《完結》うp主と彼女たちの妄想話。   作:雷電p

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ちょっぴりドジでかわいい少女と―――――俺

 

 9月―――――

 

 長月とも呼ばれる夏の終わりを告げる月に入ると、残暑と呼ばれる夏最後の追い込みが始まりだそうとしているはずなのだが、その暑さというのをここ最近あまり実感しない。 というのも、何やら今年は例年よりも気温が低いとのこと。 そのため、先月あたりから夜な夜な俺を殺しにやってくる熱帯夜というモノが無くなると言うのだ。

 

 これほどまでに嬉しいことなど無い。 心置きなく安眠できるというわけなのだ。

 

 

 

 

 だがしかし――――ッ!!

 

 現在の時刻はまだ夕方近くで、あともう少しすれば夜になり掛かると言う時間帯。 残念ながら、寝るまでの時間はまだまだある。 このあまりの時間をどのように過ごしたらいいのだろうか? 社会人になった俺にとっては、一番の難題とも言えるのだ!!

 

 

 そして、そこに加わるのは、空腹!!

 そう、空腹が俺の体力をすり減らすのだ。 お腹の音が鳴るたびに、体力はおろかやる気すらも失われてしまうと言うオマケまで付いている。 まったく、やれやれとしか言いようがなかった。

 

 

 はぁ……どこかで食べるべきだろうか?

 

 アキバに降り立った俺は、この空腹を満たしてくれる店を探し出そうと足早になる。

 

 

 そんな時だった――――――

 

 

 

(bbbbbbbbb)

 

 

「ん、電話か……?」

 

 

 画面に表示された番号を見て、この時間に電話をかけてくるなんてめずらしいなと思いつつ、電話に出た。

 

 

 

 

「はい、もしもし……?」

 

 

 腹に力が入らないからか、カスカスな声で電話口に出た。 そしたら、俺のボロボロのメンタルを一瞬にして修復してくれる癒しの声が耳をすりぬけていく。

 

 

 

『あ! 繋がったぁ! もしもぉし、ことりだよ♪ こんな時間にかけても平気だった?』

 

「いや、大丈夫だ、問題ない」

 

 

 彼女の声を聞いただけで、背筋がシュッとしてしまうし、腹にも自然と力が入ってハリのある声を出してしまう。 なんでこうも男は単純なのだろうか?

 

 

 答えは簡単だ、相手がことりだからだ。

 

 

 

『わあぁ! よかったぁ。 それでね、キミにお願いがあってね電話したの。 ことりのお願いを聞いてくれますか?』

 

「任せろ。 ちなみにそのお願いというのは?」

 

『えっとね、それは――――――』

 

 

 電話越しに、ことりのお願いというモノについて聞くことになる――――――

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 

「へぇ~、ここかぁ………」

 

 

 ことりに呼び出された場所は、なんと見慣れたメイドカフェだった。 ここはかなり趣のある店内で、大正から昭和にかけての喫茶店さながらな構造に見ただけで落ち着いてしまう。

 まるで、実家のような安心感とはまさにこのことだ。

 

 

 

 

「あ! 来てくれたんだぁ~♪ あっ、そうだった……こほんっ、いらっしゃいませ、ご主人様♪」

 

 

うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!? な、な、何なんですかこれはァァァァァ!!!

 

 奥から、トットットっと足音を鳴らしながら俺の目の前にやってきたと思ったら、黒のドレスに白のエプロンを身に着けたことりが朗らかな満面の笑みで御出迎えをしてくれたではないか!!

 しかも、仕事中だと言うのに、一瞬だけ、素のことりを見せてしまうと言うドジっ子をしただけでなく、そこから何も無かったかのように装うメイドのことりのちょっと慌てた様子が心にキテしまう! 

 多くの人の心を揺るがしてしまうほどの魅惑の激甘ボイスだけで、すでに脳も心もトロけそうだと言うのに、こんな連続コンボを見せつけるだなんて、殺人的すぎるッ!!

 

 アカン、動悸が……ヤバイです…………!

 

 

 しかし、ちょっとした失敗でも動揺を見せないでいるとは……さすが、伝説のカリスマメイドさんだ! 長くここに勤めているからかなり場慣れしてて素晴らし…………ん?

 

 

 その瞬間、俺は見てはいけないものを見てしまったみたいな感覚に陥ってしまう! 何故なら―――――

 

 

 

「ことり……今日は、耳まで赤くなっているんだな………」

 

「ふえぇっ?!! あ、あぁ……み、見ないでください………恥ずかしいよぉ………/////////」

 

 

 先程の動揺が抜け切れてなかったからか、耳が赤いことを指摘すると、かわいい声で驚きだすと、両手で赤くなった耳を覆い隠す仕草をする。 だがしかし!! このことり、耳だけじゃなく顔まで恥ずかしそうに赤くなっているのに気付いていないィィィ!!!

 

 あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!! なんでこうもこんなかわいい仕草をしちゃってくれるのかなぁ…………!!! 天然だ………ここに天然の天使が舞い降りたぞ!!!

 

 

 恥ずかしそうに顔を赤く染めることりを見て、こっちまでも恥ずかしくなてきてしまったじゃないか……!

 

 

 だが、ことりだから許す……ッ!!

 

 

 

 こんなことりに見惚れてしまった俺は、空腹を忘れてしまうほどに、まじまじとその姿を見たのだった。

 

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

 

「きょ、今日は私、ミナリンスキーがあなたのために料理をお出ししますので、しばらくお待ちくださいね……♪」

 

 

 未だに赤面させたままのことりは、俺にぺこりとお辞儀すると風に吹かれたように厨房の方へと隠れてしまった。 おいおい、カリスマメイド………大丈夫か………?

 

 普段からこんな感じなのかと思ったら、とても落ち着いてなどいられなかった。

 

 

 ちなみに、ここで俺とことりの関係について語らせてもらう。

 

 俺とことりは学生時代からの友人で、よく登下校をしていた仲であった。 通っていた学校は違っていたモノの、ちょっとしたきっかけで知り合うこととなり、今日までの付き合いに至る。

 さらに言えば、ことりがここのメイドカフェで働いていることは、以前からよく知っていた。 というのも、ことりにここで働くように勧めたのは、この俺なのだ。 学生時代に、ことりにどこかいい働き口が無いかと尋ねられた時、一通りのモノを紹介したが型にハマらず、最終候補としていたここを紹介すると見事にハマったようで今日に至る。

 

 

 今では、カリスマメイドとしてアキバの顔となって崇められるような存在となったのだが、最初は大変だったんだぜ? 何せ、それまで働いたことがないばかりか、人と話すことがあまり得意でなかったので、失敗ばかりしていたのだ。

 その時、自身を無くしそうになっていたことりを支えていたのが俺だ。 ことりの空いている時間に合わせて、ことりの家でバイトの練習に付き合ったのだ。 接客の仕方やモノの運び方、礼儀作法などを一緒に見て学んで、どうしたらいいのかなどを互いに考え、何度も練習したのだ。

 

 その練習の成果が、現在のカリスマメイド・ミナリンスキーという実を結ぶのだった。

 

 

 ちなみにだ―――――

 

 声を大にしては言えないことなのだが、俺はことりのことが好きなのである。 世間で言う、一目ぼれと言うヤツだろうか? ことりと初めて出会った瞬間、この子と一緒にいられたら………と言う気持ちをどうやら抱いてしまっていたのだ。 故に、一緒に登下校を始めようとしたり、ことりが俺の事を頼ってくれた時は、天まで昇る気持ちとなったのだった。

 そして今、ことりの1つひとつの動作に歓喜を上げてしまうのは、そうした感情によるものなのだ。 溜め息が出てしまうほどの美しい動作に、俺の感情は高まる一方だ。

 

 だがしかし、当のことりにこの気持ちをずっと伝えることが出来ずに今に至っている………くっ、俺にもうちょっとだけ…ほんのちょっとだけでも勇気があれば言えるというのに……ッ!

 

 まったく、情けない話である………

 

 

 

 

「そ、それでは、失礼します……」

 

 

 何やら、ぎこちない動きをしてやってくると、ティーカップとティーポットを俺の前に出した。 しかし、先程とは一変して手慣れた手付きでカップの中にお茶を注ぎ入れ、それを俺の前に出してくれた。

 

 

「どうぞ、本日のハーブティーになります♪」

 

 

 カップの中に注がれた赤み掛かったお茶が、甘く芳しい匂いを醸し出させていた。 カップに一口つけてすすると、すっと落ち着く味で心が休まる。 それに、ちょうど良い温度に調整されているので、火傷せずに口に含むことが出来るのだ。

 

 

「あぁ………おいしい」

 

「! あ、ありがとうございます、ご主人様♪」

 

 

 おいしいと言われたことが、とても嬉しかったのだろうか。 弾むような声で喜びを表していたのだ。

 

 

 

「料理の方はあともう少しで出来上がりますので、もうしばらくお待ちください」

 

 

 一度お辞儀をして、この場を離れると、そのまま厨房の中に消えて行ってしまった。  あっちが忙しいのだろうかな? ホールに立つよりも、厨房にいる時間が長いように感じられた。

 

 

 

 そういえば、他のメイドさんはどこだ?

 いつもならば、数人がいたはずなのに………それに、お客も見当たらないじゃないか。 変だなぁ、この時間なら人が来てもおかしくないのに………

 

 それを疑問に抱きながら、俺はカップの残りを飲み干す。 最後の一滴までもがおいしいとは、恐れ入ったよ。

 

 

 

 

 

「お待たせしました、オムライスです♪」

 

 

 少し時間が空いてから目の前に出されたのは、黄金色に輝く溶岩のようにトロトロな半熟オムレツと、その下に潜んでいる紅の宝石のような輝きを見せるケチャップライスの共演を果たしたオムライスだ。 卵が半熟故に、未だに液体が生き物のように動いている。 もう見ただけでよだれが口の中で大洪水を起こしてしまっているほどだ。

 

 

 

「それでは、今からケチャップで文字を書かせていただきますね♪」

 

 

 手元にケチャップを取り出したことりは、それを持つとゆっくり丁寧に綺麗な文字を難無く描いていた。 俺には決してできないだろう芸当を、ことりはいとも簡単に済ませ、俺の前に出したのだ。

 

 

 そこに書かれていたのは、『I LOVE』と書いて俺の名前が書かれてあった。 さらに、その周りをハートで囲むということまでしてくれたのだ!

 くっ……! こ、こんな恥ずかしいことを平然とやってのけるとは………! さすがとしか言いようがなかった。

 

 

 

「それでは、ミナリンスキーのおいしくなれるおまじないをかけさせていただきますね♪」

 

 

 そう言うと、ことりは胸元に手を添えると、そのままハートの形にしてあのおまじないをし始めたのだ!

 

 

「それではいきます――――――

 

 

 

 

 

―――おいしくなぁ~れ、もえもえ~きゅん♡」

 

 

 

 

 ガフッ―――――!!!?

 

 

 アカンアカンアカンアカンアカン!!!

 

 ナニコレ、マジでヤバいのですが………?! 思わず吐血してしまいそうになるほどの破壊力でどうしたらいいのか分からなくなってしまったのですが!!?

 

 胸元につくったハートを言葉に合わせてクルクル回転させたら、最後の「きゅん」のところでハートをこちらに向けて放ったではないか!! あぁ、しかもその時に見せた満面の笑みが堪らないほどにかわいすぎた……! きゅん、どころの問題じゃない、ずきゅぅぅぅぅんと鉛で撃ち抜かれたような衝撃が胸に感じる……!

 

 胸が痛い……もしかして、穴があいてしまったのか?!

 胸元に手を当てて確認してみるが、大丈夫だ、あいてはいなかった………けど、完全にハートを持ってかれたようです………

 

 

 ことりの笑顔で回復するのが先か、それともハートを撃たれた方のダメージが強いか……! それが問題だった………

 

 

 

 

「こほん。 そ、それでは………い、今から私がご主人様に、お料理を食べさせてあげますね♪」

 

 

 なん………だと………っ?!

 

 

 その時、俺の脳裏に電流走る―――!!

 それってもしかして……あのスプーンで、あ~んするやつか?! おいおいおい、やべーぞ、俺死ぬわ。

 

 まさか、ことりはそんなスキルまで身に着けていたとはな………恐れ入った………さすがメイドさんだ、ご主人様の痛点をよく御存じだ………! さっきのおまじないと言い、この食べさせることをしてくれることと言い、どうしてこうも攻めるのがうまいのだろうか? 着実に俺のライフポイントは減っていくのある。

 

 

 

「それではご主人様、お口を開けて下さいね♪」

 

 

 そんな俺の心境も知らないまま、ことりはスプーンにライスと卵を掬って、それを俺の口元に近づけさせた! 料理のおいしそうな匂いが俺の食欲をかき立てるのだが、それと同時に、ことりが身体を近づけてくるので、その身体から出る甘くやわらかい香りも感じられるのだ。

 というより、料理の匂いよりもことりの香りの方が心なしか強く感じられるのはどうしてだろうか? 多分アレだ、さっきから俺の視線がことりに集中しているのと同じように、ことりの事を意識し過ぎているところがあるからだ。 いかんいかん、まずは料理の事だけに専念するんだ。

 

 

 ざわめく心を落ち着かせると、ことりが言うように口を開けて待っていた。 そして、ゆっくりとスプーンが口の中にするりと入り、中身を取り出すと抜けていった。

 

 

 

「んっ! おいしいぞ、これ!」

 

「そう! よかったぁ、喜んでもらえて………あっ、いけない!……ありがとうございます、ご主人様♪」

 

 

 メイドモードからまた一瞬だけ素に戻ってしまう。 もう、ブレブレじゃないかと言いたくなってしまうが、なんか今日はやけに頑張っている様子なので、野暮なことは言わないようにしよう。

 

 

「では、お次に参りますね♪」

 

 

 ことりは気を取り直して、もう一度掬って食べさえてくれた―――――それも、皿にあるモノが全部なくなるまでゆっくりゆっくりと時間をかけて食べたのだ。

 

 

 その時に見せた、飽きることのない屈託のない笑顔が、俺の食事の時間を華やかなものへと変えてくれたのだった。

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 

「ふぅ、思った以上に満たされたな」

 

 

 皿に入っていた料理をすべて平らげてしまうと、ことりは空いた皿を片付けるべく、また厨房の方へと姿を隠してしまう。

 しかしなんだ、皿に盛られていたのは量的にはあまり多くは無かったのだが、ことりがその一杯にありったけの愛情を込めてくれるので、精神的なモノで腹のスペースを大幅に占拠させたのだ。

 

 個人的にはこの上ない満足感だ。 これ以上は何も入らないと、腹の虫も喜びかえっている。 ことりにはごちそうになったなぁ、あとでお礼を言わなくちゃいけないな。

 

 

 ちょっと、用がしたくなってきたので、席を立ち上がろうとすると―――――

 

 

 

「あぁ!! ちょ、ちょっと待ってくださぁぁぁぁい!!!」

 

 

―――と、矢のようにことりがやってきたのだ。

 なんだ? ま、まさか、トイレの場所まで案内をしてくれるのかッ?! なんて妄想を働かせてしまう。

 

 しかし、俺が想像していたモノとは、まったく異なる反応が俺に示されたのだ。

 

 

 

「ま、まだ帰らないでくださいよ~、こ、これからが()()なんですからぁ~!!」

 

 

 な、なんと言うことでしょう………

 こ、ことりは、どうしてか俺の胸元に両手を添え出すと、身体を密着させてきたではないですかぁー。 ことりの手の平だけでもすでに羽毛のようなやわらかさを誇ると言うのに、それ以上のやわらかさとやさしさが溢れる豊満な身体をピタッと密着させるのだ。 しかも、ここまで近付いたので、ことりの身体から溢れ出る脳を刺激するこの甘くてやさしい匂いが俺をダメにしてしまう。

 それに何でしょう、目に涙のようなモノで潤わせ、上目遣いで俺の事を見つめてくるではないですか。 まるで、子犬が御主人に構ってほしいとアピールするみたいな切なそうな顔が俺の精神に更なるダメージを与えてくれる!

 あああぁぁぁぁ………今俺は、身体中でことりの事を感じているんだぁぁぁ!!! こんなかわいいことをしてくれる友人なんて、世界中を探し回っても、ことりをおいて他にいないことだろう。 それほどに、ことりの魅力に虜にされそうなのだ。

 

 

「い、いや……待ってくれ。 帰るわけじゃないんだ、ちょっとキジを撃ちに行ってくるから……」

 

「キジさんを? だ、ダメだよぉ~! そんなことしたら、キジさんがかわいそうだよぉ~~!!」

 

 

 いやぁ……そう言う直訳の言葉ではないからね? あと、なんかさらに目元を滲ませて今にも泣き出しそうになっているのですが?! な、泣かないで! 俺が泣きたくなっちゃうからぁ!!

 

 このあと、ことりに俺の言ったことの意味を直接伝えると、顔を見たこともないほどに真っ赤にさせて困らせてしまった。 ボンっという音を立てて湯気を出していたようだけど、大丈夫かなぁ………?

 今日のことりは、さっきからずっとこんな感じで、ドジばかりやっているのだが………おかしいなぁ、かなり経験も積んだはずなのに、まるで、まだ来たばかりだったあの頃の姿と重なり合ってしまう。 ちょっと心配だなぁ。

 

 そう思いながら、俺はトイレの方に向かっていく。

 

 

 

 その際、「大丈夫……今日こそ、絶対成功させてみるよ………」と言う独り言を耳にしたのだが、あまり気にしなかった。

 

 

 

 

 

―― 

――― 

―――― 

 

 

 

「お待ちどうさまです。 こちらデザートのチーズケーキになります♪」

 

 

 戻っていた俺の前に置かれたのは、見事なまでに美しく作られた純白のチーズケーキ。 一般的な焼いて表面がきつね色になったああいうヤツではなく、型に入れた生地を冷やして作ったレアチーズケーキの方だ。 しかも、小さいサイズだがホールタイプで持ってくるとは思いもしなかったが、その見た目にまたしても腹が鳴ってしまいそうだ。

 

 さて、いただくとしますか。

 

 

 ケーキ用のフォークを手にして、早速その味を確かめようとする。

 

 

 

 

「あ、あのっ……! ちょっと、待ってもらえますか!」

 

 

 えっ? と思わず手を止めて顔を上げると、ことりが頬を紅く染めて、もじもじと身体をくねらせていた。 すると、後ろに回していた手を前に持って来て、何かを俺に差し出した。

 

 

「こ、これを受け取ってください……!」

 

 

 目をギュッと閉じて恥ずかしそうに渡してきたのは、一輪の花だった。

 

 

「おぉ、綺麗なキキョウだな」

 

 

 水色の5枚の花弁が特徴のこの小さな花をことりは、俺にと渡してくれたのだが………これはどういう意味だろう? ただ単に、俺にあげたかったのだろうか? いや、食べる直前に渡してきたのだから、これも添えてくれと言うことなのだろうか? う~ん………わからん………

 

 

 

 

 

 

 

 

「………えぇっと……もしかして……だめってことなの………?」

 

 

 俺がこれに悩んでいると、切ない声が俺に臨んだ。

 顔を上げてみると、そこには今にも泣き出しそうなことりの姿が………!

 

 

「えっ?! ちょ、ちょっと待ってくれよ、ことり……! だめってどういうことなんだ?」

 

 

 その姿に動揺してしまった俺は、訳も分からないまま声を出した。 すると、ことりは少し眉をひそめて俺に尋ねてきた。

 

 

「もしかして……その意味がわかってなかったの……?」

 

 

 ことりの言う「その意味」とは、さっきの花の事に違いないと感じた俺は、首を縦に振る。 そしたら、しまったと言わんばかりの残念そうな表情を見せてくる。 その時、「バラの方がよかったのかぁ……」とも口にしていた。

 

すると今度は、頬を膨らませて少々起こり気味になって声を上げたのだ。

 

 

 

「もぉ~! キミも少しは花言葉の勉強をしていてほしかったなぁ! いいですか、キキョウの花言葉はですね―――永遠の愛―――と言ってですね、ことりはこれでキミへの気持ちを………あっ!!!」

 

 

話の途中、また、しまったと言わんがばかりの表情をすると、口に手を置いて赤面してしまった。

 

 その様子を見ながら、俺はことりの言った言葉が頭の中でぐるぐると回っていた。

 

 

 キキョウ・花言葉・永遠の愛・手渡す・誰に・俺に……

 

 

 

「あっ………」

 

 

 

 その意味にようやく気付いてしまった俺は、思わず顔を熱くさせてしまう!!

 

 えっ、ええっ!?! うそ、いや、うそうそうそうそ!!! 待ってくれ………! そんなバカな……!! だ、だって、それってさ、つまりことりが俺の事を…………?

 

 

 う、うわああぁぁぁぁぁぁぁ?!!?!?

 

 

 あまりにも衝撃的な真実を知ってしまったことに、驚きのあまり発狂してしまいそうになるのを力強く堪えていた……いや、ダメだ。 堪えられん!! だって、ことりが俺のことを………あああぁぁぁぁぁぁ!!!!

 

 

 思い返せば思い返すほど、身体中が燃えあがるように恥ずかしくなってくるこの心境をどうにかしてほしい、そんな今の心境です。

 

 

 

「ふえええぇぇぇぇん!!! ここまでうまくいってたのにぃ~最後の最後で失敗しちゃったぁ~!!!」

 

 

 赤い顔を抑えながら悶えていることりが、何やら意味ありげな言葉を口にする。

 その意味が気になった俺は、それについて聞いてみると、呼吸を乱しながら話しだした。

 

 

 

 

 

 

「あのね……ことりは今日、ここでキミに告白しようと決めていたんです………! 私、キミと初めて会った時から好きで、一目惚れしちゃったんです……!」

 

 

 うそ……だろ………ッ?!

 

 ここに来て、さらに俺のメンタルを爆発させる気なんですか、ことりさん?! つまり、俺とことりは出会った瞬間からすでに想い合っていたと言うことだ。

 

 

「それでキミに少しでも近くにいたいから、登下校とか、私のために付きっきりで練習をしてくれたりしてくれたことがとても嬉しかったの……そんなキミだからいつ告白しようか悩んでいたんだけど、気が付いたら今日までこんなことに………」

 

 

 しかも驚いたことに、以前から告白しようかと考えていただなんて………え? 確かそれって、俺と……

 

 

 

「このままじゃいけないと思って勇気を振り絞ったんだけど、素の私じゃとても出来なくって……この服を着たら出来るんじゃないかって思ったんだけど………いつものように出来なくって………」

 

 

 動きがぎこちないと思ったのは、素の自分が出ていたからなのか……緊張のあまりいつも通りに出来なかったってわけか………

 

 

 

「やっぱだめだよね………こんなドジな私のこと、好きになれないよね…………」

 

 

 そう口にすることりの表情は、今まで見たことが無いくらいに切なく、脆く崩れてしまいそうな泣き顔をしていたのだ。

 

 

 そんな姿を見て、俺はことりの手を強く握った。

 

 触った瞬間、まるでこの世のものではないやわらかい感触に身震いしてしまう。 だが、本当に震えていたのはことりの方だった。 苦しくって、もどかしくって、辛いから震えてしまう………多分、そんな気持ちを抱いているのだろう。

 

 俺だって、そうだったんだ………伝えたいのに伝えられない、そんな自分の弱さが悔しくって震えていた。 その辛さと言うモノが分かるからこそ、こうしているんだ。

 

 

 ことりが驚いた顔をしてこちらを見ていた――――

 今しかない……ことりの気持ちはわかった。 あとは、俺がこの気持ちを伝える番なんだと……!

 

 

 

「あっ……あのな………こ、ことり………」

 

 

 

 頼む、この一瞬だけ……俺に勇気を与えてくれ……!

 

 

 

 

 

 

「………お、俺も……ことりの事が好きなんだ……! ことりを一目見た瞬間から、すでに好きだったんだ! 一目ぼれしてしまったんだ!! でも、勇気が無くってずっと言いだせなかった!! こんな……こんなダメなヤツかもしれないけど………

 

 

 

 

………俺の彼女になってください!!!」

 

 

 

 

………い、言え……た…………

 

 

 やっと…………言えた……………

 

 

 

 言った瞬間、俺の中で渦巻いていたわだかまりが、すっと消えて無くなっていくような気がした。 心がようやく楽になった、そんな気がしたんだ。

 

 

 

 つぅ―――――――――――

 

 

 

 すると、ことりの目から一筋の涙が零れ出た。

 呆然と、俺の方をずっと見たまま………

 

 

 そんなことりの口が動いた。

 

 

 

「ほんとに、いいの………? こんな……こんな私でよければ………よろしく……おねがいします………♪」

 

 

 それは、俺が今まで見てきた中でも、一番美しい……まるで、天使のような笑顔だった………

 

 

 

 

 

 

――

――― 

―――― 

 

 

 

 2人だけの店内で、あまい一時を過ごした俺たちは並んで帰路に立っていた。

 

 ことりの作ったケーキを2人で食べ合い、2人が歩んできた思い出を語り合った、ついさっきの出来事が、まるですごく前のことのように感じた。

 

 それは、俺たちが初めて逢ったあの時と同じ長さであったかのように………

 

 

 

 

「ねぇ―――――」

 

 

 俺の傍らで歩くことりが、切ない表情で俺の事を見つめていた。 そして、小さな唇が揺れ動いた――――

 

 

 

「――――手を……繋いでもいいかな……?」

 

 

 それを耳にすると、思わずビクッと肩を震わせてしまった。

 何故なら、水晶のように輝く瞳で俺を見つめ、りんごのように赤らめた頬で恥ずかしそうにして求めてくるのだ。

 

 

 それも、俺の“彼女”がだ。

 

 

 それを断る理由などどこにもなかった。 俺はすぐに返事をすると、差し伸べられた左手を俺の右手が包み込むようにやさしく握った。 俺の手よりもはるかに小さく、そして、すぐに溶けて無くなってしまいそうに感じてしまうその手を絶対に放したくなかった。

 

 

 何故なら、この手の中にあるモノこそ、俺がずっと求め続けていたモノだったからだ。

 

 

 

「えへへ♪ キミの手、あったかぁい♪」

 

「ふふっ、ことりの手だってあったかさ」

 

 

 

 はじめてお互いの気持ちを知りあった――――

 

 

 はじめてこうした2人の時間を過ごせた――――

 

 

 はじめて……ことりを愛し続けたいと願った――――

 

 

 こうやって、俺たちはまた新しい“はじめて”を探しに行くのだろう。

 

 

 

 

 

 その時は、こうやって、離れ離れにならないならないように手を繋いで―――――ね♪

 

 

 

 

 

 

~Fin~

 

 

 

 




ドウモ、うp主です。


今回はことりちゃんの話を書かせていただきました!




我ながらよく書けた……



……とは言い難いですね。

連日投稿で、かなり脳がマヒしているので、まともな判断が出来ないままこの話を書いていたため、どうなのかなぁ……なんて思っている次第です。


ごめんな、ことり……不甲斐無いばかりに………

ここで出来なかったことは、別作品で吐き出すとしましょう。


次回は………絵里です!

さて、どんな話を見ることが出来るのか?
気になるところです。


では、また!
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