Sideフィルナ
「朱乃副部長、フィルナ。頼みがある」
魔獣騒動から数日が経ち私たちはいつもの日常を過ごしているなかで突然ゼノヴィアさまが私と朱乃さまに頼みごとをしてきました。
「あらあら、どうしましたか?ゼノヴィアちゃん」
いつもの笑みを浮かばせながら尋ねる朱乃さまにゼノヴィアさまは口を開きました。
「私に家事を教えてはくれないだろうか?」
「なるほど、花嫁修業ですね」
ゼノヴィアさまの言葉に私は一瞬で納得できました。
「確かにゼノヴィアさまは元教会関係者のせいでもありますが家事が壊滅的ですからね」
教会のそれも
「フィルナの言うとおり、私は壊滅的と言っていいほど家事が出来ない。それに比べショウは男なのにあれほど家事が出来る。これでは将来ショウに負担を掛けてしまう」
ええ、ショウは完璧です。掃除、洗濯、炊事、何を取っても必要以上にこなしてしまう。女のプライドを壊してしまうくらい完璧です。ショウが女性だったら間違いなくお嫁さんにしたい人No1でしょう。今日の料理もとてもおいしかったですし。
ちなみに現在ショウはレイヴェルさまと一緒に後片付けをしております。
「だからこそ、今から少しでも家事が出来るようにしておきたいんだ。最低でも将来生まれてくる子供に恥ずかしくないぐらいはできるようになっておきたい」
誰の子供とは聞かなくてもわかりますが、ゼノヴィアさまの言うとおりですね。
朱乃さまはゼノヴィアさまの手を取り笑顔で了承しました。
「ゼノヴィアちゃんのお気持ちはよくわかりますわ。同じ女として一緒に頑張りましょう」
「私も協力させてもらいます。少しでも女子力を上げたいという気持ちは痛いほど理解できます」
「ありがとう。朱乃副部長、フィルナ」
「それでは次の休日にでも始めますか?その日はショウにはどこかに出かけていただきその間に私達はゼノヴィアさまに家事を教えましょう」
「それがいいですわね。小猫ちゃんたちにショウをどこかに連れていって貰って」
次に休日のことを話しあっていると台所からショウとレイヴェルさまが顔を出してきました。
「洗い物終わり。手伝ってくれてありがとう、レイヴェル」
「いいえ、あれぐらいのお手伝いは当然のことですわ。ショウさまはお休みくださいまし、掃除は私がしておきますわ」
「いつもありがとう。レイヴェルはいいお嫁さんになれるな」
レイヴェルさまの頭を撫でながら言うショウにレイヴェルさまは何とも言えない表情をしながら撫でられていました。
ショウ。貴方が鈍感なのはもう何も言いませんが少しは気づいてあげてください。ここに住んでいる人たちは皆、貴方の事が好きなんですよ。
「「「「はぁ~」」」」
私、朱乃さま、ゼノヴィアさま、レイヴェルさまは大きなため息を吐きました。
まぁ、そんな鈍感なショウだからこそ好きになったんですがね・・・・・。
次の日の休日
「じゃ、いってくる」
「・・・・いってきます」
「いってくるにゃ~」
「いってまいります」
ショウ、小猫さま、黒歌さま、レイヴェルさまはショウと一緒に朝からどこかへ、いえ、デートにロスヴァイセさまは教師として学園へ行かれました。
「小猫さん!私にもショウさまの腕に掴ませてください!いつもショウさまの膝の上にいるのですから!」
「・・・・やだ。膝も腕も私のもの」
「にゃはは。それじゃあ私は反対側をいただくにゃん。どう?ショウ、私たちに挟まれた気持ちは?」
「・・・・ノーコメントで」
騒ぎながら仲良くデートに行かれました。今日の夜は甘えさせてもらいますよ、ショウ。
それにしても小猫さま、魔獣騒動後からやけにショウとのスキンシップが多くなりましたが・・・・いえ、ここに住んでいる女としてはわからなくもないですね。
「さて、それではゼノヴィアさまは洗濯物を洗えているでしょうか?」
ショウたちを見送っている間にゼノヴィアさまは朱乃さまから洗濯の仕方を習っています。
とはいえ、洗濯機に洗剤を入れてスイッチを押すだけ。後は干すだけですしいきなりここでミスをすることはないでしょう。
そう思いながら洗濯機のある洗面所のドアを開けると泡だらけの洗濯物が私の顔に直撃しました。
「あらあら・・・」
「うぅ、すまない、朱乃副部長・・・」
苦笑を浮かべる朱乃さまにしゅんとなっているゼノヴィアさまはもう全身が濡れて泡だらけ。私もですが・・・・。
「ですから、洗剤の量は決められた通りに言いましたのに」
「・・・・たくさん入れたほうが綺麗になると思ったんだ」
なるほど、洗剤を大量に入れたのですね。おかげで泡だらけですよ。下着まで濡れてしまいました。
「とりあえず、掃除をしてお風呂に入りましょうか。続きはそれからのほうがいいでしょう」
泡だらけになった洗面所を掃除して私たちは濡れた服を洗濯してお風呂に入りました。
「それでは先にシャワーをお借りしますわね」
シャワーを浴びる朱乃さま。いつ見ても綺麗な黒髪で羨ましいです。ですが、一番羨ましいのはその女性の象徴と言えるものが朱乃さまが動くたびに揺れるところです。
大きいだけでなく形もいいなんて・・・いえ、ショウはイッセーさまのように巨乳好きではないはず。私だって大きさでは若干ゼノヴィアさまには負けますが形には自信があります。負けませんよ。
ライバル心を燃やしながら私たちは順番にシャワーで泡を落としていき洗濯物を干して次の段階に進むことことが出来ました。
「それでは次に掃除に参りましょう」
というわけでショウの部屋に到着しました。
ふふ、掃除という大義名分がありますし、万が一エッチな本などが見つかっても不可抗力ですよね。隅の隅まで探、掃除してあげませんと。
「まずは掃除機を使いましょうか」
「ああ」
ゼノヴィアさまが掃除のスイッチを入れますが何故か動きませんでした。
「何故動かない?」
何度もスイッチを入れますが何故か動く気配はありません。
おかしいですね。確かにコンセントにもささっていますし、壊れているのでしょうか?
「あ、そういえば前にショウが掃除機の調子が悪い時があるから注意してほしいと言っていましたわ。その時は軽く掃除機を叩けば動くそうです」
思い出したかのように教えて下さる朱乃さま。
「なんだ、叩けばいいのか。なら、任せてくれ」
掃除機の前にしゃがみ手を振り上げるゼノヴィアさまに渡しは嫌な予感しかしませんでした。
「ハッ!」
掃除機に手刀を入れるゼノヴィアさまですが掃除機は見事なまでに真っ二つになりました。
予感が的中しました。というか、ゼノヴィアさまも軽くでいいんですからそんなに気合を入れなくてもいいですのに。そのせいか薄らと手に魔力がこもってましたよ。
私と朱乃さまはもう苦笑するしかありませんでした。
とりあえずショウに掃除機を買ってくるようにメールをしておきましょうか。
掃除機を片付け、簡単に物の整理だけで掃除は終えました。
「それでは、最後に料理を作りましょうか」
料理。女としてしっかりと出来るようになりたいもの。私もいつかショウに美味しいものを食べてもらいたくて一生懸命練習しましたよ。ここはゼノヴィアさまにも出来るようになって欲しいです。
ですが、大変申し訳ないとは思いますがあらかじめキッチンには防御用の魔法を仕掛けさせていただきました。
爆発は怖いですからね。それに、万が一のことも考えさせてもらいますよ。
「ゼノヴィアちゃん。何か作りたいものはありますか?」
「そうだな、まずは簡単な物から作っていきたい」
「そうですね。でしたら丁度材料もありますからカレーライスを作りましょうか」
カレーライスでしたら基本的に食材を切って煮てルーを入れるくらいですし、そこまで凝ったものは作る必要もないですから大丈夫・・・・ですよね?
「では、ゼノヴィアちゃん。まずは食材を切っていきましょう」
「ああ、斬るのなら任せてくれ!」
ゼノヴィアさまは人参を空中に放り投げ手に包丁を持って空中で人参を一口サイズに斬ることが出来ました。ですが・・・。
「ゼノヴィアちゃん。ちゃんとヘタを切って人参の皮を剥かなければいけませんわ」
「それとわざわざ空中で切る必要もありません。ゆっくり確実に行きましょう」
「うぅ、はい・・・」
それからは大変でした・・・・・・・。
「ああああああああああああっ!!目が!目がああああああああっ!!」
「落ち着いてください!包丁を離して!目を洗ってください!きゃ!急に包丁を放り投げないで下さいよ!」
玉ねぎを切って暴れて
「ゼノヴィアちゃん!どうしてお酒を持って!?え、隠し味?それはいりませんわ!」
隠し味として鍋にお酒を入れようとするゼノヴィアさまを止めたり
「ゼノヴィアさま!その大量の唐辛子はどこから!?え、カレーは辛いのは当然?それはそうですがそれでは辛すぎて誰も食べません!ラー油も必要ありません!」
どこからか大量の唐辛子を鍋の中に入れようとしたり
「ルーを入れすぎですわ!少しでいいんです!」
何パックもルーを入れたり、もう滅茶苦茶です。
料理を教えるって難しいと私と朱乃さまは痛感しました。そして、数時間後にようやくカレーが完成しました。
「お、終わった・・・・」
「終わりましたね・・・」
「終わりましたわ・・・」
身体の所々にカレーをつけながらようやくカレーが完成しましたよ。苦戦の数時間でした。
ですが、そのかいもあり、ちゃんとしたカレーが完成しました。味見もしましたし、問題ありません。爆発もありませんでしたし、私たちの体が少しカレー臭いことを除けば問題はないでしょう。
「ただいま。あ、本当だ、小猫ちゃんの言った通りカレーだ」
丁度、ショウたちも帰ってきました。せっかくですし作りたてのゼノヴィアさまのカレーをごちそうしましょう。
「今日はゼノヴィアちゃんが作りましたカレーですわ」
「ゼノヴィアが。そうか、ならさっそく一口」
ショウがスプーンでカレーを掬い上げてそれを口の中に入れ、ゼノヴィアさまは強張った表情で見守っていました。
好きな人の為に作った料理が好きな人の好みかは食べてみませんとわかりませんですからね。
「うん、おいしいよ。ゼノヴィア」
「っ!?そうか!やった!やったぞ!フィルナ!朱乃副部長!二人のおかげだ!ありがとう!」
「あらあら」
感動のあまり私と朱乃さまに抱きついてくるゼノヴィアさま。
ふぅ、頑張ったかいがありましたよ。でも、次からはリアスさまも連れて来た方がいいかもしれませんね。
「・・・・・・ところで」
喜んでいるゼノヴィアさまにショウは申し訳なさそうに言ってきました。
「ご飯は?」
「「「あっ」」」
わ、忘れていました・・・・・。ゼノヴィアさまのカレー作りに気を遣いすぎてごはんの方まで気が回りませんでした・・・・・。これでは、カレーライスではなくてただのカレーです。
「す、すまない、ショウ。やはり、私は家事一つできない女なんだ・・・・」
落ちこんでしまうゼノヴィアさま。
まぁ、カレー作るのにに集中しずきた私たちにも責任もあるんですけどね。
落ちこんでいるゼノヴィアさまにショウは頭を撫でながら言いました。
「最初から出来る奴やんてそうはいないよ。ゼノヴィアはやればできるんだから根気強く行けばいつか出来るようになるから一緒に頑張ろう」
「・・・・ああ、頑張るよ」
元気を取り戻すゼノヴィアさまを見て、私は、いえ、私たちは羨ましく思えました。
好きな人に優しくされたいのは恋する乙女として当然です。私も朱乃さまも頑張ったのですから後で絶対に甘えさせてもらいますよ。
ですがその前に・・・・・。
染み付いたカレーの匂いを落とすべく私たちはもう一度お風呂へと向かいました。
鈍感なところも優しいところも私は好きですがもう少しショウには乙女心が分かって欲しいですね。無理な願いでしょうけど・・・・はぁ~。
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