水態の神器使い   作:ユキシア

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泣き叫ぶ

Sideショウ

 

俺と一誠は襲い掛かってくるアンチモンスターを倒しながら二条城に向かうとすでに木場たちが集まっていた。

 

よかった。皆無事だったんだな・・・・・。いや、一人は違った。

 

「おげぇぇぇぇ・・・・」

 

電柱で吐いているロスヴァイセさん。いったいあの時どれだけ飲んだのやら・・・・。

 

「ショウ!その傷はどうしたのですか!?アーシア様!回復をお願いします!」

 

俺の顔を見て心配するフィル。まあ、さっきボロクソに殴られたからな。心配かけて悪いフィル。

 

俺はアーシアさんの緑色のオーラが俺を包み込み傷が治っていく。すると、巨大な門が鈍い音を立てながら開いて行く。

 

「どうやらあそこに九重の母親がいるみたいだな」

 

「それと、英雄派もね」

 

俺と木場は苦笑しながらそうつぶやき、全員で確認しあうと二条城へと足を進めた。そして、そこで待っていたのは・・・・。

 

「禁手使いの刺客を倒したか。俺たちのなかでは下位から中堅の使い手でも禁手使いには変わりない。それでも倒してしまうキミたちは驚異的だ」

 

俺たちを待っていたのはやはり曹操。それとその後ろには英雄派の構成員のメンバーがいた。

 

「母上!」

 

九重の叫びに俺たちはそちらに視線を向けると着物姿の狐耳と複数の尻尾を持つ女性。

 

あれが九重の母親、八坂さん。

 

「母上!九重です!お目覚めくだされ!」

 

久重がいくら叫んでも八坂さんは反応もしなかった。何かで精神に影響を与えているのか。

 

「曹操!お前の目的はなんだ!?何でこんなことをする!」

 

「言ったはずだと思うが?我々の実験に協力してもらうだけさ。氷血神」

 

「・・・・ここにグレートレッドを呼ぶのか。なら、何故オーフィスがここにいない。それともお前らで倒せる算段でもあるのか?」

 

「まさか、オーフィスでも倒せないグレートレッドをたかが人間が倒せるわけないだろう。それに実際に成功するかどうかもわからないんだ。ただ呼べるかどうかの実験をしてみるだけさ」

 

その答えに俺は怒りを感じる。

 

「ふざけんな」

 

低く発せられた俺の声音。怒りを露わにしているように吐き出した。

 

「てめえらの自分勝手な理由で九重はどれだけ悲しんだと思う。どれだけ寂しかったか、どれだけ辛かったかお前らにはわかるか?いきなり母親を失った九重の気持ちがお前らにはわかるか?母親を助けるためにこんな小さい子がどんな気持ちで頭を下げたかお前らにはわかるか?」

 

「さあね、俺たちはスポンサーの要望と俺たちのやりたいことをしているだけだからそんな気持ちはわからないね」

 

曹操の答えに歯を噛みしめ曹操に叫ぶ。

 

「なら、俺たちはお前らを倒して九重の母親を取り返す!」

 

ズシュゥゥゥゥゥゥッ!

 

俺がそう叫ぶと鞘ごとかまえたゼノヴィアが剣を曹操に向けると激しい音を立てながら、鞘がスライドしてそこから大質量の聖なるオーラが噴出し大質量オーラが刃となった。

 

すげえ・・・・あれが改良されたデュランダル。

 

「ショウの言う通りだ。貴様らが何をしようとしているのかはそこまでは見えない。だが、貴様の思想は私たちや私たちの周囲に危険が及ぼす。――――ここで屠るのが適切だ」

 

「意見としてはゼノヴィアに同意だね」

 

「同じく!」

 

「俺も賛成だ!絶対に九尾の御大将を返してもらう!」

 

木場、イリナ、イッセーが同意し、それぞれの武器をかまえる。匙も嘆息はするが

 

「ま、学園の皆とダチのためか―――」

 

匙の体から黒い蛇が複数出現し、体を這い出す。さらに匙の足下から黒い大蛇が出現する。

 

あれが、ヴリトラ・・・・。五大龍王の一体。ロキ戦のときヴリトラの神器を匙に移植したと聞いていたけどここまでのプレシャーを出すのか。

 

「・・・・ヴリトラ、悪いが力を貸してくれ。兵藤がフォローしてくれるそうだからよ、今日は暴れられそうだぜ?」

 

『我が分身よ。獲物はどれだ?あの聖槍か?それとも狐か?どれでもよいぞ。我は久方の現世で心地よいのだよ。どうせなら、眼前の者どもすべて我が黒き炎で燃やし尽くすのもよかろうて』

 

物騒な台詞を吐くヴリトラからは夏の修業のときのタンニーンさまとは違う重圧を感じる。それともう一人・・・・。

 

「やはり、あなた方達とは協力しなくて正解でした。外道。覚悟は出来ているんでしょうね?」

 

いつもの笑みを消し鋭い視線を曹操たちに向けるフィル。その視線からは見ただけで恐怖を感じてしまう程強力だった。

 

怒ってる・・・・フィルも怒っているんだ。

 

ここまで怒っているフィルを俺は初めて見た。それだけ怒っている証拠か。だけど曹操たちは怯みもしなかったところを見るとよほどの実力者なんだな。

 

「さて、実験をスタートしよう」

 

曹操が槍の石突きで地面を叩くと九重の母親が輝き出す。

 

「九尾の狐にパワースポットの力を注ぎ、グレートレッドを呼びだす準備に取りかかる。ゲオルク!」

 

「了解」

 

曹操の一言にゲオルクという人物が手を突きだすと様々な魔方陣が出現した。

 

「・・・魔方陣から察するにざっと見ただけでも北欧式、悪魔式、堕天使式、黒魔術、白魔術、精霊魔術・・・・なかなか豊富に術式が使えるようですね」

 

「それ以外にも独自の魔方陣もあります。私と同じ魔法使い・・・それも相当な腕前ですね」

 

ロスヴァイセさんとフィルが目を細めながらそうつぶやいた。

 

神滅具だけじゃなく魔法使いでもあるのか・・・。九重の母親の足下に巨大な魔方陣が展開すると九重の母親は雄叫びと共に人型が解け巨大な狐の姿になった。

 

「なぁ、フィル。あの魔方陣を解除できるか?」

 

「・・・・・かなり複雑に作られています。解除するにはかなりの時間がかかります。ごめんなさい」

 

「別にフィルが謝る事じゃない。まずはあいつらを何とかしなければいけないのか」

 

「もしくは術者を倒すか。私が飛びだせる召喚魔は二体。それも灰狼は力を多く使いますので一体しかよべません。ですのでまずは他のメンバーを倒した隙に」

 

「術者を倒す。でいいんだな」

 

コクリと頷くフィルやイッセーたち。向こうも準備万全みたいだし、やらねえとな・・・・。

 

「ジークフリート、おまえはどれとやる?」

 

曹操の問いにジークフリートは剣の切っ先で木場とゼノヴィアに向けた。

 

「ジャンヌとヘラクレスは?」

 

「じゃあ、私は天使ちゃんにしようかな。かわいい顔してるし」

 

「俺はそっちの銀髪の姉ちゃんと魔法使いだな。銀髪の姉ちゃんは随分気持ち悪そうだけどよ!」

 

金髪の女性、ジャンヌと巨体の男ヘラクレスもそれぞれ戦いたい相手を選ぶ。そうなると・・・。

 

「んで、俺は赤龍帝と氷血神っと。そっちのヴリトラくんは?」

 

「・・・・・匙、お前は九尾の御大将だ。なんとか、あそこから解放してやってくれ」

 

イッセーがそう言うと匙も嘆息しながらも承諾。

 

「皆、戦いになったらそれぞれ少し離れて戦おう。そして、何があっても死ぬなよ」

 

『ああ(はい)!』

 

全員が応じて俺たちは英雄派との戦いが始まった。

 

「さぁ、やろうか」

 

それぞれ戦う相手と向かい合う。俺とイッセーは曹操。木場とゼノヴィアはジークフリート。イリナはジャンヌ。ロスヴァイセさんとフィルはヘラクレス。

 

「イッセー、俺は援護する。お前は突っ込め」

 

「わかった」

 

『JET!』

 

ブーストを噴かして一直線に動くイッセーの合わせるように俺もまずはプロモーション、騎士(ナイト)になり、イッセーの後ろをついて行くように動く。曹操はそれを迎撃しようとかまえるが

 

水蒸気爆発(スティーム・イクスプロウド)!」

 

曹操の周辺を囲むように氷の球体を出現させ瞬時に爆発させ、視界を奪う。

 

「イッセー!ドラゴンショット!」

 

「おう!」

 

爆発から生まれた煙幕のごとイッセーのドラゴンショットを撃たせる。だが、曹操はドラゴンショットを槍でいなし逸らした。だが、それも・・・・。

 

「想定内だ」

 

イッセーを死角にし曹操の背後に移動する俺と真正面から突っ込んでくるイッセーの挟み撃ち。

 

いくら強くても身体能力は俺たちが上。この同時攻撃は避けられない。

 

そう思っていた。だが、

 

「ゴッ!」

 

槍を縦回転させ槍の柄でイッセーの顎を打ち上げるように叩く。

 

「おっと、よそ見は禁物だ」

 

「が!」

 

曹操はそのまま槍を回転させ俺の肩を斬り裂いた。

 

い・・・・・ッ!これが・・・・聖槍の力・・・・・・今までと比較にならねえ・・・・・。

 

「ショウ!アーシア、回復を!」

 

イッセーが俺を抱え曹操から距離を取りアーシアさんが回復のオーラを飛ばしてくれたおかげで傷は癒えた・・・・までとはいえねえが支障はなかった。

 

やっぱり、厄介だな・・・・あの聖槍は・・・。

 

ドゴォォォオオオオオオオオオオオオオオンッッ!

 

少し離れたところから爆発音。俺はそちらのほうに視線を向けると全身から無数の突起物を生やしたヘラクレスと無傷のフィル、ロスヴァイセさん、それと灰銀の姿がいた。

 

「チッ!厄介な神器やな!」

 

「文句は言わないでください!エンチャント"雷"!左、そして右斜め上です!」

 

「わっーた!」

 

フィルは魔方陣を展開すると雷が灰銀の腕に纏わり雷が付与されていた。そして、フィルの言うとおりヘラクレスから発射されたミサイルは左と右斜め上から来た。

 

「厄介な魔法使いだ!だが、これは躱せるかなぁ!!」

 

ヘラクレスから数十ものミサイルがフィル目掛けて発射されたがフィルは特に慌てず

 

「ロスヴァイセさん!お願いいたします!」

 

「わかりました!フルバースト!」

 

ロスヴァイセさんの北欧魔法でミサイルを全て撃墜。そして撃ち終わったヘラクレスに雷の纏った拳で殴る灰銀。

 

「かったいな!自分!ほんまぁ、人間かいなぁ!?」

 

「ハッハッハー!そんな弱っちい攻撃で俺を倒せるかよ!」

 

愚痴る灰銀に笑うヘラクレスだが、フィルは冷静にヘラクレスに告げる。

 

「ですが、いくら体が頑丈でも限界はあります。そちらがいくらミサイルを放とうとも私には見えています。あなたの次の攻撃パターンを。灰銀!次は左下から殴ってきます!ですがそれを囮です!最小限の動きで躱し背後に!」

 

「あいよ!」

 

フィルの指示通りに動く灰銀。あっちは大丈夫そうだな・・・・。って自分の心配もしねえと。

 

「まさか、ヘラクレスが押されているとはな。さすがはセフィード家の長女。もしかしたら彼女は俺たちに近い人間かもしれないな。そう思わないだろうか?氷血神」

 

「フィルはフィルだ。それだけで知っていれば十分だ」

 

「そうか、しかし惜しいな。エンチャントに未来予知、いや、恐らくまだ何かあるだろうな。魔術師の奴らが何回も協力体勢を取ろうとする気持ちは今はわかる気がするな」

 

英雄派のリーダーが認めるということは相当な実力者なんだな、フィルは・・・・。俺も負けていられねえ。

 

「イッセー、―――――――で行くぞ」

 

「っ!?それ、お前がすげえ危ねえじゃねえか!」

 

「いいんだよ、それに奴は禁手しないならあれは普通の槍とたいして変わらない。それなら同じ槍使いの俺の方が攻撃パターンが読めやすい」

 

「・・・・・わかった。でも、気を付けろよ」

 

「ああ」

 

「作戦会議は終わったかい?」

 

槍で肩をトントンと叩きながら楽しそうに言う曹操に俺たちは再び突っ込む。今度は俺が前でイッセーが後ろ。

 

「氷結の槍!」

 

ガキン!

 

俺の氷の槍と曹操の聖槍がぶつかり合う。やっぱり、神器からの攻撃なら聖槍に触れても問題ねえな。なら、このまま攻める!

 

槍を捌きながら攻撃を繰り返すが曹操はそれをもいなす。

 

「氷血神の槍捌きは見事だが、どうやら俺の方が一枚上手のようだ」

 

ズンッ!

 

「ごふっ」

 

俺の横腹に聖槍が突き刺さった。だが

 

「・・・・・捕まえた」

 

「なにっ!?」

 

俺は聖槍を掴んで曹操の動きを止める。掴んでいる手も聖槍のダメージで焦げていくが少し持ってくれれば十分だ。

 

「オラッ!」

 

ドゴン!

 

曹操の顔面にイッセーの拳が決まった。

 

「ショウ!」

 

聖槍から俺を離し、再び距離を取ってくれたイッセーは俺の横腹にフェニックスの涙かけてくれたおかげで傷は消えた。

 

「バカ野郎ッ!なんて無茶をしやがる!」

 

「お前が涙を持っていることを想定してやったんだ。即死でもない限り死にはしない。それにこれで曹操にダメージは与えられた」

 

いくら聖槍が強かろうと体が人間なら今の打撃でも相当なダメージなはず・・・・・。

 

そう思って曹操を見ると曹操は懐から小瓶を取り出し自分にかけた。それを見た俺とイッセーは驚愕した。

 

「な、なんでおまえがそれを!」

 

「裏のルートで手に入れた。ルートを確保し、金さえ払えば手に入るものさ。フェニックス家の者はこれが俺たちに回っているなんて露ほども思ってないだろうけど」

 

ふざけんなよ、それがあれば今苦しんでいる人たちを助けることが出来るのに・・・。何でテロリストなんかに回ってんだよ。

 

「・・・・・邪天使の傷儀式(アジュズヴンテリート)、発動!」

 

俺のもう一つの神器、邪天使の傷儀式(アジュズヴンテリート)を発動させ、今までに負った傷を力に変える。

 

「曹操・・・・今まで俺に負わせた聖槍のダメージを俺の力とさせてもらった。本番はこれからだ」

 

「そのようだ。こちらもギアを上げないとダメか」

 

俺は禁手までとはいえないがそれに近いくらいまで力を上げイッセーも拳をかまえたその時だった。

 

「イリナさん!」

 

アーシアさんの叫びが聞こえ振り向くと

 

「あら?  こちらはまだやっているんだ?」

 

ジャンヌが抱えているのは血まみれのイリナだった。

 

「ま、赤龍帝と氷血神だからさ。彼らよりはやるんじゃないの?」

 

続けてジークフリートの声。奴は六本の腕でイリナと同じく木場とゼノヴィアを抱えていた。

 

ドゴォォォォオオオオオオオオオオオオンッ!

 

爆発音。そこにはまだヘラクレスと戦っているロスヴァイセさんとフィル、灰狼の姿。だが、苦戦を強いられていた。

 

「くっ!」

 

「どうやらお前の未来予知は視界に入るものだけのようだな!ならこうすればよめまい!」

 

地面にミサイルを撃ちつけ煙を舞い上げて更にそこからフィルたち目掛けてミサイルを撃つヘラクレス。三人共何とか持ちこたえているが時間の問題だった。

 

「フィルナさん!」

 

「大丈夫です!でも、このままでは限界がきます!ロスヴァイセさまは防御魔法は!?」

 

「・・・すみません。私は攻撃重視で学んできたもので防御のほうは」

 

「なら、一気に攻めるのがベストですね!灰銀!アレをします!」

 

「アレかいな!?別にかまわへんがアレは体の負担が」

 

「いいからします!ロスヴァイセさんは少し時間を稼いでください!」

 

「わかりました!」

 

フィルの言葉に前で戦っていた灰銀が下がり、ロスヴァイセさんが前に出る。

 

「どれだけ効くかわかりませんが・・・時間ぐらいは稼いでみせます。フルバースト!」

 

凄まじいほどの魔法攻撃がヘラクレスに襲いかかるがヘラクレスはそれでも平然と動き出す。だがロスヴァイセさんも攻撃の手を緩めなかった。

 

でも、あれじゃ長くはもたない・・・・・。

 

「くっ!フィルナさん・・・早く・・・・・ッ!」

 

苦戦するロスヴァイセさんの後ろにフィルと灰銀を中心に魔方陣が出現するとフィルは何かを唱え始めた。

 

「我はセフィード家の長女、フィルナ・セフィード」

 

「古より伝わる召喚士とその召喚魔」

 

「我と汝。召喚の絆より生まれし外法」

 

「我、召喚士の名の下に行う、忌まわしき禁忌を許したまえ」

 

唱えるたびに輝きを増す魔方陣、フィルと灰狼は同時に叫ぶ。

 

「「禁忌、召喚融合(サモンズ・ユニゾン)ッ!!」」

 

フィルと灰銀の体も輝きだし一瞬眩しい閃光が走る。そして、光が止みそこにいたのは灰狼・・・だが、何か違う気配も感じた。

 

『召喚士である私と召喚魔である灰銀の融合。これであなたに勝機はなくなりました』

 

融合!?フィルと灰銀が合体したのか!?

 

「ハッ!たかが合体したからって俺に勝てるかよ!」

 

ヘラクレスはミサイルの照準をフィル、いや、フィルたちに合わせて発射しようとするが

 

「は?」

 

ミサイルを発射しようとしていたヘラクレスの体から血が吹き出しその場で倒れた。

 

『奥義、閃乍爪。あなたがミサイルを発射するのはわかっていましたので一瞬で終わらせてもらいました。もう自力で立ち上がることも出来ないでしょう。死にたくなければ急いで治療をすることを勧めます』

 

その結果に俺たちだけじゃなく曹操までも唖然としていた。

 

動く素振りすら見えなかった・・・・・。一瞬・・・・本当に一瞬で終わらせた。しかも

 

「手加減もしていた。殺そうと思えば殺せたはずだが」

 

曹操も俺と同じことを考えていた。だが、フィルたちは

 

『私も灰銀も殺しは好きではありません。死んでしまったら何も残らないことは知っているつもりです。いくらあなた方がテロリストでも殺しまでは致しません。ですが』

 

灰狼の姿で曹操を鋭く睨むフィルたち。

 

『ショウとその仲間を殺そうとするのであれば私は一切の容赦なくあなた方を殺します』

 

殺気を曹操たちに向けるフィルたちにジークフリートとジャンヌがかまえる。だが、曹操だけは楽しそうに笑っていた。

 

「フィルナ・セフィード。ダメ元でもう一度訊くが俺たちの仲間にならないか?魔術グループではなく我ら英雄派に」

 

っ!?こんなときまで勧誘かよ!しかも自分たちのグループに。

 

『お断りします。私はショウの傍でショウを支えることを信念に、魔術を習い、魔法を鍛え強くなりました。それにあなた方外道は私にとって一番嫌いな人種です。今すぐ九重のお母上さまを解放し京都から去りなさい。そうすれば見逃してあげます』

 

「「「・・・・・・・」」」

 

完全にこの場の空気がフィルに流れた。木場たちもアーシアさんに回復してもらっているし俺も神器のおかげでパワーアップした。ロスヴァイセさんは魔力を使いすぎたのかその場で膝をついてはいるからまともに戦えるのは俺とイッセー、フィルだけ。問題があるとすれば曹操の禁手が発動するかどうか。まだどんな能力かはわからないが最強の神滅具の禁手だったら厄介なことに変わりない。

 

「・・・・そうだな、そうしたいのはやまやまだが俺たちにも止める訳にはいかなくてね。最低でも実験結果だけは残さないといけないんだ」

 

曹操の言葉にジークフリートやジャンヌも頷く。それを見たフィルは嘆息する。

 

『・・・・・そうですか。私もこの状態は長くはもちませんのですぐに終わらせてあげます。イッセーさま、ショウ。すみませんが力を貸してください。私たちだけでは倒せそうにありませんので』

 

「もちろんだ」

 

「ああっ!」

 

俺とイッセー、そして、フィルは曹操たちと立ち向かう。

 

まだ俺たちはやられていない。まだ戦えるんだ。

 

「・・・ジーク、ジャンヌ。俺たちも赤龍帝たちのようにチームプレイをしてみるか?」

 

「まさか、予想外の相手がいた。ただそれだけの理由でチームプレイなんてするわけないだろう?」

 

「そうよね。それに三人の内二人は悪魔であることは変わりないわ」

 

ヘラクレスがやられたのにもかかわらず余裕を崩さない曹操たち。まだ何かあるのか?曹操の禁手の他にまだ何か?

 

『ッ!?危ない!』

 

ドン!

 

突然フィルに突き飛ばされた俺はその場で尻餅をつく。そして、いったいどうしたのかと思いフィルに視線を向けると

 

ズン!

 

『かふ』

 

地面から出てきた一本の聖剣がフィルたちの体を貫いていた。その時フィルが倒れていくのが遅く見え俺の脳裏に何かが横切った。

 

『会いたかったです。本当に・・・』

 

横切ったのはフィルと再会したときの記憶。

 

やめろ・・・・。

 

『私はあなたを守る為にここに来ました』

 

やめてくれ・・・・・・。

 

『私は死にませんよ。そしてショウも死なせません』

 

何で思い出すんだ・・・・。これじゃまるで・・・・。

 

これからフィルが死ぬみたいじゃないか。そう考えてしまう。

 

『大好きなあなたとずっと一緒にいます』

 

何で、何で今、思い出すんだ!?やめろ!やめろ!思い出すな!

 

必死に思い出さないようにするが止まらなかった。記憶はただ俺の脳裏を過ぎるだけだった。

 

『私はどんなときだってショウの味方です』

 

走馬灯のように過ぎる記憶のなか俺はそれが終わるのを待つしか出来なかった。

 

『私はショウがいればそれだけでいいです』

 

走馬灯が続くなか現実でのフィルたちは倒れ、フィルと灰狼の融合が解けていた。

 

『ショウ、大好きです』

 

俺は・・・・・俺は・・・・・。

 

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」

 

俺はただ泣き叫ぶしか出来なかった・・・・・・。

 

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