水態の神器使い   作:ユキシア

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続けて事件

Sideショウ

 

落ち着け、落ち着くんだ。まずは今の状況を整理しよう。

 

俺の隣には裸で寝ている八坂さん。そして同じく裸の俺が一つの布団で寝ていた。

 

よし、では何でこんなことになったのかを思い出してみよう。

 

昨日、俺は酒呑童子を倒してその後は裏京都に戻り京都の妖怪たちやフィルたちにそのことを伝えた。酒呑童子側の妖怪たちは酒呑童子が倒されたことで撤退し、無事に京都を守ることが出来た。だが禍の団(カオス・ブリゲード)の連中は酒呑童子が倒される前に撤退したのかすでに京都から姿を消していた。今後の対応としていくつかの案を出しあい、その夜に妖怪たちと宴会して・・・・・それから確か・・・・黒歌が悪乗りで俺に酒を・・・・・・・・あれ?ここから思い出せない。

 

必死に思い出そうとするがどうしてもその先が思い出すことが出来ない。だが、今の状況からするに俺は八坂さんと・・・・・したのか?

 

もしそうなら俺は男として、人として、いや悪魔だけど最低なことをしてしまったぞ・・・・・。酔った勢いで俺は八坂さんと・・・・・そうだとしたら大変だ。悪魔である俺が京都の御大将に手を出したと世間に知られたら下手をすれば京都の妖怪たちとの同盟が破られ、俺は運が良くて牢獄行きか。いやいやいや、考えすぎだ。案外俺は酔って服を脱いでしまった。ていうオチかもしれん。八坂さんも部長さんと同じように裸でないと寝れない。実はお互い裸で寝て何もありませんでした。かもしれない。いや、きっとそうに違いない!そうであってくれ!

 

必死にそう思い込んでいるなか寝ていた八坂さんが目を覚まして俺と目が合うと頬を赤く染めて

 

「昨晩は激しかったなぁ・・・・・」

 

そう言ってきた。

 

その言葉に俺の思考は一瞬停止して諦めるように俺は空、天井を見上げた。

 

ハハ、どうやら俺はここまでのようだ。ごめん、皆。そして、ゴメンな朱乃。どうやら俺の貞操は八坂さんに捧げたようだ。いや、男の貞操なんてどうでもいいだろうけど謝らせてくれ。

 

「ショウ殿。冗談じゃ。昨晩は何もなかったゆえそんな全てを諦めたような顔をせんでほしい」

 

「・・・・・なら、どうして俺も八坂さんも裸なのですか?」

 

「寝苦しいそうにうめいておったから脱がさせただけじゃ。私はたんにいつもの習慣で脱いだだけのこと」

 

「そうですよ。ショウの貞操は私がいただきますから安心してください」

 

いつの間にかいたフィルが俺と八坂さんの前に現れ、そんなことを言ってきた。

 

「八坂さまがショウに手を出させないように監視しておりましたから安心していいですよ」

 

「・・・・そうか。黒歌やレイヴェルは?」

 

どこかホッしながらも残念な気持ちになりながらも俺はフィルに二人の事を訊くと黒歌はまだ寝ていてレイヴェルは小猫と連絡を取りイッセーたちの試験のことを聞いているらしい。

 

そうか、ならサーゼクスさんに任務完了を知らせた後今日は京都で観光でもしてから帰ろうかな。

 

「ショウ殿」

 

そんなことを考えているといつの間にか巫女装束に着替えていた八坂さんが俺に頭を下げて来た。

 

「酒呑童子から京都を守り、私の夫の仇を取ってくれたこと京妖怪代表と私個人から心から礼を言う」

 

「いや、頭を上げてください。俺たちはその為に来たのですから当然のことをしたまでです」

 

「それでも何か礼を尽くさなければ私の気が収まらん。そうじゃ」

 

何か思いついたのか急に官能的な笑みを浮かばせ装束をはだけさせて俺に密着するように抱き着いてきた。

 

「まずは私の体で返そう。ショウ殿も殿方。思う存分に私の体を好きにしても良いぞ?」

 

まさかの展開来た!いや、ダメでしょう!?嬉しいけど!

 

「そういう申し出はまずはショウの女王(クイーン)である私を通してからしてください」

 

俺と八坂さんの間に割って入るフィル。

 

いや、フィル。お前を通しても八坂さんは京都の御大将だぞ。手なんか出したらその後大変なことになるかもしれないんだぞ。

 

「フィルナ殿。ショウ殿は私の新たな夫じゃ。夫婦での行為にお主に通すまでもない」

 

「いえいえ、何を勘違いなされているのですか?夫ではなく夫代わりでしょう?まぁ、私は寛大ですからショウの貞操を私が頂いた後にならかまいませんよ」

 

「ほほほ」

 

「ふふふ」

 

微笑みながら笑い合う二人だが目がまったく笑っていなかった!

 

怖すぎる!色んな意味でここから逃げ出したい!だけど逃げたらもっとヤバいような気がしてならない!

 

俺は布団で身を隠しながら震えていたがすぐに二人はいつもの様子に戻り俺は安堵した。

 

「それはそうと。ショウ、今回の任務のことを早くサーゼクスさまに報告しましょう。魔法具(アーティファクト)を作れる厄介な存在がテロリストにいることを一刻も早く知らせなくてはなりません」

 

あのオカマのことか・・・・・。

 

魔法具(アーティファクト)。確かに厄介だった。通信を妨害や黒歌程の実力者を縛れるものやレイヴェルを操れるものまで今回は大丈夫だったが次はそんな保障はない上にまた新たな魔法具(アーティファクト)が出てくるかわからない。

 

「ショウと黒歌さまの前に現れたのは死霊使い(ネクロマンサー)の正体は恐らくクラディオ・エデト。黒魔術を得意とする魔法使いなのですがクラディオ・エデト本人は魔法よりも魔法具(アーティファクト)の発明のほうが有名です」

 

「魔法使いでは有名なのか?」

 

「有名と言えば有名です。表向きは魔法具(アーティファクト)の発明者として魔法使いの間に名が残るとも言われるほどでしたがその裏では多くの人体実験を繰り返す程の悪人とも言えます」

 

人体実験・・・・いや、そういえばディオドラに魔法具(アーティファクト)を加えたと言っていた。俺や黒歌が倒した死体の人たちもあのオカマの実験体だったのか。

 

「その事実が世間に知られたクラディオ・エデトは数年前に行方を眩ませていたのですが、テロリストに加担していたとは」

 

「納得はいくのぅ。おおかたそちらのほうが都合が良い判断したのかまたはなんらかの目的があるのか」

 

フィルの話に八坂さんも納得するかのように頷く。

 

ん、そういえば、クラディオが京都を襲ったのは温泉の為。なら何故京都の御大将である八坂さんではなくて俺のところに現れたんだ?酒呑童子と組んで魔法具(アーティファクト)を使えば倒せれたはずじゃ。

 

疑問を感じたがどう考えてもクラディオの目的が分からない今は警戒を高めるためにもサーゼクスさまにこのことを報告しなくては。

 

「――――――以上が今回、京都で起きた事件の概要です」

 

『そうか。テロリスト側にそのような使い手がいたとは』

 

サーゼクスさまと通信で今回の事件のことを概ねに報告する。

 

『報告ご苦労。その者についてはこちらでも手を打っておくとしよう。しかし、急な初任務にも関わらず見事成し遂げるとは。やはりキミに任せて正解だった』

 

「いえ、フィルたちのおかげです。それに酒呑童子は倒すことは出来ましたが、テロリストのほうは逃げられてしまいました」

 

『いや、キミのおかげでテロリスト側もしばらくは京都を襲うことはないだろう。その間に対策を立てれる。よくやってくれた。魔王として礼を言う』

 

「ありがとうございます」

 

礼を言うサーゼクスさまに俺は頭を下げる。

 

『試験に行っているイッセーくんたちは夕方には帰ってくるだろうから、それまで京都でゆっくりしておくといい。私からリアスにそう伝えておこう』

 

「ありがとうございます。それではお言葉に甘えさせていただきます」

 

報告を終え、俺は通信を切る。

 

イッセーたちは大丈夫だろうか。特にイッセー、筆記は大丈夫だろうか?木場や朱乃たちもいるし、部長さんたちも協力してくれているだろうから大丈夫だと思うが。

 

「まぁ、せっかく京都にいるんだ。修学旅行で行けれなかったところにでもフィルたちと一緒に行ってみるか」

 

それからは黒歌やレイヴェルたちと合流し、九重に案内してもらいながら京都を堪能して昼ごろには昼食と一緒に八坂さんと九重の舞も見せてもらった。綺麗だな、と感心すると何故かフィルたちの冷たい目線が来たが、まぁ楽しかった。

 

そうして時間が過ぎていきとうとう帰る頃。

 

「もう帰ってしまうのか?」

 

帰る間近、九重が寂しそうな顔をしながら言ってきた。

 

「ああ、そろそろ帰らないと皆に心配をかけるからな」

 

俺は少しでも寂しさを誤魔化す為に九重の頭を撫でる。

 

「また、会いに来るから。それまで元気でな」

 

「うむ!それまで九重はもっと舞を上達してみせるぞ!」

 

「楽しみにしてる」

 

「ショウ殿」

 

九重との別れをすませると今度は八坂さんが声をかけて来てくれた。

 

「本当になんと礼を言えばわからん。京都を守り、夫の仇を取ってくれた。もう言葉ではなんとショウ殿に礼を言えば思いつかん」

 

「いいですよ。俺も京都を貴女を守れて良かった。これからも京都の平和の為に・・・・」

 

頑張ってください。と言おうとした直後、俺の唇は塞がれた。俺の唇を塞いでいるのは唇を重ねてきた八坂さんだった。突然のことに俺は頭が真っ白になるが八坂さんが唇を離すと

 

「言葉では思いつかんので行動ですることにした。また京都へ足を運ばれよ。その時はたっぷりと礼をしよう」

 

そう言ってきた。

 

「やはり・・・こうなるのですね」

 

「もう諦めるしかないのかにゃ」

 

「そのようですわね。これは受け入れるしかありませんわね」

 

俺の後ろで転移用の魔方陣を展開しているフィルたちが何か言ってはいたが俺の頭が真っ白になっていた為よく聞き取れなかった。

 

「母上ばかり卑怯ですぞ!こうなれば・・・!」

 

「うごっ!?」

 

九重が俺の顔面目掛けて跳んできた。突然のことで俺はバランスを崩して尻餅をつくと九重が俺の首筋に噛みついてきた!

 

「痛っ!」

 

かぶりと噛みつかれ、九重が離れると噛みつかれたところから血が出て来た。歯形までしっかり残る程深く噛みつかれた。

 

「母上には渡しません!これは私のです!」

 

噛みつかれたうえにコレ扱いかよ。八坂さんもそんな微笑ましそうに見ないで下さいよ。フィルたちも呆れたかのような眼差しで俺を見るな。

 

「無理です」

 

「無理にゃ」

 

「無理ですわ」

 

フィル、黒歌、レイヴェルが口を揃えてそう言ってきた。何でこういう時はそんなにチームワーク抜群なんだ?俺の眷属たちは・・・・・。

 

そんなこんながあったが俺たちは無事に初任務を終え自宅へと行く前にイッセーの家に転移し、部長さんたちに今回の事を教えようとイッセーの家のVIPルームへとジャンプしたのだが誰もいなかった。

 

あれ?まだ帰ってきていないのか?

 

そう思っていると部屋のドアが開く音がしてそちらに振り向くとアザゼル先生がいた。

 

「あ、良かった。アザゼル先生。イッセーたちは?」

 

「・・・・・・ショウ。落ち着いて聞いてくれ」

 

いつもの笑みではなく神妙な表情をしたアザゼル先生がそこにいた。そして、アザゼル先生から俺たちはとんでもないことを聞いた。

 

「・・・・・・イッセーが・・・・・死んだ・・・・・」

 

Sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side木場

 

中級悪魔の昇格試験から二日ほど経過した昼頃――――――。

 

僕――――――木場祐斗はグレモリー城のフロアの一角にいた。グレモリー城は慌ただしさのなかにあった。使用人の方々をはじめ、グレモリーの私兵も慌ただしく動いていた。

 

理由は現在冥界が危機に瀕しているからだ。

 

旧魔王派のシャルバ・ベルゼブブの外法によって生み出された『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』の超巨大モンスターの群れは冥界に出現後、各重要拠点及び都市部へと進撃を開始。

 

フロアに備え付けられている大型テレビではトップニュースとして、進撃中の巨大な魔獣を映しだしていた。

 

『ご覧ください!突如現れた超巨大モンスターは歩みを止めぬまま、一路都市部へと向かっております!』

 

冥界に出現した『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』の巨大な魔獣は全部で十三体――――――。百メートルを優に超える巨獣だ。どれも百五十メートルほどあるだろう。

 

人型の巨人タイプもいれば、四足歩行のまさに獣のようなタイプもいる姿形は一体として同じものがない。

 

奴らはゆっくりと一歩ずつ歩みを止めぬまま進撃を続けている。厄介なのは、この魔獣たちが進撃をしながらも小型モンスターを独自に生み出している点だ。

 

その異形のなかでも群を抜いて巨大なのが、冥界――――魔王領にある首都リリスに向かっているという規格外の魔獣だ。他の魔獣よりも一回り以上も上回る巨体を有している。

 

一際巨大なその魔獣を冥界政府は『超獣鬼(ジャバウォック)』と呼称していた。その他十二体の巨大な魔獣は『豪獣鬼(バンナースナッチ)』と呼称されている。

 

各魔獣の迎撃には堕天使が派遣した部隊と、天使側が送り込んできてくれた『御使い(ブレイブ・セイント)』たち、ヴァルハラからは戦乙女たるヴァルキリー部隊、ギリシャからも戦士の大隊が駆けつけ、悪魔と協力関係を結んだ勢力からの援護を受けている。

 

悪魔がこれ以上の打撃を受ければ、種の存続が本格的に危ぶまれる。当然の手配だといえる。それ以前にあのサーゼクスさまが民衆の安全を後手に回すはずがない。

 

しかし、このままでは、冥界は・・・・・。

 

「『超獣鬼(ジャバウォック)』と『豪獣鬼(バンナースナッチ)』の迎撃に魔王さま方の眷属がついに出撃されるようだ」

 

―――――っ。突然の声。僕が顔を向けるとそこには―――――ライザー・フェニックスがいた。

 

「兄貴の付き添いでな。ついでにリアスの顔でも見にきたんだが。やっぱり、状況が状況だからな。・・・・・・察するぜ、木場祐斗」

 

眉をひそめ、深刻な表情のライザー・フェニックス。

 

彼の―――――イッセーくんの死はすでにこのヒトにも届いていたのか。

 

そう、僕たちはこの一件の発端となった事件で大事な仲間――――赤龍帝の兵藤一誠を失った。シャルバ・ベルゼブブに拉致されたオーフィスを単身で奪還しにいったイッセーくん。もとの世界に戻った僕たちは龍門(ドラゴン・ゲート)を開いて彼を呼び寄せようとしたのだが・・・・。

 

僕たちの元に戻ってきたのは彼の悪魔の駒(イーヴィル・ピース)――――『兵士(ポーン)』の駒七つのみだった。

 

駒だけが召喚に応じる現象は過去にもその例はあったらしく、その場合も確実に本人は生きていないと聞かされた。

 

彼の死は報道はされず、一部の者にしか伝えられていない。

 

だが、僕たちは・・・・・・っ!そう簡単にそれを受け入られるはずが・・・・っ!

 

「痛み入ります。――――部長には会うことはできましたか?」

 

「無理だったな。部屋のドアを開けてくれなかったぜ。呼んでも反応もなかった。・・・・・ま、会える状況でもないだろう。愛した男がああいう形になってしまったんだからな」

 

部長は城の自室にイッセーくんの駒を持ったまま閉じこもってしまった。アーシアに至ってもゲストルームでずっと泣いている。

 

「・・・・・いますぐにイッセーさんのもとにいきたい・・・・。・・・・でも、私がイッセーさんを追ったら・・・・イッセーさんはきっと悲しむから・・・。・・・・・ずっと一緒だって、約束したんです・・・・。それなら、私もそこにいければずっと一緒だと思ってしまって・・・・。・・・・・イッセーさん・・・・私はどうすればいいんですか・・・・?」

 

彼女もまた必死に悲しみと戦っていた。

 

ゼノヴィアとイリナさんはいまだ天界だ。イッセーくんの死が伝えられているかどうかはわからない。ショウくんは任務が終えてから連絡がない。

 

ギャスパーくんとロスヴァイセさんも強化を図るために出かけたまま連絡がない。こちらはまだイッセーくんの情報を知らないはずだ。

 

・・・バラバラだな、グレモリー眷属。少し前までこれ以上にないほどに最高のチームだったのに、いまではその面影すらない。

 

ショウくん。早く戻って来てくれ。僕一人じゃ彼女たちを支えきれない。

 

「木場さま」

 

聞き覚えのある声に僕は振り返るとそこにはショウくんの女王(クイーン)であるフィルナさんがいた。でもそこにはショウくんの姿がなかった。

 

「お話は全てアザゼル総督さまより伺っております」

 

フィルナさんの言葉に僕は察した。彼女が知っているということはショウくんのイッセーくんの死は届いているのか。

 

「黒歌さまとレイヴェルさまは小猫さまのところにいます。何かあれば御二人に申し付けてください」

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

それだけを言ってどこかに行こうとするフィルナさんを僕は呼び止める。

 

「彼は・・・ショウくんは一緒じゃないのか?」

 

いや、僕たちよりも仲間想いの彼の事だ。部長と同じように・・・・。

 

「ショウの事は心配ありません。私達がここにいるのはショウの命令があってのこと。そして、ショウからリアスさまに伝言を預かってまいりました」

 

「それじゃ・・・・彼は今どこに?」

 

「それをお答えする前に今は立たせないとならない人がいるでしょう?」

 

フィルナさんは一呼吸空け、僕に告げる。

 

「リアスさまのところまで案内お願いできませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

僕はリアス部長の部屋まで彼女―――フィルナさんを案内すると彼女は部長の部屋へと入っていく。

 

室内を進むと・・・・ベットの上で体育座りをしている部長の姿があった。表情はうつろであり、目元は赤く腫れ上がっていた。・・・・ずっと、泣いていたのであろう。

 

そんな部長を見てフィルナさんは呆れるかのように嘆息した。

 

「普段は強情でいる貴女の面影もないくらい酷い姿ですね。リアスさま」

 

その態度を見て、部長は不機嫌な表情と口調で訊く。

 

「・・・・何をしに来たの・・・・?」

 

「まず初めに無事に任務は完了しました。まぁ、ショウのハーレムメンバーが増えたこと以外は特に問題はありません」

 

また、京都で誰かを口説いてしまったのかな?ショウくんは・・・・。

 

「次にここに来たのはショウからの伝言をお伝えに来ました。ですが、その前に」

 

コホンと咳払いしてフィルナさんは真正面から言い放った。

 

「いつまで悲劇のヒロインを演じるのですか?今は冥界の危機。一人でも多くの命を助けるために力のあるグレモリー眷属が動かなくてどうするのです?主である貴女が動かなければ眷属の皆さまも動くことはできないのですよ?」

 

冷たい言葉だが、フィルナさんの言葉はもっともな意見だ。

 

しかし、部長は顔を背けるだけだった。

 

「・・・・知らないわ」

 

部長の言葉を聞いたフィルナさんは深くため息を吐いた。

 

「はぁ、イッセーさまも可哀想に。こんなくだらない人に惚れているなんて。憐れ、としか言いようがありませんね」

 

―――ッ!

 

その言葉に僕は苛立ちを覚えた。大切な主であるリアス部長と親友のイッセーくんを侮辱されたんだ。少なくともキミがバカにしていい人たちじゃない・・・・ッ!

 

僕はそのことを言おうとする前に部長が枕を投げて激高する。

 

「彼がいない世界なんてッ!イッセーがいない世界なんてもうどうでもいいのよッ!・・・・私にとって彼は、あのヒトは・・・誰よりも大切なものだった。あのヒト無しで生きるなんて私には・・・」

 

涙を浮かべながらフィルナさんを睨む。

 

「だいたい、貴女に私の何がわかるの!?大切な人を失っていない貴女に何も言われたくないわ!ここから出てって!」

 

激高する部長。だけどフィルナさんは冷静に言い返した。

 

「その程度だったのですね?」

 

「え?」

 

「貴女がイッセーさまを愛する想いはその程度だったのですね」

 

フィルナさんは真剣な表情で部長に問いかけた。

 

「確かに好きな人が、愛する人がいなくなるのは辛い・・・ですが、貴女はここで立ち止まってていいのですか?」

 

謎の問いかけに僕も部長もただ黙って聞いた。

 

「イッセーさまは今まで誰の為に戦ってきたのですか?誰の為に前へ出たのですか?貴女の為ではないんですか?惚れた女を、好きな女を、愛する貴女の為に、あの方は兵藤一誠はどんな時でも立ち上がれたのではないのですか?」

 

フィルナさんは部屋にあるテレビの電源を入れると首都の様子が映し出されていた。避難が続く状況だった。そのなかでレポーターの女性が一人の子供に尋ねた。

 

『僕、怖くない?』

 

レポーターの質問に子供は笑顔で答える。

 

『へいきだよ!だって、あんなモンスター、おっぱいドラゴンがきてたおしてくれるもん!』

 

―――っ。

 

満面の笑顔で応える子供。手には――――『おっぱいドラゴン』を模した人形が握られていた。

 

画面の端から元気な顔と声が次々と現れていく。

 

『そうだよ!おっぱいドラゴンがたおしてくれるよ!』

 

『おっぱい!おっぱい!』

 

子供たちは不安な顔一つ見せず、ただただ『おっぱいドラゴン』が助けてくれるのを信じ切っていた。

 

『はやくきて!おっぱいドラゴン!』

 

ここでフィルナさんがテレビの電源を切った。

 

「ご覧になられたでしょう?今も子供たちはイッセーさまが来てくれると心から信じ切っています。そんなイッセーさまを信じ切っている子供たちを貴女は見捨てるのですか?今立ち上がらなくて何時立ち上がるのですか?」

 

フィルナさんは部長の肩に手を置き優しげな表情を浮かべる。

 

「イッセーさまはリアスさまを心から愛しているはずです。そんなにも愛してくれるイッセーさまを信じ切っているのは子供たちだけではないはずです。今こそ愛してくれる人の為に戦うべきではないのですか?」

 

それだけを言い残してフィルナさんは部屋から出ていこうとした時何かを思い出したのかそこで立ち止まった。

 

「そうでした。ショウからの伝言を忘れていました。お伝えします。イッセーは生きている。これは何の確証もない。だけど、俺はそう信じる。だ、そうです」

 

その言葉に僕も部長も目を見開き驚いた。仲間想いである彼がイッセーくんの死に動じるどころか死んでいないと信じ切っている。

 

「木場さま。先程ショウがどこにいるか尋ねましたよね?それにお答えします」

 

先程の話か。でも、彼がイッセーくんのことを信じ切っているのなら首都へと行っているかもしれない。

 

「ショウはアザゼル総督さまと共に冥府―――ハーデス神殿へと向かいました」

 

その言葉に僕は一瞬言葉を失った。

 

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