「ミセス・シュベールズ、それは本物のゴールドですか?」
「いや、これは真鍮だね」
まだ、興奮覚めあらぬ教室で一人の生徒が質問する。
それにシュベールズが答えようとすると、ドクターがソニック・ドライバーを顔の前に持って来て代わりに答えた。
「よく、わかりましたね。その通り、これは石の表面をゴールドに変えただけです。スクウェアになると本物のゴールドを錬金できます」
「ワァオ、それは是非、地球の古代の錬金術師の友達に見せてあげたいな!」
ドクターの言葉にチキュウと?が浮かぶシュベールズだったが、コホンと咳払いするとルイズに話し掛ける。
「ミス・ヴァリエール、錬金に挑戦してもらいましょうか?」
そう気軽に指名した瞬間、クラスの雰囲気が凍りついた。
ドクターも周囲のそんな反応にルイズの隣の席に座りながらオヤッといぶかしんだ。
「あ、あのミセス・・・、ルイズにやらせるんですか?」
「彼女は座学がとても優秀な生徒と聞いていますからね。実際にやってもらいます」
「危険です!」
机を叩き、キュルケが立ち上がる。
シュベールズは何が危険なのか、全くわからず席に座る様に促す。
「ルイズ、駄目よ!止めてちょうだい!」
シュベールズの説得は難しいと思ったのか、次にルイズに直接止める様に説得にかかるキュルケだったが、自身の因縁とも言える家の人間の説得では逆にルイズの決心は固くなってしまう。
「・・・やります!」
「ルイズ!」
スッと立ち上がり、教卓に歩を進めるルイズにシュベールズはやる気のある事は素晴らしい事ですと褒める。
「失敗は気にせずに今、出せる精一杯の力を出すのですよ」
「はい!」
ルイズは自身の杖を強く握りしめて、先程の呪文を復唱していく。
「ちょっと、ドクター!貴方も机の下に隠れなさい!危ないわよ!」
「え?」
詠唱をするルイズを観察していたドクターの袖をキュルケが引っ張る。
ドクターは何が起きるのかわからないが、改めて周囲を見渡すと青い髪の女の子が一人、教室から出て行き、その他の全ての生徒達が避難訓練の時の様に机の下に避難している。
「ルイズ、 」
流石に危険なのを察してルイズを止めようと声を掛けるが、ルイズは最後の詠唱を終えて勢い良く杖を石に振るっていた。
瞬間、石が暴力的な光を帯びていく。
ドクターはまずいと感じて懐に納めたソニック・ドライバーをガンマンの早打ちの如く、抜き出して石に向けた。
「・・・ちょっと、何か言いなさいよ」
「ん?何をかな?」
ルイズの錬金により、教卓は粉々になり一番近くに居たシュベールズは昏倒してしまい授業は中止、二人は罰として粉々になった元教卓の破片を片付けていた。
そして、ずっと無言で片付けていたルイズが唐突に話し掛けて来た。
「何かって・・・決まってるじゃない!」
そう言ってルイズは持っていた箒を床に叩きつけた。
ドクターはそんなルイズを不思議そうに見詰めている。
「あんたも、さっきの失敗でわかったでしょ?私は今までどんな魔法も成功したことが無いのよ。全部、爆発するだけ・・・成功する確率が0%」
「ああ、だから君の二つ名はゼロなんだね」
ドクターは合点がいったと言うとルイズは悔しそうに唇を噛み、そうよと消えるような声で返答した。
「呆れちゃった?貴族の癖に魔法が使えないなんて・・・」
我慢していた筈の涙が頬を伝う。
ドクターはにっこりと微笑むとルイズの涙を指ですくい、優しい声で語りかける。
「ルイズ、僕のご主人様。僕は今まで歴史上で偉大な画家や発明家、政治家とか色々な人に会って来た。皆、君と同じだったよ」
「同じ?」
「皆、苦しんでいた。いつも失敗ばかりで周囲から、評価されなかった。無能、変人、奇人、彼らの評価はどれも同じだったよ。でも、彼らは歴史にその名を残したんだ。誰に何を言われようと彼らは努力し続けたから、彼らは皆、成功を納めたんだ」
「何よ・・・私がその人達より努力してないとでも?私は必死に努力してるわよ!でも、駄目なのよ!ずっと、失敗ばかり、ずっと、きっと未来まで・・・ずっと」
「過去でどんなに魔法が使えなかったとしても、それは未来もまた同じく魔法が使えないって事にはならないよ」
「ヒック、何よ。そんなのわからないじゃない」
頑なルイズにドクターは苦笑すると、僕にはわかるよと優しく頭を撫でる。
ルイズ、僕はいったい何かな?
「え?貴方は・・・ドクター」
そう、それで?
「へんてこな私の使い魔で、タイムロード」
へんてこはひどいな。
「青いboxのタイムマシンに乗ってる?」
その通り。
さぁ、僕が何をしようとしてるか解るだろう?
「あっ、貴方!まさか!?」
「そのまさかさ!さぁ、行こう!」
急にドクターはルイズの手を取り、走り出す。
「ちょっと、待ってよ!本気なの!?」
「当然さぁ!流石に何十年後だろうと同じ人間が存在していたら、面倒臭いから、ここは一気に千年先に行ってみよう!」
「はあ!?そんな先なんて行っても私が魔法を使える何てわからないじゃない!」
「大丈夫!君はずっと先の未来には歴史書に名前が刻まれている筈さ!」
「歴史書!?何よ!もしかして、もう見に行ったの?」
「いいや、まだ過去だけさ!僕の勘が告げているんだ!君は偉大な事を仕出かすってね!それも宇宙の歴史に刻むくらいな!」
必死にドクターへ質問するがドクターは爽やかな笑顔をルイズに向けて事投げに言う。
ルイズがまた何か言う前に気付いたら、二人はルイズの部屋の角に立つ青いbox、ターディスに乗り込んでいた。
「ルイズ、僕のご主人!旅行の準備は良いかな?」
「準備なんて、してないわよ!着替えも何も持って無いわよ!」
「着替えなら、ターディスの衣装部屋に沢山あるから大丈夫さ!」
ドクターは忙しくターディスの中心の奇っ怪なスイッチやレバーを操作しながらルイズの問いに答えていく。
「お金はどうすんの!?」
「いざとなったら、ターディスが作ってくれる!」
「授業はどうすんのよ!?」
「ルイズ、これはタイムマシンだよ!心配するだけ無駄さ!」
「じゃ、旅行の準備ってなんなのよ!?」
最後の問いにドクターはレバーを掴んだ状態で止まる。
「心の準備さ!行くぞ、ジェロニモ!!」
満面の笑みで答えるとガンとレバーを下に下ろした。
ルイズの部屋の前で、シエスタは訝しげに立っていた。
そこにキュルケが青い髪の少女と通りがかった。
「貴女、ルイズの部屋の前で何してるの?」
「あっ、すみません!えっと、あの!」
「落ち付きなさい。別に取って喰おうとしてるんじゃないから」
「はい。えっと先程、ミス・ヴァリエールとドクターさんが入って行くのを見まして」
「それで?」
「それで、その後すぐに御部屋の中から低く唸る様な音がして、何だろうかと」
低く唸る様な音とキュルケは確かに気にはなるわねと同意する。
すると、キュルケを押し退けて青い髪のの少女がドアに近く。
「どうしたの、タバサ?」
「気になるなら、確認すれば良い」
「それもそうね」
青い髪の少女、タバサが口数少なく言うとキュルケも直ぐに同意する。
「貴女、えっと」
「シエスタです」
「そう、シエスタ。貴女も音の正体が気になるなら、私達の後に入ってきなさい」
キュルケがシエスタにそう言うと、前からタバサが開いたと声を掛けて来た。
「さっすが、タバサ。アンロックの呪文も速いわね」
「早く、入るなら入る」
「そうね。ルイズー、入るわよー!」
まるで、自分の部屋の様にガチャとドアを開けて奥に入って行くキュルケをタバサ、シエスタの順で続いて入って行く。
そして、
「ちょっと、シエスタ~。誰も居ないわよ」
「あれ?おかしいですね。確かにミス・ヴァリエールとドクターさんが入っていった筈だったのに」
何を期待したのか詰まらなそうにするキュルケと困惑するシエスタ。
部屋には誰かが居た痕跡も無いほど静まり返っていた。
ただ、タバサは何か気になったのか、部屋の角に視線をやっていた。
次回の『Doctor・Who the0』は・・・
ようこそ!千年後のトリスティン魔法学院へ!
場所、間違ったんじゃないの!?
うーん。そんな事を言っても、これも歴史だからね。
ようこそ、紳士淑女の諸君!我が、歴史あるトリスティン魔法学院へ!