水態の神器使い   作:ユキシア

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甘い悪魔

Side黒歌

 

「さぁ、どうするのかしら!?死ぬ!?それとも見捨てる!?どうなるか見ものだわ!」

 

この外道・・・・ッ!ショウが選べないことを知って・・・・・!

 

私――――黒歌は自分の不甲斐なさに苛立ちを感じていた。あのオカマの魔法具(アーティファクト)に囚われ身動きが取れないどころかショウの足を引っ張ってしまっている。

 

「レイヴェル!しっかりしなさい!あんたが殺そうとしてるのはショウなのよ!?」

 

「無駄よ!今のこの子には私の声しか届かないわ」

 

私の言葉を一蹴するオカマは指を鳴らすと私の後ろにいる死体が私の喉元に剣を当ててくる。

 

「人質は大人しくしてちょうだい」

 

くっ・・・・。

 

「ショウ!私の事はいいからレイヴェルを―――」

 

「ふざけんな!お前を見殺しになんてできるか!」

 

一喝するショウ。いえ、わかっていた。ショウがそういう人だって。

 

『ショウの性格は戦いには向いていません』

 

今になってフィルナの言っていたことが自覚できるなんてね。我ながら情けないにゃ・・・。

 

いえ、もしかしたら浮かれていたかもしれない。私は白音が好き。そんな白音と一緒にいられるようになったのはショウが魔王に頭を下げてくれたから。また、白音と一緒にいられる元バカマスターと違って無茶な強化をショウは強要しない。昔のように白音とはぐれだった私を救ってくれたショウと一緒にいられることに私は浮かれていたのかもしれない。

 

私が浮かれていたばかりに・・・・・ッ!いえ、まだ手がある。

 

私は乱れている妖術、仙術、魔力を無理矢理動かす。乱れに乱れている力を無理矢理動かすことで力を流れを滅茶苦茶にして破壊する。

 

私がやろうとしているのは自滅。私がいなくなればショウはレイヴェルを助けられるはず。それにフィルナも助けに行ける。そうにゃ、私は元々主を殺したはぐれ悪魔。更に言えば元テロリストに一員。何の罰を受けずに幸せになれるわけがない。

 

ごめん、ショウ。でもこれは貴方のせいじゃない。貴方が自分を犠牲にしてまで誰かを助けたいように私も自分を犠牲にしてでもショウを守りたい。白音をお願いにゃ。

 

私は乱れた力を一気に解放しようすると

 

「黒歌。自滅なんて馬鹿な考えはやめろよ」

 

――ッ!!

 

ショウが私のしようとしていることに気づいた。私は驚きながらショウを見るとショウは得意げな顔で私を見ていた。

 

「お前らばっか勝手に人の心を読むからな。こっちも勝手に読ませてもらったぞ」

 

ショウの手に魔方陣が出現すると私の胸にも同じような魔方陣が出現した。

 

「女性のお、ゴホン!胸の声を聞くイッセーの乳語翻訳(パイリンガル)。アザゼル先生の助言とイッセーの胸の熱弁。朱乃たちの協力により何とか形にすることが出来た俺の新技、胸読み(チェストディテクション)。胸に触れた事ある女性の心を読むことが出来る。とはいえ、これはまだ第一段階だけど」

 

「ショウ・・・・いつの間にそんな赤龍帝ちんのような技を?」

 

「サイラオーグさんのゲームが終わってすぐにアザゼル先生に言われたんだよ。『お前はお前のような奴戦えるのか?』ってな。その本当の意味が今わかったよ。俺に影響され今の黒歌のように自滅しようとしている人や誰かの為に戦っている奴。敵味方含めてアザゼル先生はああ言ったんだな。なぁ、黒歌」

 

ショウは真っ直ぐ私を見据えてきた。

 

「確かに俺は誰かが犠牲になるくらいなら自分が犠牲になったほうがいいと思っている自分もいる。でもな、俺はもう死なないし、誰も犠牲にはしない。それを皆が教えてくれた。だから黒歌。俺の為に自分を犠牲にするな。お前が罰が欲しいと言うのなら小猫ちゃんと仲直りして生きて一生俺の傍にいろ。それが俺からお前に与える罰だ」

 

「・・・・・ショウ」

 

ほんと、優しすぎるにゃ・・・・そんなの全然罰じゃない。

 

「感動シーンの所悪いけど状況をちゃんと理解出来ているのかしら?」

 

オカマが嘆息付きながらショウに言ってきた。けど、ショウは全然動じていなかった。

 

「ああ、ちゃんと理解しているよ。まさに絶体絶命ってところか。でもな、あんたは一つミスを犯した!」

 

パキィィィィン

 

突然、私を縛っていた鎖が凍って砕けるように破壊した。解放され力の流れが元に戻った私はすぐに私の後ろにいる死体に魔力弾を飛ばして死体を破壊した。

 

「くっ!なら」

 

オカマが指を鳴らすとレイヴェルが持っていた剣を自分の喉元に向けるがレイヴェルの足下から氷の縄が出現してレイヴェルを拘束した。

 

「これで!」

 

その隙にショウはレイヴェルの首に巻かれているチョーカーを引きちぎるとレイヴェルは意識を無くしたかのように膝から崩れた。

 

「黒歌」

 

レイヴェルを抱えて私のところに来るショウに私は察してレイヴェルの頭に手をかざして気の流れを計る。

 

「大丈夫にゃ。ただ眠っているみたい」

 

「よかった」

 

安堵の息を漏らすショウに私は訊いてみた。

 

「ショウ。どうやって私を助けたの?」

 

「ああ、空気中に漂っている水素を鎖に付着させてそれを凍らせて破壊したんだ。レイヴェルのはディオドラのように地中にある水分で同じようにしただけ」

 

『ま、あのオカマが油断してあんな長話を聞いてくれていたおかげだけどな』も付け加えてショウが苦笑しながら言った。

 

ショウ、貴方は簡単に言ってるけど生粋なウィザードタイプの私でもそんな繊細で緻密な操作は出来ない。魔力と神器とでは操る感覚にも違いはあるけどもし、魔力で同じことをしてみろと言われても私はできないにゃ。ショウ、貴方はどれだけ修行してきたの?

 

「チッ、いいわ、今回は私の負けよ。ここで引かせてもらうわ」

 

オカマが両手を上げて降参のポーズを取るけどショウは槍をオカマに向ける。

 

「逃がすと思っているのか?俺の眷属たちに手を出して帰れると思うなよ」

 

「でしょうね、そう言うと思ったわ。で・も」

 

オカマの足下に魔方陣が出現した。あれは転移用の魔方陣!

 

「これはついでよ」

 

指を鳴らすとまた死体が地面から出て来た。

 

「クソ!」

 

私とショウはレイヴェルを守りながら死体を破壊していくが次から次へ出てくる死体に私もショウも動けなかった。

 

「それじゃ、バイバイ」

 

オカマはどこかへジャンプして数分後、私とショウは死体を倒し終え私は残滓を調べたが足取りを掴むことは出来なかった。

 

「黒歌。レイヴェルと一緒に裏京都へ戻っててくれ。俺はこのままフィルのところへ行く」

 

ショウはそれだけを言ってフィルナのほうへ飛んで行った。

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideフィルナ

 

私――――フィルナはレイヴェルさまと一緒に妖怪たちとテロリストの妖力、魔力の残滓を探す為調査を行っていましたが突然、転移魔方陣から十メートルはある大鬼、酒呑童子が現れ、私は魔法で応戦しているところをレイヴェルさまが攫われてしまいました。ショウにそのことを伝えようとしましたが通信が妨害され上手く伝わってはいないでしょう。

 

「カッカッカッ!久しいの!八坂よ!」

 

「私はお主とは一生会いたくはなかったのじゃがな」

 

哄笑する酒呑童子に呆れるに嘆息し炎を出す八坂さま。しかし八坂さまの瞳はあきらかに酒呑童子に敵意を向けていた。

 

「酒呑童子よ。敵対しておるとはいえお主とは長い付き合い。矛を収める気はないか?今の現代は戦よりも面白いものは多くある。戦以外の楽しみを見つけてみようとは思わぬか?」

 

「カッカッカッ。抜かせ。そのような敵意をむき出しにしとるお主が何をふざく。お主の言うように儂と貴様とは長い付き合い。そのような世迷言に儂が耳を貸すと思うか」

 

敵対関係とはいえ御二人は相手がどのような性格かはよく御存じ。もう戦って勝つ以外に道は残されていないのでしょう。

 

「・・・・・仕方がない」

 

息を漏らす八坂さまは全身から炎を出現させ視線を変えず私に言ってきた。

 

「フィルナ殿。下がっておいてくれ。これは私と奴との戦。お主を庇いながらでは戦えん。なによりお主に傷でも負わせてしまったらショウ殿に申し訳がない」

 

「そのお気持ちは嬉しいのですが私はレイヴェルさまを攫われてしまう汚名を背負ってしまいました。ショウの為にも汚名を雪がなければなりません。援護はお任せを」

 

ショウはそのようなことは気にはしませんが私なりのけじめは取っておかなければ。

 

「・・・・・わかった。しかし、危険と判断したら逃げてもかまわん」

 

さて、今現在灰銀は前の聖剣のダメージが大きく完全には回復しておりませんし、エンチャントで八坂さまを強化してもいいのですが八坂さまのような強者には微々でしかありませんね。なら未来予知で動きを先読みしつつ魔法で酒呑童子の動きを少しでも鈍くしてみましょう。

 

「相談事は済んだか?ゆくぞ!」

 

「八坂さま!左へ!」

 

酒呑童子は巨大な金棒を振り下ろしてきますが私の未来予知で酒呑童子の動きを先読みしそれを八坂さまへ伝える。動きを先読みしていますから私も八坂さまも簡単に避けることに成功しました。

 

「氷結魔法、アイスブリザード!」

 

魔方陣を展開させ、酒呑童子の足を凍らせようと魔法を放ちましたが

 

「ぬるいわ!魔法使い!」

 

金棒を振ってその風圧で私の魔法を弾き飛ばしました。流石は九尾と並ぶ大妖怪。この程度の魔法は効果がありませんか。

 

「私を忘れておるぞ!酒呑童子!」

 

私に意識が向いている隙に八坂さまが酒呑童子を覆うくらいの大火炎を放ち酒呑童子はその炎に直撃しましたが体の表面が焼けるだけでたいしたダメージは負っておりませんでした。

 

「どうした?八坂よ。以前に戦った頃より威力が些か落ちておるぞ?」

 

「それだけ私が戦う機会が少なかったということじゃ。威力が落ちているのも自覚しておる。実質、前にお主と戦ってから戦ってはおらぬからな」

 

それだけ平和になっている証拠でしょうね。もっとも今のテロリストがいなくなればショウも戦わなくて済むのですが。

 

「嘆かわしい。つまり儂とお主とでは実力の差が出来てしまっということか。お主との戦は儂の楽しみの一つでもあったのだがな」

 

「ほう、お主が私の事をそのように思っておったのか。それはすまなんだな。じゃが、私は私の愛する京都を襲うのであれば例え強者相手といえど引きはせん」

 

愛する都のために戦う八坂さまが若干ショウと重なって見えてしまいました。それだけ八坂さまは今の京都を愛しておられるのでしょう。私だってショウの為なら誰にだって立ち向かっていく覚悟は出来ていますから。

 

「さぁ、来るが良い。ここでお主と私との因縁を断ち切ろうではないか」

 

真っ直ぐなその瞳は本気で酒呑童子と決着を付けるつもりなのでしょう。しかし、それは私も賛成ですね。ここで倒しておかなければ後々大変でしょうから。私も腹を括りましょう。

 

覚悟を決めた私と八坂さまでしたが酒呑童子はくつくつと笑いを漏らしていました。

 

「因縁か・・・・クク、確かにお主の言う通り儂とお主との間には二つの因縁があったな。八坂よ」

 

「二つ?」

 

二つ?一つは京都での主権争いと聞いてはいますが・・・・。

 

私と八坂さまが首を傾げていると酒呑童子が笑みを浮かばせながら八坂さまに告げた。

 

「八坂よ。十数年前にお主の夫を殺したのは儂だ」

 

「え?」

 

「・・・・・・・・」

 

突然の酒呑童子の告白に八坂さまは目を見開き私は無言になりましたが酒呑童子はそれを無視して続けて言ってきました。

 

「お主が産気ついておると部下から聞いてな。今なら主権を我が物にできると息巻いて部下を連れてお主のところに向かおうとしている途中にお主の夫が儂の道を阻んでな。楽しかったぞ。奴との戦いは」

 

笑みを浮かべながら言う酒呑童子に八坂さまは全身を震わせその瞳は殺意に満ちていました。

 

「貴様が・・・・・貴様がァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

全身から殺気を放つ八坂さま。それを見た酒呑童子は歓喜な表情で笑っていました。八坂さまの夫を殺したことを八坂さまに告げることで煽ったのでしょう。憎しみを持って本気の状態の八坂さまとの戦いために。

 

それでも気に入りませんね。自分の欲望を満たすために殺しも躊躇わない外道。私も本気で殺したくなりましたよ・・・・・・・・・いえ、その必要はもうありませんか。

 

「八坂さん!」

 

空から翼を広げたショウが迷わず八坂さまに抱きついたのですから。

 

「ショウ殿!離してくれ!あいつは!あいつは!」

 

ショウに抱きつかれながらも酒呑童子に向かって行こうとする八坂さまをショウは必死に止めながら八坂さまを宥めます。

 

「落ち着いてください、八坂さん」

 

「落ち着いてはおれん!あいつは私の夫を殺した!奴を八つ裂きにせねば気が収まらん!」

 

「それでも駄目だ。貴女をその手を汚しちゃ駄目だ。あいつを殺しても一瞬の自己満足とその後の罪悪感しかない」

 

「それがなんだ!かわまん!ここであいつを殺せるのなら私は―――」

 

「八坂ッ!!」

 

暴れる八坂さまにショウは怒鳴り散らすかのような大声で叫ぶとそれに驚いたのか八坂さまは大人しくなりました。そんな八坂さまの肩を掴みショウは八坂さまの目を合わせました。

 

「八坂。確かにあいつはあなたの夫を殺した張本人だ。怒りを憎しみをぶつけあいつを殺したい気持ちはわかる」

 

「なら・・・・・なら何故邪魔をする!?私の気持ちがわかるのであればそこをどいてくれ!」

 

八坂さまの言葉にショウは静かに首を横に振りました。

 

「貴女が戦って傷付いたらいったい何の為に八坂の夫は戦ったんだ?」

 

「そ、それは・・・」

 

「貴女と九重を守る為に戦ったんじゃないのか?大事な妻を、娘を守る為に戦ったと俺は思う。夫の為にも、そしてこれからの京都の平和となにより九重の為にも貴女は生きなきゃならない」

 

ショウの言葉に八坂さまから殺気が消え始めましたが八坂さまはご自身の胸を掴み憎々しくショウに訊きました。

 

「・・・・・夫の為、これからの京都の為にこの怒りを、憎しみを忘れろとショウ殿はそう言いたいのか?」

 

「違う。八坂、貴女は京都を守る為にその綺麗な手を汚す時もあったと思う。だからそれ以上汚す必要はない」

 

八坂さまに背を向け酒呑童子と向かい合った時、ショウの瞳は怒りに満ちていました。

 

「あのゲス野郎は俺が倒す。貴女の怒りも憎しみも俺が代わりに晴らしてやる」

 

「それは―――」

 

何か言われようとした八坂さまですが私は睡眠魔法で八坂さまを眠らせました。

 

「これでよろしいですか?ショウ」

 

「ああ、悪いが」

 

「わかっています。手は出しません。結界を張り八坂さまをお守り致します。ですので存分に戦ってください」

 

「ありがとう」

 

それだけを言ってショウは酒呑童子の方へ足を運びました。

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideショウ

 

俺はフィルに八坂さんを頼んで俺は八坂さんの代わりに敵討ちをするため酒呑童子と向かい合ったが酒呑童子は俺を見ると同時嘆息した。

 

「つまらん。せっかく八坂を挑発し戦を楽しもうと思ったのだがこのようなつまらぬ悪魔小僧が来るとは実につまらん」

 

『嘆かわしいわ』ともぼやくが俺は自分でも驚くほど冷静に返した。

 

「それは悪かったな。だが、見た目で判断すると痛い目にあるぞ?」

 

笑みを浮かばせながら言う俺は禁手(バランスブレイカー)になり槍を酒呑童子に向ける。

 

「酒呑童子。俺はお前のように自分の欲望を満たす為なら誰を犠牲にしようか。そういう奴が一番虫唾が走る」

 

「それがどうしたと言うのだ?己の欲望を満たす為なら他者を犠牲にしようとするのは儂だけでなくともお主のような悪魔も変わらぬであろう?」

 

否定はしない。だけど、それでも俺は許せない。大切な人を失う気持ちはどれだけ辛いか、そしてその弱みを誰にも見せなかった八坂はどれだけ強いか。だからそんな八坂の為に

 

「俺はお前を倒す」

 

俺が出来ることはこいつを倒すことだ。

 

「カッカッカッ!吠えるでないわ!この木端悪魔風情が!」

 

ドッガァァァァァァアアアアアンッッ!!

 

金棒を振り下ろし地面が抉られるように破壊されるが俺はその前にその攻撃を躱し酒呑童子に氷の弾丸をぶつけるが酒呑童子の頑丈な体に傷一つつけることは出来なかった。

 

この程度じゃダメか。

 

「それそれそれ!先程までの威勢はどうした!?」

 

金棒を振り回す酒呑童子の攻撃を俺は回避しながら酒呑童子の攻撃を受けた地面を見た。

 

恐らく酒呑童子のパワーは鎧が無いサイラオーグさん並み。俺の弱点であるパワーを極めたパワータイプか。なら、一撃でも貰ったらヤバいが生憎とイッセーとの訓練も欠かしていない今の俺にはその対処法も身に着けた。

 

俺はこのいったいを覆うサイズの水蒸気を発生させる。

 

「それで姿を隠したつもりか!?」

 

金棒を振り水蒸気を吹き飛ばす酒呑童子。だが、水蒸気の中には俺はいない。

 

「なっ!?どこへ!」

 

「ここだよ!」

 

水蒸気で姿をくらました俺は背後から氷の刃を創り酒呑童子に放ち酒呑童子の体を傷つける。

 

「ぐっ!小癪な真似を!」

 

背後にいる俺目掛けて攻撃する酒呑童子だが酒呑童子の攻撃は俺の体をすり抜けた。

 

「小癪で悪かったな!」

 

正面から同じように氷の刃で傷つける俺。

 

水蒸気による光の屈折。上手く行くかは賭けだったが魔力のコントロールも修行した今の俺ならこいつぐらいは騙せれる。とにかくパワータイプは自分の位置を相手に特定されないようにしないといけない。

 

「どうだ?少しは本気で戦う気になったか?」

 

「ふん!お主のような小癪な小僧に儂が負けるものか!」

 

お前が言う小癪なことを含めて戦いだろう。でも、そうだよな、お前みたいな奴のプライドをへし折るにはこんなやり方は意味がねえよな。

 

「おい、酒呑童子。最後のチャンスをくれてやる」

 

「なに?」

 

「大人しくこの京都を去り、二度と京都へ近づかないと誓うなら見逃してやる。そうでないのなら俺の最強の技でお前を倒す」

 

殺気を酒呑童子にぶつけるが酒呑童子は俺の問いかけを鼻で笑った。

 

「フン。貴様如きの技、儂が破いてくれるわ!」

 

俺に向かって金棒を振り下ろす酒呑童子。

 

だよな。お前ならそっちを選ぶと思ったよ。でもな、だからこそ終わりだよ。

 

俺に向かって振り下ろしてきた金棒の動きが突然止まった。

 

「なっ!わ、儂の体がッ!凍りついてゆくだと!?」

 

「殆どの力を失う代わりに出すことが出来る俺の最強の技、絶氷の新界(グラシオ・テムプロ)。お前はもう終わりだ」

 

ロキ戦で使った技の簡易版。それでもかなり強力なのは間違いないがこれは加減が出来ないから周りに俺以外がいないときにしか出すことが出来ない。

 

クイーシャ・アバドンさんの時よりかはマシにはなってはいるけどそれでもいざというときにしか出さないようにしないとだがこいつは許すわけにはいかない。

 

「どうだよ?圧倒的力の前にやられている気分は?お前のような奴には屈辱的だろう?」

 

もう酒呑童子の体半分は凍りついている。必死にもがいてはいるがこの技の前ではお前ごときが脱出できるわけがない。

 

「な、何故だ!?何故このような力がありながらこれを己の為に使わない!?これほどまでの力なら地位も名誉も力を振るうだけで思いのままではないか!?」

 

「そんなものに興味はねえよ」

 

生まれて今までそんなものに興味を持ったことはない。その為に力だって振りたくない。まぁ、強いて言うなら

 

「お前みたいな奴を倒す為、大切な人達を守る為に俺はこの力を振るう。ただそれだけだ」

 

その為に俺はもっと強くなる。皆を守れるぐらい俺は強くなってみせる。

 

「・・・・・甘い木端悪魔め」

 

その言葉を最後に酒呑童子は完全に凍りついた。

 

「お前を倒せるなら甘い木端悪魔でもなんでもいいよ」

 

これで八坂の夫の仇は取れた。八坂の恨みをこれで晴れればいいんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、酒呑童子を倒し初任務が無事に解決した翌日の朝。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「すーすー」

 

全裸でいる俺と同じく全裸で寝ている八坂さん。

 

「いったい、何がどうなっているんだ?」

 

誰か、俺に教えてくれ。

 

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