パン!
球技大会が終わり外はすっかり雨模様になっているなか雨音に混じって乾いた音が部室に響く。
叩かれたのは......木場だった。
「どう?少しは目が覚めたかしら」
部長さんはかなり怒っている。今日の球技大会はオカルト研究部の優勝で終わったが、木場は終始ボケっとしていた。試合中も部長さんが怒っていたが木場はどうでもよさそうにしていた。
頬を叩かれた木場は無表情で、無言だった。
「もういいですか?球技大会も終わりました。球技の練習もしなくてもいいでしょうし、夜の時間まで休ませてもらってもいいですよね?少し疲れましたので普段の部活は休ませてください。昼間は申し訳ありませんでした。どうにも調子が悪かったみたいです」
「木場、おまえマジで最近変だぞ?」
「キミには関係ないよ」
イッセーが問うが、木場は冷たく返してくる
「俺だって心配しちまうよ」
イッセーの言葉に木場は苦笑する
「心配?誰が誰をだい?基本、利己的なのが悪魔の生き方だと思うけど?まあ、主に従わなかった僕が今回は悪かったと思っているよ」
いつもと違うな。いつもはイッセーが無茶を言って、俺か木場で黙らせるか、落ち着かせるのに
「木場、お前がなんでそうなっているのかは知らねえが俺たちは仲間だろう?助けあってこその仲間じゃないのか?」
「仲間か・・・・・君は熱いね。彰君、僕はね、ここのところ、基本的なことを思い出していたんだよ」
「基本的なこと?」
「ああ、そうさ。僕が何のために戦っているか、を」
「部長さんのため・・・・・じゃ、ないみたいだな・・・・」
「僕は復讐のために生きている。聖剣エクスカリバー。それを破壊するのが僕の戦う意味だ」
木場の強い決意の表情.....木場の表情はあの時の俺に似ていた
聖剣計画か.....
俺は自分の家の風呂場で今日部長さんに教えてもらった、木場関係のことを思い返していた。
数年前キリスト教内で人工的に聖剣エクスカリバーが扱えるものを育てる計画が存在していた、木場もエクスカリバーと適応するために、人工的に養成を受けた者の一人でも、木場は聖剣に適応できなかった。それどころか木場と同じ養成された者は全員適応できなかったという理由で殺処分された。木場はそのなかの生き残り.....か
「あいつの復讐の理由は・・・・聖剣のせい・・・・・か」
憎いだろうな、でも、木場のあの時の目は....
「悩み事ですか?」
「はい、いったいどうしたら・・・・・・ん?」
背後の方から聞こえる声。それは聞き慣れた女性の声だった。そして俺は後ろに振り向いた
「なんで、入ってきてるんですか!?朱乃先輩!」
そこにはバスタオル姿でにっこりとほほ笑んでいた朱乃先輩がいた。
「レーティングゲームのときのお礼をしようと思いまして背中を流しにきました」
いやいやいや、理性がもちませんよ!ただでさえ一緒に寝ている時だっていろいろ我慢しているのに
良しっ!ここは丁重にお断りしよう!
「いや、背中ぐらい自分で洗えますよ。それにゲームのことは気にしなくていいですよ。助け合うのは当然のことなのですから」
「・・・私じゃ不満ですか?」
目を潤ませながらそんなこと言わないでくださいよ!ああ、もう!子猫ちゃんも、この人もなんでそんな顔で言ってくるんだよ!!
そのあと俺は折れて朱乃先輩に背中を流してもらうことにした
「なにか悩み事があるんですか?私でよければ相談に乗りますよ。ここには私たちしかいませんし」
朱乃先輩は俺の背中を流しながら訊いてきた....そのために入ってきたのか....
「木場のことについてです」
「祐斗君?」
「はい。あいつのあの時の目俺に似ていたんです。・・・・凛が死んだときの俺に」
朱乃先輩は手を止め話を聞いてくれた
「あのときの俺は凛の父親やヤクザを殺そうとしました。でも凛の命を奪ったのは俺だから、あいつの分まで生きて行くと決めました。もしあのとき撃たれたのが最初から凛だったら俺は間違いなくそいつらを殺してました。凛は最後まで俺を守ってくれたんです。俺に道を踏み外さないようにと」
そう、だから誓ったんだ。あいつの分まで生きると.....
「凛が助けてくれなかったら俺も今の木場みたいに復讐に生きてたでしょうね。ヤクザや凛の父親みたいな腐った連中を一人残さず殺すという・・・だから木場は少し俺に似ているんです。それに木場は後悔もしていると思います」
「後悔ですか・・・・?」
「多分木場は本当に自分が生きていいのかと後悔していると思います。俺だってそう思ったんです凛は酷いことをされたのだから俺より幸せに生きていたいんじゃないかと」
今でもそう思ってる。そんなこと考えても後悔が強くなるだけだというのも、だから木場は俺に似ている。
「俺は木場を助けたいんです。あのとき凛が俺を助けてくれたみたいに俺も木場を救いたい。でもなんて言えばいいのかわからないんです・・・・」
同情的な言葉や適当な言葉は何も意味もない......どうすれば
「深く考えすぎですよ。」
「えっ」
俺は後ろに振り返って朱乃先輩と向かい合った
「ですから、深く考えすぎです。誰かと話をするとき考えて話す人なんていませんよ。だったら、自分のやりたいようにすればいいんじゃないですか?」
その言葉で何か軽くなった気がした......また、助けられたな....俺は思わず朱乃先輩を抱きしめてしまった。朱乃先輩は驚いていたがすぐに抱き返してきた
「ありがとうございます。また、助けられましたね」
「いいんですよ。何度だって助けてあげます。それより、いいんですか?」
「えっ。なに・・・・が・・・・」
朱乃先輩の言葉に顔を上げたらそこには.....
「・・・・・・・なにしてるんですか?先輩方」
風呂場の入り口に小猫ちゃんがいた....
「どうして小猫ちゃんがここに?」
小猫ちゃんは冷たい目で答えてくれた
「・・・・お風呂場に先輩方の声が聞こえましたので、見損ないました。先輩」
「ちょと待って!違うんだよ小猫ちゃん!」
俺は必死で弁解しようとしたが
「・・・・この状況でなにが違うんですか?」
風呂場→二人とも裸→抱き合ってる......弁解の余地なし
「・・・・変態先輩」
小猫ちゃんの辛辣の一言に深く心をえぐられた......
次の日の放課後
俺たちグレモリー眷属は部室に集められていた。
そして、協会からきた二人組の女性.....部長さんと朱乃先輩以外部室の片隅でやり取りを見守っている。部長さん達も真剣な面持ちをしていた。....でも一番気になるのは木場だ。さっきから彼女らを怨恨な眼差しで見ていた。
「先日、カットリク教会本部ヴァチカン及びプロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」
奪われたか....エクスカリバーって複数あるんだっけ?と疑問に思っていると話のなかでエクスカリバーは大昔に折れたみたいだ。
「今はこのような姿さ」
髪に緑メッシュを入れた女性が一本の長剣を見たとき体中を冷たいものが走った。その後も話が進み折れたエクスカリバーは錬金術によって新しい姿となり全部で七本となっていた。
「私が持っているエクスカリバーは『
栗毛の女性のほうも長い紐のようなものを取り出すとそれがうねうね動きだし日本刀になった。
「私のほうは『
自慢げの栗毛の女性は言うがそれを緑メッッシュの女性が注意するが栗毛の女性は遅れを取ることはないと自信満々に言った。
「・・・それで、奪われたエクスカリバーがどうしてこんな極東の国にある地方都市に関係あるのかしら?」
部長さんは変わらずの態度で話を続ける。話が続くとどうやら盗んだのは『
それからも話は進みどうやら今回の任務は二人だけやることに無謀を感じたが二人は死ぬ覚悟で来たらしい.....俺は教会の勝手さに腹が立っているがこの二人にも少しムカついている。そう思っているとき彼女らはアーシアさんを見た
「兵藤一誠の家で出会ったとき、もしやと思ったが、『魔女』アーシア・アルジェントか?まさか、この地で会おうとは」
アーシアさんは二人の言葉に複雑極まりない表情をしていた。
「しかし、悪魔か。『聖女』と呼ばれていた者。堕ちるところまで堕ちるものだな。まだ我らの神を信じているのか?」
「ゼノヴィア。悪魔になった彼女が主を信仰しているはずないでしょう?
「いや、その子から信仰の匂い・・・香りがする。抽象的な言い方かもしれないが、私はそういうのに敏感でね。背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら、信仰心を忘れない者もいる。それと同じものをこの子から伝わってくるんだよ」
栗毛の女性は興味深そうにアーシアさんを見る
「そうなの?アーシアさんは悪魔になってその身でも主を信じているのかしら?」
アーシアさんは悲しそうな表情で言う
「・・・・捨てきれないだけです。ずっと、信じてきたのですから・・・」
それを聞き、緑メッシュの女性が布に包まれたものを突き出す
「そうか。それならば、いますぐ私たちに斬られるといい。今なら神の名の下に断罪しよう。罪深くても、我らの神なら救いの手を差し伸べてくださるはずだ」
ガシャーン!!
俺は苛立ちに我慢できず近くの窓を割った
「いいかげんにしろよ。緑メッシュ・・・さっきまで我慢して聞いてたらもう我慢できねぇ。てめらはさっきから好き勝手言いやがって、神なら救いの手を差し伸べてくださるだと、お前らみたいな勝手な奴にアーシアさんは傷つき、信じていたものに裏切られ、悲しい想いをたくさんした。それでも必死に前を見てる。てめらみたいな自殺志願者がアーシアさんを悪く言うんじゃねぇ」
「自殺志願者だと・・・どういう意味だ?」
緑メッシュはこちらに振り向いてきた
「だってそうだろ?たかが折れた聖剣で堕天使の幹部に勝てる訳がない。仮に本物の聖剣で戦うことになったとしてもお前らみたいな使い手じゃ宝の持ち腐れだ。更に言わせてもらえばお前らが持ってるその聖剣、扱える奴を増やすために何人殺した。救うとかほざいてたくせにやってることと言っていること全く違うけどな。それは聖剣という名の魔剣だ」
「・・・確かにこの聖剣を扱える者を増やすために犠牲は出した。そこは認めよう。しかし、だからこそ選ばれた者は神の為に戦う。私たちの覚悟を自殺志願者などと呼ばないでもらいたい」
「何が神の為だ。それにお前らが自殺志願者という事実は変わらないだろう。教えてやるよ、神はこの世で一番残酷な存在なんだよ。アーシアさんみたいな優しい子を助けたなら少しは見直すけどな、たった一人の少女を救うことも出来ない神なんて神の資格なんてないんだよ」
「な、なんですって!?私たちのことならともかく私たちの主まで侮辱するなんて!」
「今の発言は我ら教会すべてへの挑戦か?一介の悪魔にすぎない者が、大きな口を叩くね。」
緑メッシュは目を細めながら言ってくるが
「てめえらみたいな、自殺志願者ほどじゃねえよ」
「・・・・・・いいだろう。表に出ろ」
「ショウ、お止め」
部長さんは俺を落ち着かせようとしたがその前に木場が介入する。
「ちょうどいい。僕も相手になろう」
特大の殺気を体から発して、木場は剣を携えてた。
「誰だ、キミは?」
緑メッシュの問いかけに木場は不敵に笑った。
「きみたちの先輩だよ。失敗作だったそうだけどね」
その瞬間、この部室内に無数の魔剣が出現していた。