隠せないと
ヴェロニカは喜悦した。
身に受ける愛に
「ねぇお前ボスの娘なの?」
私はヴェロニカ、現在ピンチです。
目の前にはベルがニヒルな笑みを見せながら、私をロックオンしています。
「………」
「王子聞いちゃったんだよね~、『パパのバカ』って凄く怒ったような声。」
あ、詰んだ。
何とか誤魔化そうと考えたが、これは詰んだ。
大きな声を出してしまった私の完璧なミスである。
「でもさー…少し分かんねーことがあんだよね」
まだ若い肌をしているベルお兄さんは私を隅々まで見てるんですが、今私フード被ってるから見れなくね?
「お前どう考えても13~16くらいだろ?合わねーんだよなぁ…ボスの子だったら11~17は有り得ねーし」
ああ、冷凍期間ありましたもんね。
っていうかお前まだパパが10年後から来たの気付いてないの?
え、お前のボスだろ。
いや確かにパパは全く老けないけど!
髪形も変わってな…いや少し長くなってるじゃん!
目頭にも小皺が出来てるじゃん!気付けアホ!
「んじゃお前は何?っつーわけ…」
「さぁ?」
一触即発の雰囲気にヴェロニカは全身に炎を纏う―――
としたとき、勢いよくヴェロニカの部屋の扉が開いた。
「ちょっと~!あなたボスの娘ってどうして教えてくれなかったのよん!って、ベルちゃんもいたのね」
ルッスーリアが体をくねくねさせながら入ってきて、爆弾を投下する。
「は?オカマもこいつがボスの娘だと思ったわけ?」
「思ったも何も、この子は正真正銘ボスの子よ」
「はぁ?時期が合わねーじゃんか」
「それはね、この子が未来から来てるからなんですって」
「は?」
ちょ、ま、どっからそれ聞いたの?
え、私の存在はトップシークレットというか、この時代の人には誰にも教えてないのに。
「誰から聞いたわけ?」
「ボ・ス・よ」
あんたかパパ!
どうしてくれんじゃおいいいい
「何でボスそれ知ってるわけ?」
「ボスが10年後のボスと入れ替わってるらしいわよ?」
「は⁉」
それも言っちゃったか!
ああ、もう…これ全部バレてんじゃん。
私の存在どうなんだよマジで。
「ヴェロニカちゃんでしょ?顔を見せてちょーだい」
ルッスーリアは目にも留まらぬ速さでヴェロニカのフードを剥ぎ取る。
いきなり視界が広くなったヴェロニカは何が起こったのか分からず呆然とする。
「あっら、見てボスにそっくりよ~!特にこの凛々しい眉毛!あなたとっても美人じゃな~い!」
「あー…これはボスの娘だわ…」
待って、何で二人そろって私の顔見ただけでパパの娘って納得するわけ?
私が口を開こうとした瞬間
「う"ぉぉおおおおい、ボスの娘って本当かぁ"!」
ああ、なんか来た。
つかこれ以上知っている人増やしたくないんですが。
スクアーロはヴェロニカの顔をまじまじと見ながら納得したように頷いた。
「これはボスの娘だぜぇ"」
だから何で私の顔見るだけで納得するんですかねぇ?
一度徹底的に問い詰めてみたいんですが。
「つかオカマ、何でこいつのことボスに聞いたんだよ」
「あ、それはねスクちゃんがいきなりボスがロリコンだったって叫んであたしの所来たからよ~」
「は?ロリコン?」
「だってよお"、書類仕事終わらせねぇボスを探してたらボスがこいつと手ぇ繋いで歩いてたんだぜえ"?ボスがそんな趣味だと思うじゃねぇかあ"」
おおふ、あれ見られてたのか、マジか。
待って、本部着く前に一応距離離していたけど、どこで見たんだよくっそ。
「は?ボスが手繋いでたの?精神病院紹介してもらえよ、シシッ」
「ボスに確認しに行ったら俺のガキだって言うからもービックリしちゃうわよねぇ!」
「あ"?つーかボスの娘だと時期おかしくねぇかあ"?」
「あ、それはね―――――」
ルッスーリアが先ほどと同じ内容をスクアーロに教えると、スクアーロは直ぐに部屋を出て行った。
「う"お"おおおおおいクソボスゥ!入れ替わってるならそうと言いやがれぇぇぇええええ!」
多分書類とか丸投げでもしてたのかな?
気付けばベルが私を凝視している件について。
「何」
「元々口数すくねーの?」
「あらそこまでボスに似たのかしらね?」
「つーかいつボス10年後と入れ替わってたんだよ」
「あれでしょ、白蘭と戦った後の…」
「あ、そういえばお前何でボス襲撃したんだよ」
これ言わなきゃいけないの?
ダメじゃね?
いやもう私の存在バレてるから何やっても意味ないような気がしてきた。
ヴェロニカは諦めて、事の全てを省略しながら説明した。
「はあ?ボス14年後に死んじゃったわけ?マジかよ」
「それであなたが過去に来たのね、ボス相手するなんて大変だったわねぇ」
「つか何で襲撃?普通にボスに言えばいいじゃん」
「そう言うけど、パパが素直に予防接種受けると思うの?」
「「しねぇな/しないわねぇ」」
「でしょ、本人も勝手なことするなって怒ってたし」
「まぁボスらしいっちゃらしいけど…」
「じゃあ私たちからしたらボスの命の恩人になっちゃうわねぇ…ありがとヴェロニカちゃん」
「シシッ、いい仕事すんじゃん」
「別にあなた達の為にやったわけじゃないわよ」
ルッスーリアは始終私の頭を撫でまくっていた。
ベルは嫌がる私の頬を摘まんだり伸ばしていたりして遊んでいたので炎でぶっ飛ばした。
最近手が出るの早くなってるけど、パパの影響かなぁ
ベルが窓から消えたあと、ルッスーリアは夕飯の準備をすると言ったので私も手伝うことにした。
「ボスが少しだけ丸くなったように見えたのは、10年後と入れ替わってたからなのねぇ」
「は?丸く……なってんの?」
「ほんの少しだけそう感じただけよん、それにあなたのこと大事に思ってるようだし…少し意外だわ~」
「大事……ねぇ…」
「あら、気絶したあなたをイタリアまで運んだのはボスよぉ?」
「………そう」
まじで?
ルッスーリアとかに任せてたと思ってた。
あー…何だろ……これは………嬉しい。
帰り道の夢も夢じゃなかったし、なんかパパがおかしい。
なんか物凄く、優しいような気がする。
何でだ、何があったし。
「怖いパパの方がヴァリアーには合ってるんじゃない?」
私はただの興味本位でルッスーリアに聞いてみた。
「あら、あたしはどんなボスも愛せる自信があるわよん!」
「………そっか…」
❝ヴェロニカちゃんがお父さんに愛情を教えてあげたら?❞
❝あなた達はお互い何も知らなさすぎるのよ❞
「そうだね」
「でしょぉ!あたしのボスへの愛は誰にも負けないわよぉ!」
「ねぇルッスーリア、ご飯のあと暇?」
「空いてるわよぉ?どうしたのん?」
「私にお菓子の作り方教えてほしいの」
流石に高級肉は無理です。
3日後、私はリビングにいた。
どんなに計算しても今日中には過去に自動的に戻るハズである。
それはヴェロニカの事情を知っている人たちには教えてあった。
ヴェロニカは本部にいるメンバーとカードゲームをして時間を潰していた。
「あ……」
「んー?次お前の番だぜー」
「あ、えっと…トイレ」
「んじゃカード出してから行けよ、シシッ」
「うん」
ヴェロニカはカードを出すと、テーブルに手札を伏せ、部屋を出る。
部屋をでると、一旦自室に戻り剣と銃を持ってザンザスの執務室へ向かう。
「パパ、入るね」
執務室の扉をゆっくり開けると、奥にはザンザスが机に脚を乗せながら眠っていた。
「寝てるのか……」
お菓子一応作ったけど、これ机の上に置いとくだけでいいかな…。
ヴェロニカはザンザスの机の上に包装されたクッキーを置いた。
多分あと何分もせずに私は過去に戻るだろう。
何故かは分からないが、漠然と分かってしまったタイムリミット。
目の前で目を閉じて、浅い眠りを貪るザンザスを眺める。
「パパ、またね」
ああ、私は満足だ。
パパを救えた。
パパと手を繋ぐことが出来た。
少しだけパパのことを分かったような気がした。
一瞬だけパパの真っ赤な瞳が見えたような気がした。
瞬きをすると、そこは私の日本で住んでいたマンションだった。
「あー…どれくらい経ってるんだろう…」
沢田綱吉達とは違って、私は原作のように時間調節したタイムトリップじゃないからなぁ…
もしかしたらこっちでも一か月経ったのかな。
ヴェロニカはTVを付けて、日付を確認した。
あ、同じ日付…ここでは一日しか経ってなかったか…
じゃあ沢田綱吉達も今日中には戻ってくるのか、いやもう戻っているのか?
一応、一か月前の記憶だから少し朧気だな…明日は一体何があっただろうか。
ヴェロニカは鞄の中を探り、学校のノートを確認する。
っていうか、私もう学校行く意味なくね?
だって当初の目的達成したわけだし。
これ以上原作キャラに関わっていって、何か変な展開になるの困るんだけど。
アニメじゃ未来編までしかなかったし、これ以上ここにいても私自身が不安材料すぎる。
確か姉さんが漫画の方で継承式がなんとかって言ってたような…
ああ、ダメだ前世なんてもうほとんど思い出せなくなってる。
母の名前も父の名前も、姉の名前も思い出せない。
別にそれがショックであるとは思わない。
これも多分、この世界でヴェロニカとして自己を確立してしまったからなのだろう。
ただ少しだけ寂しかった。
まぁ普通は前世なんて覚えてるもんでもないし、そこまで悲観しているわけでもない。
仲田夏美の人生は過去であり、既に終えた人生だ。
私にとっての原作終了はここであり、もうこの記憶を思い起こすことはないだろう。
あー、あとは未来から何かしら連絡があればなー…
ポーン
インターホンが鳴り、私は画面を見る。
そこには沢田綱吉がそわそわしながら、カメラを眺めていた。
取り合えず入れてやるか、どうせ今回の未来のことだし。
いきなりロックが開いたことに肩をビクつかせて、びくびくしながら中に入っていく。
こいつ本当に白蘭倒したのか?
玄関がノックされ、ドアを開けると、沢田綱吉がいた。
「やぁ」
「……リボーンは連れてこなかったのか?」
「あ、俺だけ……少し聞きたいことあったから」
「そう」
中に入れて椅子に座らせる。
「何」
「あ、えっと……あのさ…」
中々言い出さない沢田綱吉に苛立つ。
なるほど、パパが苛立つ理由がなんとなく分かった。
「あのさ……ヴェロニカさんって…ザンザスの子供?」
まさかそれを言われるとは思わなかった。
あるとしても未来に来ていたかとかそんな内容だと思っていたが、まさか過程ぶっ飛ばしていきなりそれを聞きだしてくるとは。
「何で?」
「え、あの、なんていうか…勘みたいなものなんだけどさ……」
超直感って本当に厄介だなぁ
「あ!でもこのこと誰にも言ってないよ!リボーンにも!言うつもりないし…」
おや?既にリボーンには相談していると思っていた。
彼自身で考え彼自身で行動するのは、ハッキリ言って予想外だった。
この彼ならば言ってもいいのかもしれない。
「でも知られて欲しくないとか…だったら忘れるけどさ」
「そうだよ」
「え?」
「私の父はザンザスだ」
「あ……そっか……えっと、ヴェロニカ…さんは未来から来たんだよね?」
「そう、今から24年後」
「に、24年…俺が38歳の頃…」
「父が死んだから、それを防ごうと過去に来たのよ……あなた達が未来に行ったように…私は過去へ来た」
「え⁉ザンザス死んじゃったの⁉」
「病気でね、この時代じゃまだ治療法がないし、未来でも発症すれば治療法は確立されてない病気」
「えええ…病気ってなんか意外だなぁ」
「ワクチンは開発されてたから、それ持ってこの時代に飛んだの」
「ああ、だからリング争奪戦の時や白蘭の決戦後、ザンザスにそれ打とうとしたんだ…」
「父が弱っている時くらいしか無理そうだったから」
「た、確かに…」
「まぁ最初の機会はあなたに潰されたけど」
「う、ご、ごめん…」
「もういいわ、未来で打てたし…父の死は無くなった」
「じゃあヴェロニカさんはもう未来に帰るの?」
「そうしたいけど、未来から連絡がくるまで待機」
「そっかぁ…あ、このこと誰にも言わないよ、約束する」
「漏らせばカッ消すがな」
「ひぇぇええええ、そこはザンザスに似ないでよ!」
「それより、聞きたい…何故私の正体が分かった?」
「ああ…本当に……勘みたいなものだったし…ユニの言葉がなければ絶対分からなかったよ」
「ユニの?」
「あ、ユニ知ってる?」
「知っている、大空のアルコバレーノだろ」
「ああ、うん。ええとね未来ではその、ヴェロニカさんの存在が無くなってたからどうしてだろうって思ってリボーンと調べてたんだ」
そんなことしてたのか。
確かに私まだ生まれてないしなぁ…
「存在のないことをユニに聞いてこんなこと有り得るのかなって聞いたんだ」
そこは入江正一じゃないか?
まぁ入江でも知るわけはないが。
でもユニはどの時空にも点として存在出来るから、何か知っているかと思ったのかな。
「そしたらユニがね、もっと先の未来の人であればって口にしてたんだよ」
「それで、私の正体を知ったのか」
「あ、いやそのあとに、ヴェロニカさんの襲撃の時炎の壁みたいなの出したでしょ?」
「ああ」
「あれがとってもザンザスの炎と似てると思って……そのあとで今までのこと思い出したら自然とそうなのかもって思って」
なるほど、証拠半分、超直感半分ってことか。
「あの襲撃者がヴェロニカさんでザンザスの子だったら殺しちゃダメだと思って、爆発の後そっちに向かったんけど…」
「…」
「いきなり茂みからザンザスがヴェロニカさん抱き上げながら出てくるから、そこらへんで確信したかな」
「なるほど、な」
「あとザンザスが少し変わってたから多分20年後と入れ替わってたんじゃないかって思ったんだけど…それなら辻褄もあうし…」
超直感こっわ!
「確かにあの時父は私のもっていた10年バズーカで20年後の父が10年後のあの時代に飛ばされてきた」
「やっぱりかぁ……っていうかバズーカ持ってたの⁉」
「あなた達が未来に行くことは余め聞いていたからな…バズーカでタイミングを合わせて私も飛んでいた」
「あああ、なんか全部納得いっちゃったなぁ…そっか…そうだったんだぁ」
「因みに私が一人で過去に飛ばされたのはあなたのせいだぞ」
「え⁉俺⁉」
「未来でヴァリアーの面々に袋叩きにされてたって聞いた」
「うそおおおお⁉えええ、俺未来でボコボコにされるのおおおお⁉」
沢田綱吉は悲壮に塗れた様子でその場に崩れ落ちる。
そのあと喋ることは喋ったので、沢田綱吉は帰るようだ。
「もうリボーンにはヴェロニカさんを探らないように言っておくよ」
「それは助かるな」
沢田綱吉は玄関で靴を履き、ドアを開けると何かを思い出したかのようにヴェロニカの方に振り向く。
「そういえば、ザンザスがヴェロニカさんを大切に抱き上げてたから何か意外だったよ…」
「そうか………」
「ザンザスも娘は大事なんだね」
ああ、彼までもが言ってしまうのならば…もう信じるしかないじゃないか
❝それを愛情と言わずなんていうのよ!❞
「ああ……強くてカッコいい自慢の父だ…」
目の前の沢田綱吉は目を少し丸くして、笑みを浮かべる。
「ヴェロニカさんは笑った方がキレイだよ」
「それは笹川に言ってやれ」
「ええ⁉何でそれをっ、ていうか未来じゃ俺って京子ちゃんとどうなって――――」
無意識に笑っていたのか…
にしてもこの主人公め、そのタラシ文句はヒロインに言ってやれよ。
私はそんなこと言われても、この時代に人達と年齢離れすぎて
沢田綱吉を帰した後、私は部屋に戻る。
ふとベッドの上の携帯が鳴っているのに気付いた。
「もしもし」
『やぁ、君がヴェロニカって女かい?』
「………マーモン?」
『おや僕のことを知っているのか…』
内容からして、多分今の時代のマーモンだと思うけど、何で私の携帯知ってんだ?
「何?」
『未来の僕が君にあるものを送るよう言われたんだけど、身に覚えはあるかい?』
「あるわ」
『そう、じゃあ送るけど、住所教えてくれないかい?』
「………いや、私がイタリアに向かうわ…直接渡して」
『了解したよ、にしても未来の僕は君を無償で助けてるみたいだけど、一体何者なんだい?』
「今はまだ知る時じゃないわ」
『あっそう、まぁいいや…待ってるよ』
マーモンはそれだけ言うと、通話を切ってしまう。
「未来のマーモンが?」
未来編終了です。
沢田綱吉だけがヴェロニカの正体を見破りました。
ヴェロニカからしたら沢田綱吉って近所の勘のいいおっさん的な存在なんだろうなと思います。
えーと、次回で最終話です。