不遇な朝田詩乃に寄り添いたい   作:ヤン詩乃ちゃん( _´ω`)_

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事件……事件……

さぁて……どうするかな……(ノープラン)


朝田詩乃を守りたい

 小学5年生の2学期が、始まった。そろそろ、あの「事件」が起こる頃だ。原作では2学期が始まった頃、としか描写されていなかったので、細かい日程は分からないが……

 

「おーきーなーさーい!」

 

 とある土曜日の朝、いつもの様に、詩乃ちゃんに起こされる。休みの日という事もあって、8時に起こしに来た。大体この時間だ。誤差はほぼ無い。その管理能力を他に回せ、と言いたいが、他の管理も完璧なので文句が言えない。

 

「ほら、早く!」

 

「…………」

 

 まだ寝たい一心だった僕は、特に考えもせず布団へ潜った。昨日の夜は、勉強で寝るのが遅くなってしまったのだ。ちなみに範囲は大学3年の後期である。前世での勉強ペースを維持出来るよう頑張っているのだが、僕はスイッチが入ると一気にやるタイプで、昨日はそのスイッチが入った日だった。

 

「もう……」

 

 詩乃ちゃんが、諦めたように僕の上から降りる。詩乃ちゃんは以前、休みの日は、無理に起こしたりせず、起きるまでずっと僕の部屋で本を読んでいるか、パソコンをしていると言っていた。配慮も出来るなんて、いいお嫁さんになるねぇと冗談で言って怒られたのは、しっかり覚えている(詩乃ちゃんに忘れろと言われたけど)

 

「んん……」

 

 詩乃ちゃんの少しの重みが無くなり、体勢を少し変えて、寝やすい形にしてから、また眠る。詩乃ちゃんが起こしに来たという事は、今は8時くらいなのだろう。ならば、もう2時間は寝るとするか……

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぁ」

 

 目が覚める。外はまだ明るい。今は何時だろうか……13時!?えっ!?アレから5時間も経ってるじゃないか!

詩乃ちゃんなんで起こして……って居ない。あれ?いつもなら1時間だろうが3時間だろうが、起きるまで僕の部屋にいると言うのに……5時間は、流石にあきられたのか?

 

 詩乃ちゃんの家へと行ってみると、鍵が閉まっていた。詩乃ちゃんのお母さんから頂いた合鍵を使い、中に入る。ちなみに、使用したのはこの時が初めてだ。

 

「詩乃ちゃー……ん?」

 

 居ない。詩乃ちゃんはおろか、お母さんまでも。はて、買い物にでも言ってるのだろうか。食材ならば、詩乃ちゃんが僕を叩き起して2人で行くだろうし、他の何か―――

 

「あっ……」

 

 そうだ。そうだ!2学期始め、土曜日、午後、詩乃ちゃんとその母親の不在!これはもう……!

 

「やばい!」

 

それは正しく、事件の日だと確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 詩乃ちゃんとそのお母さんが向かったのは、近所の郵便局。原作通りならば、銀行強盗に遭うはずだ。既に事件が起きた後ならば、どうすればいい?いや、起こってないとしても……

様々な考えを巡らせながら、郵便局へと向かう。「近所」の「郵便局」ならば、数は限られてくるし、今まで何度か連れて行って貰った事もある。アニメ版の銀行の細かな所まで覚えているわけもないので、虱潰しに行くしかない……と、思う所だが。

ある程度検討はついている。朝田家が行く郵便局は一番近い所。自意識過剰じゃなければ、詩乃ちゃんは、僕が居ない状態で外に出る事を嫌っている。ならば、一番近い所が最有力候補だろう。

 

 走って、走って、ただ走る。日頃から走り込んでいたお蔭で、郵便局への最短ルート、及びそこまでの全力疾走を可能としている。郵便局が見えてきて、中に入る。入口の横の椅子に座る詩乃ちゃんが、本を持ちながら驚いた瞳をこちらに向けている。どうやらまだ事件は起きていないようだ。

 

「良かった。早く、早くここから!」

 

「えっ、ちょ、どうしたのよ?汗凄いわよ?」

 

 詩乃ちゃんのお母さんは……ッ!もう窓口に!?だったら、恐らく、記憶違いじゃなければ、すぐに……!

 

入口に目を向けると……痩せた、中年男性が入ってくるのが見えた。コイツが強盗犯だと、直感で分かった。と言うより、脳に刻まれた感覚が、そう叫んでいる。

今、この日、この瞬間が、僕と詩乃ちゃんの人生の分岐点となる。

 

「本当にどうしたのよ。貴方らしく……」

 

「ッ」

 

 言いたい。けど、口を開くと、パクパクと金魚のように口を開け閉じする事しか出来ない。声が出ず、詩乃ちゃんも不思議な顔をしている。そんな事をしている間にも、強盗犯は窓口に向かい、詩乃ちゃんのお母さんを突き飛ばした。

 

「痛っ……」

 

 詩乃ちゃんのお母さんが倒れ込み、強盗犯がボストンバッグを窓口に置いて…………銃を取り出し、銀行員に銃口を突きつけた。

 

「この鞄に金を入れろっ!両手を机の上に出せ!警報ボタンを押すな!お前らも動くな!!」

 

 銃口を慌ただしく動かし、職員達に「妙な事をしたら撃つ」とアピールする。叫びだしそうな詩乃ちゃんの口を抑え、詩乃ちゃんの隣に座る。僕という壁が居なくなった詩乃ちゃんの瞳に、強盗犯と、強盗犯の持つ銃が映る。

すぐに固まる詩乃ちゃんの口から手を離し、必死に思考を巡らせる。奴が銀行強盗に入る前、もっと言えば、薬物を打つ前に、何か鈍器を使い始末しておきたかった。しかし、それはもう出来ない。もう事件は起きてしまっている。

 

……パァン!という、激しい音が銀行内を包む。僕と詩乃ちゃんは反射的に耳を抑え、爆音から鼓膜を守る。足元に薬莢が転がってきて、目を上げると、男性局員が撃たれていた所だった。

 

「……!」

 

 救えなかった!強盗犯が来る事も、彼が撃たれる事も分かっていたのに!

そうだ。そうだ。考えている暇なんてない。原作の詩乃ちゃんもそうだった。原作の詩乃ちゃんも、強盗犯に無我夢中に飛び付いたんだ。結果は良かったとはいい難いが、少なくとも、命は失わなかった。

 

「……やるしかない」

 

 決めたんだ。詩乃ちゃんを、守る。救う。不遇な朝田詩乃を、あるべき場所に立たせると、そう決めたじゃないか。今までは、寄り添って、それで詩乃ちゃんが助かると思っていた。「友達」「親友」、そんな存在がいれば、詩乃ちゃんはもっと強くなれていたんだと。

寄り添うだけじゃ、足りないんだ。行動しなきゃ。「友達」だとか「親友」だとか、そんな者が居るだけでは、詩乃ちゃんは救われない。

 

なるんだ。詩乃ちゃんの、英雄(ヒーロー)に。詩乃ちゃんを……彼女を命懸けで救い、助け、そして寄り添う。そんな、物語のような英雄に!

 

 

 詩乃ちゃんのお母さんへ、銃口が向けられる。このままでは何も変わらない。僕は決心したんだ。

席から跳ね上がるように立ち上がり、強盗犯の元へ走る。強盗犯の足を、毎日走って鍛えた脚力で蹴る。相手は大人だが、薬物中毒者だ。体はガタガタと震えていたし、余裕もないようだった。僕の蹴りで簡単にバランスを崩した強盗犯は、床に背中から倒れ込む。

銃を持つ右手の手首を思い切り踏み、銃を落とさせ、蹴って遠くに飛ばす。ここまではOK、詩乃ちゃんのお母さんが撃たれる事はもうない。問題は……

 

「この、ガキぃぃぃぃぃ!!!」

 

 このプランじゃ、自分自身の身を少しも守れない。って、所かな……

強盗犯は僕の首を掴み、窓口に叩き付ける。そのまま力任せに首を絞める。抑え込まれては、もう僕に勝ち目はない。元々、1度は人生を終えている。3年も詩乃ちゃんと過ごせたのだ。詩乃ちゃんさえ救えれば、問題はない。

 そんな事を考え、ほぼ生きる事を諦めていた時……意識が朦朧となり、遠くなった耳に、微かに発砲音が聞こえる。それが更に2回連続して鳴り、強盗犯から完全に力が抜けていくのを感じた。

 

助かっ

 

 

 

 

痛い

痛い。痛い。

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

顔が熱くなるのを感じる。右頬が、尋常じゃない程痛い。炎で炙られているかのように熱い。何故だ?一体何が起きている?脈絡のない、言葉とも言えない、情けない叫び声を上げながら、僕は暴れる。

 

 

 チラリと見えたのは、拳銃を手に持ちながら、床に倒れる詩乃ちゃんの姿。その姿を見て、僕の頭は急速に冷え、痛みも感じなくなっていった。

 

あぁ。

結局、僕は朝田詩乃を救えなかったのかな……

 

そんな事を考えながら、僕は意識を失った。




あのー。
設定で、詩乃ちゃんの嫌いな人種に、「力任せな人」って書いたんですよ。

ナイスフラグって思いましたね。
適当に書いたのに、案外強盗犯が「力任せな人」にピッタリだっていうね……


次回は詩乃ちゃん視点。心情を書いてると長くなるよね。
今回、次回と続き、フルシリアスでお送りします。ごめんなさい( _´ω`)_
その分、終わったら皆さんが好きなの()書きますから(適当)

サブヒロイン候補

  • ピトフーイ
  • レン
  • フカ次郎
  • 銃士X
  • 要らない!ヤン詩乃ちゃん一筋で行け!
  • 閲覧用(作者の好きにしたらいい)
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