水態の神器使い   作:ユキシア

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総督との条件

「『停止世界の邪眼(フオービトウン・バロール・ビュー)』?」

 

「そう。それがギャスパーの持っている神器の名前。とても強力なの」

 

俺やイッセー達の新米はギャスパーのことがわからないので部長さんが説明してくれた。

 

にしても時間を止めるか.....恐ろしいな。問題はそれが扱えきれていないというところか...

 

「しかし、そんな強力な神器を持った奴をよく部長の下僕にできましたね。しかも駒ひとつ消費だけで済むなんて」

 

イッセーの言葉に部長さんは一冊の本を出現させあるページを俺たちに見せた。

 

「『変異の駒(ミユーテーション・ピース)』よ」

 

部長がそう言うと木場が答える

 

「通常の『悪魔の駒』とは違い、明らかに駒を複数使うであろう転生体が、ひとつで済んでしまったりする特異な現象を起こす駒のことだよ」

 

「だいたい上級悪魔の十人に一人は持っているのよ。私は運よく二つ有していたの。それをギャスパーとショウに使ったわ」

 

そうなんだ。俺もその駒で悪魔に転生できたのか。ギャスパーと同じなんだな....

 

「問題はギャスパーの才能よ」

 

「部長さん、どういうことですか?」

 

「彼は類希な才能の持ち主で、無意識のうちに神器の力が高まっていくみたいなの。そのせいか、日々力が増していってるわ。上の話では将来的に『禁手』へ至る可能性があるという話よ」

 

それはすごいな....でも扱えきれてないから封印したが今の部長さんなら扱えると上は判断したんだな。

 

「・・・・うぅぼ、ぼ、僕の話なんてして欲しくないのに・・・」

 

俺の近くには段ボールが置かれておりその中にギャスパーがいるが.....

 

なぜ、棺桶じゃなく段ボール?ハーフだからか?

 

「私や朱乃は三すくみトップ会談の会場打ち合わせをしてくるから。それと祐斗、お兄さまがあなたの禁手について詳しく知りたいらしいから、ついてきてちょうだい。本当はショウも連れて行きたんだけどお兄さまがあなたのことはまた今度でいいそうだからあなたとイッセー達はギャスパーをお願い」

 

「了解しました」  

 

そしてギャスパーの引きこもり脱出計画が始まった。

 

 

 

 

「ほら、走れ。デイウォーカーなら日中でも走れるはずだよ」

 

「ヒィィィッ!デュラダルを振り回しながら追いかけてこないでぇぇぇぇぇッ!」

 

夕方の時間帯でゼノヴィアがデュランダルを振り回しながらギャスパーを追いかけまわしている。ゼノヴィア曰く「健全な精神は健全な肉体から」らしく、ギャスパーを鍛えることに決めたらしい。

聖剣は悪魔にとって危険...そのおかげかギャスパーも必死にトレーニングに励んでくれている。

 

まあ、危なくなったらさすがに止めなくてはな。それに引きこもりに無理やり何かをさせるのもいいことだし、ちょっとこのままにしておこうか....

 

「・・・・ギャーくん、ニンニクを食べれば健康になれる」

 

「いやぁぁぁん!小猫ちゃんが僕をいじめるぅぅぅ!」

 

小猫ちゃんもゼノヴィアと一緒にギャスパーを追いかけていた.....ニンニクを持って...

 

珍しいな、小猫ちゃんがギャスパーをいじめているなんて.....仲が良いからか?

 

「おーおー、やってるやってる」

 

そこへ、軍手をし花壇用のシャベルを持っているジャージ姿の匙がいた。

 

「おっ匙」

 

「よー、兵藤、駿河。引きこもり眷属がいるとかって聞いてちょっと見に来たぜ」

 

「ああ、あそこだ。ゼノヴィアに追い掛け回されているのがそうだぜ」

 

「おいおい、ゼノヴィア嬢、伝説の聖剣豪快に振り回しているぞ?いいのか、あれ。おっ!てか、女の子か!しかも金髪!」

 

「「残念、あれは女装野郎だそうです」」

 

俺とイッセーが真実を教えると匙はガッカリしていた。

 

「そりゃ詐欺だ。てか、女装って誰かに見せたいためにするものだろう?それで引きこもりって矛盾すぎるぞ。難易度が高いなぁ」

 

「それは俺も思ったよ。本人によるとかわいいからだそうだ。そういえば匙、お前見た感じ花壇の手入れしているような格好だけど仕事しなくていいのか?」

 

「ちょっと見に来ただけだよ。すぐに戻らなきゃならねぇし、それに今度魔王さま方もここにいらっしゃる。学園をキレイに見せるのも生徒会の『兵士(ポーン)』たる俺の仕事だ」

 

胸を張って言うがそれって雑用だろ?まあ本人がいいのだから別にいっか....

 

「へぇ。魔王眷属の悪魔さん方はここに集まってお遊戯しているわけか」

 

俺たちは声のした方へ振り向くと浴衣を着た男性アザゼルがいた。

 

「堕天使の総督さんか・・・どうしました?こんなところで」

 

皆が戦闘態勢に入っているなか俺は変わらず話しかけた。

 

「へぇ、お前は警戒しないのか?俺は堕天使の総督だぜ?」

 

「これから会談をするのにそれを壊すようなことはしないでしょう。それに警戒したとしても俺達じゃ敵わない。あとサーゼクスさんから聞きましたけどあなたは戦争より神器を集める方が好きみたいじゃないですか。」

 

「確かにそうだが、俺がお前たちの神器を奪うって言ったらどうする?」

 

「あなただったら簡単でしょうがそんなことをしたら即悪魔との戦争。神器の研究どころじゃなくなりますよ?」

 

俺がそう言うと総督は面白そうに笑った。

 

「ハハハ!お前面白えな。普通はそいつらみたいに警戒するもんだぜ。まあ確かにやる気はねぇよ。ちょっと聖魔剣使いを見に来ただけだ」

 

「木場ならいませんよ。今は魔王さまのところです」

 

「そうか、聖魔剣使いはいねえのかよ。つまんねぇな。じゃあ、蒼槍」

 

総督は頭を掻きながら俺に近づいてきた。

 

「蒼槍って俺のことですか?前から気になっていたんですけどなんですか?その二つ名」

 

確か初めて総督の正体を知ったときから聞くがなんだその二つ名....

 

「知らねぇのか?蒼い槍を持ち氷雪系の力を使い魔術師のようにコカビエルを倒したとヴァーリから聞いて俺が流したのだが・・・」

 

「あんたが流したんかいっ!」

 

思わず堕天使の総督相手にツッコンでしまった。

 

「ハハ、まぁいいじゃねぇか。それよりお前の神器をちょっと見せてくれねえか?」

 

「ショウ!見せる必要はねぇ!これから会談するといってもそいつは敵なんだぞ!」

 

「イッセーのいうとおりだ。敵にそんなことする必要はない」

 

イッセーとゼノヴィアは止めるが....

 

「わかりました。その代わり条件があります」

 

「ショウ!?」

 

イッセーは俺の返答に驚いているが俺はイッセーを無視して条件を言った。

 

「ひとつ目はそこの木陰に隠れているヴァンパイヤの『停止世界の邪眼(フオービトウン・バロール・ビュー)』の制御方法について二つ目は他人の傷を自分の傷にする神器はあるか。この二つの条件を教えて下さるのなら俺は一つあなたの質問に正直に答えます」

 

「OK!その条件を飲もう」

 

総督は迷わず条件を飲んだ。神器に関する情報は堕天使が一番持っているからそれを教えるのには少しは躊躇うと思ったが違ったみたいだ。

 

「まず、二つ目から答えよう。他人の傷を自分の傷にする神器はある。名を『邪天使の傷儀式(アジュズヴンテリート)』だ。」

 

やっぱりあったのか.....凛が持っていた神器は....

 

「・・・・・能力は?」

 

「他人の傷を自分の傷にし傷を負えば負うほど身体能力と魔力を上げることができる。しかし、力が上がったとしても傷は治らねぇから回復要員がいて初めて役に立つ神器だ。それがどうした?」

 

「・・・いえ、なんでもありません」

 

総督は俺の様子が変わったのに気になったがすぐに一つ目のことを教えてくれた。

 

「一つ目は『停止世界の邪眼(フオービトウン・バロール・ビュー)』は五感から発動する神器。持ち主のキャパシティが足りないと自然に動き出して危険極まりない」

 

ギャスパーの両目を覗き込むように見た後総督は匙を指さす。

 

「それ『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』か?練習するなら、それを使ってみろ。このヴァンパイヤに接続して神器の余分なパワーを吸い取りつつ発動すれば、暴走も少なくて済むだろう」

 

総督の説明で匙は複雑そうな表情を見せる。

 

「・・・・お、俺の神器、相手の神器の力も吸えるのか?ただ単に敵のパワーを吸い取って弱らせるだけかと・・・・」

 

それを聞き、総督は呆れた様子だった。

 

「ったくこれだから最近の神器所有者は自分の力をろくに知ろうとしない。『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』は伝説の五大龍王の一匹、『黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)』ヴリトラの力を宿している。まあ、これは最近の研究で発覚したことだがな。そいつは、どんな物体にも接続することができて、その力を散らせるんだよ。短時間なら、持ち主側のラインを引き離して他の者や物に接続させることも可能だ」

 

「じゃ、じゃあ、俺側のラインを・・・・たとえば兵藤とかに繋げられるのか?それで兵藤のほうにパワーが流れると?」

 

「ああ、成長すれば本数も増える。そうすりゃ吸い取る出力も倍々だ」

 

「・・・・・・・」

 

匙は黙ってしまった。しかし、匙の神器思ってた以上に強力だな。

 

「神器の上達で一番てっとり早いのは、赤龍帝を宿した者の血を飲ませることだ。ヴァンパイヤには血でも飲ませておけば力がつくさ。ま、あとは自分たちでやってみろ・・・・さて」

 

総督は説明が終わると俺の方へ顔を向けた。

 

「次はお前のことを教えてもらおうか」

 

総督は楽しそうな目で俺を見てきた。

 

「わかってますよ。何でも答えますよ」

 

「お前の所有している神器はなんだ?」

 

なんか予想外な質問が来ると思ったが違ったか....

 

「なんだと聞かれましても水態を操る神器ですよ」

 

「じゃあなんで神殺しという名の禁手になる?それに『三態の水零』なんて神器、神器マニアの俺でも知らねぇ。お前の神器・・・いや、なかにいるのはなんだ?」

 

ルルナのことがわかるのか?....いや、何かいるのはわかっているみたいだが何かまではわかってないみたいだな。

 

俺は総督の耳元で一言だけ言った。

 

「存在しない神殺し」

 

それを聞き総督は目を見開いていた。

 

「それはどういう・・・」

 

「ひとつだけ、という条件でしたよ」

 

総督はため息をしながら頭を掻きこの場を去って行った。

 

「ショウ!お前なんて無茶すんだよ!」

 

「イッセーのいうとおりだ!いくら敵意がなかったとはいえ下手をすれば殺されていたんだぞ!」

 

イッセーもゼノヴィアも皆心配してくれていた。確かにちょっと危なかったな。だけど....

 

「確かにそうだけどおかげでいい情報が手に入ったろ?」

 

俺がそう言うと皆呆れたかのような顔で俺を見てきたがギャスパーは俺に近づき

 

「せ、先輩は僕のためにしてくれたんですか?」

 

「まぁーそれもある。神器のことを聞くには神器マニアの堕天使の総督に訊くのがいいと思ってな。おかげでいい情報が手に入った。匙!悪いけどギャスパーの特訓に少しでもいいから付き合ってくれないか?」

 

「あ、ああ。駿河のおかげで俺も新たな可能性が見えてきたし、少しなら付き合ってやれる」

 

「サンキュー」

 

それから匙もギャスパーの特訓に付き合ってくれて結局夜になるまで特訓は続いた。

 

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