ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~   作:月下の案内人

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破滅を呼ぶ祭典 崩天祭開催

 セルが現れ射命丸と魔理沙を攻撃したことによって、やぐらの周りは大パニック状態で祭りの和やかな雰囲気は一気にかき消されてしまっていた。そんな中その場に居合わせたホウレンを含む幻想郷の強者たちはピリピリとした緊迫感の中、やぐらのてっぺんに佇むセルと対峙していた。

 

「久しぶりだな、孫悟空とその仲間たちよ……。わたしのことを覚えていたようで安心したぞ。フッフッフ。」

 

「……忘れるわけねえさ。それよか……おめえ、どうして生きてやがんだ?おめえはあの時自爆して確かに死んだはずだ!それになんでその姿に戻ってやがんだ!まさかおめえ、また18号を吸収して完全体に戻ったっちゅうのか!!」

 

 悟空が指摘した通りセルの姿は完全体の姿であった。だがセルは三年前の闘いで悟飯に追い詰められた際に18号を吐き出して完全体を維持できなくなり、そのまま自爆してしまったはずであった。

 

「その話はあとでゆっくりと聞かせてやろう。残念ながら今は悠長に話している時間がないものでね。」

 

 するとセルは目を閉じて大きく息を吸い込み始めた。

 

「あいつ、何をするつもりかしら?」

 

「お嬢さま、念のためお下がりください。何をしてくるかわかりません。」

 

 全員が警戒する中セルは突然とてつもない声量で叫び始めた。

 

 

「幻想郷の強者たちよ聞こえるか!!」

 

 

「あぐっ……!?な、何よこのバカでかい声は!?」

 

「こ、鼓膜が破けちゃいそうです……っ!」

 

 大気が揺れるような大声に思わずホウレンたちは耳をふさいだ。セルの声は人里全体はもちろん、周囲の山々にまで届くほどであった。

 

 

「わたしの名はセル!!ある目的でこの幻想郷にやってきた!! 」

 

 

「ぐっ……あ…ある目的……?」

 

 

「それは……この幻想郷の破壊だ!!」

 

 

「「「!?」」」

 

 セルの発言にその場にいた全員が目を見開いた。

 

 

「だが安心するがいい!!今すぐに破壊するわけではない!!」

 

「今から貴様らにはゲームに参加してもらおう!!」

 

 

「げ、ゲームだと……!?」

 

 

「今この幻想郷にはわたし以外にも、もう一人戦士が来ている!!」

 

「今から二時間以内、ちょうど太陽が沈む頃までにその戦士を見つけ出し、倒せば貴様たちの勝ちだ!!」

 

「その戦士の名はディグラ!!生き残りたくばこの男を捜し出し、倒して見せろ!!」

 

「だがもしも時間を一秒でも過ぎてしまえば……この幻想郷全体の空より数多の隕石が地上に振り注ぐことになるだろう!!」

 

 

 衝撃の発言に全員が凍り付いた。数多の隕石が降り注ぐなど普通に考えればありえないことだがセルの自信満々な顔と、明かされたもう一人の戦士の存在によって全員がそれを完全に否定することは出来なかった。

 

 

「貴様たちがどこまで抗えるかを見せてみろ!!『崩天祭』の開催だ!!」

 

 

 セルは言葉を言い終えると今度は悟空たちを見て普通の声で話し始めた。

 

「フッフッフ。早く捜しに行かなくていいのかな?二時間などあっという間だぞ?」

 

「お、おまえ!今の話はどういうことだ!?」

 

「どういうことも何も今説明した通りのことだ。二時間以内にディグラを見つけ出し倒すことが出来なければ幻想郷は滅びる……ただそれだけのことだ。すでにこの幻想郷の遥か上空には数えきれんほどの大岩が浮かんでいるのだ。」

 

「ふーん……。でもそれって上空の大岩を先にすべて壊しちゃえばいいじゃないの。セルとか言ったかしら?そんなこともわからないなんて随分と頭が悪いのね。」

 

 薄ら笑いを浮かべながら説明するセルに対して、レミリアはたいして驚きもせずにセルを小馬鹿にした。この時点でレミリアはセルのことをまったく恐れていない。それはセルが気を抑えているからというのもあるがそもそも幻想郷の住人のほとんどが悟空たちが使う気を感じることが出来ないのだ。もちろん種族によって魔力、霊力、妖力などの力を感じ取ることは出来る、しかし気を感じ取れる者は幻想郷に数えるほどしか存在しない。

 

「そうしたいのなら止めはせん。壊せればの話だがな。」

 

「なんですって?」

 

「大岩の周りにはわたしが生み出したセルジュニアたちが大量に待ち構えている。これを突破するのは孫悟空たちですら時間がかかるだろう。少なくともキミには無理な話だがね。レミリア・スカーレット。」

 

「……私のことも知ってるのね。でもその実力までは知らなかったのかしら?今ここで貴方を殺してやってもいいのよ?」

 

 そう言ってレミリアは目を紅く光らせて、全身から魔力を溢れさせた。

 

「レミリア、よせ!さっきも言ったろ!おめえが勝てる相手じゃねえぞ!」

 

「貴方は黙ってなさい。そもそも今ここでこいつを捕まえてディグラとかいうやつの居場所を吐かせた方が手っ取り早いわ。咲夜、私が傘から出ないようにしっかりついてきなさいよ?」

 

「かしこまりました。」

 

 完全にセルを倒すつもりでいるレミリアを見てセルは微笑を浮かべた。

 

「貴様の言うとおりだ。今ここでわたしを倒せばディグラの居場所はわかるだろう。だが肝心なところが抜けているぞ?今この場所にわたしと闘える者はいないということだ。」

 

「……随分舐められたものですね。私たちだけに限らず、ホウレンさんや悟空さんですら貴方と闘えないと言うんですか?」

 

「そういうことだ。ただし貴様ら幻想郷の戦士たちと孫悟空たちとでは少々意味が違うがね。」

 

「……どういう意味です?」

 

「確かに孫悟空たちならば今ここでわたしと闘うことは可能だ。だがわたしたちが闘えば間違いなくここは跡形もなく消え去るだろう。」

 

「「「!!」」」

 

 セルの言葉に悟空とホウレンを除いた全員が衝撃を受けた。セルの言っていることが正しければ悟空とホウレンはセルと闘うことが出来ない。実際にセルと闘うともなれば超サイヤ人2にまでなる必要があるがそんな力で闘えば本当に人里が消し飛んでしまうということを悟空とホウレンは充分に理解していた。

 

「……悟空たちが闘えない理由はわかったわ。じゃあ今度は私たちが闘えない理由を教えてもらおうかしら?」

 

「フッフッフ。そんなもの説明するまでもないと思うがね。こちらは言葉通りの意味だ。貴様らではわたしと闘う実力すらない……理解できたかな?」

 

「……ええ、理解したわ。……やっぱり貴方はここで殺す……!もちろん里に被害が出ないようにスマートに消してやるわ!」

 

 そう言ってレミリアは咲夜と共にやぐらのてっぺんのセル目掛けて飛び出した。

 

「おめえたち、やめろー!!」

 

「この超高速の槍、避けられるものなら避けて見なさい!!」   神槍『スピア・ザ・グングニル』

 

 悟空の制止の言葉も無視してレミリアは深紅に染まった槍をセルに向けて解き放った。そのスペルは前に悟空と闘った時のものよりも遥かに速く、そして遥かに強力な魔力を帯びていた。レミリアもまたフランの能力の特訓に付き合ったことで力を上げていたのだ。

 

「ハァッ!!」

 

 しかしセルはその瞬間気を急激に上昇させて片手でグングニルを受け止めて上空へと弾き飛ばした。弾かれたグングニルはそのまま雲を貫いて消えていった。

 

「!!」

 

「レミリア・スカーレット、並びに十六夜咲夜。残念ながら貴様たちはここで脱落だ。」

 

「っ!!」

 

 セルは向かってくる二人に向けて指先から光線を放った。だがその光線は二人に当たらずに地面を貫いた。

 

「ほう。咄嗟に能力を使って回避したか。」

 

 そう言ったセルの目線の先は民家の屋根の上を向いていた。それにつられてホウレンたちもそちらに目を向けると咲夜がレミリアを抱えた状態でセルを睨みつけていた。

 

「さきほどのレミリア・スカーレットの技といい、十六夜咲夜の咄嗟の行動といい、どうやらわたしが知っている貴様らとは違うようだ……。これも孫悟空たちがこちらの幻想郷にもたらした影響と言ったところか。」

 

「……どういう意味かしら?」

 

 レミリアはセルの言葉に違和感を感じてセルに直接問いかけた。

 

「なに、そのままの意味だ。わたしが知っている貴様たちならグングニルはあれほどの強さではなく、時を止めるまでの反応ももっと遅かったはずだと、ただそれだけのことだ。」

 

「それもちょっと気になるけど、そっちじゃないわ。私が聞いてるのは貴方が言った『こちらの幻想郷』ってところよ。……それはいったいどういう意味なのかしら?」

 

 それに対してセルは小さく笑うと首を横に振った。

 

「教えてやりたいところだがその質問には答えられんな。自分たちの頭で考えてみるといい。と言ってもわかったところでこの崩天祭は止められんがな。」

 

「……貴方いったい何なのよ。なんで私やお嬢様、それに他の連中のことまで知っているの?しかもスペルに能力まで知っているなんて……いくらなんでもおかしいわ!」

 

 咲夜の問いかけにセルは何も答えようとはしなかった。自分たちの情報が筒抜けになり焦っている顔を見て楽しんでいるのだ。さきほどのセルの言い方からするとセルは咲夜の能力を知っている。それがそもそもおかしいのだ。咲夜は日常的にその能力を使ってメイドの仕事を行っているがあまり外でその能力を使うことはない、と言うよりは使う必要がないのだ。つまり咲夜の能力を知っているということは紅魔館での咲夜を知っているということになる。だがこれだけならまだ誰かがばらしたと考えれば済むであろう。

 しかしレミリアのスペルであるスピア・ザ・グングニルはレミリアは強敵と認めた相手にしか使わない、言わば滅多に見れないようなスペルである。そんなスペルをまるで知っていたように弾き飛ばして見せたセルが咲夜にはひどく不気味な存在に見えた。

 

「セル!その崩天祭とかいうやつの最中おめえはどうすんだ?オラたちがディグラっちゅうやつを捜すのをおめえが妨害でもするんか。」

 

「違うな。わたしはこのゲームに参加するつもりはない。」

 

「何……?」

 

「このゲームはディグラが言い出したものでわたしはそのゲームの駒を提供しているだけに過ぎん。セルジュニアたちはこのゲームに参加しているが今回わたしはゲーム開始の合図さえ済ませてしまえばただの観客ということだ。」

 

 そう言うとセルはやぐらから飛び降りて悟空とホウレンの前に着地した。

 

「そう警戒しなくていい。わたしは今闘うつもりなどない。おまえたちがこのゲームを終わらせるのをじっくりと待たせてもらうつもりだ。おまえたちならば勝とうが負けようが死ぬことはないとわたしは思っているよ。」

 

「……つまりおめえはこのゲームの間は大人しくしてるってことでいいんだな?」

 

「無論、そのつもりだ。」

 

「……俺は信用できねえよ。こいつは二度も地球をぶっ壊そうとしたやつだぞ!?そんな奴が大人しくしてるって言ったところで信じられるわけねえだろ!」

 

「そう思うならわたしを見張っていればいい。ただしディグラを捜す要員が無駄に減ってしまうことになるがな。」

 

「くっ……!」

 

「さあどうする?こうやって話している間にどんどん時間は過ぎていくぞ。」

 

 セルを見逃してゲームに専念するか、数人がかりでセルを倒してしまいディグラの居場所を聞き出すか、悩んだホウレンだがセルを倒したところでセルがディグラの居場所を吐くとも思えない。そうなったらそれこそ時間の無駄だろう。だがここでセルを見逃してしまえばセルが本当に大人しくしているという保証はどこにもない。たとえゲームに勝ったところでセルに幻想郷がめちゃくちゃにされては意味がないのだ。どちらを選ぶか決断できず時間だけが過ぎていく中、妖夢に介抱されていた射命丸が立ち上がった。

 

「私がセルについて行きましょう。」

 

「し、射命丸……!」

 

「ほう?もう回復したのか。どうやら貴様も他の連中と同じで随分とパワーアップしているようだ。」

 

「そういうことです。こんなチャンスは中々ありませんからね。貴方が何なのか取材するついでに本当に大人しくしてるかしっかり見張らせてもらいますよ?」

 

 射命丸がセルを見張る。それを聞いた時、急にホウレンは頭が痛くなった。理由はわからないがここで射命丸を行かせることが不気味なくらい怖く感じた。

 

「な…何言ってんだ……。一人でセルについて行くなんていくらなんでも危険すぎだ!それなら俺か悟空のどっちかが行った方がいい!」

 

 謎の頭痛を抑え込んでホウレンは必死にそれを止めようとする。

 

「ホウレンさん、私だってさっきの攻撃で実力の差くらいわかってます。……ですが考えてみてください、幻想郷全体に大岩を落とせるということはそれだけの範囲をカバーできるほどの強力な力、あるいは能力を持っているってことです。私たち幻想郷の誰かがそのディグラを見つけたとして、もしもこのセルに近い実力を持っていたらどうしますか?」

 

「そ、それは……。」

 

「ホウレン、セルは確かにとんでもねえやつだ、だけどすぐにバレるような嘘をつくやつじゃねえ。それにセルジュニアが従うっちゅうことは文の言うとおりそれくらいの強さを持ってるってことだ……だろ?セル。」

 

「ご名答。わたしとてそこいらの雑魚のゲームに付き合うほど暇ではない。少なくとも今のわたしに近い実力、そしてわたしにはない能力を持っている。半端な強さでは闘うことすらできんだろうな。」

 

「っ……!」

 

「……ホウレン、今はとにかく文に任せとけ。いざとなったらオラが瞬間移動で助けに行くさ。」

 

「でもおまえ……幻想郷では瞬間移動が使えないんじゃねえのか……?」

 

「まあな。だけどもしセルが文を殺そうとするか暴れだしたりすりゃ間違いなくでけえ気を出す。そうなりゃ気を感じ取って瞬間移動が出来る、だから安心しろ。」

 

「……あ…ああ。そう…だよな?」

 

 悟空の言ってることは本当だ。いざとなれば瞬間移動で助けに向かうことができる、頭では理解しているがなぜか恐怖感を消すことが出来ない自分に軽く混乱しているようで頭を抱えた。

 

(なんだ…?なんで俺はこんなに怯えてる?大丈夫だ…いくらセルが強いとはいえいざとなれば悟空がすぐに助けに行ける……!絶対に大丈夫のはずだ……!)

 

「……そうだ…すぐに助けに来れる……あの時みたいには……あの時…?__ッ!?」

 

 ホウレンは無意識の内に呟いた一言が自分でも何のことなのかわからなかった。しかしその瞬間ホウレンの頭の中に突然何かの声や情景が浮かび上がった。

 

 

『早く!みんなが殺されてしまう前に早く助けを呼ばないと!!』

 

 

 それは見知らぬ星の荒野で必死に飛ぶ女性の姿とそ同じく飛んでいる自分の視界であった。共に飛んでいる女性はどこか懐かしく思えるが姿がぼやけてハッキリとは見えない。

 

 

『なんでだよ……!なんで信じてくれねえんだ!?早く…早く助けに行かねえとあいつら全員殺されちまう!』

 

 

 場面が変わり今度は異星人たちに何かを必死に説得している姿が映った。だがその異星人たちはまるで話を信じようとしない様子だった。

 

 

『あ…ああ…うわぁあああああ!!どうして…・どうしてこんなことに……!』

 

 

 更に場面は変わりそこに映った光景はボロボロになった荒野に数十人以上の死体が転がっているという凄惨な現場であった。

 

 

『俺の…せいだ……。俺が…もっと早く助けを連れて来れば……こんな……。』

 

 

 膝から崩れ落ち、徐々に視界が歪んでいく、そしていつの間にかホウレンの頭の中はとてつもない罪悪感と恐怖感で満たされてしまっていた。気が付けば目から涙が大量に零れ落ちている。

 

「お、おいホウレン!どうしたんだ!?」

 

「……あれ…?俺…なんで泣い…て__」

 

「ホウレンさん!?」

 

 自分が泣いていることに気が付くと途端にホウレンは意識を失って倒れてしまった。いったいホウレンに何が起こったのだろうか?幻想郷の滅亡を賭けたゲーム『崩天祭』が幕を開けたのだった。

 

 

 __滅亡まで あと  01 : 55




更新がだいぶ遅いときは活動報告に何かしら状況の報告をしてますんで気になった方はそちらをご覧ください

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