Sideショウ
「もふもふ……」
「もふもふです………」
いつもの部室で小猫ちゃんとギャスパーは犬を抱きしめて存分にもふもふしている。
その気持ちはおおいにわかる。
綺麗な毛並みをした犬がいれば存分に触りたいという気持ちは俺にもわかる。
近くにいるアーシア達も触りたそうにそわそわとしている。
しかし、満喫している小猫ちゃんに気を遣って遠慮しているのだろう。
「クゥ~ン……」
しかし、犬の口から出たのは悲しい気持ちが込められた切ない声、というか俺の声だ。
「よしよし」
頭を撫でてくる小猫ちゃん。
俺は今、犬になっている。
吾輩は犬である。犬になってしまったのである。
チラリと視線を部室の隅で部長さんと朱乃の前で正座させられているアザゼル先生に向けるが、先生は反省も後悔もないような満面な笑みで親指を立てた。
「ワオンッ!」
「………この野郎、反省も後悔もないのか。だそうです」
通訳ありがとう、小猫ちゃん。
元々が猫の妖怪ということもあるのか動物の言葉がわかる小猫ちゃんが通訳してくれる。
「俺の辞書に反省の文字はねえからな」
「反省なさい!」
「あらあら、どうしましょうか? この堕天使の監督は」
ハリセンで先生の頭を叩く部長さんにニコニコ笑顔で指先から雷光を迸らせる朱乃。
「ガルルル……」
「噛みつくぞ。だそうです」
何故、こうなったかというとその原因はいつもの先生の実験に巻き込まれたからだ。
俺達二年生はいつものように部室に向かっている途中に俺は変な液体を頭から浴びた。
最初は水だと思った俺だったが、気が付けば犬へと姿が変わっていた。
俺もイッセーたちも戸惑うなかで頭上、化学準備室から先生とフィルがいた。
俺が浴びた液体は先生の技術とフィルの魔法で作り上げた魔法液らしく、飲めば体を変貌することができるそうだが、実験途中で先生がどういうことかうっかりと手が滑ったらしい。
絶対嘘だ………。俺達の、俺かイッセーのどちらかに実験しようと企んでいたんだ。
現在、フィルとロスヴァイセさんの魔法使いの二人組が解毒剤をつくってくれている。
というより、フィルの奴はどうしてこんな魔法液を作ろうと考えていたのかその理由を後で問い出さないと。
まぁ、その前にすることがあるか………。
「クゥゥン、クゥン……ワン」
「………朱乃、その堕天使のお仕置きよろしく。だそうです」
「ええ、お任せくださいな」
すっごい良い笑顔で了承してくれた朱乃の迫力に後ずさりする先生だが、知った事か!
朱乃のお仕置きの怖さをお前も味わえ、先生!
先生の首根っこを持ってどこかへ連行していく朱乃に最後の先生の青ざめた表情を見て少しだけスカッとした。
ざまあみろ! クククククク………。
「あくどいです、先輩」
どうやら顔に出ていたらしく小猫ちゃんに注意された。
二人を呆れながら見送った部長さんが俺の頭を撫でてくる。
「それにしてもこれはこれで可愛いわね、うちで飼えないかしら?」
「クゥゥン! キャン!」
「……それは勘弁してください。だそうです」
姿は犬でも心は立派な人間のままなのでやめてくださいよ、部長さん!!
「ワン、ワワン………」
「というよりもこういうのはイッセーなのにどうして俺なんだ? だそうです」
「何で俺なんだよ!?」
だってそういう星の下で産まれてきたようなものだろう、お前は。
運悪く巻き込まれた俺の身にもなってくれ。
ああ、速く人に戻りたい………。
嘆く俺に部長さんがつついてくる。
「ねぇ、ショウ。せっかくなんだしお散歩にいかないかしら?」
どこからか犬の首輪とリードを取り出した部長さんが笑顔でとんでもないことを言ってきた。
「ワン!!」
「……嫌です。だそうです」
その首輪だけは意地でも付けないぞ!!
「いいじゃない。せっかくなんだし、ちゃんと面倒見るわ」
「ワワン!」
「………そういう問題じゃないです。だそうです」
毎度毎度通訳ありがとう! 小猫ちゃん!
グルルと唸りながら抵抗の意思を見せる俺に部長さんはじりじりと迫ってくる。
そんなに犬の散歩がしたいのなら買ってください! それかイッセーを犬にでもしてください! そういうプレイならイッセーなら引き受けてくれると思いますから!!
「ちょっと、ちょっとだけでいいから!」
必死におねだりしてくる部長さんはとっても可愛いが、首を横に振る。
可愛いから全てが許されると思うなよ、部長さん!
「…………仕方ないわね、イッセー! ショウを捕まえなさい!」
「え!? い、いいんですか!?」
「私が許すわ」
「ワォォォオオオオオオオオオンッッ!!」
「………どうして部長さんが許すんですか。だそうです」
我儘全開な部長さんから逃れる為に俺は二人を振りほどいて逃走を試みる。
瞬時に四足歩行を会得して俺は部室の扉へ向かって駆け出す。
「ちょっと待った、ショウ! 悪いが捕まえさせてもらうぞ!!」
「ワオン!!」
この野郎! めっちゃいい顔で捕まえに来やがって!
日頃の恨みをそんなにも晴らしたいのか!?
反省文も説教もお前の自業自得だろうが!!
「
イッセーの言う通り、今の俺には
この魔法液を浴びたせいだろうが、今の俺の身体能力も普通の犬と同じだ。
人間よりも身体能力が高い悪魔で、更にはドラゴンであるイッセーなら容易に俺を捕まえることが出来るだろう。
だが、俺を甘くみるな!!
正面に魔法陣を展開させて障壁の魔法を展開させる。
「な、うぶっ!!」
突然の障壁魔法に衝突して奇声を上げて倒れるイッセーの隙をついて俺は逃亡に成功。
これから先にある魔法使いとの契約のこともあり、魔法にも手を出しといたのが功を奏した。
部室から飛び出した俺は急いで安全な場所まで逃げおおせてみせる。
とりあえずはフィル達が解毒剤を完成してくれるまで―――――ッ
「キャッウン!!」
突然の強烈な異臭に鼻が曲がりそうになった。
嗅覚も犬と同じという訳だろうが、この異様な匂いはなんだ!?
「ショウ! 見つけましたよ!!」
駆け寄ってくるフィルとロスヴァイセさん。
そしてフィルの手には異様な色合いを見せる液体が入ったフラスコを持っていた。
「さぁ、解毒剤です!!」
俺は何の躊躇いもなく明後日の方向に全力で駆け出した。
そんなもの飲んだら死んでしまう!!
最後は全員に捕まってその解毒剤を無理矢理飲まされて死にかけた。
Sideout