ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
ホウレンはついに強敵アスイとの死闘に勝利して超サイヤ人を解いた。
それを見届けた魔理沙たちは一斉にホウレンの元へ駆け寄ってきた。
「ホウレン!あいつは!?死んだのか?」
「お体は大丈夫なんですか!?早く治療しないと!」
「というかどうやって氷から出てこれたんです!?永遠亭は大丈夫なんですか!?」
「おいおい落ち着けって……アスイなんだけどな。まだ生きてるよ。そうだろ?」
ホウレンが話しかけると掠れた声でアスイは笑った。
「……確かに生きている。だが装束を保つ力が無くなってしまってはもはや長くはないだろうな……。」
そういうアスイの胸からは血が流れ出ていた。装束が解けたことによって凍らせていた傷が解けてしまったのだ。
「最後に聞かせろ。任務ってのはなんのことだ?誰から頼まれて幻想郷を襲いやがったのか教えてくれ。」
「……残念だが教えられない。依頼者は教えない主義でね……。」
「そうかい。おっと、さっさとおまえを治療しねえと手遅れになっちまうな。話の続きはそれからにしよう……っておいおまえ!なにやってんだ!?」
アスイは最後の力を振り絞って自分自身を徐々に氷漬けにしていた。
「……治療は必要ない。俺はここで死ぬ。……最後に最高の緊迫感をくれたこと感謝する。」
「何言ってんだ!死ぬ必要なんてねえだろ!」
「……甘いな。俺とおまえの闘いは命を懸けたものだ。少なくとも俺はそう思っている。……負けたほうが命を失うのもまた道理。」
「それは……っ!」
「……凶悪な敵に対して情けは必要ない。甘いままでは守りたいものを守ることなど出来はしないんだ。……もしもこの先この世界を守るために闘い続けると言うのなら覚えておけ。」
アスイを覆う氷がついに顔まで迫ってきた。
アスイは最後にホウレンと遠くにいる悟空を交互に見ると、ゆっくり目を閉じた。
「……じゃあな。この世界のサイヤ人……。」
その言葉を最後にアスイは完全に氷に覆われて粉々に砕け散った。
「……あいつ、サイヤ人のことを知ってたのか。」
ホウレンの元へ魔理沙、鈴仙、早苗がやってくる。
「ホウレン、助かったぜ。ありがとな。」
「いやいいんだ。それよりおまえたちボロボロじゃねえの。大丈夫か?」
「あまり大丈夫ではないですかね……。もしかしたら骨にひびが入ってるかもしれませんし……。」
「奇跡の力で治せねえの?」
「いや……どうなんでしょうね?試したことがないのでわかりません。」
「仕方ない、今からみんなで永遠亭に来てください。治療してあげますから。」
「お、サンキュー鈴仙!いこうぜ早苗!」
「そうですね。お世話になります。ホウレンさんもどうですか?」
「俺はいい。でもあとから向かうから先に行っててくれ。」
「わかりました。では失礼します。」
そして三人は悟空たちと合流して紅魔館の住人たちを担いで永遠亭へ飛んで行った。
ホウレンはアスイがいた場所をぼんやりと眺めた。
「……甘いままでは守りたいものも守れない…か。そんなことは俺だってわかってる……。でも割り切れねえんだよ……。」
「ホウレンさん。」
「……妖夢か。どうした?みんなと一緒に行かなくてよかったのか?」
「いえ、あの……ホウレンさんが落ち込んでるように見えたもので……。」
「……そうか。気を遣わせちまったな。でも大丈夫だ。」
「ホウレンさん……。」
「おまえまで辛気臭い顔すんなよ。さ、行こうぜ。」
ホウレンは心配する妖夢の横を歩いて通り過ぎた。
「ホウレンさん、一つだけ言わせてください。」
「ん?なんだよ。」
「……お疲れさまでした。」
それから数時間後。魔理沙と早苗は治療を終えるとすぐに魔法の森へ向かった。
そして魔法の森に着くと氷はまだ解けてはいないものの魔人たちの姿は一体も見当たらないことに安心して、目的の人物たちを探し始めた。
「誰を探している?」
聞こえたその声に二人はすぐに振り返るとそこにはボロボロになったピッコロとその両手には抱えられたパラガスとアリスがいた。
「ピッコロさん!ご無事だったんですね……っ!」
「当たり前だ。おまえたちこそ無事……とは言えんか。とにかく生き残ったようで安心したぞ。」
「ピッコロ!アリスとパラガスは生きてるよな……!?」
「……ああ。生きている。だが起こすなよ?今は寝かせておいてやったほうがいい。」
「ああ……よかった……っ!ちくしょう、パラガスにアリスめ。起きたら私をこんなに心配させたこと後悔させてやるからな……!」
「あはは、お手柔らかにしてあげてくださいよ?この二人だって被害者なんですから。」
「わかってるよ!でも、何か言わねえと私のもやもやが晴れねえんだ!」
「何をしている。さっさとこいつらを運ぶぞ魔理沙、おまえの家に案内しろ。」
「おう!私についてきてくれ!」
二人を担いだまま三人は森の入り口へと歩き出した。
~博麗神社~
霊夢は一人、神社の境内で空を眺めていた。自分が敵に利用されて異変を解決するどころか異変を起こす側になってしまったことを霊夢は気にしていたのだ。
「……はぁ。私は今回なんにも出来なかったわね……。なんのための博麗の巫女なんだか。」
「そんなこと気にしてんのか?おまえ」
するといつの間にかホウレンが境内を歩いて霊夢の元へ来た。
「……あんた、帰ってきてたの?妖夢は?」
「あいつは帰ったよ。幽々子が心配だって言って。」
「そう……。」
「まったく、おまえらしくないぞ?助かったんだからそれでいいじゃねえか。」
「……確かに今回は貴方たちのおかげで助かったわ。でもね、それはあくまで貴方たちが幻想郷にいたからよ。……もしも幻想郷に貴方たちが迷い込まなければ、今頃幻想郷はあいつに支配されていたわ。」
「……かもしれねえな。でももう闘いは終わったんだ。そんなこと気にしても意味ねえだろ?」
「いいえ、あるわ。……私はね?努力は実らないものだと思ってたのよ。だから修行だって一度もしたことがないの。」
「それなのにあの強さか……おまえ天才じゃね?」
「よく言われるわ。最初からこの強さだったし、負けたことなんてなかったからこれでいいって思ってた。……でも今回の異変でそんなことも言ってられないかもって思ったの。」
「……。」
「……『努力なんて実らない』なんて、きっとただの言い訳。……私はただ自分の才能に甘えてただけだったんだわ。だから私はもう甘えない。修行を積んで、次にあんな大規模な異変があっても貴方がいなくたって解決できるように頑張る。」
「そうか……。じゃあ、おまえも俺と妖夢と一緒に修行するか?」
「遠慮しとくわ。……私は貴方とは別に強くなってみせる。すぐにあんたなんて追い抜かしてやるんだから!」
そう言って振り返った霊夢の顔はまるで憑き物が落ちたようにすっきりとした笑顔をホウレンへ向けたのだった。
~迷いの竹林~
レミリアたちが治療を終えてベッドに寝ている間、悟空とベジータは外で話をしていた。
「……ベジータ。おめえホウレンのこと、気づいたか?」
「当たり前だ。……まさかあいつがあの変身を遂げるとはな。」
「ああ、間違いねえ。ホウレンのやつ、超サイヤ人の壁を越えやがったんだ。」
「やはり、あいつはただのサイヤ人ではないのかもしれんな……。」
「……そうかもな。」
「それで、オレをわざわざ外に呼び出したからにはそれだけじゃないだろう?」
「……ああ。オラはな、まだ闘いは終わってねえ気がするんだ。」
「どういうことだ?」
「それはわかんねえ。けどもしかすっとアスイの他にもこの幻想郷を狙ってるやつらが現れるんじゃねえかってさ。」
「その時は今度こそオレがぶっ倒してやるぜ。」
「ずりいぞベジータ!」
「ふん、早い者勝ちだ!」
「ちょっとお二人とも!玄関の前で騒がないでください!患者が起きちゃうじゃないですか!」
大ピンチに陥った幻想郷はアスイを倒し、無事に異変は解決された。
そして各々が様々な思惑を残しつつ、幻想郷に夏が戻ったのだった。
人々の間でこの騒動は、世界が凍った異変……『凍界異変』と呼ばれた。
これで第二章はおしまいです。次回から第三章始めますのでよろしくお願いします!