ドラゴンボールUW~記憶を失くしたサイヤ人~ 作:月下の案内人
「……博麗…霊奈?」
「……霧雨…魔理華?」
不思議そうに眉をひそめる二人を前にディグラは顔を傾げた。が、すぐに納得が言ったように手の平を叩いた。
「なるほど、こっちでは名前が違うのか!そりゃ悪かったな。おまえたちはなんて名前なんだ?」
「(こっちでは?)……博麗霊夢よ。」
「霧雨魔理沙だ。ってかなんで私たちのこと知ってるんだ!?ちょっと間違ってたけどさ!」
「はっはっは!気にするな。こっちの話だ。どうしても気になるってんなら、おまえたちがゲームに勝てたらヒントのついでに教えてやるよ。」
「……仕方ないわね。やるわよ魔理沙。」
「ああ、話してても埒が明かないぜ。今すぐこいつを捕まえておしまいだ!」
二人は覚悟を決めディグラを睨みつけた。やる気になった二人を見て嬉しそうにするディグラを見る霊夢と魔理沙の内心はひたすらに困惑していた。
なぜこんなにも早くディグラは現れたのか。この男の目的はなんなのか。なぜ自分たちの名前?を知っていたのか。わからないことばかりではあるがただひとつハッキリとしていることがあるとすれば、このゲームが幻想郷を左右するであろうということだけ。
(さっきのマスタースパークに誰かが気づけばこいつを確実に捕まえられるかもしれない。ああもう、はやく誰か来てよね!)
「なに簡単だ。逃げ回るオレに触れるだけだ!もちろんどんな手を使っても構わないぞ!全力で逃げ回るオレを楽しませてくれ!じゃあ、始め!!」
始まりの合図と共にディグラは超高速で真上に飛び出すと縦横無尽に空を飛び回り始める。
とてつもないスピードだが前の異変から力を上げた二人はディグラの速度をしっかりと目で追えていた。
「凄いスピードだけど、全然追えるわ……!魔理沙!私が弾幕で逃げ道を失くすからあんたはあいつを追いかけて!」
「おう!任せとけ!」
「まずはこれ!」 境界『二重弾幕結界』
二重弾幕結界は相手も巻き込んだ大型の結界を張るというスペルだ。これにより、飛び回るディグラの行動範囲を狭めることに成功した。
「お?結界か!」
「これならあんたも遠くへは逃げられないでしょ!でもまだ終わりじゃないわよ!」 夢符『封魔陣』
さらに霊夢は大量のお札で結界の内部をぐちゃぐちゃに掻きまわしていく。が、ディグラはそれを躱したり、追尾する霊力の弾を気で搔き消したりして上手く結界の中を飛び回る。
それを魔理沙は後ろにマスタースパークを打ち、それを推進力に超高速で飛ぶスペル『ブレイジングスター』で追いかける。
「思ったよりも大したスピードじゃないな!あっという間に捕まえてやるぜ!」
「驚いた!どうやらオレが知っているおまえたちとは強さがまるで違うみたいだな!だが、まだまだオレはこんなもんじゃないぞ!そら!」
そう言うとディグラは更に加速して魔理沙を突き放す。
「何っ!(なんだ今の加速。魔力や気とかいうやつじゃないのか?まるで体が急に軽くなったみたいな……)くそっ、私ももっとスピード上げていくぜ!」
魔理沙はマスタースパークの火力を更に上げて負けじとディグラに食らいつく。
ディグラの加速にどこか違和感を感じたものの徐々にその差を詰めていき、あと少しというとこまで追いつくと思いっきり手を伸ばした。
「よし!捕まえ__うぐっ!?」
魔理沙の手がディグラに触れそうになったその瞬間、全身が鉛のように重くなったような感覚になり、箒の上で大きくバランスを崩してしまう。
突然の異常事態に苦しくなり息が荒くなるが、落ちないようになんとか箒にしがみつきゆっくりとスピードを落としてその場にとどまった。
「はぁ…はぁ……体中の重さが消えた……。な、なんだ今の感じは?」
「ちょっと魔理沙!あと少しだったのに何やってんのよ!」
遠くから霊夢が大声でまくしたてる。しかし弾幕の手は一切緩めずに結界内を蹂躙し続けている。
弾幕をなかなかディグラに当てられないことに苛立ちを感じる。が、霊夢もまたディグラの違和感を感じ取っていた。
(……おかしいわね。あいつに弾幕が当たる瞬間、どうしても弾幕の制御が難しくなる。霊力の弾なら問題ないのにお札だけが思うように動かなくなるのはなんで?)
霊夢のスペルはお札を直接敵に飛ばすものと霊力の弾を飛ばすものが多く使われている。もちろん結界や陰陽玉といった特殊なものもあるが基本は最初の二つだろう。
今の霊夢は複数のスペルを同時に使用しているためその弾幕の密度は本来の弾幕ごっこでは間違いなく反則であろう。
なぜならそもそも避けられるスペースが存在しないスペルなどありはしないからだ。たとえどれほど高密度なスペルでもどう考えても理不尽なスペルでさえ、必ず逃げる穴は存在する。
しかし今の霊夢は少なくとも結界を含めても三つ以上のスペルを使用しているため、もはや人間のサイズではどうしようもないほどの高密度の弾幕である。
それを二メートルはあろう巨躯で避けきれるわけがない。実際には全て躱されているというわけでわなく搔き消されているものもあるがそれは霊力の弾だけだった。
(ああもう、まただわ!やっぱりお札だけがどうしても上手く扱えなくなる!あいつが何か細工でもしてるんじゃないの!?)
(待って。……そうよ、なんであいつはお札は搔き消さないの?)
霊夢の違和感の正体はそれだった。ディグラは弾幕に当たりそうになったとき、その一部を気で搔き消してそこから逃げている。しかし何故かお札だけはあまり搔き消そうとしないのだ。
最初は制御出来ないお札なんて気を使って消すまでもないだけだと思っていた。しかしそれは間違いだったのかもしれない。
「……ひょっとしてあいつ。お札にはすでに何かしているの?私が気づかないうちに?(そう言えばさっきの魔理沙も様子が変だったわね……。よし。)魔理沙!ちょっとこっち来なさい!」
「ああ?なんだよ霊夢!私ならもう大丈夫だぞ!」
「いいから早く!」
大声で呼ばれた魔理沙は渋々霊夢の元に近寄った。その間霊夢は結界以外のスペルを一時的にやめる。突然追ってこなくなった弾幕にディグラは不思議そうに霊夢たちを見下ろしていた。
「んん?なんだ作戦会議か?……いいな!本気でやってくれるのはオレとしても嬉しい!次はどんな方法でオレを楽しませてくれるんだ?」
そう解釈して一人で盛り上がるディグラを尻目に二人はお互いの身に起きていることの情報共有を済ませてひそひそと話し合いを続けた。
「そう。あいつに近づいた瞬間に体が重くなったのね。」
「ああ。あんな感覚始めてだったぜ。」
「……そういえば私のお札も制御が難しくなるのはあいつに当たる寸前でだったわね。」
「そうなのか?」
「ええ、つまりこれは。」
「そうだな。これは。」
「「あいつの周りだけなにかが発生している。」」
二人が出した結論はこうだ『ディグラは何か特殊な力を自身の周りに発生させ続けている』
それが何なのかも魔理沙の感じた重さで何となく察しがついた。
「おいおまえ!なんか能力みたいなのを使ってるだろ!さっき思い出したけど、セルの野郎も言ってたしな!」
「……ほほう?」
魔理沙の発言を楽しげに、興味深そうに耳を傾ける。その反応を見て霊夢は続きを喋り始める。
「あんたは多分、『周囲の重さを操ることができる能力』を持ってるんじゃない?魔理沙に捕まりそうになった瞬間、魔理沙が重くなったのがその証拠よ。私のお札も霊力の弾と違って実物だからね。突然お札が重くなれば、私だって感覚が狂って上手く制御できないもの。だから重さを変えられない霊力の弾は搔き消すしかなかった……違うかしら?」
霊夢の考察を聞いたディグラは感心したのか大きく拍手しだした。
「すごいな!この短い時間にオレの能力をそこまで当てるとは!」
「へっ、私たちはもともと『~~程度の能力』とかを使ってるからな。たとえ別物の能力だったとしても原理は似たようなもんだろ?なら私たちにはお見通しだぜ!」
「はっはっは!素晴らしいな!満点を上げたいくらいだ!……でも惜しい!」
「何がよ。」
「なに本当にちょっとしたことがだよ。ここまで当てられたご褒美としてオレの事、おもにこの能力について答えを教えてやろう。そもそもオレの能力はおまえたちの『~~程度の能力』とは別物と言っていたがそこがまず間違いだ。」
「……どういう意味だよ。」
「どういう意味も何もそのままさ。これはオレが生まれ持った能力なんかじゃなく、正真正銘おまえたちと同じ『~~程度の能力』そのものだよ。」
「「!?」」
「ど、どういうことだよ!おまえ、幻想郷の住人だったのか!?」
魔理沙がそう聞くのも無理はない。『~~程度の能力』とは外の世界には一切存在しない幻想郷独自のものだからだ。それを扱えるということはディグラは幻想郷の出身、あるいはそれに関わる何者かということになる。
「それもハズレだ。オレは幻想郷の住人じゃない。惑星グラビってとこで育った普通の人間さ。」
「惑星グラビ……ってあんた宇宙人なの!?いや、その見た目的には驚くところじゃないかもだけど!」
「なにを驚いてるんだ?おまえたちの仲間のサイヤ人だって宇宙人じゃないか。」
「あ~まあ、そうだけど……。」
ちなみに霊夢たちはホウレンたちがサイヤ人であり宇宙人であることは聞いていた。聞いていたがあまりにもホウレンたちが普通の人間と見た目が変わらな過ぎて少し忘れていたのだった。
「話を戻すが、次の間違いは本当に惜しい。オレの能力をおまえは周囲の重さを操ると言ったな?」
「……違うのかしら?」
「ああ少しだけな。……少しくらいならいいか。そら!!」
「「ッ!!?」」
その瞬間、二人は全身がズシンと重くなるのを感じた。それだけじゃない、結界内の全ての物体が変化しているのだ。下を見ると地上で木々が重さに耐え切れずへし折れていき、岩や石ころは地面に減り込み始めていた。
「オレの能力は『重力を操る程度の能力』が正解だ。こうやってオレの周りだけじゃない、少なくともこの結界の中全てを変えることだってできるのさ。」 (パチン)
ディグラが指を鳴らすと周囲一帯の重さが消えた。二人は突然戻った体に思わずよろつくがなんとかディグラを見上げて冷や汗を掻く。
(嘘でしょ……?重力を操るとかどんな能力よ!それにあの範囲、数百メートルは能力が発動するってことなの?)
「だがまあ、この能力だけならそんなに驚くことでもないだろう?この幻想郷にだって規格外の能力をもった奴がわんさかいるはずだ。ありとあらゆるものを破壊する吸血鬼!死を操る亡霊!創造の力を持った二柱の神!数えればキリがない!つまりおまえたちが本当に驚いているのは幻想郷の住人以外が能力を使えていること……だろ?」
「あんた、本当にどこまで私たちのことを知ってるのよ……!」
「答え合わせはここまでだ。あとはこのゲームに勝ってからにするんだな。さあどうした!おまえたちもまだそんなものではないだろう!」
「もう、こうなったら念のための様子見は終わり!本当の本当に全力でかかるわよ!」
「ああ!ここで確実に終わらせるぜ!」
実のところ二人はディグラを捕まえた後のことを考えて力を温存していた。ここでディグラを捕まえて崩天祭を終わらせたとしてもその後にはセルとの闘いが控えているからだ。すでにセルの恐ろしさを知ってしまっている二人はここで力を使い切るわけにはいかないと考えたのだ。
しかしそんなことも言ってられないと考えを改めて霊夢は霊力を、魔理沙は八卦炉に魔力を全開まで引き上げたその時__
「あら。楽しそうね。私も混ぜてもらってもいいかしら?」
「「「!!」」」
__ディグラのすぐ後ろに八雲紫が現れた。
「……ほらな?規格外の奴なんてどこにでもいるってわけだ。」
幻想郷最強クラスの妖怪八雲紫の登場にディグラは楽しそうに笑った。