Sideイッセー
「よし、二条城に向かおう」
俺たちは曹操が提示した場所へ向かう為バスに乗って二条城に行く予定だ。いちおう、皆(フィルナはわからない)、冬服の戦闘服姿。
「うっぷ・・・・」
「ロスヴァイセさん。無理しないでください」
ロスヴァイセさんが時折襲ってくる吐き気と戦い、ショウが神器を使って大気の水分を凝縮させ水を作りそれを飲ませている。便利だな・・・・ショウの神器は。
―――と、バス停でバスを待っているときだった。俺の背中に飛び乗る何か。
「赤龍帝!私も行くぞ!」
金髪巫女装束少女―――――九重だった。
「私も母上を救う!」
―――っ!おいおい!
「九重。これから俺たちが行くところは確実に激戦になるんだ。母親が心配なのはわかるが今すぐ裏京都に戻れ」
少し強めな口調で九重に言うショウ。少し強めな言い方だけどそれは九重のためを思っての言葉。これから俺たちが行くところは確かに激戦になる。安全を考慮するなら今すぐにでアザゼル先生にでも連絡したほうがいいんだろうけど・・・。
「嫌じゃ!母上は私が・・・・私が救いたいのじゃ!頼む!私も連れて行ってくれ!お願いじゃ!」
「・・・・・・・」
しぶるショウ。そこまで言われたら何とも言えないからな。でも、危険なのも確かだからしぶるのも無理はねえな。
「・・・・・わかった。フィル。悪いけど念のため九重に召喚魔での護衛を付けてくれ」
「わかりました」
九重の意思を尊重するショウ。だけど、ちゃんと安全面も確保するところがショウらしいな。よし、俺も責任を持って――――と、意を決したときだった。
―――俺たちの足下に薄い霧が立ちこめてくる。
同時にぬるりとした感触が全身を襲った。
「『
気づいたら、京都駅の地下ホームに転移されていた。
「・・・・どうやら俺とイッセー、九重だけここに転移されたみたいだな」
そう、俺とショウ、そして俺の肩に乗っかっている九重だけだった。ショウはすぐに携帯を取り出し木場たちの状況などを聞き、合流地点を二条城にした。
「イッセー、いつ襲撃がくるかわからない。すぐに禁手しておけ。木場たちに会うまで俺たちで九重を守るぞ」
「わ、わかった!」
俺はすぐに籠手を出現させ、禁手のカウントをスタート。
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!』
赤い閃光に包まれ、オーラが鎧に形成される。
「うむ。昼にも見たが天龍の鎧は赤く美しいな。これが伝説の龍なのだな」
ぺチぺチと俺の鎧を手で叩いてみたり、新鮮のようだ。
「九重、俺たちがおまえのお袋さんをなんとか救うからさ。俺たちのそばを離れちゃダメだぞ?九重のことは俺たちが守るからさ」
「イッセー、俺たちの『たち』を抜いたら、今の台詞は九重を口説いてるように聞こえるな」
「バ、何言ってんだ!?俺はそんなつもりで言ってねえ!」
「冗談だ、きたぞ」
ふざけた口調だと思いきやすぐに表情を強張らせるショウを見て俺も意識を切り替える。すると前から英雄派の制服を着た男性がこちらに歩いてきた。敵意を俺たちにいや、ショウにむけながらな。
「こんばんば。氷血神殿。俺のことは覚えてくれているかな?」
「ああ、あの時の奴だろう?」
何時の奴だよ!?俺にもわかるようにしてくれよ!
そんなことが通じたのかショウが説明してくれた。
「俺がイッセーたちから離れていた頃、戦った影の神器を持つ男だ。ここに現れたということは」
ショウの言葉に男は含み笑う。すると男の影が意思を持っているかのようにうねうねと動き出す。
「ああ、俺はあのとき、あんたにやられた。でも、いまは違う。あんたにやられた悔しさ、怖さ、自分の不甲斐なさが俺を次の領域に至らせてくれた。見せてやるよ。本当の影の使い方を―――」
言い知れない重圧を感じ、男の周囲にある影までもが不気味に動き出した。そして男は低い声音で一言つぶやく。
「―――
周囲の影が男のもとに集まって体を包み込んでいく。影が全身を巻きつき、鎧のようなものが形成された。
・・・影で作った
「違う、イッセー。あれは俺がお前の鎧を参考にしたものをあいつはそれを参考にしたものだ」
俺の心を見透かすように言うショウ。
「そう、あんたにやられたとき、俺はより強い防御のイメージを浮かべた。あの時、一切の魔法やモンスターによる光を無効化させたかのような鎧が欲しいと感じたよ。『
「・・・・・イッセー。俺がやる。お前は九重を頼む」
「一人で大丈夫なのか?」
お前は今、禁手が出来ない状態なんだぞ・・・・。
「あいつとお前とじゃあ相性が最悪だ。いざというとき手を貸してくれ」
「わかった」
頷いた俺を確認するとショウは氷の槍で影の男を刺すが相手の体を通り過ぎちまった!
「この影の鎧に直接攻撃はおろか、どんな攻撃も無駄だ」
「なら、これはどうだ?」
ショウは槍を相手に向けると槍の先端から水が集まりだすとそれをうねらせると思ったら凄い勢いで回転し始めた。
「イッセー!俺に譲渡してくれ!」
え、わ、わかった!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』
『Transfer!!』
俺は溜めた力をショウに譲渡するが男は嘲笑う。
「何をしようがこの鎧の前には無駄だ!」
嘲笑う男だがショウは不敵な笑みを浮かばせていた。
「普通の攻撃は通じないことは前の戦いで知っている。攻撃したものを吸収し別の影に転移するのがその神器の能力。なら、影で覆われきれないものをお前は吸収できるか?」
「何?」
すると、先程まで回転していた水がドンドン大きくなっていき次第に男の全長なんかゆうに超えるくらいの巨大の水が出来た。
「この巨大の水の攻撃を返せるものなら返してみやがれ!」
「くそぉぉぉおおおおおおおおおっ!氷血神めぇぇえええええええええっ!」
巨大な水の攻撃が男を飲み込むように包み込んだ。だが、ショウが指を鳴らすと巨大な水は消える。すると男は影の鎧は解除されているもののまだ立ち上がれる事が出来た。
「・・・何の真似だ。氷血神」
「さっきの水の攻撃でお前の体の骨が全部砕ける前に止めた。だが、立たないほうがいい。いくつかの骨は折れているはずだ。これ以上は体を壊す」
「・・・・かまわねえよ・・・曹操の下で死ぬなら本望だ・・・」
「やっぱり、お前洗脳されていないんだな」
洗脳されていないことにショウは気づいていたのか。
「ああ、そうだよ・・・。俺は俺の意思で曹操に付き従っている・・・。なぜかって?くくく・・」
「言わなくていい。神器のせいで酷い人生を歩んできたんだろう?」
ショウの言葉に男は自嘲気味にショウの言葉に続けるように言う。
「ああ、気味悪がれ、迫害され、俺はこの力のせいでまともな生き方ができなかったよ。・・・でもな、この力を曹操は素晴らしいと言ってくれた」
―――曹操が。
「・・・・・・・」
「この力を持って生まれた俺を才能に溢れた貴重な存在だと言ってくれた・・・。・・・英雄になれると言ってくれた・・・。いままでの人生をすべてなぎ払うような言葉をもらったらどうなると思う?そいつのために生きたいと思っちまっても仕方ないじゃないか・・・・ッ」
「・・・・そうだな」
絞り出すような男の言葉をショウは肯定した。
「例え利用されようと俺はそれでいい・・・。奴は、曹操は!俺の生き方を、力の使いどころを教えてくれたんだぞ・・・・?それだけで十分じゃないか・・・・ッ!それだけで俺は生きられるんだ・・・・ッ!クソのような人生がようやっと実を得たんだぞ・・・ッ!それのどこが悪いってんだよぉぉぉぉっ!氷血神ッッ!」
聞いていたショウに男は涙を流し、思いを吐き出しながらショウに襲いかかって来た。
「・・・クソのような扱いを受けて、クソみたいな生き方を送ってきた俺たち神器所有者にとって、あいつは光だった・・・ッ!俺の力が、悪魔を、天使を、神々を倒す術に繋がるんだぞ・・・・ッ!こんなすごいことが他にあるってのか・・・・ッ!?それにな・・・悪魔も堕天使もドラゴンも元々人間の敵だ・・・・ッ!常識だろうが!」
ショウに襲いかかってくる男の攻撃にショウはただ黙って受けていた。
「ショウ!何で反撃・・・・っ!?」
言葉をかけようと思ったが俺は口を閉じる。ああ、そうか、そういうことか・・・・ショウ。
「俺たち人間を舐めるなッ!悪魔ッ!」
叫びと同時、男の渾身の拳がショウの頬に直撃するがそれでもショウは倒れなかった。だが、それでもショウは拳を握るどころか戦意すら出さないことに男は苛立ちを感じていた。
「どうしてだ!?どうして反撃してこない!?お前なら俺なんか人間を簡単に倒せるだろうが!?」
「・・・・・・・・」
無言を通すショウに男はさらに殴り続ける。
「クソ!クソ!クソ!クソがぁぁぁあああああああああああああああっ!」
「赤龍帝!どうしてじゃ!どうして氷血神は反撃しないのじゃ!?」
「・・・・これはショウの戦いだ。手を出すわけにはいかねえ」
ショウはそれからも男の攻撃をただ黙って受け続けると男は息を切らしながらショウに叫ぶ。
「ど・・・どうして攻撃しねえ・・・・魔力で防御もガードもしないでどうして俺の攻撃を黙って受け続けてんだ・・・・・ッ!?俺の過去に憐れんでるつもりか!?そんな情けはいらねえんだよ!」
「まだ、わかんねのかよ!!」
俺は男の言葉に我慢できず思わず叫んでしまった。悪い、ショウ。でも言わせてもらうぜ。
「なんで、なんでショウが攻撃しないのかお前本当にわかんねのかよ!?ショウは・・・・ショウはお前と同じなんだよ!!」
「はあ・・・・・・?」
「・・・・イッセー」
「ショウはな!神器のせいで自分の命より大切な人を失っているんだぞ!お前に憐れんでるわけでも、情けをかけているわけでもねえ!ただ、ただお前を助けたいだけなんだよ!!」
「だったら何で攻撃しねんだ!?助けるなら別に俺の攻撃を受ける必要はねえだろ!?」
「そんなこともわからねえのか!お前の抱えていたものをショウはそれを取り除こうとしていたんだよ!お前の恨みや悲しみや痛みをショウは攻撃を受けることで必死に取り除こうとしてんだ!」
俺の言葉に目を見開きながら驚く男はショウに視線を向ける。
「・・・どうしてだ?どうして悪魔であるお前が俺を助けようとする?」
「・・・・・お前を助けたいだけだ」
「いらねえ!俺には曹操がいる!あいつがいたからこそ俺はここにいる!」
「・・・・・そうだな、曹操がいたからこそお前はここにるんだな。でもな、曹操はいつかお前を捨てるはずだ」
「かまうか!曹操の役に立てれたのなら本望だ!それだけで俺は・・・・」
「よくねえだろうが!!」
怒鳴り付けるように叫ぶショウに男は怯む。
「確かに曹操がいたからこそお前はまともな人生を手に入れたかもしれない。でもな、それで死んだとして何も残らねえだろうが・・・・。酷い人生を歩んできたならこの先も幸せになるべきだ。少なくとも曹操が行く道は修羅の道。その先にお前の幸せはあるのかよ?ねえだろ」
ショウはゆっくりと男に向かって歩きながら自分のことを話し始めた。
「俺には幼馴染がいた。その幼馴染も神器のせいで父親から酷い暴力を振るわれていた・・・泣きたいほど生きるのが辛い筈なのに・・・・俺の前では無理して『平気だよ!』って言って笑ってたんだ・・・・俺はそんな優しいあいつを守りたかった・・・・でも、守れなかった・・・・・」
ショウは涙を流しながら語り続けた。
「人生を呪った・・・・運命を呪った・・・・神器を呪った。優しいあいつを守れなかった俺自身を呪った。お前ならわかるだろう?俺たち以外にも神器のせいで人生を苦しんでいる奴らがいることを!俺はそいつらを助けたい!守ってやりたい!神器のせいで人生を狂われたやつらを俺は神器のてによって助けたい!痛みを知ったからっ!辛いことだと知っているからっ!俺はそいつらの希望に希望になってやりたい!」
「ふ、不可能だ!そんなこと出来る訳ねえだろうが!?」
「可能も不可能も関係ねえ!俺がしたいからするんだ!何もしないより一人でも多く俺は助けたい!神器のせいで恨みを周りに放ってもそんなのは新たな恨みしか生まれねえ!なら、神器には大切な人を助けるため、守る為の力だと俺は知ってほしい!」
前にショウが言っていたな。憎しみは負の連鎖しか生まれない。そうなればまた新たな被害者が出てくる。
「だから、俺はお前に言う!お前のしていることはただの八つ当たりだ!クソみたいな人生を味わったのなら二度と自分自身の奴を現れないように頑張れよ!」
「お前が・・・悪魔ごときが俺を語るんじゃねえ!!」
「ああ、俺は悪魔だ!だが、それがなんだ!?悪魔も人間も天使も堕天使もちゃんと感情があって生きているんだ!曹操のためとかで自分の人生を簡単に捨てるんじゃねえ!!」
ドゴン!
ショウの拳が男の顔面に直撃して吹っ飛ぶ。
「自分も幸せになれるように努力しろよ!誰かのためとかじゃなく自分のために出来ることを考えろよ!それがどんな道でも自分自身で決めた道を歩けよ!俺は・・・・自分で決めた道を歩く・・・誰かに言われたからじゃない。俺は俺自身のような奴を生み出さないために俺は仲間たちと共に歩き続ける」
ふっ飛ばした男に叫んだショウは俺たちのところへ戻って来た。
「・・・・行こう、木場たちが待っている」
「・・・・あ、ああ」
俺たちは木場たちが待っている二条城へと向かおうとしたが俺は男のところへ行く。
「何だ?赤龍帝・・・」
「あー、俺はな、お前やショウと違い酷い人生は歩んだことはねえ。でもな、ショウは本気でお前を助けたいと思っている。お前が曹操のところにいるのならそれはそれでかまわねえ。でもな、少しはショウの言ったことも考えてみてはくれねえか?」
「・・・・・・・」
無言か。まぁ、いいか・・・・。俺は踵を返し急いでショウのところへ向かう。
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