KanColle -GHOST CROSS- 作:有明WORKS
――ドイツ
「“日本”からメッセージが来た。準備に少々時間がかかるが、出席できるとの事だ」
「準備?」
「海上自衛隊が
「ケセセ、日本とこの連中は今でも随分できるみたいじゃねーか」
「ふぅん、伊達にアメリカと戦争やった海軍じゃなさそうね。そういう事なら話も聞きたいわ」
「今回の会議も、その事実確認とそれを反映した対策案が主な議題になるだろうな」
「ま、どうせ議長はお前だろヴェスト? テキパキサクサクと進めようぜ」
「あら、議長は“アメリカ”じゃないのね」
「“上司”で会議をするならそうなるだろうが……まぁ、俺たちには俺たちのバランスというものがある」
「そんな場に僕たちが入るのは緊張するなぁ」
「今日は俺たちばっかり喋るだろうが、今はとりあえず慣れとけ慣れとけ」
「入室するぞ」
”ドイツ”が会話に参加のボタンをクリックすると、接続中を示すダイアログが表示され、程なくして見知った顔が表示された
「よぉ、“プロイセン”も一緒か」
「“ドイツ”のところは人数多いあるな」
「日本のところなんてもっと多いんじゃない? 6人も来て遭遇した民間人も来るんでしょ」
「へぇ、楽しみだなぁ、きっと“アメリカ”君に視線が突き刺さってとっても居たたまれないだろうね」
「HAHAHA! それ“ロシア“が言えた立場かい?」
「レディの前で喧嘩なんてすんじゃねぇみっともない。ましてや非公式でも会議場だぞ」
「そうそう、美しい人の前では美しく振る舞わなきゃね」
「てめーら二人は鏡代わりにドーヴァー海峡の海面にドタマ突っ込むよろし」
「……“日本”が遅れるのは聞いたが、“イタリア”はどうした」
「それむしろ俺たちがドイツに聞きたかったよ?」
「あいつはこんな時も……」
“ドイツ”の口から苦い感情が零れた瞬間、入室の通知音が響いた。
ちょうど遅刻したら咎めようとした“友人”の名前が表示されている。カメラが捉えた映像も画面に映し出された。
「あ、イタリア来たね。ロマーノも一緒……だ、ね……」
第04話 世界会議
――日本、海上自衛隊呉地方総監部の一室
カメラ付き通話のモードで入室すると、魔術師夫婦の仕込んだ立体映像の仕掛けに見知った顔が出揃った……のだが、
「……あの、イタリア君、ロマーノ君、その格好は……」
それぞれ何名かの男女が写し出されると共に国旗と[国名]、そして出席している[艦]の名札が添えられている中、
[
と両端に映る若そうなラテン系の男二人は口にテープを貼られもごもごと何かを訴えるようにもがいていた。両腕の自由も奪われているようである。普段ならまず挨拶から始める日本が真っ先に疑問を呈する程度には奇天烈な光景だ。
[
日本の隣に映った“イギリス”が気まずそうに答えた。眉毛の目立つ金髪の青年のような風貌。映像ではその胸元にユニオンジャックが映っている。隣に座る[
[リットリオ]「二人が兄弟喧嘩を始めちゃいまして~……」
[ローマ]「時間になっても止めないから、一度縛り上げておいたわ」
両隣に座る女性がそう答えた。
[
[
[ローマ]「そういう事なら外してあげましょうか」
イタリア兄弟の口元からテープが剥がされる。手元からもパチンという音が聞こえ、二人は無事解放された。
[イタリア=ヴェネチアーノ]「ヴェエ~、リットもローマもひどいよもー」
[イタリア=ロマーノ]「反省するからこういう事はもうやめろこのやろー……」
[フランス]「フフ、美人を前にしてもイタリア女相手じゃイタリア男は形無しかな?」
[イギリス]「おやおや、かくいう自分は普段美女とあらば浮ついた声をかけていながら随分と自重していらっしゃいますね、Sir?」
[フランス]「はあぁ!? 自分の事棚に上げてなーに紳士ぶっちゃってんのこの元ヤンエロ紳士!? 分厚いのは眉毛のシルエットだけにしなさいよ!」
[イギリス]「あァン!? 眉毛は紳士の証っつってんだろうが髭ェ!」
[白神]「いつもこのような調子ですか?」
[日本]「はい」
[中国]「この
日本と中国の無表情は、諦観の二文字が最も適切なのだろう。その周りに座る吹雪たちは、眼前で繰り広げられる光景に先程抱えた覚悟が霧散していくのを感じていた。そしてそのまま心中で文字通り霧として目の前の事実を正しく認識出来ていないようにも思えた。
[ロマーノ]「もうアイツらほっといて始めるぞちくしょー」
[ドイツ]「遅刻一歩手前だったお前たちが言うか」
[プロイセン]「まーまー今回は間に合ったし良しとしようぜ。この人数じゃすぐ脱線しちまうしちゃっちゃと話進めるべきだろ?」
[日本]「既に2名ほど脱線していらっしゃるのですが……」
[アメリカ]「あのおっさん共は止めても無駄だって日本知ってるよね?」
[ドイツ]「今回に限っては日本さえ脱線しなければもう構わん……」
[ロシア]「あの二人なら放っておけばまた戻ってくるでしょ」
[ヴェネチアーノ]「あ、じゃあ日本が話してる間俺達はベッラの皆とお話ししたいなーって痛い! 痛いよ兄ちゃん!」
[ロマーノ]「また隣にしばかれてーのかバカ弟!」
[Bismark]「……“昔”の話になったとは言うけど、仮にも
[ドイツ]「言っただろう……これが俺たちの“バランス“なんだ」
[プロイセン]「ヴェスト、今は日本に目を向けようぜ。な?」
ビスマルクの祖国は会議の議長として本題に進める準備が出来ているようだが、プロイセンが覗いた弟の瞳は、とても遠くを見ているように見えた。
[ドイツ]「……大丈夫だ。緊急性の高い事態でもあるし、本題に入るぞ。まずは事実だけを整理する」
[日本]「こちらの新たに上がった報告も上げておきます」
[ドイツ]「頼む。それでは……ここ三日間の内に、各国の領海上で第二次大戦期の軍艦に類似する所属不明船が目撃された。共通する特徴としては『レーダーに反応しない』『突如の出現・消失を起こす』の2点。続いて同時期に、同じく第二次大戦期の軍艦を名乗る女性が欧米各地で発見・保護された。
日本を除いて時系列順に挙げると
ドイツ連邦共和国:駆逐艦Z1
ドイツ近海を回遊中のところを保護。
イタリア共和国:戦艦
ヴェネツィア市街中の水上を回遊中のところを“イタリア=ヴェネチアーノ”が声をかける。
アメリカ合衆国:戦艦
博物館に改装されたオリジナルの船上にて発見。
グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国:戦艦
“イギリス”の自宅を訪問した小人に導かれたら喫茶店で紅茶を飲んでいた。
フランス共和国:水上機母艦
セーヌ川を遡上していたところ、野生動物公園に遊びに来ていた”フランス“と遭遇。
ロシア連邦:戦艦
ガングート本人が突然"ロシア”の自宅に乗り込んできた。なおドアノブは“ベラルーシ”によって破壊されていたもよう。
以上だ。中国では現在確認されていないが、代わりに台湾で
[日本]「そして各国間の情報共有が行われる前の日本時間2月23日9時16分、瀬戸内海にて海上自衛隊が同様の特徴を持つ不審船並び女性と接触、不明船と交戦。同時期に呉市で上陸した同じ特徴の女性と国籍・所属不明の人物2名が民間人と接触しました。
瀬戸内海の交戦時では『イージス護衛艦武装の砲弾を無効化する防御手段を持つ』事実も判明しています。ミサイル攻撃については不明ですが、装甲防御とは考えにくい以上恐らくは……」
[イギリス]「他の不審船が同様の特徴を持っているかは未確定。だが持っている事を前提にして事を進めるべきだろうな」
[フランス]「で、この子達はその防御手段を突破できたけどその理由も不明と。つまり不明船と武力衝突が起こった時は、この子達以外に頼れる戦力がいないかもって事だよね」
[叢雲]「(本当にさらっと会話に戻ってきたわね……)」
[日本]「もう一つ特筆すべき性質が。我々が接触した不明船には乗員がたった1名だけという報告と、その根拠となる映像があがっています。こちらが特別警備隊のヘルメットカメラの収めた映像です」
日本はノートパソコンから、特別警備隊赤羽班の持ち帰った映像を開いた。身の大半が金属らしき外殻に覆われ、足だけが生身を露出させた奇怪な生物の姿が映し出される。
[中国]「……
[日本]「私も同様です」
[ドイツ]「金属の外殻を持つ動物とは……」
[アメリカ]「一応、金属の殻を持つ貝とかは実在するけどさ」
[イギリス]「生身を露出している足を見る限り、十中八九脊椎動物だ。前例はない」
[ロシア]「言い方ぼかしてるけど、この足って人間じゃないの?」
[フランス]「えぇえ……怖いこと言わないでよ」
[佐竹]「人間かどうかは現時点で判断しかねますが、特徴の一致する海洋生物が存在しない事は想像に難くありませんな」
[ヴェネチアーノ]「にしても、この生き物はどうして攻撃しちゃったんだろ? 怖いなら白旗揚げれば良かったのに」
[ドイツ]「この身体でどうやって白旗を用意して提示しろと……ちょっとまてイタリア。何をもってこの生物の心中を代弁している?」
[ヴェネチアーノ]「え、だってカメラに映った途端のビクってしたリアクションが俺や兄ちゃんみたいだったから!」
[ロマーノ]「俺はここまでヘタレちゃいねーぞこのやろー!」
[プロイセン]「いやーお兄様も結構……けど言われてみりゃあイタリアちゃんの言う通りだな。コイツの反応は兵隊っぽくはねぇ。はぐれ狼が鉄の匂いに囲まれればそりゃパニックを起こすってもんだぜ」
[白神]「……特警による臨検が交戦の原因かもしれないと?」
[プロイセン]「そうだとしたら誰が悪いって話じゃねぇけどな。事故みたいなもんだろ」
[ドイツ]「その話をこれ以上掘り下げるには情報の精査が必要だろうから、一度置いてもう一つの問題点に移ろう。この後の不明生物と不明船の動きが連動している可能性だ」
[イギリス]「双方の発砲後、不明生物は奥へ逃げ込み機関部が作動、続けて特警が砲塔の旋回音を聞き取った」
[尾形]「この逃げ込んでから機関部の作動と砲塔の旋回が始まるまでのタイムラグが異様に短い事が問題の異常性です」
[赤羽千尋]「単に早すぎる、と言うのもありますが……乗組員間の指示どころか、乗組員の活動音すら聞き取れませんでした」
[東雲瑠璃]「私たちのようにテレパスを用いていた可能性はあるでしょうか?」
[白神]「我々の認知下ではテレパスも歴とした超常能力だ」
[アメリカ]「一応俺の家で超能力とかの研究はやってるけどね」
[吹雪]「私たちが連れているこの子たちみたいな存在がいたら動かせるかなぁ」
吹雪の発言に応じて、彼女だけが参考用に持ち込んでいた艤装から小人が顔を見せた。
[白神]「……あぁ、言い忘れていた。実は君たちのいう小人だが、私は視認できていない」
[吹雪]「え゙っ!?」
[権藤]「あ、俺も俺も」
[三枝]「俺も見えてはいなかったな。動いてるっぽい音だけは聞こえるんだが」
[結城]「副長が見えているようだったので、そういうものかと思っていましたが」
[イオ]「アレ、あたし幽霊とか見えないけどこの子たち見えますよ?」
[赤羽千春]「私も見えますねー。そう言えば千尋ちゃんは?」
[赤羽千尋]「へ? ……あぁ、見えるけど……」
[フランス]「あれ、この子たち見える人って限られてたの?」
[ドイツ]「特別警備隊の赤羽班長か。君の視点において船内で動いていたモノは自分達とこの不明生物だけで間違いないか?」
[赤羽千尋]「肯定します。臨検時、カメラに映る不明生物以外の動的存在は肉眼で確認できませんでした」
[イギリス]「突入した人間にも船内は独りに見えていた……この船が普通に動いていたとは思えねぇ」
[吹雪]「私たちも普通とは言えませんけど、それでもこの子達を乗組員として必要としていますから……」
[アメリカ]「全部コンピュータ制御された完全自動操縦とかでもしてたのかい? この不明生物がサイボーグに見えなくもないしとんでもないオーバーテクノロジーとか。出所わかんないけど」
[イギリス]「それ並みに異常な可能性も一つ考えられる。……つまりその不明船はこいつ単独の『思考』で動かしていたって可能性だ」
[フランス]「……いやいやいや、あり得るの? そんな生物と軍艦」
[イギリス]「そう考えるとコイツが逃げてから船が動き出すまでの時間経過と一連の行動が符合するんだよ。さっきのイタリアが気付いた事も含めれば、ビビって逃げようとして機関始動までパニックのまま発砲を繰り返した。そう説明がつくんだ」
[ドイツ]「……突飛だとは思うが、現実に発生した事態から逆算すればあり得る話だ。我々の常識が通じるとは思えん」
[白神]「最初から我々に対する敵意を持っていたと断ずるには、動きがちぐはぐでありその確証を持てずにいました。不明船という外見に惑わされましたが、これは未知の野生生物と接触したケースと重ねて考える方が妥当でしょうか」
[ドイツ]「そうだな。今後の方針を定める上で有力視に値する可能性だ」
[プロイセン]「これ以上詰めようとすれば机上の空論だし、この話はこんなところか。あとは……今後の動き、その手段をどうするか、か」
[中国]「野生動物相手なら対応自体は単純ある。『必要以上に関わらない。危険が迫ったら
[ロシア]「その単純な対応が出来ない人ってたくさんいるんじゃない? 特に『必要以上に関わらない』ってところ」
[ドイツ]「……ロシアの指摘はまた別の問題として考える。それと、この個体が特別臆病であった可能性も気に留めるべきだろう」
[フランス]「イタリアが臆病だからって俺たち全員ビビりってわけじゃないもんねぇ。中身イギリスの個体なんて積極的に殴りかかってきそうやだこわーい」
[イタリア]「ヴェッ!?」
[イギリス]「おう歴史的に戦が偉人様頼りなフランスのような個体がいたらさぞ
[アメリカ]「おっさん二人の脱線は引き続き放置だぞ。でもフランスの言う自分から襲ってくる相手がいたら打つ手が限られるって、今回日本の家でわかったわけだよね」
[日本]「はい。……今知り得る限りでは、不明船に有効打を与えられたのはこの子たちだけです」
[叢雲]「正確に言えば吹雪と私ね。他は直接戦ったわけじゃないから」
[イギリス]「ここに揃った面々も多分同類で、対抗手段そのものはある……と考えるしかねぇのかなぁ。今できそうな実証テストが実戦だけってのはどうにかしたいが」
[フランス]「仮にそれが実証されたらそれはそれで問題山盛りだけどね」
[ロマーノ]「それって要するにわけわかんねーやつらの対抗手段を一部の国で独占するって事だろ? しかもそれがベッラとかゲスが勘ぐるぞちくしょー」
[中国]「ご丁寧に我の家でなくて台湾の家に来ているのが頭いてーある……旧東側に何の恨みがあるあるか」
[ロシア]「いや僕のところには来ているしそこは関係ないと思うなぁ」
[イギリス]「ま、今この場でも中国だけぼっちだからな」
[中国]「
[日本]「すみません中国さん。仮に私が良いと言っても上司(※)が間違いなく『No!!』としか言いません」(※)“国”で使われるスラングの一つ。国王、大統領、首相など“国家元首”を指す。
[ドイツ]「改憲騒動真っ最中の日本にその注文は無茶だな……」
[フランス]「今の日本とこ、上司結構なタカ派だもんねぇ。まぁそうでなくても関係ギクシャクしてる国相手に嫁入り前のお嬢さん達派遣なんて誰がOuiなんて言うのさ」
[アメリカ]「中国はもう上司の尻蹴っ飛ばして路線変更しないとジリープアーなんだぞ」
[イギリス]「つっても俺たちだって安心出来る立場じゃねぇだろ。不明船の発生規模も把握できてない上に、何が起こるかもわからない。今いる面々で対応できるかは不安要素が多いし、そもそもこんな淑女や乙女を戦場に駆り出す事なんて誰が納得するんだ?」
[フランス]「まぁ納得しない国民が上司に投票してくれなくなるよね。政治荒れるのが怖いから俺たち預かりなんだし」
[ロシア]「うーん、僕の家はともかく、単純に被害が出ないと世間は動いてくれないんじゃないかなぁ。その時に向けて準備は必要だと思うけど」
[イタリア]「準備、準備かー……つまりこの子たちの仲間を探すってことだよね」
[アメリカ]「うん、今もどこかにいるなら悪いことに巻き込まれるかもしれないし、早く探して集まるべきだと思うよ」
[アイオワ]「Meなんてオリジナルの船上にいたんだし、関係のあるところにいたりするんじゃないかしら」
アイオワの発言は同意の頷きが多い、しかし直後のガングートの一言に、周囲がざわついた。
[ガングート]「しかし、我々は『船』である事も事実だ。『造る』事は出来ないのか?」
[ロシア]「えー……確かに艤装を真似して造る事は出来るかもしれないけど、君たち一応人の身体しているんだよ? それと併せてなんて……」
[ガングート]「私の認識で今の自分は、『船』という自意識が人間の身体という『
[イギリス]「いや軽く言ってるけどな、その意識とか霊魂とかもどっから呼び出して容れ物もどう用意するのかその方法が……」
[彰][瑠璃]「「できるかもしれません」」
イギリスの異議に異邦人が割り入った。会議参加者の目線全てが二人に向く。
[ドイツ]「……聞こう」
[瑠璃]「生物の“つくり”を解析する技術に心得があります。対象……この子たちに一切影響を与える事もありません」
[彰]「そして解析した物質的構造を「再現」する技術も俺たちは持っています。ただしそれだけでは単なる精巧なだけの「人形」ですが……」
[ガングート]「『船』の自意識……霊魂とでも言ってやろうか。それをくっつければ私たちの同類が出来上がりというわけだ」
「ロシア」「……君たちがそこまで前に出る理由、聞いてもいいかな?」
「彰」「俺たちはある凶悪犯罪者を追ってここまで来ました。その情報、手がかりが欲しい。ヤツを放置すれば、確実にこの次元にも危害が及ぶ」
[白神]「……副長、口寄せの類いに心得はあるか?」
[尾形]「あります。しかし、防衛大に入って以来は一度も……」
[白神]「それでも試す意味はある。機械的再現性に問題はあるし得られる情報も断片的かもしれない。しかし今はその断片の積み重ねが必要だ」
[アメリカ]「……んん~? そっちの人たちなんか変な話をしていないかい?」
[イギリス]「怖ぇからってわからないフリすんな。そっちのこんごう副長が心霊関係の能力に心得があるから試す手段と意味があるって事だろ」
[アメリカ]「Nooooooo!! 言わないでくれよ! キミ自分の分野だからって得意気になってるの本当に嫌らしいんだぞ!」
[イギリス]「苦手分野から目を逸らすお前よかマシだろうが!」
[白神]「話を続けてもよろしいでしょうか?」
[アメリカ][イギリス]「「あ、どうぞ」」
[白神]「戦艦ガングートの提唱する“建造”の実行をこの客人二人にお任せしましょう。その上で監督役にこの尾形友幸二等海佐を推薦します。正式な手続きは別途必要となりますが」
[ドイツ]「議長として方針自体には賛成だ。率先して先んじてくれるのはありがたい……が、その『別途必要となる手続き』についての段取りは大丈夫か?」
[佐竹]「私がそこを抑えられる立場ですので、どうにか致しましょう。ついでに各国へのオープンソース化まで話を取り付けておきますかな?」
[フランス]「
[日本]「私もその方針に賛成します。この子たちへの理解を深めるのは一日でも早い方が良いでしょう」
[アメリカ]「いいじゃないか。こういうところをオープンにするのは大事だぞ!」
[ドイツ]「日本は特に“国”一人へ預ける限界を超えた懸案となっているからな……他に反対も無ければ、この“建造”計画を実行に移し、その進捗と結果から事の進展を図る。という結論で良いな?」
[イギリス]「賛成だ」
[中国]「右に同じね」
[ロシア]「ついでにその間、上司とのやり取りを済ませておきたいなぁ」
[イタリア]「その間俺たちは片っ端から海でナンパすればいって事だね!」
[フランス]「はっ! つまり俺たち大活躍!?」
[ドイツ]「お前たちはもう少し言葉を選べ!」
――会議終了後
「尾形さん、東雲ご夫妻、“建造”計画の件で一つよろしいですか?」
空は既に青みを失いつつある時間となっていた。今日なすべき事を済ませた一同はそれぞれ休息に向けて室内のテーブルや椅子を片付ける。尾形は“客人”へ案内を進める役目を預かったが、“日本”から声をかけられてそれは一時中断となる。
「? はい。艦長、一度席を外します」
「わかった。その間は私の方で進めておく」
「丁度良かった。俺たちもお願いしたい事がありまして」
そう答える彰の荷物を包んでいるであろう袋は、明らかに限界手前の量を詰め込まれている。必要な面々だけを残して、会議室内に残った4人は改めて席に着いた。
「まずは東雲ご夫妻の用件をお伺いしましょう」
情報を揃えたい日本は、まず夫婦にそう切り出した。
「大井さんと遭遇した場所についてなのですが」
「回遊する環礁って、こっちでは一般的ですか?」
「……いえ、初めて聞くお話ですね」
「俺たちがこの次元へ渡った時、そう言うところへ着地したんですが、まぁ何かと気になるところが多かったモノで、それを調べてもらいたいなと。これが回収した物品で、それと情報を複写したいのでこっちで一般的な記録媒体を分けて貰ったり借りたりしたいんですが」
彰の取り出した袋がじゃらじゃらと音を鳴らして日本の前に置かれる。彼が封を解いて見せた者は、赤銅色で金属の質感を見せる勾玉であった。また電子魔道書から先程のような立体映像が浮かび上がり、日本も尾形も見たことがない様式の遺物の映像が映し出された。
「これらがこの地球上に前例として確認・観測されているかどうか、彼女たちとの関わりを思わせるものであるかも含めて調査をお願いしたいのです」
「……成る程。確かにこれは私の知識には無い物です。他の方々にも聞いてみましょう。コピー用紙も用意します」
「お願いします。では、そちらのお話ですが……」
「はい。寄せる艦の候補についてですが、これを尾形さんにお預けします」
そう言って日本は厳かな装飾の木箱を取り出し、蓋を開けた。柔らかい布を敷き詰められた中に入っていたのは、手の平ほどの金属片である。
「「これは……」」
「……過去の船の破片でしょうか?」
「はい。工作艦『明石』の一部です。沈まずに解体された艦の一部は、一通り頂いていました。話を聞いてここへ赴く際に何か関わりや手がかりがあるのではと思いまして、これだけでも持って来たのです。……こちらを依り代や触媒、そう呼べる形に用いる手段をお三方がお持ちであれば、事の進みが早いのではないかと」
日本の声は淡々としているように聞こえたが、それに応えるべき3人には自身の気持ちを抑えているだけだとすぐに理解できた。そして、どれだけの感情が入り乱れ、混ざり合っているのか……その全貌は把握しかねた。(瑠璃と彰にはそれを
ただ彼の目から見通せた心中では、底に沈み澱んだ未練や後悔が、一握りの期待を放り込まれて再び渦巻いていた。
「……私が至らなければ、あるいは工程上の必要から、これを失う可能性もあります」
尾形は声色こそ落ち着いていたが、身震いは隠せなかった。彼は自分の持つ異能の全貌を自身でも把握しきれていない。協力者の二人が未知数である事を差し引いても、“祖国”の【形見】と呼べる代物を預かる事に対して強い重圧を感じずにはいられなかった。
「俺たちも含めて事を信じる。そう受け取ってよろしいですか?」
彰もまた、自分の声が少し震えているのを感じる。先ほどは見栄を切ったが、自分たちは馬の骨どころではない、得体の知れぬ余所者だ。“国”という存在をまだ充分に理解できているわけではないが、彼女たち“船”はその娘と称するに差し支えないだろう。そのような存在を“人造”しようとしている者は、危険だと思えるのではないか。しかし目の前の“日本”はこれを託すと言う。
試されている。そうも感じた。しかしそれ以上に、応えなければならないという使命感にも似た緊張が三人の心を支配した。空気が張り詰める中、日本はそっと目を伏せてしばし沈黙するも、顔を上げて三人と目を合わせる。
「かつて出会えていた神秘を、私は見失ってしまいました。故に託したいのです、あなた方に」
その言葉と瞳にこもった寂しさと
その光から、目を逸らすことは出来ない。尾形は震えを払い、毅然と眼光を返した。
「お預かりします」
尾形は差し出された木箱を受け取った。もとより手を抜くつもりは無かったが、自分の持てる全てを出し尽くすべきだろう。
「自由に使えるコンピュータを一台お貸し致します。素材の調達については私か……そうですね、あの子達に話を通してください」
「市井に出す良い機会、ですか?」
「彼女たちに、今の日本を少しでも見て頂きたいのです。例え敗戦に終わった過去でも、あの子達が守った国ですから」
「……承知致しました。『おつかい』は彼女たちに頼んでみましょう」
――???????
“世界会議”の内容は議事録として“ドイツ”に纏められ、後日各国へ渡される事となる。しかしその時、ログを見直すまで誰も気付いていなかった。会議の中途、ある者が会議へ紛れ込み、その話をずっと聞いていたことに……
「どうしてみんな僕を放置して会議進めているのさ!」
「いや、遅刻したカナダもカナダじゃない?」
後日、アメリカとロシア以外はカナダに謝ったそうな。