水態の神器使い   作:ユキシア

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覚悟を決める

Sideショウ

 

「酷い勝負だったよ」

 

「・・・・言わないでくれ」

 

陣地に戻ってくると木場が苦笑しながらそう言ってきたに対して俺はため息を吐きながら返す。そんなやり取りがありながら次のダイスの数は8だった。

 

「8か。私が出よう」

 

ゼノヴィアが俺たちより一歩前へ出た。

 

確かにそろそろゼノヴィアが出るのもいいかもしれない。それにまだ5はある。俺がもう一度出ることもできるし、ロスヴェイセさんが出るのもいいかもしれない。

 

「・・・・ぼ、僕が行きます。え、えっと、そろそろ中盤ですから・・・・何が起こるかわかりませんし・・・・ゆ、祐斗先輩やロスヴァイセさんは強いですから、後半に向けて控えていただいたほうがいいかなって・・・」

 

ギャスパーの意見に俺達は一瞬驚いたが俺は内心笑っていた。

 

成長したな、ギャスパー。

 

そう思っていると部長さんもギャスパーの意見に賛成しゼノヴィアとギャスパーが出ることになった。

 

「うん、頼りにしているぞ、ギャスパー」

 

「は、はい、ゼノヴィア先輩!」

 

そして、第四試合はゴツゴツとした岩だらけの荒れ地だった。

 

今回出たのがゼノヴィアで良かったな。あんなところで木場が出たら動きに影響が出てしまう。

 

ゼノヴィアとギャスパーの前に現れたのはサイラオーグさんの眷属は戦車(ルーク)のラードラ・ブネと僧侶(ビショップ)のミスティータ・サブノック。

 

確かあの二人は断絶した御家の末裔だったな。サイラオーグさんはそんな人たちまで引き入れているのか。

 

『我が主サイラオーグさまは人間と交わってまで生きながらえた我らの一族を迎え入れてくれた』

 

『サイラオーグさまの夢は僕たちの夢』

 

サイラオーグさんに対する信頼がここまで伝わってくる。

 

『第四試合、開始してください!』

 

審判が開始を告げると、両チームすぐに動き出した。ギャスパーは体をコウモリに化け、ゼノヴィアはデュランダルの波動をラードラたちに飛ばすがサブノックが複数の炎を放つに対してギャスパーは眼を赤く光らせ炎を停止。ゼノヴィアが波動で振り払い、相手の攻撃を無効化した。

 

『ラードラ!サイラオーグさまの指示が届いた!先に剣士だ!僕は準備する!』

 

『了解!』

 

サブノックを守るように前へ立つラードラに禍々しいオーラを立ちこめているサブノック。だが驚くのはサブノックから出している禍々しいオーラではなかった。

 

ボコッ!ドンッ!

 

ラードラの体が突然盛り上がり、尾ができ、翼が生え、爪や牙が生えその姿は・・・・・。

 

ギャォオオオオオオオオオオオオンッッ!

 

ドラゴンそのものだった。

 

「・・・・ブネは悪魔でありながら、ドラゴンを司る一族・・・・。けれど、変化出来るのは家の血を引く者でも限られた者・・・・。よりにもよって・・・・っ!」

 

部長さんが苦虫を噛み潰したかのような表情をしていた。

 

ドラゴンに変化できる悪魔・・・・。だが血を引く者でも限られた者だけ。だが、ラードラはドラゴンに変化した。恐らく修行により開花することができたんだろう。

 

ゼノヴィアはドラゴンとなったラードラに聖剣の波動をぶつけるがたいして効果はなかった。

 

やっぱりドラゴンの防御力は異常だ。ゼノヴィアのチャージしたあの攻撃でなければラードラにダメージは与えられないだろう。

 

ゼノヴィアもそれを思ったのかデュランダルのオーラを溜め、ギャスパーはその援護に回った。そして、ゼノヴィアがエクス・デュランダルを天高く掲げてオーラを溜め込もうとした時サブノックが叫んだ。

 

『ここだッ!聖剣よッ!その力を閉じよッ!』

 

その瞬間、不気味な光がゼノヴィアを包み込む。

 

『・・・・これはなんだ・・・・・。デュランダルが反応しない・・・・!』

 

ゼノヴィアの言葉に俺たちも驚いたがサブノックが説明してくれた。

 

『・・・・僕は人間の血も引いていてね。―――神器、「異能の棺(トリック・バニッシュ)」。最近になってようやく使えるようになった呪いの能力だよ・・・・』

 

・・・・なるほど、その神器のせいでゼノヴィアは聖剣を扱えないようになったのか。

 

ゴオォォォンッ!

 

だが相手も容赦はしてくれない。ラードラはゼノヴィアを攻撃しようと襲いかかってくるが間一髪でギャスパーがゼノヴィアを助けた。

 

ナイスだ!ギャスパー!

 

『・・・・・すまない、ギャスパー。だが、どうやら、私は役立たずになりそうだ』

 

『そ、そんなことないです!ゼノヴィア先輩のほうが僕よりもずっと部長のお役に立ちますよ!』

 

ゼノヴィアを励ましながらギャスパーは小瓶やチョークなどを取り出し小さい魔方陣を展開させゼノヴィアに掛かっている呪いの力を調べ始めた。

 

『逃がさん!どこだ!』

 

だが、相手も待ってはくれない。ゼノヴィアたちを探し回っている。

 

見つかるのは時間の問題。ギャスパー早く!

 

「ギャスパー、ゼノヴィアの呪いは解けそう?」

 

『・・・・わかりました。はい、僕流の解除方法なら手持ちの道具でなんとかなりそうです』

 

ゼノヴィアを中心に魔方陣を描き始めるギャスパーは最後にイッセーの血が入った小瓶を持った。

 

『いま描いた魔方陣にこのイッセー先輩の血を馴染ませることで、呪いは解けると思います。ただ、解除できるまで少し時間がかかりそうですけど・・・・・・』

 

『ま、待て、ギャスパー。その血を使えば、おまえは―――』

 

困惑するゼノヴィアにギャスパーは満面な笑みを見せていた。

 

『ゼノヴィア先輩、僕、役目を見つけました』

 

『ギャスパー・・・?』

 

訝しげに感じるゼノヴィア。魔方陣が完成したギャスパーは岩陰から飛びだしていく。

 

おい・・・・待てよ、ギャスパー・・・・お前・・・・。

 

『ぼ、僕が時間を稼ぎます!呪いが解けたら、そのままデュランダルをチャージしてください!』

 

「やめろ、ギャスパー!無謀だ!」

 

「ショウの言うとおりよ!ギャスパー!隠れなさい!」

 

俺や部長さんが叫ぶがギャスパーの目は決意に満ちていた。

 

『ダメですぅっ!ぼ、僕が時間を稼がないとダメなんですぅっ!部長が勝つにはゼノヴィア先輩の力が必要なんですぅっ!』

 

「無茶は止めろ!下手すれば死んでしまうぞ!せめてコウモリに化けて隠れながらでも相手を錯乱――」

 

『ショ、ショウ先輩!ぼ、僕だって男なんでぅっ!今、逃げちゃダメなんですぅっ!』

 

―――ッ!?

 

ギャスパーの言葉に驚く俺だが、ギャスパーの眼前にドラゴンのラードラとサブノックが迫って来ていた。

 

『見つけた、ヴァンパイアめ。あの剣士は隠したか。だが、この周辺にいるのだろう?火炎をまき散らせば出てくるだろう』

 

ギャスパーは全身を震わせながらも、逃げる素振りもせず、手を前に出して魔力を撃つ体勢を取る。

 

『あ、暴れさせるわけにはいきませんっ!』

 

『単独で臨む、か。その勇気、敬意を払うべきもの。たとえ、震えていようと勇気がなければドラゴンの前に立つことすらできないものな』

 

ギャスパーに敬意を払うラードラは口元から火炎を吐き出した。

 

「避けろ!ギャスパー!」

 

俺は思わずギャスパーにそう叫んだがギャスパーは防御魔方陣でそれを防ごうとする。

 

『うわああぁぁぁぁぁぁぁあああがあっ!』

 

だが、防ぎきれずギャスパーは吹き飛ばされてしまう。今の火炎で火傷を負うがそれでもギャスパーは立ち上がった。

 

『・・・・・まだ。まだだいじょうぶです!』

 

『ギャスパー!無理はよせ!』

 

『剣士の声?この辺にいるのか?剣士め、どこだ?』

 

ラードラはゼノヴィアの声を聞き、辺りを見渡す。

 

『あああああああっ!』

 

ギャスパーは悪魔を翼を広げラードラの腕に食らいついた。

 

『―――――ッ!離せ!いつでも倒せるおまえと違い、デュランダル使いはすぐにもやらねばならん!あの呪いは有限だからな!』

 

空いている手でギャスパーを掴み握り潰すかのように力を入れるラードラ。そして、ギャスパーからメキメキと嫌な音が響き渡る。

 

『うわぁっぁぁあああああぁぁぁっぁっ!』

 

「ギャスパーァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

その光景に俺は思わず叫んだ。部長さんは耐え切れず目を逸らしてしまい、アーシアは顔を手で覆い、絶叫した。

 

ラードラに握りつぶされたギャスパーは地面に捨てられる。それでも、ギャスパーは動き出し、這いながらでもラードラに食い下がる。

 

『・・・・痛い・・・・痛いけど・・・。まだ・・・・・。僕は・・・・グレモリー眷属の・・・男の子だから・・・・。・・・ゼノヴィア先輩、待っていてください・・・・』

 

ギャスパーの言葉にゼノヴィアは完全に声と気配を消した。

 

『邪魔だ!』

 

ラードラに蹴られるギャスパー。それでもギャスパーは這う。俺はその光景に耐えられなくなった。

 

「ギャスパー!もういい!十分時間は稼いだはずだ!リタイヤするんだ!」

 

『・・・・・嫌です・・・』

 

ギャスパーの言葉に俺は目を開かせる。ギャスパーは痛みに耐えながらも立ち上がった。

 

『僕は・・・・先輩の・・・ように強い・・・人に・・・・なりたい・・・・。大切な人を・・・守れるぐらい・・・・強くなりたい・・・・ッ!』

 

手元に魔方陣を展開させようとするが

 

バキッ!

 

サブノックが無情にも杖でギャスパーを横殴りした。

 

『諦めろ、キミでは我々に勝てない』

 

無情の一言。だが、その言葉を聞いてもギャスパーは岩に掴まりながらでも立ち上がった。

 

『ショウ・・・先輩・・・みたいに僕も・・・・部長や皆を・・・守れるぐらい・・・・強く・・・・』

 

ズンッ!

 

ラードラは容赦なくギャスパーを踏みつけた。ぐしゃぐしゃとなったギャスパーを見て誰もがリタイヤは近いと思っているだろう。俺もその一人だ。

 

――――ッ!?

 

それでもギャスパー瀕死の状態にも関わらず体を動かしていた。

 

「ギャスパー・・・・お前、どうして?」

 

俺は思わずそう声に出してしまった。

 

『強く・・・・なり・・・たい・・・・心も・・・・・体も・・・・僕を・・・・助けて・・・・くれた・・・・先輩・・・・の・・・・ように』

 

その言葉に俺は初めて気づいた。ギャスパーはこんな俺を尊敬してくれていたことに。

 

ギャスパー・・・・お前は・・・・強いぞ・・・・・俺なんかよりもずっと・・・・・・。

 

俺は口を噛みしめさっきまでの自分を殴りたくなった。ゲームだから楽しんでいた。ギャスパーがやられているのを見て、見るのが辛くなったからギャスパーから目を逸らした。それに対してギャスパーは覚悟を決めてゲームに臨んだ。誰よりも怖がりで、臆病者のあのギャスパーが恐怖や痛みに耐えながらでも立ち上がった。

 

「情けねぇ・・・・・・俺はなんて情けねぇんだ・・・・・」

 

俺は溢れ出てくる涙を拭きながら映像に視線を送る。

 

俺なんかを尊敬してくれる俺が目を逸らしてどうする!しっかりと脳膜に焼き付けろ!ギャスパーの覚悟を!

 

『まだ動くか。その勝利への執念。恐れ入る。これ以上の攻撃はあまりに残酷と言える。いいだろう、一気に楽にしてやる』

 

ラードラが火炎を吐こうとしたときだった。

 

『―――――そうはさせない』

 

極大で異様なオーラを放ちながら、ゼノヴィアが岩陰から姿を現し、ギャスパーを抱き寄せた。

 

『―――よくやったぞ、ギャスパー。男だな。――――すまなかった、私が不甲斐無いばかりにおまえにこんな・・・・・』

 

ゼノヴィアは涙を流してギャスパーに謝ると静かに立ち上がり、ぼそりとつぶやく。

 

『・・・・足りなかった』

 

エクス・デュランダルの鞘がスライドしていき、攻撃のフォルムへと変化していく。

 

『私には覚悟が足りなかったようだ。だから、あんなものに捕らわれた。仲間のために、部長の―――主のために持つべきだった死ぬ覚悟がギャスパーより足りなかった。こいつのほうが私なんかよりずっと覚悟を決めてこの場に立っていた!自分があまりに情けない・・・・・・ッ!私は自分が許せなくて仕方がないんだ・・・・ッ!』

 

ゼノヴィアの言葉は俺達にも突き刺さった。それをギャスパーが教えてくれた。

 

『すまない、ギャスパー。せめておまえのためにこいつらを完全に吹き飛ばしてやろう!それがおまえへの応えだと思うからなッ!』

 

ゴオォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

天高く立ちのぼる聖なる光の柱。

 

『そうはさせるかッ!今度はこの命を代償にもう一度あの「騎士(ナイト)」の能力を封じる!』

 

サブノックがもう一度神器を発動させようとしたがその体は意識ごと停止した。ギャスパーがリタイヤの光に包まれながらも双眸を赤く輝かせていた。

 

『停止の邪眼かッ!バカな!』

 

ゼノヴィアはデュランダルを大きく振り上げた。

 

『おまえたちはギャスパーに負けたんだ―――――――ッ!』

 

ザッパァァァアアアアアアアアアアアアアァァンッ!

 

大質量のオーラが二人を飲み込んでいった。

 

『サイラオーグ・バアル選手の「戦車(ルーク)」一名、「僧侶(ビショップ)」一名、リアス・グレモリー選手の「僧侶(ビショップ)」一名、リタイヤです』

 

第四試合は終わった。

 

小猫、ギャスパー。待っていろよ。俺たちは必ず勝利する!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四試合が終わり、次の第五試合の出場選手を決めるため部長さんとサイラオーグさんはダイスを振った。その数は9。そして、サイラオーグさんのほうからは恐らく番外の悪魔(エキストラ・デーモン)女王(クイーン)、クイーシャ・アバドンが出てくると予測出来た。

 

「私が行きますわ」

 

朱乃がそう宣言した。

 

「朱乃。ここは俺が―――」

 

出る。と言おうとした瞬間、朱乃が俺の口を指で止めた。

 

「ショウの力は終盤で活躍しなければなりませんわ。それに貴方がいるからこそ私も無茶も出来るんです」

 

いつもの笑みでそう言われた。

 

だけど、俺は・・・・・・・。

 

これ以上誰かが傷つくのが我慢出来なかった。そう思うと自然の拳に力が入り握りしめていた。だが、朱乃はその手を優しく握ってくれた。

 

「ショウ。貴方が人が傷つくのが我慢できないことはわかっています。ですが、今は堪えてください。それをリアスやイッセーくん、仲間のために使ってください。貴方ならそれが出来るはずです」

 

「・・・・・・・・わかった」

 

俺は歯を喰いしばりながら必死に返事する。朱乃にそこまで言われたら何も返すことは出来ねえ。

 

「朱乃、お願いするわね」

 

「ええ、リアス。勝ちましょう、皆で」

 

それだけを言い残して、朱乃は転移していった。そして、朱乃とクイーシャさんの試合はクイーシャさんの(ホール)により朱乃は敗北した。

 

『リアス・グレモリー選手の「女王(クイーン)」、リタイヤです』

 

「・・・・・朱乃」

 

朱乃がやられ、俺は自分の中で暴れている怒りを必死に抑え込む。勝つために。

 

そして、第六試合はついにサイラオーグさんが出て来た。それに対してこちらは木場、ゼノヴィア、ロスヴァイセさんの三人。だが、サイラオーグさんは体術だけで三人を圧倒した。木場がボロボロになりながらも笑みを浮かばせサイラオーグさんに言った。

 

『・・・・・僕たちの役目は・・・・・これで十分だ。あとは・・・・、僕の主と、僕の親友たちがあなたを屠る・・・・』

 

それだけを言い残して、木場たちは光に包まれリタイヤした。

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideリアス

 

『さあ、終盤も終盤!両「(キング)」はダイスをシュートしてください!』

 

実況に促され、私は台に立った。そして、私が5、サイラオーグは4の面を出したダイスが映り出されていた。

 

合計は9.一回でこの数字が出た。

 

ざっ・・・・・・・。

 

イッセーが一歩前に出ていく。振り向いたイッセーは妙な迫力の笑みを浮かべていた。

 

「部長、アーシア、ショウ、いってきます」

 

それだけを言うと、彼は転移の魔方陣に足を進めようとした瞬間。ショウがイッセーの肩を掴んで止め、何も言わず転移の魔方陣に立つ。

 

「おい、ショウ―――――」

 

「黙れ」

 

イッセーが何か言おうとしたがショウが冷たい殺気を放ってきたまま転移していった。

 

表情を怒りで染めながら・・・・・。

 

 

 

 

 

ショウが転移されたバトルフィールドは人気のないコロシアムの舞台上だった。

 

相対するように現れたのは『女王(クイーン)』のクイーシャ・アバドン。

 

『・・・・・・・・・・』

 

ショウはただ黙って相手を見ていた。

 

『駿河彰。貴方が来ましたが』

 

『・・・・・・・・・・』

 

アバドンの言葉にショウは無言だった。

 

『第七試合!開始してください!』

 

それが告げられる!アバドンは特に何もせずショウの行動を待った。

 

『氷血神、禁手となりなさい。私の主サイラオーグさまはあなたと赤龍帝の本気の姿を所望している。ならば「女王(クイーン)」の私もそれを望みましょう』

 

強い覚悟の女性ね。あのヒト、きっとサイラオーグのことを・・・・・・。

 

臨体体勢に入っているアバドンに対しショウは何もせずその場に立っていた。その光景に誰もが疑問に感じているなかショウが口をゆっくりと動かし始めた。

 

『・・・・・・俺は弱い』

 

つぶやくかのようにつぶやいたショウは続けて言う。

 

『ギャスパー、俺はお前が思っているような強い奴じゃない。朱乃、俺は例えわかっていても仲間を傷つけられて我慢できる奴じゃない。木場、俺はお前の言う切り札なんかじゃない。ギャスパーのような覚悟もなければ、勝利のために戦った皆の気持ちより、誰かが傷つくほう辛さのほうが強かった・・・・』

 

拳を握りしめ、空を見上げるようにつぶやくショウ。

 

あの時見せた怒りは自分に対してだったのね・・・・。

 

ショウが転移していくとき見えたあの表情に納得しながら私は思った。ショウにとって勝利より誰かが傷つくほうが辛いということを。例え、勝てたとしてもそれはショウが喜ぶものかと。しかし、その考えは杞憂に終わった。

 

『でも、皆が覚悟を決めて臨んでいる戦いのなか俺だけが覚悟を決めないのは今まで戦った皆に、感情を殺してまで必死に怒りに耐えているイッセーに、眷属想いの部長さんや戦うことができないアーシアに失礼だ。だから』

 

ドォォォォオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!

 

ショウの体から極大なまでのオーラが溢れ出てきた!

 

『俺も覚悟を決める。例えこの先、何かのために誰かが傷ついこうがそれが一つの目的のためなら俺は耐えてみせる。禁手化(バランス・ブレイク)

 

静かに禁手になったショウは青白い衣装を身に纏い突撃槍を握りしめそれをアバドンに向けた。

 

『貴女の望みどおり本気でいく。手加減はしません。貴女は俺に攻撃することも防ぐことも出来ず終わります』

 

その言葉に少なからず私は驚いた。いえ、イッセーもアーシアも驚いていた。朱乃に勝ったアバドンにショウは完全勝利を宣言したのだから。

 

『言ってくれるわね。いいでしょう。私も全力であなたに臨みます。氷血神だろうと、我が主のために私は戦います!』

 

アバドンは大質量の炎の魔力をショウにめがけて放った。だけど

 

『なっ!?』

 

途中で氷の姿となってその炎は消え去った。でも、アバドンは

 

『なら、これで!』

 

今度は大質量の氷を撃つがそれは突然消え去った。次々にアバドンは魔力で攻撃していくが一つたりともショウには届かなかった。

 

『・・・・・俺の神器は強力すぎて制御するのがとても難しいんです。ですが、一対一、一対多なら話は別です。加減する必要はありません』

 

すると、突然フィールドに薄い霧が出現した!

 

絶氷の新界(グラシオ・テムプロ)。この空間ではいかなる攻撃も防御も通用しません。敵味方問わず俺以外の奴はこの空間で肉体の時までも凍てつくします』

 

その言葉に私は絶句した。しかし、それは私だけではなくイッセーもアーシアも観客の皆も同じ。

 

『くっ!』

 

アバドンは(ホール)を出現させるがそれも氷となって動かなくなった。そして、少しずつではあるがアバドンの体までも凍っていく。何度も何度も攻撃を繰り返すがそれも意味をなさなかった。

 

『終わりです』

 

『サイラオーグ・バアル選手の「女王(クイーン)」、リタイヤです』

 

ついにショウの宣言通りアバドンはショウに攻撃するどころか防御することも敵わず何も出来ず終わった。

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideショウ

 

勝った。だけど本当の戦いは本当の相手はこれからだ。

 

俺はサイラオーグさんに視線を向けるとそれに応えるかのようにサイラオーグさんは笑みを浮かべて返して来た。

 

だが、サイラオーグさんを倒すのはイッセーだ。イッセーが今の今まで溜めた力をサイラオーグさん、貴方にぶつけますよ、イッセーは。

 

そして、ついにゲームは最終戦に。

 

Sideout

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