東方Project×ウルトラセブン (小説版)   作:泉シロー(旧柊太)

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ご無沙汰しておりました。

外伝小説2話です。

小説化はすっかり頓挫してしまったいるので、

こちらには外伝小説をのせる形式で細々とやっていきます。

気が向いたときに覗いていただけると幸いです。


side story2 「射命丸文の手記」

東方セブンSide story2

 

 

「射命丸文の手記」

 

 

本当は記事にしたいところだが、

 

とても出来そうにないので

 

いつかどこかで使えるよう、

 

備忘録としてここに書き留めておく

 

 

 

 

 

 

妖怪の山の円盤と怪物騒ぎから数日が過ぎた。

 

今回の件は我々天狗にとっては苦々しい結果となった。

 

 

 

 

宇宙人とかいう存在が幻想郷に入り始めたのは、恐らくこの半年ほどだ。

 

今年の春頃、妖怪の間に「妖怪でない異形のモノが潜んでいる」という噂が立ち始めた。

 

丁度その頃、あの八雲紫が妖怪の山にやってきた。

 

 

後に聞くところによると

 

勝手にスキマを開いて大天狗様の屋敷に上がり込んできたらしい。

 

 

そこで八雲紫は

 

 

・宇宙人、及びその存在が疑われるものは刺激せず、

 

博麗の巫女に対処を一任すること

 

 

このことを半ば脅しのように

 

約束させられたらしい

 

 

 

大天狗様もこれには大変ご立腹の様であった。

 

 

だが私達天狗がいくら束になろうが

 

元支配者の鬼や八雲紫クラスの大妖怪が

 

本気を出せば抵抗できるはずもない。

 

 

悲しいことに天狗の誰しもがアタマでは理解していることである。

 

その辺は面子というものもあるので、誰も口にはしないが。

 

 

 

あの八雲紫に真っ向から渡り合えるとしたらあの巫女くらいなものだろう。

 

 

普段は遺恨を残さぬよう、ここまで荒っぽく出てくることは無い筈だが、

 

その点では異例である。

 

 

さらに八雲紫はよく分からない

 

条件を付け加えた。

 

 

博麗神社にある外来人の青年が来るが、そいつには決してちょっかいを出さぬように、と

 

 

当初の一同の反応は

 

誰だそいつは?

 

というものだったが、

 

 

果たしてこの後に、その青年の存在が浮かび上がることになる。

 

 

 

 

 

 

 

それから暫く後、幻想郷で人妖が消えるという異変が起きる。

 

 

奇しくも哨戒天狗の一人もこの件に巻き込まれることになったのだが、

 

 

私達が注視したのが、

 

この騒ぎが宇宙人のものだということ。

 

またこの異変の解決したのが、

 

ある1人の外来人の青年と謎の赤い巨人だということだ。

 

 

謎の巨人は空の彼方へ消えたそうで、

 

件の青年は博麗神社に居候することになった。

 

 

私は異変の後、すぐにこの青年を調べるよう、上から命令された

 

 

私としては本件はこれ以上ないスクープであり、彼を独占取材できる口実となるわけで、

 

願ったり叶ったりであった。

 

 

彼、モロボシ・ダンによると、

 

今、幻想郷には多くの宇宙人が潜んでおり、彼らの脅威から幻想郷を守る必要がある。

 

 

そのため、かつて外の世界の防衛軍に所属していた自分が、八雲紫から宇宙人対策を

 

任されている…とのこと。

 

彼が人間ではないことは、話すうち、その印象を強くした。

 

 

人間ではないが、もっと強大な力を秘めており、我々妖怪が関わるべきでない存在……。

 

八雲紫が彼を特別扱いするのも頷ける。

 

 

 

 

餅は餅屋、蛇の道は蛇、宇宙人には……ということであろうか。

 

 

上にこのことと、彼の正体について自分の印象含め報告すると、

私はすぐさま記事の制作作業に入った。

 

 

新聞記者の私としては、真実を公表することが重大な責務だと思っているからだ。

 

 

公表して、どんな騒ぎが 起こるのか見てみたいという、邪な好奇心からでは

 

「決して」ない。

 

 

とにかく八雲紫にバレる前に記事を書きあげて流してしまえ。

 

すぐに書きあげてしまえば、さすがに見つかるまい。

 

 

記事はすぐに書きあげ、印刷作業も無事に終わり、後は配るだけ……。

 

 

 

 

 

 

しかし、認識が甘かったようだ。

 

 

バラ巻く寸前に、八雲紫にバレてしまったのだ。

 

 

印刷済みの新聞は全てスキマに回収された。

 

つまり、掛かった印刷代はすべておじゃんになったということである。

 

 

言わば、私は見せしめにされたのだ。

 

あの外来人に下手に首を突っ込むと容赦しない、と。

 

 

この強引で陰湿なやり方には殺意を覚える。

 

結局は黙る他ないが。

 

 

後からこのネタを追っていた他の天狗たちは、このことを聞いて

 

皆一様に怖じ気付いたようで、

 

 

すべて八雲紫の指示通りの内容の記事に書き換えられた。

 

いわゆる検閲である。

 

 

八雲紫の指示は以下のようなものだ。

 

 

・外来人のモロボシ・ダン

 

についての記事は一切書かないこと

 

 

・宇宙人の仕業という見解は

 

各紙統一せず、ぼかして書く事

 

 

 

この指示に違えば、どうなるか分かっているな。

 

ということである。

 

 

結局、多くの天狗が膝を屈し、

 

八雲紫の指示に不承不承従うこととなった。

 

 

 

これでは報道の自由などない。

 

私は一記者としてこの件に非常に憤りを感じたのであった。

 

 

 

さて、それからしばしも立たぬうち、

 

私たちの山にも宇宙人が現れる。

 

 

事件の始まりは、

 

河童の工房から次々と揮発油が盗まれるという事件が発生したことだった。

 

 

河童たちが騒いでいることから事件は露呈した。

 

周辺に出入りしていたのが河童だけだったので、

 

容疑者は必然的に河童のみに絞られた。

 

身内の取り締まりにしか張り切りどころのない哨戒天狗たちが、

 

ここぞとばかりに警備の強化や犯人探しに躍起になっていた。

 

 

その数日後のある日の夜、

 

哨戒天狗たちがドタバタと騒がしいので、

 

知り合いの哨戒天狗の重い口を割らせると、

 

燃料庫の警備を厳重にしていたにも関わらず、どうやらまた揮発油が盗まれたらしい。

 

何やら犯人は光学迷彩装置を悪用して、

 

見張りの哨戒天狗たちを不意打ちにしたとのことだ。

 

あれだけ張り切っていたわりにまともに警備すらできないとは情けない。

 

 

 

どうも気になるのでその哨戒天狗、

 

犬走椛と共に犯人探しに向かう。

 

 

見晴らしの良い高所で遠目が利く椛に犯人たちを捜させると、

 

やがて迷彩を切った犯人たちを発見したというので、

 

言われた場所へと急行する。

 

 

そこでは河童が二匹、大八車から燃料缶を下ろそうとしていた。

 

どうして盗みを働いたのか、問い質そうとすると、銃を持って抵抗してきたため、

 

思いっきり吹き飛ばしてやった。

 

 

すると、地面に落ちると同時に河童共の姿は液体のように解け、

 

ドロドロに溶けてしまった。

 

どうやらこの河童たちは、偽物にすり替えられていたらしい。

 

 

その後改めて止められた大八車と燃料缶の場所を見ると、

 

どうやらこの先の洞窟に燃料を運び込もうとしていることが分かった。

 

 

 

その洞窟の入り口はとてつもない力で無理やり中をこじ開けられた様な形跡があった。

 

私がその洞窟の中を進んでいくと、

 

巨大な青色の皿のようなものが見えた。

 

さらに近づくと、それはどう見ても洞窟内には不自然な無機質な物体であった。

 

 

私は、その物体を見てピンときた、

 

これが外の世界で度々噂になっているという円盤ではないかと。

 

確か以前、外から流れ着いた「少年ふあん」という雑誌に載っていた、

 

円盤というものの形に似通ったものを感じたからである。

 

宇宙人の騒ぎが起きているという現状とも合致する。

 

 

私はその洞窟を後にし、

 

この件をすぐに上司たちに申し入れた。

 

 

数日間に渡る長い話し合いの末、

 

上からは博麗の巫女にこの件を任せるよう依頼せよ、という命令が私に下された。

 

ただし、モロボシ・ダンという青年にはこのことを伝えるな、ということも併せて

 

それには正体不明の青年を山に入れたくないということに加え、以下の事情がある。

 

 

一時は八雲紫にやり込められた我々天狗であるが、その反発は根強い。

 

ただ言いなりになるのは癪であるが、かといって命令に反するのも具合が悪い。

 

また、追い出しはしたいが、できれば宇宙人とあまり接触したくない。

 

 

そこで、命令には反せず博麗の巫女には宇宙人退治を依頼し、

 

状況が巫女優勢となった所で我々天狗が一斉に円盤に襲い掛かる。

 

そうして我々だけで宇宙人退治が出来ることを示す、

 

ということで天狗たちの意見がまとまった。

 

 

宇宙人という存在の様子を見るべしという慎重な意見と、

 

自力で倒したという事実を作り、天狗の面子を取り戻せという意見、両面に配慮した裁量だ。

 

 

いずれにせよ、出来るだけ早く、八雲紫に介入される前に事を進めたい。

 

 

それ故に、なるべく博麗霊夢を焚き付け、早急に手を出させる必要があった。

 

 

私はその意図を汲み取り、モロボシ・ダンがいない時を見計らい、博麗霊夢に近づいた。

 

そこで宇宙人の話を持ちかけた。更にあの巫女に博麗の巫女としての面子というものを

 

焚き付け、あの外来人に頼り辛い空気を醸成した。

 

 

日頃から傍若無人に振舞う巫女への当てつけという意味合いがあったわけでは断じてない。

 

断じて。

 

 

案の定、博麗霊夢は言伝を残すでもなく、すぐにこちらについてきた。好都合である。

 

その場にいた白黒が横着にも着いてきたが、問題は無い。

 

 

 

 

その後、例の洞窟まで巫女を案内する。

 

守矢の風祝と、勝手について来る白黒を連れて。

 

 

守谷の風祝は大して戦力になるとは思っていないが、

 

何も言わないのでは山頂の神社の神様が五月蝿いので声を掛けた。

 

円盤が居ると声掛けた時に、

 

東風谷早苗の今にも襲いかからんとする

 

あの異様な食い付きは、

 

今思い返しても気色悪かった。

 

 

洞窟に3人を案内する間、

どうも白黒と風祝はいつもの遊びと勘違いしているようなので、

 

これは殺し合いなのだ、と釘を刺してやった。

 

 

遊び感覚で犬死されても困る。

 

せめて相手の実力が測れる程度には接戦してもらわねばならない。

 

簡単に死なれると後味も良くない。

 

 

その点、流石に巫女は弁えているようだったが。

 

 

かくして、巫女、風祝、魔女による円盤退治が始まった。

 

我々天狗は折を見てその戦闘に割って入る、

 

筈だった。

 

 

 

 

結果的には、我々天狗は傍観することしかできなかったのである。

 

何しろ、衝撃の展開の連続であった。

 

 

巫女たちと円盤の激闘。

 

追い込まれた円盤から飛び出したのは巨大な鳥のような怪物。

 

そいつは鷹のように広い翼を持ちながら、脚がなく、動く達磨のようにのそのそと動く

 

気色の悪い怪物だ。

 

 

巫女と風祝と魔法使いの必殺技を避けもせず、正面から受け止めてみせる怪物。

 

一瞬の油断により怪物と円盤の挟み撃ちに遭い、撃墜される巫女。

 

巫女は仙人に救われる。

 

しかし直後煙が立ち込め、その中から、

 

突如として、2本足で立つ、牛のような角をもった巨大な化け物が現れる。

 

 

鳥の化け物と牛の化け物による激しいぶつかり合いが繰り広げられ、

 

妖怪の山はかつてないほどに激しく鳴動する。

 

 

そのうち牛の化け物は口から火を噴いて鳥の化け物に襲い掛からんとしたが、

 

鳥は巨大な両翼をバッタバッタと羽ばたかせると

 

嵐とも見紛うほどの大風が巻き起こり、牛の口から出た炎は大風に乗り、

 

牛の体へと逆戻りしてしまった。

 

 

これには熱くてたまらぬと牛の怪物は谷中に倒れこみ、

 

駄々っ子のように手足をばたつかせた。

 

 

駄々っ子とはいえ、五重の塔よりも高く、東大寺の大仏を優に超す巨体である。

 

怪物の周りの木々は次々と巨大な手足になぎ倒されていった。

 

 

すると牛の怪物は、現れた時と同じように煙のように消え、

 

代わりにあの「うるとらせぶん」とかいう赤い巨人が現れた。

 

 

今度は赤巨人と鳥の怪物の闘いが始まる中、

 

八雲の式である狐が円盤に向かって火を放つ。

 

 

するとまもなく円盤の周りから火の手が上がり、

 

円盤が空に浮き上がっていった。

 

 

浮きあがった空からは、

 

次々と大きく亀裂が入った空間の切れ間が円盤を取り囲む様に現れ、

 

巨大な弾幕が絶え間なく円盤に向かって降り注いだ。

 

 

こんな芸当ができる妖怪は、八雲紫において他ない。

 

とはいえ、これはやり過ぎではないか、流れ弾がポンポン山に降り注いでいる。

 

 

妖怪の山は2体の巨体による激しい戦闘と、

 

降り注ぐ大量の弾幕の雨により、山肌はボコボコ、木々は次々となぎ倒され、

 

逃げ惑う動物や妖怪たちとで阿鼻叫喚の地獄絵図となった。

 

 

降り注ぐ弾幕や怪物が起こす大風を必死で避けていると、

 

山中から立ち上がった光の矢が円盤を貫き、

 

谷の中に落ちていき、火を噴き上げるのが見えた。

 

 

どうやら白黒が八卦炉を使ったらしい。

 

 

すると背後で猛烈な光が弾けるのが見え、一瞬眩すぎる光が視界を包んだ。

 

視界が開けてくると、鳥の怪物が地面に横たわり、真っ黒に焼け焦げているのが見えた。

 

そして赤い巨人は飛び上がり、遥か彼方へ飛び去って行った。

 

 

あとで聞くところによると、赤き巨人が太陽の光を肩の甲冑に集め、

 

十字に手を組むと、そこから撃ちだされたとてつもない光が鳥の怪物を襲ったそうだ。

 

 

 

青天の真昼にも拘わらず、特大の雷が落ちたような衝撃であった。

 

青天の霹靂とはまさにこのことであった。

 

 

 

 

 

この間、我々天狗は、どうしていたかといえば、

 

円盤を追い詰めたところまでは想定内であったが、

 

鳥の怪物が現れてからは驚天動地の出来事の連続に指揮系統は混乱。

 

今や遅しと円盤退治に躍起になっていた天狗共も呆然とするばかり。

 

戦闘が激しさを増してくると、

 

怪物たちが起こす大風や炎、空から降り注ぐ弾幕を避けるので精一杯であった。

 

 

 

 

円盤や怪物たちの戦闘が終わると、

 

私たちの前には、荒れ果てた山と、円盤の残骸、焼け焦げた巨大な鳥の死骸が

 

残っていた。

 

私たち天狗は、山中に残っていた火災の消火、残骸の片づけ、なぎ倒された木々の処理、

 

ボコボコになった山肌の埋め合わせ、といった後始末を行う羽目になった……

 

 

 

その後の山の復旧作業にはやがて八雲紫やその式神たちが協力に入り、

 

特に廃棄物の処理に大きな助力となった。

 

しかしこれで八雲紫に大きな貸しを作ることになった。

 

我々天狗は面子を取り戻すどころか、

 

逆に八雲紫に頭が上がらなくなってしまったのである。

 

これにはどうにも歯がゆい事態である。

 

 

 

結局、今回の騒動は、宇宙人の脅威というものを辛くも味わさせれる出来事となった。

 

 

今回の件で宇宙人の実力を身をもって知らされた我々天狗であるが、

 

未だに謎は多く、八雲紫もその情報の多くを開示しようとしない。

 

我々天狗にも多少は外の世界の情報を探る手立てがあるのだが、

 

外の世界との行き来が平易である八雲紫一派に情報収集能力で敵うはずもない。

 

 

残された円盤の残骸も、幻想郷には過ぎた技術と、

 

全て八雲紫がスキマで回収してしまった。

 

 

しかし、一番の問題は、あのウルトラセブンとかいう赤き巨人が、

 

八雲紫の配下にあるかもしれないということである。

 

あの強烈な光を放つ光線は、我々天狗どころか、

 

幻想郷を滅ぼすには十分過ぎる威力があった。

 

もし、あの巨人が八雲紫の従僕であるならば、

 

最早八雲紫がこの幻想郷を支配しているに等しい。

 

 

だが、更に恐ろしいのは、あの巨人が八雲紫の配下ですらない場合である。

 

今でこそ宇宙人やその手先の怪物と戦ってくれる都合の良い存在であるが、

 

そのうち我々妖怪の素性が知れて、いつその矛先がこちらに向かってくるとも知れない。

 

最悪幻想郷の存亡に関わる事態にも発展しかねない。

 

 

また、八雲紫の動向から察するに、モロボシ・ダンとかいう青年とあの赤き巨人には

 

何か繋がりがあると見るべきだろう。あの青年には迂闊に手を出すべきではない。

 

 

今回の一件で改めて思い知らされたが、

 

宇宙人の存在に実力や情報で八雲紫を上回れない以上、

 

当面は八雲紫の意向に無条件で従わざるをえないだろう。

 

歯向かえば、次にどんな痛い目に遭うか分かったものではない。

 

 

しかし、ただで転ぶこの射命丸文ではない、いつの日かこの内容の記事を書き上げ、

 

必ずや八雲紫に一泡ふかせてやる。

 

 

 

 

 

                            星と夏と土の年 葉月

 

 

 

 

 







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