにはいけないから

 

「止水っていうのか?お前のこと止めようとしていた奴は

 そいつが一番悲しむんじゃねぇか」

「止水が一番悲しむ…?」

 

———私はお前の悲しむ姿、苦しむ姿は見たくない

 

私の言葉に答えるようにいつもより少し悲しげではっきりと止水が言う

止水のその言葉を聞くと今まで頑張って立っていた足と力を込めたことでさらに傷ついてしまった腕から力が抜けていった

私が倒れかけると一護さんがしっかりと支えてくれた

 

「大丈夫か?」

「私はどうすればいい、止水?」

 

止水に問いかけるが返事がない

聞こえてきたのは止水の声ではなく一護さんのものだった

 

「そんなの簡単だろ?俺たちを信じろ、頼れ」

「信じる?」

 

一護さんは信じろと言う

周りを見回せば浦原さんや夜一さんが頷いていた

 

「もう…誰もいなくならない?」

「あぁ!当たり前だろ」

 

一護さんは当たり前だと笑う

浦原さんや夜一さんも

 

「もう一人にしないで…‼」

 

そう言うと涙が次から次へと溢れてきて止まらなくなってしまった

泣き顔を見せまいと下を向いていた私を一護さんがやさしく頭をなでてくれた

 




今回もお読みいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです
それでは、この辺で失礼します
次回の投稿は一週間後の27日を予定しております。

アルフレット

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