終末のイゼッタ 黒き魔人の日記   作:破戒僧

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Stage.23 不思議 study now

 

 

1940年7月25日

 

しばらく……といっても、長くてほんの2~3週間程度ではあるだろうけど、時間ができたので、この隙に『魔女の力』の研究を進められる。

 

以前から、軍大学での勉強の合間とか、軍務の合間を縫って続けてきたことではあるけども……ちょうどいい機会だし、振り返りつつ進めようかな。

 

アレス、ニコラ、マリーの3人は、それぞれ形は違えど、先祖代々というか昔からというか、『魔女の力』に何らかの形で関わるような立場にいた。

 

マリーは、世間一般に知られないような形で『魔女の力』を色々使ってきた家の出だ。それも、イゼッタとはまた別の形での使い方も色々と知っている。

 

アレスは、『魔女の力』について、様々な面から研究を続けてきた家の出だ。一昔前になるが『アレイスター・クロウリー』といえば、彼の故郷ブリタニアでは眉唾だが有名らしい。

 

ニコラは、『魔女の力』と深く関わりがある『錬金術』を研究してきた家の出だ……というか、彼女自身『錬金術』を現在進行形で研究している。

 

そして、そんな3人の仲間である僕は……正体不明というか、自分でもよくわからないうちにではあるが、魔女の力や、それに近い力をこの身に宿している。

 

ある一件を経て互いの事情を……一部は自分ですら知らなかったそれを知り、それらを通じて彼らとはより仲を深め、共通の目的を持ち……そして、今に至る。

 

さて、繰り返すが今回僕は、ニコラとアレスと協力して、この魔女の力の研究を進めようとしているのである。

 

ニコラの使う『錬金術』は、魔法・魔力を巻き込んだ化学反応を起こして物質を変異させたりする、学問としての側面が強いそれであり……決して『鋼』系のそれではない。手をパンってやってバリバリってなって変形、とかいうことはできない。

いや、研究を進めればできなくもなさそうなんだけど、今のところは薬学の発展形だ。

 

しかし、だからといって地味だとか役に立たないということはなく……今はまだ小規模な研究に甘んじている部分が多いとはいえ、その有用性は、下手をすれば、ないし場面によっては『魔女の力』を単体で用いるよりも圧倒的に上だ。

今までにない性質の物質を作り出せるというのは、それだけの意味を持つ。

 

現に、あの『レイライン計測器』だって、ニコラが作ったものなんだから。

材料に使われている物質のうちいくつかが、ニコラが『錬金術』で作成したものなのだ。この時点で、『錬金術』のもつポテンシャルというか、可能性そのものの大きさというものが知れる。

 

訳が分からない力であるがゆえに誰も手出しできず、それゆえに無敵に近い立ち位置にいる『魔女』の優位性の牙城を崩しかねない要素足りうるわけだから。

 

さて、『錬金術』についての説明はこれくらいにして……その研究を進めてる現状についてでも記しておくとしようか。

 

ゲルマニアの軍務を進め、僕のお使い(意味深)にあちこち飛び回ってもらっている傍ら、ニコラには『錬金術』を用いた新物質等の研究も進めてもらっているのである。

 

というか、僕ら3人もがニコラに師事して『錬金術』をある程度とはいえ使えるようになっているので、共同研究している、と言ってもいいかもしれない。

軍大学で、わざと人気のない暇なゼミに所属し、そこの集会と称して魔法系統の研究を行っていた時から、そんな感じである。

 

さて、そんな錬金術を使って色々研究を進めているわけだが……僕らはすでに、一般常識を逸脱したいろいろな物質を作り出すことに成功している。

もちろん、1つとしてゲルマニアには……というか『錬金術』そのものの存在すら報告してはいないけども。

 

魔力を感知して発光する上に、磁力に反応する砂鉄のように、吸い寄せられるように動く金色の砂。『レイライン計測器』の中身はコレである。

 

既存のそれよりも吸収が早く、ゲームとかの薬並みに速攻で効果が発揮される傷薬その他。

 

鋼鉄よりも頑丈でありながら、プラスチックか何かかと思うような軽さ、そして加工のしやすさを誇る特殊合金。名前はまだない。

 

わずかな量ですさまじい熱量を、威力をたたき出す高性能爆薬。

 

そして……マリーと協力して、つい最近作成に成功したという、レイラインを流れる魔力そのものを結晶化・物質化させた『魔力結晶』。

 

現時点でこういったものを作り出すことに成功しているわけだけども……今後、ゲルマニアを『ぶっ壊す』ことを目的に色々と進めていくことになれば、もっといろいろなものを作り出す必要性に迫られることだろう。だから、時間のある今のうちに、技術を進歩させておきたいものだ。

 

……あと、僕の体そのものについての研究も。

明日からになりそうだけど……なるたけ把握しておきたいな。

 

 

1940年7月26日

 

今日は、ほとんど1日を僕の体の研究に費やした。

簡単にまとめておこうかと思う。

 

まず僕の体は、いつからなのかは知らないけど……一部ではあるものの、『魔女の力』の類を宿したものになっていた。

具体的に言うと……あの『種』である。

 

今でこそ意識してできるようになってる、あの頭の中で『種がはじけた』ようなイメージと共に、身体能力と思考速度が爆上がりするあの現象……勝手に『SEED』って呼んでるアレについて。

 

実は、あれ自体というよりも……使った後に問題があるのだ。

 

あの能力、一度使うとしばらく使えないんだけど……そのクールタイムが、その間どこにいるかで違ってくるのである。

 

具体的にもう言ってしまうと、レイラインが流れている土地だと、回復が早い。

太いレイラインが流れていれば、最速で30分前後でまた使えるようになる。そしてそれに伴って……疲労が取れたり、体の調子が整うのまで早くなる。

 

逆に、その土地に流れていない場合、遅い……というか、ほぼ0だ。回復しない。いつまでたっても、あの能力が使えるようにならない。

以前、軍大学の合宿で行った先の、レイラインが流れていない土地では、使用後丸々1週間たっても使えるようにならなかった。

 

また、満タンまで状態回復しきっていない……つまり、『種』がまだ小さい状態で無理やり再発動させることもできるんだけど、そうすると早く効果切れるわ強化の度合いも低いわで、非常時以外はやらない方がいいな、と思う。

 

とはいえ、この能力自体は……元々高い僕の身体能力を大幅に強化してくれる、いざという時の切り札足りうる能力なので、重宝している。

イゼッタの時も、コレのおかげで戦えたと言っても過言ではない部分もあるので。

 

これについてはわかったことは、今のところ、ない。

まあ、学生時代にさんざん検証を重ねていたことなので、それは仕方ないだろう。

 

問題は……僕が『記憶』を取り戻して以降、使えるようになった『魔女の力』についてだ。

 

使えるようになったと言っても、僕のコレはイゼッタやマリーのそれと比べて、弱かった。

何がかと言えば、出力が。

 

この力について研究を重ねてきたアレス曰く、『魔女の力』と一言に言っても、全ての魔女が同じように力を使えるわけではない。力の大きさ、繊細さが十人十色なのだ。

 

そして、その『大きさ』には……一定の法則のようなものがあるとのこと。

 

曰く、魔女が発揮できる力の大きさには……いくつかの要素がかかわっており、それらについて優れているほど、また優れているものが多いほど、大きな規模で力を使えるらしい。

 

具体的に言うと、『才能』『熟練度』『精神力』『演算能力』『補助』『レイライン』『生命力』……これら、7つの要素が。

 

1つ1つ、解説してみようか。

 

『才能』……読んで字のごとく、『魔女の力』を扱うための、単純な天与の才覚。

 

『熟練度』……その『魔女の力』を使いこなすためにどれだけ訓練を重ねて来たか。経験。

 

『精神力』……ちょっとややこしい。力を使うに際して必要な思考の強靭さというか、集中力みたいなもの。漫画で言えば気合いとか、意思の強さとか、そのへん。

 

『演算能力』……学問的な意味での頭の良さ。計算能力。暗算や空間把握、思考速度など多義。また、魔法を使う際の効率のいい方法など、一部の知識や経験を含む場合もある。

 

『補助』……魔女の力を使うに際しての、外部からの支援。ゲーム的に言えば、アイテムとか武器、魔法の杖何かを使って、力をブーストしたりするイメージ。

 

『レイライン』……これがないと魔法使えないので、その要素として。単に燃料だな。

 

『生命力』……命そのもの。体力、あるいは寿命と言い換えてもいいらしい。この要素に限っては、普通に魔女の力を使う分には関わってこないらしいけど……。

 

これら7つの要素の高い低いによって、力の大きさは変わってくる。

 

試しに、現在僕が知っている3人の使い手について、検証してみた。

特定条件下でしか関わってこない、『補助』と『レイライン』、『生命力』は除いて……純粋な個人の力量と言っていい、残り4つの要素で。

 

まずマリー。彼女は、イゼッタ同様先祖代々力を使える、天然ものの魔女だ。

ちょっと出生に特殊な事情があるんだけど……それは置いておいて、彼女の『力』だ。

 

幼いころから、隠れてとはいえ訓練を欠かしていない彼女は、『熟練度』においてはかなり高い。『精神力』や『演算能力』も人並み以上ではあるだろう。『才能』については、本人曰く『並』らしい。

その結果として、総合的な能力の大きさは……普通に手に持てるようなものを動かすだけなら自由自在。あまり重いものになると、できないことはないが、ゆっくりとしか動かせない。

 

次に、僕。……そもそも魔女の血脈じゃないはずなんだけどもね。いや、孤児院に来る前の記憶ないから、そりゃそもそもわからないか。

 

『才能』は不明。

『熟練度』は皆無。こないだ目覚めたわけなので当然だ。

そして……若干自画自賛だが、『精神力』と『演算能力』はかなりのものだと自負している。多分だが、僕は現在、ほぼこの2つだけで力を使えている状態だ。

だからこそ……せいぜい、手に持てるものを動かす程度しかできない現状なわけで。

 

最後にイゼッタだけど……彼女に関しては、僕ら2人と比べるのが間違ってるんじゃないか、ってくらいに、色々と前提条件というか、ジャンルが違う気がする……。

 

多分だけど、『演算能力』なら僕やマリーの方が上だろう。

が、それを補って余りある『才能』と、幼いころから力を使ってきたことによる『熟練度』、そしてあの、意外なほどの頑固さや真面目さ、意志の強さが生む『精神力』……この3要素が大きい。

 

特に、マリーの見立てでは『才能』がすさまじいらしく……魔女の中でも、いわゆる『天才』と言っていいくらいだろう、とのこと。

その結果が、あの、戦車やら戦闘機やらをポンポン投げ飛ばし、魔力による強化で戦車の装甲をランスでぶち抜き、空を飛べば戦闘機と同レベルの最高速度と縦横無尽のゲ○ター軌道を可能にし、しかもそれを何時間も続けられる……という、出鱈目極まる出力である。

 

おまけに、不足しているはずの『演算能力』については、『経験則』とか『直感』で補っている可能性が高いとのこと……何だよそれ。ありか、そんなのありなのか。

 

……はっきり言って、『魔女』というチートの中の、さらにチートの存在であるようだ。

そんなもん、正面から相手できるか。よく勝てたな、僕……。

 

これらについても、今後技術関連の研究を進めていく段階で、わかること、できることが増えていくだろう。こうご期待。

 

……脱線したな、いつの間にか。

そんなわけで、僕の『魔女の力』は……ないよりはまし、程度のものでしかない。

 

けど、使い方次第で役に立つだろうし、訓練すれば、あるいは補助用の装備か何かを作れば、今後強化され使い物になるものになっていく可能性もある。諦め、投げ捨てるものでもないだろう。

 

それと、僕の……新たに発現した、もう1つの能力について。

あの、何かよくわからないけど、他人の感情とかが大体、おおよそ、大まかにわかる能力。ただし、力の発動にムラがあって、とても安定しているものではない。

 

こっちに関しては、ほとんど何1つと言っていいほどわかったことがなかった。

 

色んな観測機器を使ってみたんだけども……『魔力』に近い波動をわずかに検出できただけ。

マリーも、僕がその力を使う時に、わずかながら『魔女の力』に似た、けど微妙に異なるような感じがした……って言ってた。

 

結論、何もわからない。

ただ、今までの感覚とか予想のとおり、他人の存在や感情を感じ取る能力なのは確かなようだけど……

 

……マジで脳量子波とかじゃあるまいな?

 

 

 

1940年7月28日

 

マリーの指導の下、『魔女の力』の訓練を進めている僕であるが……それと並行して進めている『錬金術』の方の研究に進展があった。

 

それも……かつてないくらいに大きな進展が、だ。

 

錬金術を使って作った『魔力結晶』……アレを調べているうちに、自然界に普通に存在する結晶系の物質と同じように、密度とか純度を上げられそうだと気づいたのが始まりだった。

 

薬品とか実験機材を使って研究を進めた結果、確かに純度その他を上げて、高品質な『魔力結晶』を作り出すことには成功したものの、壁にぶつかってしまい、これ以上は無理か……と考えた時に、ふと思いついたことがあった。

 

その壁っていうのが、今ある薬品や実験機材じゃ、これ以上、狙った形にレイラインの魔力を変質・固定化させられない、っていう問題だった。

今、僕らが薬品や化学反応を用いて行っている、分子構造その他の書き換えについて……

 

これはつまり、分子構造を『動かす』作業である。

しかし、パズルや模型じゃあるまいし、直接手を触れて組み替えるなんてことはできない。だからこそ、化学反応の力を借りているが、そうすると狙った動かし方をするのが難しい。

 

……だが、ちょっとまて。

僕らは今まさに……『手を触れたものを思い通りに動かす』という技能を持っていなかったか?

 

確かに、顕微鏡を使ってなお目に見えない領域のそれを『動かす』、あまつさえ『組み替える』なんて芸当、普通に考えて不可能だ。

 

けど、もしそれができたら?

分子構造や、それ同士の結合の組み替え……そんなものを、できるとしたら?

 

仮に、それをやる場合を考えるとすれば……そこに必要なのは『出力』ではない。『精密さ』ないし『正確さ』だ。

そこさえクリアできれば……これは、ひょっとして……

 

そう思いついた僕は、ニコラとマリーにそれを相談し、手始めに、水溶液中から物質を結晶させる段階で、『魔女の力』を使うことによる密度・純度の操作について実験をしてみた。

 

結果……成功した。

 

まだまだ大雑把な――決してふさわしい言い方ではないが、目標設定や到達点を考えれば妥当な言い方だ――やり方ではあるが、今までにないレベルの密度・純度の『魔力結晶』ができた。

 

当然これは、魔法がらみでない普通の物質の作成の際にも使える。試してみたら、塩化ナトリウムやミョウバンの結晶実験で同じことをやったら、理科の教科書の訂正が必要なレベルでうまくいった。

 

さらに、結晶じゃないけど物体の状態変化その他が起こるタイミングでも応用可能な技能だったらしく……手近な軍事工廠にお邪魔してその一角を借り、金属やガラスの熱溶融からの形成の際にそれをやってみたら……通常よりも密度が高く、頑丈な物質ができた。

 

……ヤバい、これ何気に技術革命だよね?

机の上で理論を組み立てて、理想的な分子構造の設計図とかを作れば……いろんな超常物質を作れてしまうんでない?

 

しかも、そうして作った物質に共通する、ある特徴が。

 

どうも、こうして魔力による措置を介在させて作った物質は、その後魔力の影響を及ぼしやすいというか……要するに、『魔女の力』で動かしやすいのだ。

 

実際に、結構な重さになる鉄製の軍刀を作ってみたものの、まだ未熟な僕の力でも、浮かせて軽々と、自由自在に動かすことができた。

 

しかも、これはマリーが使った場合も同様だったけど……どうやら、僕が自分で作ったものを、僕自身が使う方がより楽に扱えるらしい。

 

試しに、全く同じ重さの軍刀をマリーにも作ってもらい、僕が動かしてみたけど、自分で作ったものの方が、どう動かすにも楽だった。マリーの方も同様だ。僕が作ったものよりも、マリーが自分で作ったものの方が使いやすかったそうだ。

 

……いいねコレ。うん。

かなりやる気になるね……今後の研究に、これでもかと応用できそうだ。

 

 

 

1940年8月10日

 

気が付けば2週間。月が替わっていた。

 

『錬金術』の研究は、今までにないペースで進歩し、実を結びつつある。

ファンタジーを通り越して、SFの領域にある物質まで手が届きそうなほどに。

 

例を挙げれば、頑丈で軽いけど宇宙でしか精製できない超合金とか、トロポジカルエフェクトで永久機関張りに万能の粒子状エネルギーを生成し続けるけど木星でしか作成できないエネルギー炉とか、人の精神に感応して機動性能を上げたり謎原理で力場を発生させるサイコ素材とか。

 

……マジで作れそうなんだよね、どうしよう。

 

それと、これらが作れそうだという研究過程で――特に最後の1つ――わりと真面目に重要そうな事実が判明したりした。

 

そもそもの話なんだけど、『魔女の力』の詳しいメカニズムとか駆動プロセスってものはどうなってるんだろうか?

 

『魔法だから』とか『不思議だね』とかで思考を止めてしまっていては永遠にわからない、その問題について……僕らはある仮説を立てつつある。

 

魔女の力は、①魔女が物体に手を触れる ②その物体に魔力を流す ③それを自在に操れるようになる……という3つの段階からなる。

 

この時、見ればわかるが……魔女が動かす物体に触れているのは②までであり……それ以降③では、魔女のその意思1つで自由自在にそれを操ることになる。

 

問題は、その魔女の『意思』を、どうやって『物体』に届けているのか、どうやって『物体』がその『意思』を受け取り、動きに反映させているのか……いやそもそも、物体が支えも何もなしに浮遊し、動くとは一体どういう仕組みで可能になっているのか。

 

ついつい『だって魔法だから』で解決しそうになるが、頑張って理論的に考えてみる。

 

ここに介在しているのは1つ……プロセス②で使われている『魔力』である。

僕の考えが正しければ、当たり前ながらこの『魔力』というものが全てのカギだ。

 

この『魔力』は、レイラインに存在しているところを、魔女の手によって引き寄せ、かき集められ……物体に流されて宿り、以後、魔女の意のままにその物体を動かすわけだ。

つまり、魔女の意思と物体の機動の仲介を担っている……もっと簡単に言えば、魔女の命令通りに物体を動かしているわけだ、この、魔力というエネルギーもとい、何らかの物質が。

 

電気であれ光であれ、目に見える形あるものは全て物質である、と前に聞いたことがある。

ならば、魔力も何かしらの物質なんだろう。魔女の精神に感応し、意思によって力を発生させ、ワイヤレスで物体を意のままに操ることを可能にするという……ホントにサイ○ミュ兵器というか……ここまで来たらもう言っちゃうけども、『サイコフレーム』を連想させる性能である。

 

実のところ、マジでアレと同じようなことも可能になるんじゃないかと思っていたりするわけだけども……ぶっちゃけ、今の技術でこれ以上のことを観測し、確かめることは不可能であると僕は見ている。

……が、コレを生かしてできることを増やす、ということなら可能だろう、とも見ている。

 

サ○コフレームも、詳しいことわかってないけど便利だし強いからって運用されてたし、だったらこっちもこっちで進められる分進めてしまおう。うん、それがいい。

 

 

 

1940年8月11日

 

昨日あんなことを書いといてアレだけども、もしかしたらわかったかもしんない。

『魔力』の正体……あるいは、それに近づくカギとなるモノというか、事実が。

 

決め手は、魔女の『意思』……言い換えて『精神』を、現実に、『物体』に反映させる力を持っているという点だ。

 

それに気づくちょっと前、ニコラとマリーと協力して、『魔力結晶』の高純度化の実験を引き続き行っていたわけだけども……その過程で、ごく少量ではあるが、それをまた別な形に変質させることに成功したのである。

 

『魔力結晶』は、レイラインの魔力を固形物にして、持ち運びとか保存を容易にしたもの。

しかし、取り回しについては……レイラインの魔力をそのまま用いるのと変わらない。持ち運びが容易で、持ち込めばレイラインが通っていない土地でも魔法が使える。電池みたいなもんだ。

 

ただ、魔力結晶は精製した後ほっとくと、氷が解けるように徐々に蒸発していき、最後にはなくなってしまうので、保管にはあまり適さないけども。

そのうち、方法を考える必要が出てくるかもしれない。

 

そして、『錬金術』を……『魔女の力』を用いて精製した物質には、『魔女の力』を作用させやすい、っていうのは、こないだの日記で書いた通りだ。あれからいくつか、他にサンプルも作ってみて……全て仮説通りのスペックを発生させることに成功している。

 

……問題はこの後だ。

 

本当に単なる思い付きだったんだけど……その、『魔女の力を作用させやすい』という性質を『魔力結晶』につけられたらどうなるかな、と、ふと思った。

 

しかし、そもそも精製に魔女の力を使う『魔力結晶』に対して、『魔女の力を使って作る』という精製条件を当てはめることなんてできるはずもなく……ならばどうする、という話になって。

 

そこで、『魔力結晶』の精製段階において、わざと不純物を混入させて、それと一緒に晶出させることで、混合物という形になるが、どうにかならないか……というのを試してみた。

 

結論から言えば……幾度かの試行錯誤の末、うまくいった。

 

コランダム、という物質を知っているだろうか?

鋼玉、とも呼ばれる物質で、酸化アルミニウムの結晶からなる。純粋な結晶は無色透明だが、結晶に組み込まれる不純物イオンにより赤や青などの色がつき……それによって『ルビー』『サファイア』などと呼び分けられる……要は、宝石になるわけだ。

また、宝石の他にも、研磨剤や耐火物原料などに用いられたりもする。

 

テルミドール共和国制圧の際、研究機関から押収した資料の中に、コレを人工的に結晶させる技術が載っていたので、試してみたら……うまくいった。

 

レイラインの魔力と一緒に高密度・高純度で結晶化させ、ついでに研磨し……完成したのは、直径3㎝くらいの大きさの、無色透明の、楕円球形をした宝玉。

 

そしてコレは……完全に魔力と物質としてのコランダムが融合しており、込められている魔力を燃料として使うことはできなかったものの……なんと、魔力を扱う際に、その出力を強化するブースト能力を持っていたのだ。

さらには……限度はあったが、魔力をレイラインから吸い上げて蓄える、なんて効果もあった。予想しないではなかったが、大進歩である。

 

こないだ言った、魔女の力の出力を決定する要素の1つ『補助』が出来上がってしまったのだ。

 

これには思わず喜んでしまった僕だけども……さて、話を戻そう。

先程僕は、『魔力』の正体が分かったかもしれない、と書いた。

 

そこから、脱線したんじゃないか、ってくらいに話がそれてしまったものの……僕がそこに思い至ったのは、まさにこの後なのだ。

 

こんな形でブーストアイテムができるなんて、不思議なこともあるもんだ、と思いながら……ふと、考えた。

これがあれば、今までできなかったことができるようになるだろうな、と。

 

具体的には、魔女の力を応用した武器や素材の開発に始まり、『魔力結晶』では無理だった、魔力の安定した蓄積・保管・放出。さらには、より大規模かつ安全な、『魔女の力』を用いた『錬金術』の行使。

そう、それこそ……その場で形そのものを変形させるような、『鋼』系の錬金術すらも。

 

だとすれば、そのブースト材料になるこの物質はさしずめ……ここで、閃いた。

 

魔女の『意思』……すなわち『精神』。

物体、ないし物質……少々無理やり言い換えて、『肉体』。

この間に介在する『魔力』……それを言い換えるなら?

 

……あの、有名な荒○弘作品で、『錬金術』の観点から見て、人とは、命とは、どういう解釈をされていた? 『精神』と『肉体』、そしてもう一つ……あるものからなる、ではなかったか。

 

もちろん、アレは創作の話であって――いやこの世界も創作物の世界である可能性があるけども――しかも、作品も何もかも違う以上、安易に当てはめるべきでないというのはわかる。

しかし、実際……かなり、関係性としては近いのではないだろうか?

 

さらに言えば、僕らが作ったこの、コランダムと魔力の結晶物質……こないだ考えた、魔法使用の際の①~③のプロセスのどこに該当するのかと考えてみれば。

 

結論……②と③に該当するのだ。

正確には、②の少し前……魔力を集めるところから該当する。さらに言えば、それと②のさらに中間……に当てはまるであろう、魔力を『蓄える』なんてところにも。

 

『魔女の力』を使う際、『魔女の意思』→『魔力』→『物質の駆動』という順番のうち、魔力が絡む部分に関わってそれを補助する……『魔力』そのものと同様に、意思を受けて魔力を操り、その魔力によって物質を操る。それが、このアイテムだ。

 

使えば減る魔力を『消耗品』として蓄え、さらに『魔女の力』を増幅してできることを大幅に広げる……さっき触れたが、まるで、あの物質のようだ……というところに思い至った。

 

で、その後僕は安直に、この魔力とコランダムから作った物質を……『魔石』と名付けた。

 

『賢者の石』とどっちにしようかと思ったけども、こっちにした。

 

そして、随分遠回りしたが……結論。

魔女の精神に感応し、物体に影響を及ぼす……そんな、『魔力』の正体は……

 

 

 

…………『魂』だ。

 

 

 

 

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