ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
ここは魔法の森の最深部。ここまで来てもまだところどころ草木が凍っている様子だった。
魔理沙とパラガスは唸り声の元凶を探してここまで走ってきたがなかなかそれを見つけることが出来ないでいた。
「くそっ!どこにいるんだよ!」
「魔理沙。お前たちが言う、魔力とやらは感じられんのか?」
「わからない……なんというか、魔力に近い何かは感じる。でも出どころがわからないんだ。そっちこそ、あの気とかいうやつは感じないのか?」
「先程から探ってはいるのだが、お前と一緒で出どころがわからん。それにどこか異質だ。」
「異質?」
「ああ、そうだ。この気……生気をまるで感じないのだ。」
「……じゃあ、幽霊だとでもいうのかよ?」
「わからん。ただ相手は得体の知れん化物だということだ。……不用意に突っ込むのは危険かもしれんぞ。」
「わかってる。……アリスが負けたかもしれない相手だ。パラガスも油断するなよな。」
「ああ。足を引っ張らぬよう気をつけるとしよう。」
二人は唸り声の主について話ながら足を進める。すると魔理沙が何かを見つけた。
「パラガス、あの奥……!」
魔理沙が指差す場所を見ると木々の隙間から動く物体を見つけた。
「氷が動いている…?」
パラガスが言ったようにそこに見えたのは氷の塊だった。その氷塊はゆっくりと森の中を移動している。それを隠れて観察していた二人だったがそこに氷塊から突然形を変えて鋭い爪となって魔理沙を襲ってきた。
「え?」
「魔理沙!!」
氷塊の爪があと少しのところまできたその瞬間、パラガスは魔理沙を突き飛ばし襲い来る氷塊の爪を左腕で受け止めた。
「パラガス!」
「ぬうう……!ハア!!」
パラガスは受け止めた爪を力任せに弾き飛ばし、突き飛ばした魔理沙を抱えてその爪から大きく距離を取った。
「わ、わりい。助かった……ってパラガス!おまえその腕……!」
パラガスの左腕は先の氷塊の爪によって大量の血が流れていた。その血の量に魔理沙は顔を青くした。
「……気にすることはない。それよりも戦闘準備に入れ。ついに姿を見せるぞ。」
先ほどの氷の爪の周りに強い様々な気が混ざり合い、人型になっていく。そして5メートルはあろう巨大な氷の化物が完成した。鋭い爪。獣のような牙が生えた大きな口。
厳つい体つきという、どこか獣に近い姿に変貌したそれを見て魔理沙は小さく息を飲み込んだ。
「はは……そうか。あの爪、あの体つき、そしてあの尋常じゃない冷気!あいつがアリスをやりやがったのか……!!」
魔理沙は立ち上がり敵を睨みつけ、持ってきた箒を握り締めた。
「氷の魔人といったところか。……魔理沙。いけるな?」
「当たり前だぜ!」
「グォオオオオオ!!」
氷の魔人の大気を揺らすほどの雄叫びによって闘いの火蓋は切って落とされた。
「くらえ!」 星符『メテオニックシャワー』
魔理沙は両手から星型の魔法を大量に氷の魔人へ飛ばした。スペルは氷の魔人に直撃し激しい轟音が鳴り響く。
「デッドパニッシャー!」
そこにパラガスが右手で緑色のエネルギー弾を追撃として放つ。その攻撃も氷の魔人は避ける素振りもなく受け止め、再び森に轟音が鳴り響いた。
だが爆風の中から現れた氷の魔人はまったくの無傷であった。
「グォオオオオオ!!」
「ぬう……ダメージは無しか……!」
「じゃあこれはどうだ!」 恋符『マスタースパーク』
魔理沙は取り出した八卦炉に魔力をため、氷の魔人へ解き放った。さすがの巨体もこの超火力によって吹き飛ばされ、木々をへし折って岩山に激突した。
「私の最高クラスのスペルだ。これをくらって無事だったやつなんてそうそういないぜ……!」
岩山に減り込んだまま、氷の魔人は大きく口を開けた。
「……いやまだだ!構えろ魔理沙!!」
すると氷の魔人の口から特大のエネルギー波が飛び出した。
「くっ!!」
二人は紙一重でそのエネルギー波をかわすと、そのエネルギー波が通過した森が一瞬にして氷漬けになった。
「あっぶねえ……っ!」
「次がくるぞ!気を抜くな!!」
氷の魔人は首を激しく曲げ続けながら、がむしゃらに口からエネルギー波を連発し続ける。その度に森が氷漬けになっていった。
二人は何とかそのエネルギー波をかわして空へと飛びあがった。
「はぁ……はぁ……!なるほど、森が氷結したのはこの技が原因か……!」
「はぁ……はぁ……くそっ!私のマスタースパークでさえ対して効いてないってのかよ……!」
「いや……間違いなく効いている。だが決定打にはなっておらん。あいつの外側の硬さは異常だ。……やつの体の内側に超高火力の攻撃を当てられればあるいは……。」
「……内側か…。だったら私に考えがある。パラガス。少しの間だけ時間稼ぎを頼めないか?」
「いいだろう。やってやろうではないか。一分あれば足りるか?」
「ああ十分だ。頼んだぜ。」
小さく頷いたパラガスはそのまま氷の魔人に向かって右手に気を込めながら飛んで行った。
「グォオオオオオオ!!」
雄叫びをあげる氷の魔人の足元が鈍く光ると、地面から緑色のエネルギー弾が大爆発を起こす。それによって岩山の一部は崩れ、氷の魔人がよろける。
「吹き飛べ!」
その隙を逃さず、パラガスは強烈なエネルギー波によって氷の魔人を吹き飛ばした。
「集まれ、私のありったけの魔力……!」
パラガスの時間稼ぎが始まった瞬間、魔理沙は八卦炉に魔力を溜め始めた。
「グォオオオオオオ!!」
氷の魔人はパラガス一人に狙いを定め、巨体とは思えないスピードでパラガスへ襲いかかった。
激しい攻撃の乱舞をパラガスはなんとかかわし続け、隙あらば氷の魔人を殴りつけ、蹴りつけ、がむしゃらに攻撃を繰り返すも、あまりの強度に傷一つつけられない。
「ぐぐっ、ハア!」
「グォオオオ!!」
パらガスは一度距離を取るため、氷の魔人の顔に目掛けてエネルギー弾をぶつけて後ろへさがり息を整える。
「はぁ……はぁ……。ふん、サイヤ人であるオレが手も足も出んとは情けない話だ……。」
左腕に鋭い痛みが走る。魔理沙には気にするなと言ったその傷は想像以上に深いものだった。
現にパラガスはこの闘いで左腕は一切使っていない。痛みを堪えての闘いはパラガスの予想以上に自らの体力を激しく削っていった。
「オレの体も限界……か。だが、最後まで足掻かせてもらうとしよう。」
「グォオオオオオ!!」
氷の魔人はパラガスに向けて口からエネルギー波を放った。
「ハァアアア!!」
そのエネルギー波にパラガスは正面から持てる全ての力を込めたエネルギー波でそれを相殺させた。自らのエネルギー波が相殺されたとに気づいた氷の魔人は即座に次を打ち込もうと口を開ける。だがパラガスはその場から動かなかった。なぜなら__
「頼んだぞ!魔理沙!!」
「任せとけ!!」
__時間稼ぎはもう終わったのだから。
「いくぞおおおおお!!」 『ブレイジングスター』
魔理沙は箒に乗ったまま自分の後方へ向けてマスタースパークを放ち、その勢いを推進力に変えて超光速で氷の魔人の胸部に激突する。
あまりの勢いに圧倒的な強度を誇る氷の魔人の胸部に小さな穴が開く。
その小さな穴に魔理沙は八卦炉をブチ込んだ。
「くたばっちまえ!!」 魔砲『ファイナルスパーク』
氷の魔人の胸部に手を突っ込んだまま、魔理沙はとっておきの切り札を放った。
マスタースパークをも遥かに上回る光線を直接内部で炸裂された氷の魔人は、これに耐えることができず大爆発と共に砕け散った。
だが、魔理沙自身も至近距離の爆発によって、右手に大怪我を負い。空を舞った。
「魔理沙!!」
痛む体を押さえつけパラガスは落ちてくる魔理沙をしっかりと受け止めた。
「……へへ、ちょっと無理しちまったけど……勝ったぜ……。」
魔理沙はゆっくり目を開き、弱々しくも喜びに満ちた声でそういった。
「あまり無理をするな。寿命が縮まる。」
「……それはお互い様だぜ。」
二人は先ほどまで氷の魔人がいた場所を見つめる。魔人の体はすでに砕け散っており、氷が霧状になって宙を舞っている。
「……これで、アリスの仇は取れたよな……。」
「……そうだな。これで__。」
すると突然二人の周りからいくつもの重低音が鳴り響いた。
「「!?」」
「「「グォオオオオオオ!!!」」」
聞き覚えのある嫌な雄たけびを轟かせ、二人をぐるりと囲むように十体近くの氷の魔人が現れた。
「ば…馬鹿な……っ!!」
「そんな……一体でもこのザマだってのに……こんなにっ!」
あまりに絶望的な状況。魔人たちは一斉に二人に襲いかかる。それをパラガスは魔理沙を抱えたままなんとかこの場から逃げようとする。
だが氷の魔人たちはそれを許さない。たくさんの手がパラガスと魔理沙を鷲掴みにした。
「ぐ……!もはやここまでか……っ!!」
どうしようもない状況に覚悟を決めるパラガスと魔理沙だった。氷の魔人が腕に力を込め始めたその時。
「激烈光弾!!」
「「「グォオオオオオ!!」」」
巨大なエネルギー弾がパラガスたちの上を通り過ぎ、数体の魔人を一撃で葬り去った。予想外の出来事に二人は目を見開いている。
「パラガス!無事か!」
「魔理沙さんも大丈夫ですか!?」
二人の窮地を救ったのはあちこち傷だらけになったピッコロと早苗だった。