1940年11月21日
ここ数日、鬼のように忙しかったわけだけども……どうにか時間が取れたので、久しぶりに日記なう。
とうとう行動を起こし……ゼートゥーア閣下らをはじめとする十数名の参謀将校と、それについてきてくれた兵士たちと共に、僕らはゲールを離反。エイルシュタットをはじめとする。反帝国連合軍に合流し、その同志となった。
その際に、ゼロからの紹介もつけてもらったので……混乱もほとんどなく合流が成立。
『ゼロが信頼してるなら』と、納得してくれたレジスタンス組織や国家代表も多い。
ひどいマッチポンプだけど。
また、裏切る際に、きちんと『手土産』も持ってきたし、デモンストレーションも行っている。
具体的には、『手土産』は、現在のゲールが、余裕そうに見えて実は足元の部分がかなり切羽詰まったことになっていることを示す書類を、閣下たちが参謀本部の権限でまるっとパクってきていた。それをそのまま持ってきて提出し、今後の方針決定とプロパガンダに役立てようというもの。
『デモンストレーション』は……まあ、勢い付けみたいなもんだ。
ちょっと話がとっちらかるものの、僕やレルゲン中佐、ゼートゥーア閣下なんかは……現在の軍部の大方針と微妙に違って、きちんと足元を見て、民衆に――それこそ、ゲールだけでなく占領地の民に対して――も優しく、丁寧に接するよう努めてきたので、割と評判はいい。
ゲールは嫌いだけど、テオドールさんは好きだ、とか言われるくらいには。
……あちこち飛び回ってるから、そんな印象に残るほど関わってる自覚ないんだけど。
おかげでそんなに印象にも残ってないから、日記にもほとんど書いたことないし……レルゲン中佐に『こういう評判になってる』と指摘された時には驚いた。
あ、そういやシュトロハイム少佐もその面では評判いいんだそうだ。
あのテンションだから好き嫌い別れるそうだけど、盛り上げ上手で敗戦後の暗いムードを取っ払ってくれたり、仕事を積極的に回して、その分いい賃金を出すよう現場に掛け合ってくれたり、仕事終わりに気前よく酒場でおごってくれたりするそうだ。
現場の職人とか、炭鉱マンみたいな体育会系の男たちに人気だそう。意外。
……さて、話を元に戻して……そういうイメージがある僕らを全面に押し出して、ゼートゥーア閣下が主張したことには、
『我々は裏切り者であり、そこを否定するつもりも、誹りを逃れるつもりもない』
『だが後悔はしていない。祖国に背を向けてでもやるべきことがあると確信している』
『この戦争の裏で、懸命に働き、祖国に尽くし、しかしそれが報われず涙を流している者がいる』
『本来すでに報われていたはずの献身、しなくていいはずの苦労、その何と空しく悲しいことか』
『その涙は、この戦争が続く限り流れ続けるだろう。流さなくていいはずの、罪なき者の慟哭!』
『我々は、それを止める力を持ちながら、それを止めようとしない者達を、止めねばならない!』
『たとえ逆賊の誹りを受けようと! 輝かしい未来を持つ者の前途を閉ざすことがあってはならない! 我々は断じてそれを見過ごさない!』
『我々軍人が戦うのは、殺すためでも死ぬためでもない! 生きるため、生かすためだ! 国の、民の、社会の、世界の、未来のためだ!』
『それを忘れた者達に、国家の導き手たる資格なし! 民をおろそかにし、国家の何たるかを見失った者達に、これ以上国のかじ取りを任せることはできない!』
『よって我々はここに、真に救うべき者達のために、戦争を終わらせることを目的として、祖国・ゲルマニアへの反逆を宣言する! 全ては、今を生きる者達の明日を守るため……選ばなくていい残酷な未来を排し、皆が未来を、明日を選べる世界を取り戻すために!』
これ一部抜粋なんだけども、だいたいこんな感じだったと思う。
その後、ゲール兵たちからの喝采をもらった上に……エイルシュタットの代表って立場で、フィーネが『私は、ゼートゥーア中将の正義と信念を認め、ともに戦う戦友として受け入れる!』と主張。イゼッタもそれに続いた。
それに加えて、根回ししておいた各国の代表からの賛同ももらい、最後には『ゼロ』から、演説込みで受け入れる宣言をもらった。さっきの推薦とは別に。マッチポンプ再び。
その結果、テルミドール方面とエイルシュタット方面の完全粉砕の武功もあいまって、僕らは連合国に名を連ねることができるようになった。
その際、ノルド王国とアトランタ合衆国の代表者が何か言いたそうだったけど……気にしない。
どうせ、加入に見合ったレベルの手土産を持ち込んだし、その恩恵にもあずかる立場だし、大義名分もあったから、大っぴらには言えなかったんだろうけどね。つか、そう仕向けたの僕だし。
ノルドは、何度も祖国をコテンパンにされてる僕や、その上役がいることに不満だったようだし……アトランタはまあ、平常運転、といっていいのか。元から警戒してたもんね。
けど、アトランタはゾフィーの件で慎重論がぶりかえしていまだに静観ムードだし、ノルドはすでに国力も発言権も皆無に等しい上、国内の支持もマイナスに振り切れている。
というか、そこで地盤固めたゼートゥーア閣下への支持がむしろ、うん。
そんなわけで、滑り出し、スタートダッシュは順調。
もちろん、色々言われ続ける期間がしばらく続くだろうけど……きちんと対応しつつ、きちんと結果を出し続けて、行動で示していくことにしよう。
今までゲールがバカやってきたのは事実だし、その片棒を担いでたのも事実だ。
だから今後は……こっちでの活動で成果を立てて、取り返していくとしよう。
それが一番、確実で、堅実で、誠実で……後腐れ、は……なくはないけど、手っ取り早い。
1940年11月22日
地盤固めと並行して進めていたとある作業が、今日、一息ついた。
何かっていうと……『ヴォルガ連邦』への対処だ。
前に言ったと思うけども、あの国は元々、ヨセフという名のおっさんが粛清でバカやってたがためにガタガタになっていて、その立て直しの最中である。
景気づけと資源確保その他のために、わざわざ外国攻めるくらいには切羽詰まっていた。
……ここで歴史の授業。
ヨセフおじさんは元々、前の政権中枢で事務系の仕事の元締めみたいな立ち位置にいたそうで……まあ、当時の指導者(名前は忘れた)からは、使える部下、くらいに思われてたそうだ。
面倒な裏方の仕事を押し付けられる、いい手駒だと。
しかしその時から、少しずつヨセフおじさんは、自分の息のかかった人間を各部署、各地の重要なポストに潜り込ませていって……長い時間をかけて、事務方の重要な部分をすべて掌握することに成功。そのまま、極めて静かに、穏便に国を乗っ取った。
冷静沈着かつ狡猾な策略家。それが本性……だそうだ。ゼートゥーア閣下曰く。
しかし、最近精神を病んできたというか何というか……そういう方法でトップに立ったからだろうか、人間不信におちいっているそうだ。
結果、今、少しでも不穏な動きをする怪しい人間を見つけては処分する、というのを繰り返しているそうで……国中が、彼の『粛清』を恐れている状態。
有能=危険という方程式も頭の中にあるのか、側近がこの数年間で何度も、何人もチェンジしてるし……彼の政権運営を危険と見た一部の勢力が、実際にクーデターを計画し、実行する直前まで行って以降は、より取り締まりが苛烈になったそうな。
粛清に次ぐ粛清、市民レベルでの引き締めのための締め付け。
一党独裁政権の支持率はかなり下がっていて、しかし文句を言うこともできず。
……なんか、ゲールをより悪化させたような環境である。かわいそうだな、民。
……もっとも、それを利用させてもらうつもりなんだけどね……僕ら。
明日には、結果が出てると思う。
上手くいけば……またあの国に遠征だな。1か月ちょっとぶりの。
1940年11月25日
ミッションコンプリート。
何も起こらなかったがごとく、作戦は終了した。
しかし、それでいい。それが理想形だったからだ。
ヴォルガ連邦は……連合国軍の手に落ちた。
……いや、手に落ちた、って言い方はおかしいな。というか、ふさわしくない。
あくまであの国は、政権交代の結果として、帝国との同盟関係を破棄し、こっちに協力してくれることになったんだから。うん。
……当然ながら、全てこっちの仕込みですけどね?
いや、全てじゃないか……もともと、内部で頑張ってる人たちがいたのを知って、ちょっと協力させてもらってた、っていうだけの話。
どうやったかというと、まず、ヨセフおじさんがやったのとそのまま同じことをしたのだ。
各所、各部署に革命の同志を潜り込ませ……何かのきっかけで一斉に蜂起し、国家を転覆させられるようにした。そのために、静かに準備を進めていた。現政権に不満を持つ人たちが。
皆、過剰な粛清で知り合いや家族を奪われたり、財や土地を奪われたりした人たちだ。いうなれば、現政権の被害者。
探せばこういう境遇の人はいくらでも出てくるそうで、協力者探しに事欠くことはなかったと。
何年も前から、目立たないように少しずつ。
息のかかった人間だけじゃなく、あくまで『不満を持つ人間』も含めて……怪しまれないように、要請があった時や欠員補充なんかの機会に、受動的メインで送り込んでいく。
広く、浅く、多く。彼らは何年もかけて準備を進め、少しずつ毒を浸透させていった。
加えて、昨今の戦争続きの情勢が、国民の生活圧迫に拍車をかけるせいで、徐々にその反抗心は育っていき……次第に、ただの『不満持ち』に過ぎなかった人員たちのうちのいくらかは、明確な叛意を心に根付かせるようになっていく。
そして、戦争が本格化すると一気にそれは育ちはじめ、政権が全くのノーマークだったところに、同時多発的に何十人、何百人もの『不穏分子』が誕生。それらが横につながりを持ちはじめ、あっという間に革命を目指すコミュニティが出来上がった。
さらに、僕らのところのマリーがそこにコネを持っていて……彼らに、必要に応じて、僕ができる範囲で手を貸したりしていた。
目くらましのための紛争もどきの誘発、偽装の密輸ルートと犯罪集団の摘発なんかを。
そっちに現政権の目をやらせて、真に動いている革命グループに目を向けさせない感じで。
そんな感じの繰り返しで、存分に国内に根を張ったところで……決起の時。
この国って、帝国以上に中央集権で……地方は唯々諾々と、中央の言うことを聞いてるだけ、って感じなんだよね。ここ数十年、他国とは大きな戦争もなかったから、余計に。
だから……ヨセフおじさんの時もそうだったように、中央を抑えればそれで勝ちなのだ。
それをもちろんヨセフおじさんも理解してるから、中央の守りは分厚いものだったけど……それを逆に利用した。
何回かわざと不穏分子騒ぎを起こし――もちろん、自分たちとは関係ないただの犯罪者を利用してそれっぽく見せただけ――わざと警備の目を外に向ける。
連邦首都・モスコーの外から入ってくる、あるいは侵入を企てる狼藉者対策に、平時から力を割かせるようにする。
そして決行の日……巧妙に隠した、連合国から出した義勇兵を含む、決して少なくない軍隊がモスコーにひそかに向かう。そしてこれを、わざと露見させる。
そのことを察知したモスコー守備の部隊は、迎撃のために外部への警戒を密にする。
そこに、実際に連合軍が、哨戒に出ていた兵士にわざとその姿を目撃させ、連中の姿勢を外部に最大限前のめりにさせたところで……ひそかに潜入していた僕とイゼッタ、マリー、そしてニコラが行動開始。
4人で手分けして、町に入るためのゲート各所を『鋼の錬金術』で物理的にふさいで封鎖(イゼッタにも頑張って教えて覚えてもらった)。
。
ゲート下の地下通路に潜んで発動させれば、音と光もほとんど漏れないし……その近くにいた見回りとか見張りは、悪いけど無力化させてもらった。
……ニコラは魔法使えないはずじゃないのかって? ……まあ、後でね。理由は。
そうして、外に出た部隊が中に入ってこれない状況を作り出した後……前もって中に入っていた、革命グループの人たちが動き出す。
そして始まるのは……ヴォルガ連邦版『忠臣蔵』である。
ちょっと話が、というか時間軸が戻るんだけど、民衆に人気の、本当に善政を敷いていた上級の管理職の人が、ヨセフおじさんによって無実の罪で処刑される事件があった。
有能な分、民衆を扇動とかされたら……って不安だったみたいだ。なんて被害妄想。
……有能さを理由に不安を感じて、処分……何かどこかで聞いたことある話だ。
しかし、この処刑された人は、国内外にその評判が知られるくらいにいい人だっただけに、この事件で中央に恨みを抱いていた人は、軍部にすら多く……その結果、この人の敵討ちの主犯を買って出てくれたのだという。もう我慢できない、これ以上の独裁政治はごめんだと。
そうして始まった夜。大石蔵之助さんポジのどなたかを中心とした討ち入り部隊、47人どころじゃ聞かないぐらいの大人数が、逃げも隠れもせず堂々と中央に侵入、そこの守りの兵士たちと死闘を繰り広げながら、主君の仇を探して大立ち回り。
それに気づいて応援に駆け付けようとした外側担当の兵士たち。しかし、ゲートがふさがれていて入れず。地下通路も使えず。
かろうじて内側に配備されていた部隊も、仇討ち部隊の別動隊に鎮圧されて、あるいは足止めされて動けずにいた。
その間、僕らは……何もせずに見ていた。
本当は、協力しようかって言ったんだけど……自分たちの国のことだから、最後まで自分たちで何とかしたい、けじめをつけたい、敵を討ちたい……っていう、実行犯グループの皆さんの意思をくんで、前準備と後始末からだけ手助けすることになったのだ。
そして数時間後、見事に仇を討ち果たした……つまりは、政権中枢部で、ヨセフおじさんと共に甘い汁を吸いまくっていた連中を全員捕縛した討ち入り部隊が、これまた堂々と大通りを通って帰ってきて……主君とその家族が埋葬されている共同墓地にお参りしたところで、劇終。
その後、事前に準備していた、行政サイドの革命グループの皆さんの主導で、革命後の暫定政権を発足させ、そこで今までの政権運営の非を全面的に認めて謝罪。責任者の速やかな処分と、政治の方針転換、そして今までにとらえて、まだ幽閉している不当な政治犯の釈放と免罪を通知した。
これは、国全体からおおむね好意的な感情を持って迎えられた。政権側によって政治犯として処罰されていた人、家族が帰ってこず、収容所やら寒冷地での労働・木材伐採やらに送り出されて悲しんでいる人が多かったから。
そうでない感情は何かというと『誰がトップに立っても同じだろ』という諦めの感情である。これからの、まともな政権運営で喜んでもらえる日が楽しみだ。まずは来月布告される、来年度の税率で驚くだろう。常識的な数値になってて。
そして、一夜にして政権交代を成し遂げた新政権は、最後に……方針転換の1つとして、帝国との軍事同盟、ならびに不可侵条約の破棄を宣言。
この瞬間……ヴォルガ連邦は、ゲールの反戦派に遅れること数日、反帝国連合にその名を連ねることになったのである。
☆☆☆
「……それ、日記?」
「うん……何か、習慣になっちゃってさ、士官候補生の頃からずっとつけてる」
「へー……そう言えば、あの時のあの洞窟でも、何か書いてたよね」
現在……超高高度を飛行しつつ、魔力と思考のみで『ガウェイン』を操っているテオは……片手に帳面を、片手にペンを持ち、さらさらと日記をしたためているところだった。
その後ろには……機体が大きくなった分、ゆったりとした操縦スペースに備え付けられた後部座席で、きちんとシートベルトを着用して座っているイゼッタがいる。
その横には、きちんと倒れないよう固定して立てかけてある、新たな愛銃『ランスロット』があり……反対側の横には、増設した『補助席』に腰かけているニコラの姿もあった。
連邦での任務が終了したということで、後始末をマリーに任せ、3人は一足先にエイルシュタットに帰ることにして……このガウェインで移動している最中である。
テオが『日暮れ前には帰れるかな』などと考えていると、
「すごいね……テオ君は」
ぽつりと、イゼッタがつぶやくように言った。
「うん? 何?」
「テオ君が動き出した途端に、何もかも全部解決していくんだもん。ゲールの軍を押し返して、テルミドールを開放して……ヴォルガ連邦まで味方につけてさ。あんまりこういうこと言っちゃいけないんだろうけど……もうコレ、ほとんど勝ってるよね?」
「まあ……逆転が限りなく難しいところまでは行ってるね」
「そうなるように準備しておりましたので」
テオに続いて、さらりと言うニコラ。
「敵が増えたら、その分向こうも手を打ってくるだろうからね、当然。だから……そうできないように、そうなる前に戦況を、最初の一撃で極力こっちに傾けられるように準備してただけだよ」
「……えっと、つまり……すごく準備してたってこと」
「……うん、それでいいよ、まずは。ただ……僕だけの力でこれを成し遂げたわけでも、途中に何の障害も問題もなくここまで進められたわけでもない。みんなの力を借りて、ゼートゥーア閣下やレルゲン大佐なんかが超頑張って動いて、時間をかけて準備をして……ここまでやれたんだよ」
「それでも……その先頭に立って動いてたのがテオ君なんでしょ? 私や姫様じゃ、ゲール相手に、攻め落とされないように戦って防ぐのが精いっぱいだったのに……やっぱりすごいな、って」
「……比べちゃダメでしょ。ゲールそのものからマークされてるイゼッタやフィーネと違って、僕は味方の立場で内側から食い荒らす、っていう戦い方ができたんだから。得意不得意だってあるだろうし……ないとは思うけど、僕だから成功したとか、何でもできるなんて思わないでよ? 今言ったけど、色々準備して、他の人の助けも借りて、何とか成功させてるんだから。どれもこれも」
「それはもちろんわかってるよ。ただ……ほら、あんまり一気に事態が動いたから、ちょっと、何ていうか……まだびっくりしてる感じなんだ」
今まで懸命に戦って、しかし防戦一方だったことを思い返して……だからこそ、今の、たった数日でゲールに対して、チェックをかけているといっても過言ではない状況に持ち込めていることが信じられない、と語るイゼッタ。
もちろんそれも無理のないことだろうが……テオはそんなイゼッタの心の内を理解した上で、あえておどけたように笑って見せつつ、
「そりゃそうでしょ……誰を相手に今まで戦ってたと思ってるの?」
「……ぷっ、あはは……そうだったね、うん、そうだった……。ああ、そっか、そりゃ攻め込めないよね……テオ君だもんね」
「こっちも大変だったよ……毎日どこかの戦場に出没する破壊神をどうにか抑え込むのは。毎日頭振り絞って……夜遅くまで戦略考えてさ」
「むー……こっちだって毎日毎日出撃しなきゃいけなくて疲れてたんだからね。っていうか……やっぱりアレ、テオ君の作戦だったんだ…………でも……」
そこで、イゼッタは、一旦言葉を切り、
「……これからは、味方なんだよね? 一緒に……戦えるんだよね」
「……うん。ま、戦いなんてもんは……すぐに終わらせるつもりだけどね」
そんな会話の数十秒後。
エイルシュタットはケネンベルクの上空にたどり着いたテオ達は、『ガウェイン』を急降下させて……あの『収容所』の屋上に設営された、『ガウェイン』発着用のポートに着地した。
当然ながら、ゲールに反旗を翻したテオ達が、帝国軍の基地などを使えるわけもなく……現在、彼らの拠点は、この『収容所』だった。
帝国から奪い返した、『エイルシュタット』の土地に立つ、この収容所だ。
ランツブルックからはそこそこ離れているが……イゼッタは、テオが『帰ってくる場所』が、自分と同じエイルシュタットになったことが嬉しかった。
テオにしてみれば……自分の本当の『祖国』であるエイルシュタットに居を構えることになったわけで……正直に言えば昔のことすぎるわけだし、場所も大きく違うものの、なんとなくではあるが、懐かしさと居心地の良さを感じていた。気のせいかもしれないが。
そして、少し寒々しくなってきた風が吹く中……2人の帰還を、わざわざ屋上で待っていたものがいた。緑色メインのワンピースを着て、金髪を風になびかせながら。
彼女――フィーネは、コクピットから、テオが、そして彼に手を取られながらイゼッタが降りてくるのを……ほっとしたような、嬉しさを隠せないような様子で出迎えた。
そして……いつも、戦いから帰ってくる親友に向けて、一番に放っていた言葉を、
今度は……親友と、弟に向けて、
「……おかえり。よく無事で戻ってくれた、イゼッタ……それに……テオ」
「はい、ただいま戻りました……姫様!」
「報告とかは後で書類届けるからね。えーと……ただいま、フィーネ」
ついに、肩を並べて戦うことができるところまで来た3人。
祖国を、民を、欧州全ての未来を守るため、そして、親友との約束を果たすため、最後まで戦い続けると、世界を変えてみせると誓った……エイルシュタット公国の若き大公、オルトフィーネ・フリーレリカ・フォン・エイルシュタット。
幼いころに命を救われた恩を返すため、忠誠を捧げるオルトフィーネ大公の国を守り、理不尽で不条理な運命に満ちた世界を変え、人々の明日を守るため……できることは全てやって戦い抜くと誓った、エイルシュタットを守る現代の『白き魔女』……イゼッタ。
そして、数奇な運命で生れ落ちたこの世界で、その身に修めた規格外の力の数々をもって、あらゆる障害を乗り越えて『目的』を果たし……守りたいもの全てを守り、失わず、理想的な形で戦争を終わらせると誓った『魔人』……テオドール・エリファス・フォン・ペンドラゴン。
その戦いは……まだ始まったばかりでありつつも、全速力でそれを終わらせるために、駆け足で紡がれていくことになる。