シングルレートでの悪い思い出?
……メガリザYにストーンエッジ外しまくってソーラービーム三タテ食らったことかな?
……初期の頃にスカーフテテフにボロクソに負けまくった事?
……プレミしてBぶっぱのベトベトンに完全に止められたこと?
ありすぎて思い出したくないんだよなぁ。
ちなみに私は今でもクレッフィが大好きです。”ちょうはつ”打たれたら完全に機能停止するけど。
「行け、我が眷属」
「仕事の時間だ、
互いのモンスターボールの中から、これまで旅を共にしてきたポケモンが繰り出され、そして対面する。
グラジオが繰り出したのは、近未来的なボディを浮遊させているポリゴンZ。
対してユウキが先発に選んだのは、他地方とは違う環境で育ったために体色とタイプが異なる事となった白色のキュウコン。彼女が現れると同時に、どこからともなく降り始めた”あられ”を前に、しかしグラジオは至極冷静に初手の指示を出した。
「シャドーボールだ」
「オーロラベール」
ポリゴンZから射出されたシャドーボールが被弾する直前、ユウキの指示を受けた
七色に煌めく幕はそのまま
だが、技の余波まで受け止めることはできない。元より特殊攻撃力が高いポリゴンZの攻撃である。特性”ダウンロード”での恩恵も授かっているとあれば、その威力は到底無視できるものではない。
だからこそユウキは、瞬時に次の最善手を考え出し、指示を飛ばす。
「吠えろ、
「コォォ――――――ン‼」
麗美ながらも闘気が充溢した
表情を顰めて小さく舌打ちをしたグラジオを他所に、あられに紛れた
”みがわり”の有用性は、一定以上の実力を持ったトレーナーであれば誰だって理解している。
だがその分、使いどころを見誤れば大した効果が得られないのも事実。そんな技を良い場面で使うことに成功した
グラジオの場に引きずり出されたのは良く鍛えられたしなやかな肢体を持つポケモン―――ルカリオだった。
3vs3という対決方法である以上、ランダムに意図していないポケモンが引きずり出されるというのは、される側のトレーナーにとっては良ろしくない事だ。
事実ユウキからしてみれば、グラジオが繰り出す3体がこの時点でほぼ把握できたのは戦術的な面から見ても有効だった。
その状況を鑑みて、最も繰り出すに相応しいポケモンのモンスターボールに手を触れ、放り投げる。
「遠慮なしに焼き尽くせ、
そして登場する、こちらもアローラ地方の環境の中で独自の種族変化を遂げたガラガラ。
本来はじめんタイプの筈のこのポケモンは、アローラでは「ゴースト」と「ほのお」という二種のタイプを獲得した。そんな中、ユウキがカラカラの頃から育て上げた
「ニトロチャージ」
「守れ‼ ルカリオ‼」
容赦なく振り下ろされる一撃を、ルカリオは防ぎ通す。返す刀で繰り出されたバレットパンチを受け止めてダメージを貰ってしまうが、元より物理防御力の種族値が高く、尚且つ半減のはがね技であった事もあり、特に問題はなかった。
状況を鑑みれば明らかにグラジオ陣営が不利である。
ゴーストタイプ故に強力なかくとうタイプの技は放てず、更にガラガラの強力な炎技は弱点で入る。普通ならばここで後退して然るべし―――だが。
「ルカリオ―――」
グラジオがルカリオを居座らせる。―――その選択をまるで最初から読み切っていたかのように、ユウキは
「舞台を開け、
代わりに出てきたのは、ユウキの相棒とも言えるポケモン、アシレーヌ。
だが彼女は、地面に体をつけた瞬間、巨大な振動に襲われた。
「グラジオ、お前なら居座ってくると思ったよ」
不利対面であったからと言って、何も考えずに危機感を抱いてポケモンを戻すという戦法が通用するのは、アローラでは精々前半の島巡りの試練までだ。
ポケモンを戻すタイミング、或いは居座らせる胆力、ひいては不利対面であってもその状況を覆せる技の仕込みから一発逆転の一手を悟らせない振る舞いまで―――一流を目指すトレーナーには、そういった技量が間違いなく求められる。
一流のトレーナーであることの条件の一つは即ち、こうしたトレーナー同士での戦術の読み合いに打ち勝てる事にある。初見のトレーナーが相手ならばもう少し慎重に様子見をするのがユウキというトレーナーだが、勝手知ったる友人が相手ならば問題はなかった。
グラジオとて優秀なトレーナーであることには変わらない。だが、読み合いや腹の探り合いはどうしても経験の差が如実に表れてくる。
「トレーナーとしての経験」ではない。
ルカリオの”じしん”によってダメージを負った
そして、グラジオは理解していた。
「《プリマ・ドンナ》―――第二楽章《オラトリオ》」
ユウキがそう呟くと、途端に
「ハイドロポンプ」
極大の水流がルカリオに直撃し、その一撃だけで戦闘不能にまで追い込まれる。
その様子を見届けたグラジオは、ルカリオをモンスターボールの中に戻し、迷わず次のポケモンを繰り出す。
「”でんじは”だ」
再び場にポリゴンZが戻って来るや否や、その指示に従って
多少動きが鈍くなった
返す形で再び放たれた”ハイドロポンプ”が、再度直撃してポリゴンZを吹き飛ばす。
ルカリオもポリゴンZも、決して特殊防御力が突出して低いわけではない。確かにアシレーヌというポケモンは種族的に特殊攻撃力が高いポケモンではあるが、如何に威力の高い”ハイドロポンプ”と言えど一撃で瀕死状態に至らしめるには相当の練度差が必要になる。
だが今回の場合、グラジオが一瞬で二体のポケモンを失った理由はそれではない。
それに気づいていて、尚且つポリゴンZが持つ技では強力なオーロラベール下に存在する
「……相変わらず厄介だな、その”ユニークスキル”は」
悔しさを滲ませた声で、グラジオはそう言った。
ポケモンにはそれぞれ”特性”が存在しているのは既に知られていることではあるが、約10年前にカントーのタマムシ大学で発表されたとある論文の中に、既存の特性とはまた違う能力を持つポケモンが存在している事が言及された。
ポケモンが種族的に有している”特性”ではなく、
”ユニークスキル”と命名されたそれは、しかし大多数のポケモンは「使える可能性がある潜在性を秘めている」だけに留めており、全てのポケモンが使用できるわけではない。
そんな”ユニークスキル”の発現条件が確立されたのは、数年前の事。同じくカントー地方のポケモン研究の権威、オーキド博士が先導を切る形で解明がなされた。
その発現条件は『
そう定義されたものの、個体別のポケモンの成長限度などそれこそ千差万別。具体的な数値にして見る事が叶わない以上、”ユニークスキル”習得条件は未だ不透明なところも多い。
だが、「成長最上限度まで育て上げること」そのものが明文化されている以上、”ユニークスキル”を習得しているポケモンを連れているという事は即ち、そのトレーナーの育成能力の高さを表している証明でもある。
並のトレーナーであれば、自分のポケモンを最高最強の存在に育て上げる事すら難しいのだから。
そして、ユウキが所持する”ユニークスキル”持ちポケモン
「第一楽章」から「第四楽章」まで存在しているそれは、いずれも条件を満たさなければ発動しないという縛りが存在しているものの、”ユニークスキル”の中でも四種類の能力を発動できるという異質なもの。
そして先程発動した「第二楽章《オラトリオ》」が自身に齎す効果は『ランダムで自身の全能力の内の一つを大きく引き上げる』―――今回は幸運にも、元より高いアシレーヌというポケモンの”とくこう”の能力を更に引き上げた形になった。技に例えるならば、”わるだくみ”を一度積んだような形である。
しかしその能力を発現させる条件は『相手の攻撃技を受けること』であり、尚且つそれは『自身が積んだ補助技の効果を受けていない状態で』という追加条件も付く。
今回の場合フィールド全体に展開している”オーロラベール”は
流石に何度も発動できるスキルではなく、《プリマ・ドンナ》のユニークスキルはどれも『バトル中に一度しか発動できない』が、運よく”とくこう”能力値の引き上げに成功した
そう。グラジオが最後に繰り出すポケモンが、普通であれば。
「頼むぞ」
短いその言葉と共に、最後の一体が姿を現す。
グラジオが進化前であったタイプ:ヌルの頃からずっと
フィールドには未だ”あられ”が降り注ぎ、”オーロラベール”も張られたまま。
そんな彼女が張り巡らせたオーロラベールはまだ効果を発揮し続けるだろう。そも、3vs3の試合時間では効果が切れる方が珍しい。
だがそれでも、このシルヴァディ相手には気が抜けない。
何故ならば―――。
「ムーンフォース」
「《AR
「キシャアアァァッ‼」
グラジオの言葉と共にシルヴァディが咆哮し、それと同時に
そうして変色したシルヴァディにフェアリー技のムーンフォースが直撃するも、僅かに後退ったもののダメージはそう入っていないように見えた。
元々人工ポケモンであるシルヴァディには、開発コンセプトとなった神話上のポケモン―――創造神アルセウスの伝承に則って専用の「メモリ」をセットすることで任意のタイプに変化させることができるという”特性”が存在していた。
だが今発動したのは、
《AR
これによってタイプ一致技を繰り出す事が容易になったり、逆に相手のポケモンに対してタイプ相性的に常に有利に立ち回ることができる。
カクレオンやケロマツの進化形態が覚えることができる”へんげんじざい”という特性の上位互換と言っても差支えはない。
全体的に覚えられる技のタイプはそんなに狭くないシルヴァディにとっては、まさに鬼に金棒の”ユニークスキル”であると言えた。
逆にグラジオの側からしても、タイプ相性的には有利に立ち回れているのに一気に攻勢には出られない理由があった。
彼は、
だからこそ、半端なダメージを始めとした下手な行動は、ただでさえシルヴァディ一体しか手持ちが残されていない状況を更に悪化させてしまう。
だが、このまま攻めなければ状況は好転しない。そう思い、グラジオが動く。
「《AR
体色が黄色に変わるのと同時に、シルヴァディの体表に電流が駆け巡る。
「10まんボルト‼」
タイプ一致、弱点タイプのでんき技。
一撃で落とせるかは若干賭けの要素も含まれるが、それでも現状タイプ弱点をつける最高威力の技だ。
それを躱そうとした
ひとまず攻撃を当てることには成功した―――そう思っていたグラジオだが、しかし。
「戻れ」
”ユニークスキル”によって齎された特殊攻撃力の上昇補正など二の次だと言わんばかりに躊躇なく
「
再びボールから登場した
その時点で既に、
「ッ‼―――《AR》―――」
「遅い」
至近距離で放たれた
《AR
「フレアドライブ」
間髪入れずに叩き込まれた攻撃が、残ったシルヴァディの体力を根こそぎ削り取った。
為す術なく吹き飛ばされ、しかしそれでも立ち上がろうとしたシルヴァディだったが、力及ばず倒れる。
「ありがとう、
グラジオは労うような一声を掛けると、倒れ伏したエースポケモンをモンスターボールに戻した。
結果は3:0。完敗を喫した形になったグラジオだが、ふぅと一息を吐くと、先程までの闘気を漲らせた表情とはまた違う、面倒臭い友人を見るような呆れ顔に戻っていた。
「余計な考えは吹き飛んだか? サブチャンピオン」
「お陰様で、な。―――ありがとう、
「ガルルッ」
嬉しそうな声を漏らした
「本当に変わった男だな、お前は」
「?」
「普段は普通にポケモンと接しているのに、バトルとなると恐ろしいほど合理的に動く」
先程でもそうだった。如何に熟練したトレーナーであっても、”ユニークスキル”の恩恵を失うことを惜しいと思う事は少なくない。ましてや今回
だがユウキは、そんな事には目もくれず、一瞬たりとも躊躇せず、ただ”勝利”を掴み取る為に必要な行動を取捨選択し、行った。
それは凡そ、十年と少しの年月を普通に生きてきた子供が取れるような行動ではない。
「当たり前だ。”ユニークスキル”も”メガシンカ”も”Zワザ”も確かに強力。―――でもそれに頼りすぎて、拘ってばかりいたら勝機を逃す」
「…………」
「僕は僕のやり方で勝利の方程式を描く。それをもっと錬磨して、アローラに帰ってきた暁にはミヅキに、勝つ」
「そうか」
何か言葉を呑み込んだような様子のグラジオだったが、ユウキの言葉に頷いて見せた。
そしてスッと、自分の目の前に拳を掲げる。
「まぁ、お前なら大丈夫だろう。……リーリエを頼むぞ」
「任せてくれ。彼女のサポートはしっかりと務めてみせるよ」
そう言ってユウキは、グラジオが差し出した拳に自分の拳を突き合わせた。
託されたこと、誓ったこと。せめてそれだけは絶対に守ろうと心に刻んで。
―――*―――*―――
エーテルパラダイスでルザミーネと会い、そしてグラジオと勝負をした一週間後。
アローラを去る日がやって来た朝、ユウキはふと自分が借りているリリィタウン郊外にあるアパルトメントの一室を改めて眺めていた。
ミヅキとは違い、ユウキは家族とではなく、単身このアローラ地方へとやって来ていた。ミヅキの母親とは以前から交流があり、良くして貰っていた事もあって当初は「一緒に住まない?」と言ってくれていたのだが、ユウキは遠回りに丁重に、しかし頑なにそれを固辞した。
そんな強がりを見せて一人で住んでいたアパルトメントの一室だったが、実際はすぐに島巡りの旅に出てしまったという事もあって私物など全くと言っていいほど置いていなかった。
現にアローラを離れるという今ですら、何を持っていくかを悩まなくても済む程度には殺風景。引き払ってしまおうかとも考えていたが、「戻って来た時に住む場所がないのはダメ」とミヅキに反対され、ミヅキの母親からも「部屋の管理は私がやっておくから」と言われて、それに甘んじる形に収まったのだ。
「キュイ?」
ふと気付くと、傍らに佇んでいた
思えば自分に着いてきた当初は体高が膝くらいまでしかなかったというのに、今では完全に自分の身長を追い抜かしてしまっていた。
そんな事も気に掛ける暇すらなかったのかと自虐じみた笑みを溢すと、
「キュイ、キュルルル」
「大丈夫。大丈夫だ」
「
「キュウ?」
「必ずお前たち全員、あの頂にもう一度連れて行ってやる。だからもう少し、もう少し俺に力を貸してくれ」
「キュルルイ‼ キュイ‼」
当たり前です、と。そう言わんばかりの声に再びユウキは微笑した。
その後
アローラは今日も変わらず南国の暑さを覗かせており、嫌味なまでに燦々と陽光が照り付けている。
だがカントー地方は、今頃まだ冬が明けて春が来たばかりの頃合いのはずだ。そこいらの対策は、しっかりとしておかなくてはならない。
暫くこの景色も見納めかと、珍しくそんな殊勝な事を考えていたら、いつの間にやらメレメレ島の南西部、ハウオリシティの港湾区へと辿り着いていた。
「ロトム」
『はいロト』
ユウキが呟くように声を掛けると、服の内ポケットの中からポケモン図鑑に取り付いたロトム―――ロトム図鑑が反応し、浮遊しながら飛び出してきた。
「今の時間は?」
『八時ちょうどロトね』
「船の出航は……十時だったっけ」
『そうロト。アローラハウオリ発の、カントークチバ着客船ロト』
アローラ地方は大都市大地方からは離れているというイメージが強いが、実は思っているほどでもない。
このハウオリシティを出港して、途中ホウエン地方のミナモシティを経由してカントー地方のクチバシティまで、船旅でおよそ5日といったところだろう。
同行する―――本来こちらがメインではあるが―――リーリエとは現地集合という事でこのハウオリ港で待ち合わせることになっていた。
だが、本来の待ち合わせ時刻よりも早めに着いてしまった事で手持ち無沙汰になることを覚悟していたユウキだったが―――しかし港には既に先客がいた。
「もう着いてたのか、リーリエ」
「あ、ユウキさん」
ユウキの姿を確認すると、埠頭から朝の海を眺めていたリーリエが小走りで駆けつけてくる。
以前は、それこそ出会ったばかりの頃はまさしく深窓の令嬢のような雰囲気を纏っていたが、髪を括り、動きやすい服装に変えてからは随分と心身共に活発になった。
恐らくは常に天真爛漫なミヅキに良い影響を受ける形でこうなったのだから、ユウキとしてはミヅキの影響力の高さというものに、まったく脱帽するばかりであった。
「えっと、兄様に送ってもらったんです」
「そう。そのグラジオは?」
「『俺の役目は終わった』って言って、その、先に帰ってしまいました。ユウキさんに言いたい事は、あの時全部言ったから、って」
「相変わらずだなぁ」
「本当ですね」
クスクスと笑うリーリエに、故郷を離れる哀愁のようなものは感じられなかった。
とはいえ、今日に至るまで彼女なりに感じ入るものもあっただろう。幾ら垢抜けたからと言っても、故郷を長く離れることになるのだ。
そんなお節介な事を考えていると、不意にリーリエがずい、と大きく一歩を踏み出してきた。
「あ、あの。ユウキさんっ」
「う、うん。どうしたの?」
「えっと……色々とこれからもご迷惑おかけしてしまうかもしれないんですけど……よろしくお願いしますっ」
そう言って深々と頭を下げるその姿に、ユウキも不意に笑いを漏らしてしまった。
ともすれば、《《迷惑を掛けるのは自分になるかもしれない》》のだ。つまりはお互いに迷惑を掛け合う事になるのかもしれないのならば、彼女だけに頭を下げさせるのは不公平だろう。
「こっちこそ。僕の我が儘に付き合ってもらうかもしれないから、よろしく頼むよ」
「はいっ‼」
そんな感じで出発前の言葉を交わし合っていると、不意に背後に見知った気配を感じて振り向いた。
急いで来たのか、息を切らしている少女。そのせいか頬は軽く紅潮し、頬には汗も滴っている。
そんな幼馴染の姿を見て、ユウキはふぅと一つ息を吐いた。
「出航時間は知らせてあっただろう? 何も早めに行こうとは思わないよ」
「でも……でもちゃんと二人を見送りたかったんだもん。ユウキも、リーリエも、しばらく会えなくなっちゃうんだもん。寂しいよ」
「大げさな。根性の別れになるわけじゃあるまいし」
「それでもっ」
ユウキの方が少しばかり背が高い為、視線を上にあげてミヅキは
「ユウキ、放っておいたらずっと音信不通になっちゃうじゃない‼」
「……そう?」
「旅巡りの途中だって、わたしが連絡しなかったらずっと一人で旅してたじゃない‼ ……まぁそれでも、ポータウンに行く時とか、エーテルパラダイスに忍び込む時とかはちゃんと居てくれて嬉しかったけど」
「分かった、分かった。ちゃんと定期的に連絡はするよ。約束だ」
「約束だからね‼ 破ったら帰って来た時にユウキが嫌いなホウレンソウのフルコースでお出迎えだからね‼」
「それだけは勘弁だからちゃんと連絡させていただきますよ、ハイ」
実はホウレンソウが嫌いだったのはアローラに来て直後までの事で、今では克服して特に嫌いでもなくなっているのだが敢えてそれは伝えなかった。
するとミヅキは、リーリエの方に歩いていくと、彼女の手をぎゅっと握りしめた。
「リーリエも頑張って‼ わたし応援してるから‼」
「はいっ。ミヅキさんもお元気で‼」
「あ、それと。ユウキの事ちゃんと見ててあげてね。一つの事に夢中になっちゃうと周りが見えなくなっちゃうの、昔からの悪いクセだから」
「ふふっ。任せてください」
女子の友情の中で自分の監視がつけられたことに関しては、もはやユウキは何も言わなかった。
そんな流れで会話を続けていると、ククイ博士やハウ、更にはメレメレ島の知り合いなども続々と見送りに駆けつけてきた。
彼らに激励されてそれに応えていると、いつの間にやら時間は過ぎて、港に定着した客船に搭乗する時間になった。
その直前。さて行くかと見切りをつけて船に乗り込もうとするユウキの服の裾を軽く握って、ミヅキが引き留める。
「……まだ何か言っておくこと、あったっけ?」
「なくても、いいじゃない。ユウキがいなくなっちゃうの寂しいけど、でも頑張ってきてほしいから、だから……」
そのまま軽く俯いてしまったミヅキに対して、ユウキは言い残したことがあったことを思い出して頭をポンと軽く叩いた。
「僕が戻るまで、あの
その言葉を聞いたミヅキはパァッと表情を明るくさせ、「うん‼」と強く頷いた。
そんなミヅキの輝かしい笑顔を目に焼き付けて、ユウキは客船へと乗り込んでいく。先に乗っていたリーリエは、こちらに手を振っているミヅキに手を振り返しながら傍らに立ったユウキに問いかけた。
「ミヅキさん、笑ってくれていました?」
「うん。まぁ大丈夫そうだ」
汽笛が鳴って出航し、やがてメレメレ島が見えなくなると、船頭に立ったリーリエはこれから向かう場所に向かって視線を向けて心躍らせ、ユウキは潮風に煽られた首筋まで伸びた黒髪をそっと手で押さえた。
彼ら二人の”何か”を見つける旅を祝福するかのように、海上には多くのキャモメが羽ばたいていた。
~よくわかる 用語解説~
■ユニークスキル
独自設定。10年前に存在が公にされ、そして数年前にポケモンバトルの戦術及び育成技術の一環に練りこまれたもの。
いわゆる”とくせい”の上位存在のようなもので、種族によってある程度固定されている”とくせい”とは違い、個体個体で別のものが存在している。
習得条件は『対象の個体ポケモン、その進化系列まで含めた状態で成長最上限まで育成を行うこと』。ゲーム性能的にメタ発言をするならば、
・対象のポケモンを最終進化まで持っていく。
・対象のポケモンをレベル100にする。
・対象のポケモンの基礎値(努力値)を全振りする
の条件を満たすことで発現。ゲームでならばそれこそ厳しい条件ではないが、作品中の世界ではこれが中々困難であり、ユニークスキルの発現はそのトレーナーの力量を指示している。
■主人公(ユウキ)
いわゆるサイクル戦術の使い手。ポケモン戦術としては別に珍しいものではないが、読み合いに非常に強い為、勝率はかなり高い。
使用するポケモンは「アローラ統一パ」。バンク解禁前はフリーでもレートでもそこそこ見かけたけれど、今ではあまり見ない。……すばやさがなぁ。
ちな、ウルトラビーストとカプ神は手持ちには入っていない。
■主人公の手持ち
前述通りアローラ統一パ。新ポケは出てきた回のあとがきにそれなりの解説を落としていく計画。
◇アシレーヌ(ヴィアーチェ)♀
主人公の相棒的存在。一番最初に貰ったアシマリの最終進化。三体存在する主人公パーティーのユニークスキル持ちの一体。多分努力値はCぶっぱは確実。
【ユニークスキル】
□《プリマ・ドンナ》:発現条件に縛りがあるスキル。「第一楽章」から「第四楽章」まで存在し、今のところの内訳は以下の通り。
□第一楽章???
□第二楽章《オラトリオ》:相手から攻撃を受けたとき、自身の能力値の内ランダムで
一つの能力を二段階上昇させる。
□第三楽章???
□第四楽章???
◇キュウコン(アウロラ)♀
不動の先発役。補助技のスペシャリスト。”ちょうはつ”を無効化するという、ゲーム性能的には通信対戦では絶対に出てきてほしくないポケモン。”いたずらごころ”持ちではないのが唯一の救い。
特性で降らす”あられ”や補助技の持続時間が長い。とにかく長い。
その上必中”ふぶき”、”ぜったいれいど”などの攻撃も怖い。
◇ガラガラ(アッシュ)♂
とくせい”ひらいしん”持ち。中々攻撃性能に特化したステータスをしている。”おにび”は怖いけど。
■《AR Zweiシステム》
グラジオのシルヴァディが有するユニークスキル―――要は元の特性の”ARシステム”の強化版。シルヴァディのタイプ変化を状況に応じて逐一変化させることができるチートスキル。これアルセウス真っ青なんじゃねぇの?
以上。次回からカントー編……の前に寄港地のホウエン地方での一話が入るかもしれない。