哪吒ちゃんが宝具5になったから聖杯捧げてたから仕方ない(震え声
#20 九校戦に潜む悪魔
8月6日––横浜某所。
円卓に座った所謂『
と言うのも、彼らは九校戦の勝敗を利用した賭博を行っており、それは胴元がオッズを決めて客の相手サイドとして参加するイレギュラーなブックメーカー方式な為、得意先達に対して意図的に大本命である一高に掛け金を集中させ、三高に優勝させる事で利益を上げる予定であったのだが、数々の妨害の結果も虚しく依然一高優位。
優勝候補達や新人戦で活躍しかねないダークホース達に対して不慮の事故を起こしたにもかかわらず、だ。
このままでは多大な損失を生んだ責任を問われ、死よりも恐ろしい目に遭わされる事は目に見えている。
それ故にこうして集まり、対策会議を行っているのだが、誰一人口を開く事が出来なかった。
それは彼らのボスによる粛正への恐怖心もあるが、それ以上に彼らを凍りつかせたのは九高戦の報告の中にあった一つの出来事。
––––大会スタッフとして潜入していたエージェントの一人が死亡したと言う報告。
コレだけならばそのエージェントがヘマをし、その結果軍の人間乃至警備スタッフの者に殺害されただけに思える、その死に様が普通だったなら。
発見されたエージェントは会場のゴミ箱にペースト状にされていたと言う、しかも皮膚も筋肉も骨髄も全て一緒くたにすり潰された状態だと言うのに、発見された瞬間までは意識があったというのだから最早人間の仕業だとは思えない。
実際、俊彦は相手の身体を意識を保つ為に必要な最低限の部分と眼球だけを残し、魔技を使用する事で死亡しているにもかかわらず脳だけ生かす事で自分の肉体がペーストされた中でも周囲が認識出来るだけの意識と視界を残している。
これ以上手を出すのなら貴様らもこうなる、そう言うメッセージを込めた惨殺をなんの痕跡も残さずに平然と行い、そして大会の中へと戻って行った狂人に対して彼らは進退が窮まってしまったのだ。
九高戦の結果を運否天賦に賭けてこれ以上の妨害を控えるか、はたまた賭けに敗北した後の恐怖を取り除く為に当初の予定通りに妨害を行い三高を勝たせるか。
どちらに転んでも失敗すれば死、重い会議を終えた彼らは一様に頷くと、翌日以降の妨害工作を行う指示を出してしまう。
会場に潜む悪魔は自分達まで辿り着けない、それだけの情報をエージェントに持たせていない以上、悪くて自分の右腕が犠牲になる程度、そう判断し、より恐ろしい自らのボスによる粛正を回避する事を念頭に置いてしまった。
––––彼らが敵に回す事になった男は魔人だと言うのに。
一方、会場の宿舎でも会議が行われて居た。
それはなんの痕跡も残さず大会スタッフが惨殺された事に対する会議だ、内容は発見直後までは意識があり、肉詰めされたゴミ箱を運んだ際に死亡したスタッフに対する仕打ちには残忍且つ冷酷な物であり、その犯人の捜査会議と言ったところだろうか。
監視カメラや巡回の関係者などの目に一切映らず、凶器も犯行現場も発見出来ていない彼らの捜査は初動の段階で暗礁に乗り上げていた。
一応そのスタッフの不在時間を割り出し、その時間帯にアリバイのない人物を割り出しては見たものの、ほぼ全ての人間を疑うような物になった為に使い物にならない。
死亡したスタッフの最後の目撃証言によって発見現場周辺を一人で歩いていた事が判明しているが、それ以降の目撃証言も無く、監視カメラの映像を確認しても彼がペーストにされたであろう時間帯の前後にその周辺を通った人間は居なかった。
正に怪事件、捜査資料を読んだ大黒竜也特尉にすら
仮に思考を誘導する様な魔法を使ったとしても明らかに人間が自分の力で行える範囲を超えているし、そもそも魔法を使ったのであるならばその痕跡を大黒特尉が見逃す事は無く。
結果としてこの件は限りなく他殺に近い自殺と言う形で処理され、一部関係者には箝口令が敷かれる事になるのだった。
「……ふぅ」
「おや? 部屋に戻って来て早々にため息なんて、達也君にしては珍しいね? もしかして告白でもされて来たのかい?」
「いや、そうじゃないが……ちょっとな」
諸事情あって外出していた達也を出迎えたのは同室である俊彦だった。
達也が時計に視線を移すと思った以上に時間が経っており、彼の説教が終わるほど長時間外出する羽目になってしまったらしい。
彼は厨房を借りたのか軽い夜食を持って来ており『君も食べるかい?』と言いながら達也へとサンドイッチを差し出した。
確かに小腹のすいていた達也はそれを受け取り、隙だらけに見える古い友人の姿に目を向ける。
一見間の抜けた顔をし、簡単に背後を取れそうな雰囲気を醸し出している一高のトラブルメーカー。
しかし、彼は達也の体術に対して身体能力だけで追随し、且つ隙のある様に見えて全く隙の無い男だ。
今こうしてお互いに食事をしている最中、唐突に蹴り掛かったとしても確実に受け止められ、反撃に移られるだろう。
俊彦が達也を人外の強さだと認めている様に、達也もまた彼の事を人外の強さだと認めていた。
だからだろうか? 達也は彼に向かってこう呟いた。
「––––俊、お前か?」
何を、とは言わなかった。
証拠も無く、根拠も無い、だが人間離れした所業を行えるのは人間離れした者だけ、そんな決め付けに近い直感から漏れた言葉だった。
「––––さぁ? どうだろうね?」
何が?、とは言わなかった。
彼はとぼけた表情をしていたが達也にとってはそれで十分、特に何も言わずに食事を再開する。
特に彼がアクションを起こさなかったのは、本気でお互いが殺し合った場合、確実に周囲に被害が出る事になるし、何より自分達は根本的な部分が似ているのだから、確実に妹である深雪に被害が出ると考えたからだ。
俊彦は躊躇わない、親友ではあるがテスラという少女が行動原理の頂点に存在する以上、確実に達也の大切な人を殺す。
そしてそれは自分にも言える話でもあり、お互いがお互いの大切な人を手にかけたのなら、周囲を破壊しながらの殺し合いになる。
だから、達也は何も言わず、俊彦もそれ以上は何も言わなかった。
この時、二人が共通して思った事は一つ。
––––この男と戦った時、先に殺意を抱いた方が勝つ、と。
殺意を抱く=身内を傷付けられる、なわけですがそれやったら人外二人の際限ない殺し合いになるので世界の寿命がマッハ(震え声