ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
ホウレンが到着してからも悟空はフランのために魔人たちと闘い続けていた。
魔人たちはアスイの変身に呼応して更に力を増し始めた。
「あいつらからすげえ力を感じる。あいつが変身したせいか?こりゃオラも油断できねえな。」
改めて気合を入れなおす悟空にパチュリーの魔人が攻撃を仕掛けてきた。
パチュリーの魔人は体から先ほどまでとは桁違いの氷弾を生み出すとそのまま悟空目掛けて飛ばしてきた。
「だりゃりゃりゃりゃ!」
だが悟空はその氷弾を片っ端から叩き落してパチュリーの魔人まで一気に距離を詰めて壊れない程度に蹴り飛ばす。
すると今度は咲夜の魔人が軽快な動きで悟空に忍び寄りそのまま悟空を殴りつけた。
「くっ!ハァアアーー!!」
悟空は咲夜の魔人の攻撃を受け止めつつ、その腕を掴んで近くにいた小悪魔の魔人を巻き込みながら咲夜の魔人を投げ飛ばした。
「「グォオオオオオ!!」」
そこにレミリアの魔人が槍を構えながら上空から突進、霊夢の魔人が地上から悟空目掛けて超スピードで襲い掛かる。
悟空はそれをギリギリまで引き付けてからその攻撃をかわすことによって魔人たちがお互いにぶつり、そのまま左右に吹き飛んだ。
そして悟空は空中で体を回転させながら美鈴の魔人の目の前に着地した。
「今度は美鈴か……。よし、かかってこい!」
「グォオオオオ!!」
「悟空!魔人たちを私のところに引き寄せて!!」
美鈴の魔人が悟空に襲い掛かったその時、フランが大声で叫んだ。ようやくフランが魔力を集中させ終えたのだ。
それを聞いた悟空は待ってましたといった顔で瞬間移動を使いフランの後ろに移動する。
急に消えた悟空に辺りを見渡す魔人たちだったが、悟空の姿を見つけると一斉にフランの元へ集まってきた。
「「「グォオオオオオ!!」」」
「お姉さま……みんな……今助けてあげるからね……!!」
フランが手を突き出した手を握り締めると魔人たちに集中させた魔力が一気に膨れ上がり、魔人たちの体の中から紅い光が溢れ始めた。
「これが私の特訓の成果……!お姉さまたちを覆った氷なんて……みんなみんな、壊れちゃえええーー!!」
フランが叫んだその瞬間、溢れ出た紅い光が魔人たちの体を覆い、眩い光を放った。
「「「グォオオオ……オ……オ……。」」」
次の瞬間、レミリアたちを覆っていた氷が一斉に弾け飛び粉々になった。フランは自身の能力を使いこなし見事レミリアたちを救うことに成功したのだ。
氷から解放されたレミリアたちはその場に倒れこんだ。それを見たフランはすぐにレミリアの元へ駆け寄った。
「お姉さま!お姉さま、目を開けてっ!!」
「……フラ…ン……?」
「お姉さま?生きてる?生きててくれてるよね!?」
「……ふふ。大丈夫……私は生きてるわよ。貴方のおかげでね……フラン。」
「!!……お姉さま、なんで……?」
「……氷の中に囚われている中、貴方の声が聞こえてきたわ。……私たちを助けるって。」
「お姉さま……その……私!」
「ごめんさい、フラン。」
「え?」
「本当は貴方を外に出してあげたかった……。でも私は貴方のことを心配しすぎてそれを拒み続けた。……貴方の力を信じきれてなかったのは誰でもない、私自身だったのよ……。でも現実は違った。貴方は能力を使いこなし、運命すら乗り越えて悟空と一緒に私たちを救って見せた。」
フランはレミリアの言葉を聞き逃さないように涙を堪えて黙って聞き続けた。
「……フラン。強くなったわね……。もう貴方は一人前の吸血鬼よ。これからは自由に好きなことをして生きなさい。……もう貴方を縛る者はいないわ。」
その言葉を聞いた瞬間、涙を堪えきれなくなったフランはボロボロと大粒の涙を零した。
「……ちが…うのっ!私、は……ずっと、お屋敷から…逃げちゃったことを…謝りたくて……っ!」
「……そんなこと……もういいのよ?」
「よく、ないよ……っ!お願い…私にもお姉さまに謝らせて……っ!お姉さまばっかり言いたいことを言って……ずるいよ……っ!」
「仕方ない子ね……。いいわ……聞いてあげる。」
「ごめん、なさい……っ!お姉さまは…私のことを思って……!止めて…くれてたのに……っ!私は、自分勝手なことばっかりで……っ!お姉さまの…っ気持ち…なんて、考えたこともなかった……っ!本当に……ごめんなさい……っ!!」
「……フフ。いいわ……許す。」
笑顔で答えたレミリアにフランはギリギリで抑え込んでいた感情が一気に溢れ出した。
「うう……うわぁあああん!!ごめんなさい!ごめんなさいぃぃ!!」
レミリアは自分の胸に顔をうずめて泣き続けるフランの頭を優しくなで続けた。
吸血鬼姉妹の喧嘩はお互いの心からの謝罪によって無事に解消されたのだった。
「……ホウレン、後は任せたぞ。おめえがこの闘いに決着をつけるんだ。」
悟空は遠くにいるホウレンに闘いの行く末を託し、倒れた仲間たちの元へ歩き出した。
そしてその頃、ホウレンとアスイは互いに力を解放したまま睨みあっていた。緊迫した睨み合いの中、今まで無表情をつらぬいていたアスイは楽しそうに口元を緩めた。
「……やはりこの世界に来てよかった。こんな緊迫感はあの男と闘って以来初めてだ……!」
「誰のことを言ってんだか知らねえけど、随分余裕じゃねーか。」
「……余裕?違うな。俺はただ楽しいだけだ。……さあ、もっと俺を楽しませてくれ……!」
「おまえを楽しませてやる義理はねーけど、前よりはずっと闘えるぜ?死んでも恨むなよ……悪いが今俺は手加減してやれそうにねえ……!」
「……それでいい。そうでなければ面白くない!……話はここまでだ。いくぞ!」
アスイはホウレンの間合いに一瞬で踏み込み、氷で創られた二本の長剣で斬りつけてきた。
ホウレンはその長剣をどちらも最小限の動きでかわしてアスイの腹を殴りつけた。
「ごふっ!!」
「ハァアアアアー!!」
アスイは重たい一撃を踏ん張って耐えようとするも敵わずに後方へ吹き飛んだ。
「……今の俺に触ったな?」
「?それがどうした。」
「……俺を殴りつけた手……よく見てみるといい。」
「!!」
ホウレンはすぐに自分の右手を見るとその手は完全に氷で覆われていた。
「……俺の凍零白呑装束は触れたあらゆるものを瞬時に凍らせる……!……例えそれがエネルギーであろうと煮えたぎるマグマであろうと関係ない。……おまえの右手はもう使えんぞ!」
「……そうかよ。」
その瞬間、ホウレンの姿が消えて凍ったはずの右手でアスイを殴り飛ばした。アスイはそれに驚き、体勢を整えながらホウレンの右手を見た。
すると凍っていたはずのホウレンの右手は元に戻っていた。
「……なんだと……!?……なぜ凍ったはずの手が元に戻っているんだ!!」
「ここに来るまでの間、俺なりにおまえへの対策を考えてみたんだ。」
「……対策だと?」
「そうだ。それがこれだ……!」
ホウレンが体に気を込めるとぼんやりとホウレンの体の周りに薄い気の膜が出来ていた。
「……まさか、気でバリアを張って凍結を防いだと言うのか……!?」
「そのまさかだよ。上手くいってくれてよかったぜ……。もしこれが失敗したら俺には打つ手がなかった。……おまえならもうわかっただろ?こうなった以上その技は意味がねえ。ここからはお互いの純粋な力と力のぶつかり合いといこうぜ……!!」
「……フ、フッフフフ。俺の切り札まで封じられたか……。……だが凍零白呑装束の能力は凍らせるだけではない!それをみせてやろう!」
二人は相手に向かって一直線に突進して、お互いの拳と長剣がぶつかり合った。
ホウレンはバリアを張ることによって武器による攻撃を体で受け止めることが可能になっていた。
アスイの目では追えないほどの剣舞がホウレンを襲う。ホウレンはなんとか拳で斬撃をいなしながらも体中に小さな切り傷を負っていった。
二人は何度も何度もぶつかり合いを続け、そのたびに辺りに強い衝撃が起こった。
その衝撃は離れて見ている妖夢たちにまで届いていた。
「す、すげえ衝撃だ……!ホウレンのやつ、霊夢と闘った時よりも実力が上がってないか!?」
「実力だけじゃない……雰囲気がいつもと違う。」
「雰囲気が違うってどういうこと?」
「ええと……ホウレンさんは闘っているときいつも優しい目をしているんです。たとえそれが真剣な闘いだとしてもその目はどこか優しい。……ですが今のホウレンさんの目は違うんです。なにか凄く強い怒りを感じる……。」
「そりゃそうだろ。あんだけ好き勝手に幻想郷で暴れて、更に自分まで氷漬けにされたら誰だって怒って当然だぜ。」
「そうなんですけど……でも違うんです。怒りの矛先が相手に対してじゃない……まるで自分を責めているようで……。」
妖夢の考えは正しかった。ホウレンはアスイに対しても怒りを感じてはいるものの、最も怒りを感じているのは不甲斐ない自分自身に対してだからだ。
だがそれを知っているのはホウレン本人だけ。そしてこれからも誰かが知ることはないのだろう。
「……ハァアアー!!」
アスイは長剣で挟むように左右からホウレンを斬りつけてきたがホウレンはそれを飛び上がって回避し、両足に気を集中させた。
「うらぁ!!」
「!!」
ホウレンはその両足でそのまま真下の長剣を勢いよく踏みつけて長剣を砕いて、がら空きになったアスイの顎を殴りつけ吹き飛ばす。
すぐさまホウレンは倒れるアスイの元へ走り出すがその瞬間、アスイが地面を氷漬けの状態に変えてしまい、ホウレンは氷に足を滑らせてバランスを崩してしまった。
そこにアスイはすかさずホウレンの周りを何層にもした氷の檻で閉じ込めた。
「いまさらこんなんで俺が止められるかよ!」
「……だろうな。だが数秒あれば十分だ……!」
アスイは空に向かって手を伸ばし、エネルギー弾を一発だけ放った。
ホウレンはすぐに檻を破壊して外に出ると上空の空だけが再び白く光り始めて何かが大量に降り注いできた。
「……さあ今度はどうする?」
ホウレンは落ちてくる物体をいくつかかわした。落ちてきていたのは氷でできた鋭くとがった槍のようなものだった。
「……俺の気で造り上げた氷の槍だ。……おまえのバリアなど簡単に貫いてやろう!」
「危ねぇもん落としやがって……!だけどな、まだ甘いんだよ!」
ホウレンは拳を空に突き出して気を集中させた。
「まとめて消えろ!ガーネットインパクト!!」
ホウレンは降り注ぐ氷の槍もろとも白く光る空を強力な気弾でかき消した。
白い光がかき消された空は再び薄暗い雲へと戻る。
「……どうだ。今の技も俺には通用しねえぞ。そろそろ諦めろ。」
「……諦めろだと?それは出来ない。……幻想郷の侵略は重要な任務だ。たとえこの体が壊れようとも……俺は任務は遂行しなくてはならない……!」
「任務……?おい、そりゃどういう__」
「……おぉおおおお!!」
ホウレンを無視してアスイは突然気を溜め始めてどんどん周りの冷気がアスイに集まっていった。
そしてアスイは右手にすべての冷気と力を集めた。
「……受けてみろ、これが俺の最後の力だ!」
アスイの右手には全てを込めた巨大な氷のガントレットが生成された。
離れて立っているのにもかかわらず、とてつもない気と冷気を感じ、さきほどまで余裕があったホウレンも固唾を飲む。
「いいぜ……!おまえの氷を俺が真正面から打ち砕いてやるよ!!はぁああああ!!」
ホウレンはアスイの全力に答えるべく、自らもまた右手に持てるすべての力を込めた。
強大なエネルギーに周りが耐えきれず地面にはひびが入った。
お互いのすべてを込めた最後のぶつかり合い。二人は同時に目の前の敵目掛けて走り出した。
「「ウォオオオオオオ!!!」」
そして次の瞬間二人の拳と拳がぶつかり合った。電撃のオーラを纏ったホウレンの拳と冷気を纏ったアスイのガントレット、二つの強大な力のぶつかり合いに地面がどんどん削れていき、陥没していった。
「……俺は負けられない!俺は……おまえを凍らせて、任務を達成しなければならないんだ!」
アスイは更に力を込めてホウレンを徐々に押し始める。
「……アスイ。わりいけど俺にも負けられねえ理由があるんだ。」
ホウレンから遠く離れた場所では魔理沙たちが腕に力を込めて応援してくれている。
そして妖夢はまるで願うように手を合わせて見守ってくれている。
それを感じて、ホウレンもまた更なる力を解放した。その力はアスイの限界よりもずっと上をいくものだった。
「だから、その任務とやらは諦めやがれ!」
「……俺が…押されている!?」
「この幻想郷は……俺が……俺たちが守り切ってみせる!!」
その時、ホウレンの拳がアスイのガントレットを打ち砕き、そのままアスイの顔面を殴りつけた。
「ぐぁあああああ!!」
アスイはそのまま陥没した地面の層に減り込み動かなくなった。
「悪いな……俺の勝ちだ……。」